第211回  「おかしな法律―旧優生保護法をめぐって」

法律は、社会のルールであり、人が安心して暮らせるために存在します。しかし、その内容が常に正しいとは限りません。おかしな法律も多数存在しているのです。
旧優生保護法に関しても、おかしな法律ができていますので、そのことについて報告させていただきます。
旧優生保護法は、障害者を社会から排除することを目的にして作られた法律で、障害のある本人の同意なくして不妊手術を施すことを認めていました。長年に亘り、多くの障害者の方々が、その意思に反して不妊手術によって生殖能力を奪われてきました。「天下の悪法」と言ってもいいでしょう。
そのため、障害者の方々が、不妊手術を施され、子どものできない身体にされたことの損害賠償を求めて、国に対して国家賠償請求訴訟を起こし、争ってきました。
最大の争点は、「除斥期間」(※①)の適用があるかどうかです。ほとんどが、20年以上も前のことであるため「除斥期間」を経過しており、既に請求権は消滅しているのではないか、と考えられたのです。裁判で国は、「除斥期間」を経過しているので、損害を賠償する義務はない、として争いました。
この点について、最高裁(大法廷)は、旧優生保護法による障害者の被害について国が除斥期間を主張することは、著しく正義・公平や信義則にも反し、権利の濫用にも該るとして、除斥期間の適用を認めませんでした。
大法廷判決後、国は「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(以下、「被害者補償法」と言います。)」を作りましたが、補償金の請求期限を施行日から5年に制限したのです。即ち、5年を過ぎたら請求は認めない、としたのです。
勿論、法律関係をいつまでも不確定な状態にしておくわけにはいきません。しかし、大法廷判決が、最大級の非難の言葉を並べて20年の「除斥期間」の主張を排斥して被害者を救済したのに、被害者を救済するために新たに作った被害者補償法による請求が5年しか認められないのは矛盾です。私が国会での質問でこの点を問いましたが、子ども家庭庁の答弁は、「こんな法律もある。」という、答えにならないようなものでした。
もう一つ。
被害者補償法には、複数の遺族が同順位で補償金を受け取る場合、そのうち一人がした請求を「その全額について全員のためにしたものとみなし」、その一人に対して支払えば「全員に対して支払ったものとみなす。」という規定が置かれています。これも、非常におかしなもので、全国の被害者弁護団が困っています。
自分がまったく知らない間に誰かが請求して受け取ってしまえば、自分も受け取ったものと「みなさ」れて、自分の権利がなくなるというのは、どう見ても、おかしい。本来であれば、請求権者の数に応じて分割されるべきです。行政が、いちいち同順位の権利者を捜し出すのが面倒だから、これを回避するために法理論を無視してこのような乱暴な立法をしたものと思わざるを得ません。
こんな「おかしな法律」が国会で作られ、堂々とまかり通っているのですから、立法に携わるものとしては厳重に眼を光らせていなければなりません。
これらの点については、今後、法律改正をするよう働きかけていく所存です。

※① 「除斥期間」・・・一定の期間が過ぎると、その権利を行使できなくなる制度。
民法724条②号不法行為の時から20年間権利を行使しなければ、損害賠償の請求権は消滅する。