国会というと、多くの方はテレビ中継で見る本会議や予算委員会を思い浮かべると思います。演壇で熱弁をふるったり、総理大臣が野党議員の方からの質問に答え、論戦を行っている姿を想像するでしょう。これが国会の「表」の姿です。
しかし、実際の国会は、この「表」の姿だけではありません。表には出て来ず、目立たないところで行われている数多くの調整や交渉、準備などがあって、はじめて国会が正常に本来の責務を果たすことができるのです。これが、「裏」の部分と言っても過言ではないでしょう。
本会議や委員会は、国民にも公開され、インターネットでも中継されています(但し、NHKで放映されるのは、本会議と予算委員会だけです。)。これらの場での発言は、議事録に残り、歴史上記録されます。「何年前の〇〇大臣は、〇〇と発言している。」などのやり取りを聞かれたことがある方も多いと思いますが、これがそうです。まさに国民の代表者たる議員の表舞台、花舞台です。
しかし、その舞台に上がるまでには、膨大な、見えない部分での準備があるのです。
例えば、一つの法案を審議する場合でも、委員会の日程調整、質疑時間の配分、質疑者の選定、参考人を呼ぶかどうか、採択をどの段階で行うか、などについて予・野党、政府(省庁)間で決める必要があります。これらを行うのが各委員会の理事です。私も法務委員会で、2人いる自民党の理事のうちの1人です。主として、質疑者の選定、野党との間の附帯決議の調整などに携わっています。
テレビには映らないし、あまりその任務の内容を知らない方が多いと思いますが、この理事会こそが国会運営の要とも言える部分です。勿論、政党間で対立する場面も多くありますが、対立しているだけでは国会は前に進みません。相手の主張にも耳を傾け、譲れるところは譲り、譲れないところは粘り強く交渉する。その積み重ねにより委員会は前へ進むのです。
また、委員会における質問にしても「裏」の部分が非常に大切になります。
例えば、わずか20分間の質問でも、その質問の中に誤りがあってはならないので、六法全書や法律の基本書を読み、役所から資料を取り寄せ、制度を調べ、担当者から説明を受け、自分なりに問題点を整理し、質問の順番を考え、答弁者がどれくらいの長さでどのように答弁するかを予想し、その上で20分間に収まるようにしなければなりません。相手が予想以上に長い答弁をする場合は時間が足りませんし、予想以上に短い場合は時間が余るので、その時のための予備の質問を用意しておきます。そして、実際に自分で声を出してみて、自分がどれくらいのスピードで喋るのかを予め知っておく必要があります。
テレビでは質問している時間しか映りませんが、その数倍の時間を準備に費やしているのです。
法廷での尋問に似ているとも言えるでしょう。ただ、法廷での尋問と比べて物足りないのは、質問の2日前までに、どんな質問をするかを省庁に「通告」し、省庁と打合わせを行い(これを「レク」と言います)、答弁者はあらかじめ答弁を準備することです。答弁者によっては、官僚の作ったペーパーを棒読みするだけという人もいます。また、反対尋問のように、答弁を開いたうえでじわじわと攻めて行き、矛盾ある証言を導き出して、最終的にグウの音が出ない程にやっつけるということができないのです。そのあたりが法廷と国会の違うところです。
若干、消化不良の点は否めないものの、質問する側にしても、質問される側にしても、大いなる準備=「裏」があって、初めて質疑=「表」が成り立っているということをご理解いただければありがたいです。是非、そういう眼で、国会中継(NHKだけではなくYouTubeでもやっています。)をご覧になって下さい。
