相続放棄の申述について

先週、夫が肺がんを患って他界したところ、夫には消費者金融からの借金が1000万円ほどありました。夫の相続人は、妻である私と一人息子の二人なのですが、先日、知り合いから、夫の残した借金を相続人である私と息子とで支払っていくことになると言われました。
どうにかして夫の借金を引き継がないで済む方法はないのでしょうか。

(1)被相続人が借金等の債務を残したまま死亡した場合、当該債務は相続の開始と同時に当然に分割される結果、原則、相続人が法定相続分に応じて当該債務を相続することになります。

ご質問ケースでは、妻であるあなたと一人息子さんの法定相続分はそれぞれ2分1ですので、あなたと息子さんは500万円ずつ返済債務を相続することになります。

(2)しかし、突然に多額の返済債務を相続することによって、あなたや息子さんの生活が成り立たなくなることもありえます。

そこで、このような場合に備え、民法は、相続人が被相続人の債務の相続を免れるために、相続放棄(民法915条以下)という制度を設けています。

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所へ相続放棄の申述を行うことによって、当該相続人を相続開始時点に遡って最初から相続人ではなかったものとして扱うという制度です。

すなわち、相続放棄の申述をした相続人は、最初から相続人ではなかったものとされる結果、被相続人の資産を相続することができない反面、被相続人の負債も相続しなくて良くなるのです。

 この相続放棄の申述を行うためには、相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述することが必要です。

もし裁判所へ申述することなく、たとえば消費者金融へ直接に電話して「相続を放棄します。」と伝えたとしても、このような方法では家庭裁判所を通じた相続放棄の申述とはならない結果、負債の相続を免れることはできませんので、ご注意ください。  

(3)あなたの場合にも、ご主人が他界して自らが相続人となったことを知った日(通常は死亡日当日)から3ヵ月以内に、ご主人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続放棄の申述をすることによって、ご主人の残した返済債務の相続を免れることができるでしょう。