石破茂総理は、2度の国政選挙で大敗しました。
1回目は、2024年9月の衆議院議員選挙です。2024年9月に自民党総裁及び内閣総理大臣になった直後の解散でした。結果は、自民党・公明党の与党が過半数割れとなる大敗でした。
2回目は、2025年7月の参議院議員選挙です。自民党は議席を大きく減らし、与党は参議院でも過半数を失いました。ちなみに、この選挙で、大分選挙区の白坂亜紀さんが立憲民主党の吉田忠智さんに敗れました。
2度の大敗の後、石破総理・総裁の責任問題が浮上しました。大半の自民党議員は石破総理・総裁に対し、「責任をとって、潔く辞任すべきである。」と迫りましたが、中には「辞める必要はない。」という擁護派もおり、石破総理自らは「辞める。」ということは決して言いませんでした。あれだけ、ひどく言われていたにも拘わらずです。
「辞めろ!」の多数派、「辞めなくていい!」の少数派が対立する中、自民党国会議員の総意で、後の処理を総裁選挙管理委員会で行うことになったのです。
その直後、どういうわけか、私も10名の選挙管理委員の1人に任命され(任期1期3年)、この騒動を仕切る立場の1人になってしまいました。
さぁ、そこで、この選管委員会にて、この大騒動をどのように処理するかということになりました。日本国の総理大臣に対し、自民党の総裁を任期前に辞めさせるかどうかという大問題です。当然、総裁でなくなれば、総理大臣をも辞することが予想されます。「辞めろ」派・「辞めるな」派のいずれか一方だけに与するわけには行きません。当然のことながら、高度な正当性・公平性が要求されます。
ところで、自民党党則第6条第4項には、「党所属国会議員と都道府県連代表者の過半数が要求したときは、(任期前でも)総裁選挙を行なう。」と規定されています。 今回の騒動を規則に則って適切に処理するには同規則の適用しかないと考え、この手続を行うことにしました。
総理大臣である第一政党(自民党)の総裁選を任期前にも拘わらず実施するということは、任期前に総裁を辞めさせるに等しいものである以上、手続は厳格に行わなければなりません。そこで、選管委員会として、以下の事項を決定しました。①任期前の総裁選挙の実施を希望する者は、自筆で署名した任期前総裁選実施の要望書を東京の自民党本部まで自分で持参すること、②希望者の名前は秘匿しない(即ち、公表する)。①のように決めたのは、本件は「陳情」や「請願」の一種であり、本人の真意にもとづくものであることが求められるので、代理や郵送を否定したのです。②は、それだけの事の重みを考えて、正々堂々と名前を公表すべきとの考えによるものです。
投票日の前日まで石破総裁からは「辞める。」という意思表示はなく、我々としても「総裁選前倒しの要求を実施する手続き」に突入すると思っていました。その結果が過半数に達すれば、総裁選の前倒しが実施される予定でした。
ところが、投票日の前日になり、突如として石破総理・総裁が「自民党総裁を辞める(即、総理を辞める)。」と言い出し、辞任することになったのです。
その後は、皆様ご存知の経過をたどり、高市総理・総裁となったのです。
権力は怖ろしい。権力は魔物です。
権力ほど人を変えるものはありません。そして、権力ほど、人を孤独にするものもありません。
多くの人が最後は権力という魔物に飲み込まれてしまうことを我々は身をもって知っています。もしかすると、石破総理も、その中の1人だったのかも知れません。
ただ、自民党の党則に、総裁の任期途中の交代が定められているのは、すばらしいと思います。他の政党には、20年間も党首が変わらなかったところもありますが、その点、自民党は民主的な組織です。
権力は自分一人で振りかざすものではありません。皆に支えられてこそ存続しうるものなのです。
