退職金は財産分与の対象になるのか?

私は平成6年に夫と結婚し、2人の子供がいます。夫との結婚生活は数年前から既に破綻していて会話もない状況です。夫はA社に勤務(勤続30年、5年後に定年退職の予定)しています。現在、夫婦の財産としては何もありませんが、夫が将来もらえる退職金を財産分与として請求できるのでしょうか。

まず、退職金についてですが、夫が勤続30年ということは、そのうち25年間、夫を支えてきたことになりますね。

退職金が財産分与の対象になるかどうかについてですが、退職金というのは賃金の後払い的な性格が強いものなので、夫婦が協力して形成できた財産ということができます。ですから、離婚をする時点で既に支払われている退職金については、財産分与の対象になります。

では、今回の事例のように、あと5年で定年退職の場合、退職金が財産分与の対象になるのでしょうか。将来受給される予定の退職金を財産分与の対象にできるのかという問題です。

この点については、裁判例も分かれています。

将来支給されうる退職金である以上、現時点では退職金は存在していません。仮に将来もらえるであろう退職金を無制限に財産分与の対象にしてしまうと、5年後、夫の会社がつぶれて退職金を夫が受給できなかった場合、夫にとってはあまりにも不利益な結果となります。

そこで、将来受給予定の退職金を財産分与の対象にできるかについて、裁判例は、将来支給されることがほぼ確実といえるような場合に、財産分与の対象と認めるという傾向が強いです。

将来支給されることがほぼ確実といえるかどうかは、会社の状況、経済状況、退職時期等の事情を総合的に見て判断することになります。

また、その他の裁判例としては、離婚をした時点を基準に、その時点で仮に退職したら支給される退職金を基礎に財産分与を認めるものや、将来退職した時点で支払うように命じた裁判例もあります