財産分与の対象とされる財産とは

この度、私は、20年来連れ添った夫との離婚を決断したため、夫に対して離婚と共に財産分与を請求したいと考えます。どのような財産が財産分与の対象とされるのでしょうか。

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産を離婚時に清算、分配することを指します。財産分与は、離婚慰謝料とは異なり、財産分与の対象となる財産が存在する限り、不貞行為を行うなど離婚原因を作った者からであっても請求することができます。
この点、財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産です。たとえば、正たる財産としては、不動産、金融機関に保有する預貯金、生命保険や学資保険の解約返戻金、自動車、株式などがあり、負たる財産としては、住宅ローン、教育ローン、生活費の不足分を補うための借金などがあります。
他方、婚姻前から有していた財産、婚姻中に両親から受けた贈与金や相続によって承継した財産、ギャンブルや遊興費のために作った借金などは、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産とは言えませんので、財産分与の対象たる財産に含みません。
財産分与の対象となるか否かで争いになりやすいのは、①子供名義の預貯金、②一方配偶者が代表取締役に就任する会社名義の財産、③退職金などです。
①子供名義の預貯金については、その原資が子供自身によるアルバイト代やお年玉の積立てによる場合には、子供自身の財産とされます。他方、夫婦が子供の将来の教育資金等のためにその原資を支出していた場合には、実質的には夫婦の財産ですので、財産分与の対象財産とされます。
②会社名義の財産については、そもそも当該財産の帰属主体は会社である以上、原則、財産分与の対象財産とはなりません。但し、婚姻期間中に個人事業主として営んでいた事業を法人化したような場合には、通常、代表取締役たる一方配偶者はその会社の株式を保有しているはずですので、当該株式が財産分与の対象財産とされます。
③退職金については、すでに退職によって退職金が支払われている場合には、当然に財産分与の対象とされます。しかし、いまだ退職していない場合には、勤務先会社に退職金支給規定があることを前提として、勤務先会社の経営状況の優良性、勤務する一方配偶者の就労状況の安定性、退職金が支給日までの長さ等の事情をもとに、個別具体的に退職金が財産分与の対象財産とされるか否かを判断していくことになります。