第43回  定年

第43回  定年
                                                         - 2012年2月3日

定年
 サラリーマンに必ずやってくるもの。それは定年。私と同級生は今年55歳になります。銀行に勤務している友人などは今年定年を迎えます。役員になったり、天下り先が確保されている人間はいいですが、それ以外の者は定年を迎え退職しなければなりません。年金を受給できるまであと10年もあるのに、55歳で定年退職を迎えるのはいささか早すぎる感はいたしますが、会社の規則でそのように定められていればやむを得ないところでしょう。退職後の人生をどのように過ごすか今悩んでいるようです。

 さて、我々弁護士のように自営業者には定年というものがありません。したがって、命の続く限り弁護士をやり続けようと思えば、できないこともありません。しかし、体力とともに判断力は衰えてきます。老害にこそなれ、世のため人のためにはならないでしょう。

 引き際が難しいのは世の習い。これまで数多くの先輩弁護士に、「先生、何歳になったら弁護士を辞めますか?」と言う質問をしてきました。大概が、「60歳から65歳」という返事でした。しかし、少なくとも大分県弁護士会の弁護士で、病気以外の理由がないのに65歳よりも前に引退した人を1人として見たことはありません。皆さん老体に鞭打ちながら弁護士業を続けているというのが現実です。
このように、引き際の潔さは、言うは易く行うは難し。某新聞社や某プロ野球の球団を支配する「ドン」はあまりにも有名ですが、身近な会社経営者でも、80歳を過ぎてもまだ後進に道を譲ろうとしない方がいます。こういう方は、いつまでも、「自分でなければ駄目だ。」と思っているのでしょう。その自負心には頭が下がりますが、自分に代わる後進を育ててこなかった点については如何にお考えなのでしょうか。

 かく言う私も、何歳になったら弁護士稼業から足を洗うのか悩んでいるところです。誰も必要としていないのに必要とされていると思うのは意外と自分1人だったりして・・・。正にこれは老害の始まりなのかもしれません。自分のことが客観的に見られなくなった時点が引退すべき時期だと思います。孔子は、「40にして惑わず、50にして天命を知る。」と言いましたが、とんでもない。50半ばにして、まだ迷いに迷い続けている状況です。
いつ辞めるか、自分で判断がつきかねている時、強制的に辞めさせる定年制は、意外といい制度なのかも知れません。私が以前所属していた団体に、青年会議所というのがあります。青年会議所は40歳になると卒業させられます。定年制があるのと同じです。それ以外の経済団体で卒業(定年)制度が採用されているのは、あまりないのではないでしょうか。定年が決められているからこそ、それまでの限られた期間を有意義に過ごそうとするのでしょう。他の経済団体でも、定年制を導入したらいかがでしょうか。