第171回  依頼者とともに泣く!

新年あけましておめでとうございます。

弁護士の本懐。それは、「依頼者とともに泣く」ことです。

依頼者には、さまざまな人がいます。

・「交通事故で右足を失った。相手(保険会社)に対して損害賠償請求して欲しい。」という人

・「女房と離婚したいが、子どもの親権は取りたい。」という人

・「覚せい剤取締法違反で逮捕された。今回が3度目である。刑罰が軽くなるようにして欲しい。」という人

・「殺人罪で逮捕された。しかし、自分はやっていない。なんとかして欲しい。」という人

・「これ以上、会社継続がむずかしい。会社を倒産させたい。」という人

・「父が駅から落ちて、列車にはねられて死んだ。誰に責任があるのか。」という人

などなど。挙げればキリがありません。

このような相談が来たとき、我々弁護士は次のようなことを考えます。

1 事実はどうなのか。
相談者の中には、「事実」と「推測・意見」を混ぜて喋る方がいます。しかし、我々が求めるのは、あくまでも「事実」です。「推測・意見」は、最後に求めることはありますが、事実と混同されると判断が狂います。

国会議員の質問の中には自分の意見を入れることが可能ですが、弁護士が求めるのは事実のみです。

2 事実を根拠づける証拠はあるのか。
証拠にも、その事実を直接に裏付ける「直接証拠」と間接的にしか裏付けない「間接証拠」があります。例えば、「100万円貸したけど返してくれないので、取り戻して欲しい。」という相談の場合、「100万円の借用証書」があれば直接証拠になります。これがない場合、「自分の預金通帳から100万円引き出した取引履歴」が間接証拠になります。直接証拠の方が証拠としての「価値」は数段高いです。

3 相談者に「正当な利益」をもたらすかどうか。
受任して法的手続をとったとして、相談者にどんな利益があるのか。それが「正当な」利益なのか、ということです。

まともな弁護士なら「不当訴訟」を受けることはありません。

4 経済的効果の有無
10万円を求めて30万円を支出する人はそれほどいないでしょう。経済的効果がない場合、そのことを教示して取り止めてもらいます。

勿論、刑事事件などは経済的効果の問題とは異なりますが・・・。

5 依頼者とともに泣けるか!
最後に、「この相談者(依頼者)とともに泣けるか!」ということです。

勝とうが負けようが、「この人と一緒に泣けるか。」によって、受任するかどうかを決めるのです。勝ったときは喜びの涙を、負けたときは悲しみの涙を一緒に流せる人かどうかを考えます。その上で、その人に代わって理を唱える「代理人」となるのです。

この人を自分の依頼者と決め、代理人としてその人の為に長期間に亘って共に戦う以上、ある意味「戦友」です。示談交渉・裁判手続という「戦場」で共に戦うのです。人間としての信頼関係がなければ、共に戦えません。単に機械的に法的サービスを提供するのとは違うのです。

1月23日から通常国会が始まっています。

「依頼者(国民・県民)とともに泣く議員」を目指してやりますので、どうか本年もよろしくお願いいたします。