第159回  司法の限界

1月22日午前1時頃、日向灘を震源とする大きな地震がありました。大分市、佐伯市、竹田市などで震度5強を観測したとのことです。大分市のマリーンパレス「うみたまご」や竹田の「岡城」で大きな被害が出た旨、報道されていました。

私の場合、西大分の自宅ではかなり揺れましたが食器棚が倒れるなどの被害は発生しておらず、ヤレヤレと思っていました。ところが、です。事務所に行ってみると、5階の事務室は裁判記録や棚の書籍が落ち、「ありゃー」と思ったのも束の間、6階の私の部屋に入るとテレビが棚から落ち、画面にひび割れが入っており、もう観れないとのこと。あーあ。自宅と事務所との間は4㎞ぐらいしかないのにそんなに揺れが違ったのでしょうか。

津波が来なかったのが不幸中の幸いです。

これがもっと大きな地震であればどうなっていたでしょうか。わが家では、2階で私と妻が寝ており、1階では娘と2歳の孫、生後1か月の孫が寝ています。家が倒壊した場合のことを想像するだけでぞっとします。

このような自然災害が発生した場合つくづく感じるのは、我々弁護士は極めて無力であるということです。弁護士が誰かの代理人として請求できるのは、①請求したいと考えている誰か(仮に、「Aさん」とします)がいること、②Aさんかから依頼があること、③そのAさんに何らかの損害があること、④その損害の発生に対し、相手方(仮に、「Bさん」とします)に責任(故意、過失)があること、⑤Bさんが弁護士に対する費用を支払ってくれること、などが必要です。

今回の大きな地震の場合、まだ全容は解明されていませんが、これから色々と判明して行き、場合によっては訴訟になる事案も出てくるかも知れません。仮にそうなったとき、その事案が解決した時はかなり時間が経過しており、ほとんどの人が今回の地震のことを忘れているのではないでしょうか。このように、司法による解決には、「手間」「暇」「金」がかかるのです。

これが司法ではなく行政であれば、早め早めの判断で的確な対策をとることが可能です。今回、災害が発生した地域の行政の方々は大変ご苦労とは思いますが、もし改善の必要性があるのであれば適切な改善策をとって欲しいところです。そして、最終責任者にして最高権力者である国においては、責任(故意・過失)があるかどうかは後回しにしてでも、「守るべきものがあれば、守る!」という積極的な施策を実施してもらいたいものです。司法の力では到底もたらすことが困難な分野に国の力で光を与えてもらいたいのです。

地震の余韻も残る中、コロナ感染者の増加を受けて大分県も「まん延防止等重点措置」の適用に踏み切りました。已むを得ないとは思いますが、飲食店の方々をはじめとして大変な状況となっています。

このような場合も、やはり司法的な救済には限界があります。重ねて、国の力で光を与えていただきたいものです。

年が明けても仲々明るい状況は見えてきませんが、今年も何とぞ宜しくお願いいたします。