第149回  う そ

「うそ」と聞いて思い浮かべるのは何でしょうか。我々世代にとっては何と言っても中条きよしの「うそ」(作詞 山口洋子、作曲 平尾昌晃)です。「折れたタバコの吸い殻で あなたのうそが分かるのよ・・・」で始まる、あの唄です。しかし、これは置いといて・・・。

この頃、世間を騒がせた大きな「うそ」が2つありました。

1つ目は、うちの事務所もかかわっている「うそ」です。Aという女性の預金通帳が差押さえられ、預金がなくなっていました。調べたところ、知らない間にBからAに対して「金を払え。」という裁判が起こされ、裁判所からBの訴えを認める判決が出され、その判決によってAの預金が差押さえられていたのです。ここまでなら良くある話ですが、驚くのはAが実際には住んでいない「うそ」の住所に対して裁判が起こされ、裁判所もその「うそ」の住所が真実の住所であると信じてそこに呼び出しをかけ、Aが不出頭であったため、「金を払え。」という欠席判決を出していたのです。当然、Aは自分に裁判が起こされていることや、自分に対して判決が出されていることなど知りませんでした。更に、Bはその判決にもとづいて、判決に書かれた「うそ」の住所とはまた別のAの「うそ」の住所に対して差押さえの申立てをし、裁判所から差押さえ決定をもらってAの預金を差押さえてしまったのです。

弁護士業を30年以上やっていますが、こんな「うそ」の住所を前提にして裁判や差押さえがなされ、それが通っていくなどということは初めての経験です。現在、Aの代理人としてBに対して法的手続をとっている最中です。知らない間に自分の預金がなくなっているなど、怖ろしい限りです。今、この文書を読んでいる皆さんも、もう一度、ご自分の預金通帳を良く確認された方がいいかも・・・ あとは優秀な大分県警に徹底的な捜査、解明をお願いしたいところです。

もう1つは、悲惨で痛ましい事件です。福岡で若い母親が5歳の男の子にちゃんとした食事を与えず、その子を餓死させたとして保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件です。この飽食の時代に「餓死」などがあることに驚いたのは私だけではないと思います。報道によると、この母親の友人の女性が「(自分の)夫の浮気」「(自分の)親族の裏切り」「暴力団のボスの存在」などの情報をさかんに母親に吹き込んで世間から孤立させ、2年以上に亘ってマインドコントロール(洗脳)したうえで母親の生活費を管理するようになり、母親にお金を渡さず、ついにはその母親をして5歳の子どもを餓死させた、とのこと。そして、なんと母親に吹き込んでいた前述の情報がすべて「うそ」だったとのことです。現在、警察はこの女性を母親の共犯(共謀共同正犯)(※)として逮捕して捜査しているとのことです。当然のことながら、その女性は否認しているとのことですし、これを立証して行くことは大変むずかしいところです。弁護人の立場からすると、突っ込みどころ満載です。担当の検事が果たして起訴するかどうか不明です。

「うそ」はいろいろな場面で登場します。特に、男女間の場面で登場することが多いようですが、それがバレた時が大変なので、(いや、)つかないようにしましょう。

※共謀共同正犯・・・2人以上が共同して犯罪を実行した場合、共同正犯と言います。共同正犯の中で、共同実行の意思の形成過程にのみ参加し、犯罪の実行には参加しなかった場合のこと。この場合も共犯としての責任を問われます。