第137回  死刑制度

死刑制度 
死刑制度には賛成ですか?反対ですか?
先日、2016年7月、神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を刃物で刺し、そのうち19人を死亡させた同園元職員植松聖に対し、横浜地裁が死刑判決を下しました。また、麻原彰晃をはじめとするオウム真理教の幹部ら13人に死刑執行がされたことも記憶に新しいところです。
このように、日本には死刑制度があり、年間、何人かの被告人に対し死刑判決が下されています。私がこれまで弁護した中に何件かの殺人事件はありますが、幸か不幸か、死刑判決をもらったことはありません。
死刑判決が出されても、現実に死刑を執行するためには法務大臣の命令が必要ですが、「自分は死刑反対である。」とか「任期がすぐ終わるので、終わるまでやり過ごす。」などの理由で、死刑執行命令を回避してきた法務大臣がいたことも事実です(例えば、民主党時代の江田五月法務大臣など)。「だったら、そもそも法務大臣など、なるな!」と言いたい。(ちなみに、刑事訴訟法第475条1項は「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」、2項本文は「前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。」と規定しています。)
ただ、制度として死刑制度を存置するか、廃止するかは別の議論が必要です。国別で見れば、存置国よりも廃止国の方が圧倒的に多いようです(死刑停止国を加えると、廃止国はもっと増えます)。死刑存置論、死刑廃止論のいずれも根拠があり、ここでその一々を述べることはしませんが、わが国の国民の間では死刑存置論の方が多数派だと思います。私も死刑存置論者です。自分の大切な人が残虐な殺され方をした場合にも「(その殺人者を)死刑にしなくていいよ。」と言う自信はありません。
これに対し、何でも反対の日弁連は2016年10月7日の第59回人権擁護大会で「死刑制度の廃止・・・を求める宣言」を採択しました。しかし、日弁連の会員は全員で3万7680名(2016年当時)なのに、この時の出席者は786名で、賛成者は546名だけでした。これ以来、日弁連としては「死刑制度を廃止すべきである」として、「各地方の弁護士会でも『死刑廃止』の意見表明をしろ!」と各地の弁護士会に迫ってきていたのです。
しかし、この「死刑廃止」は日本国民の多数意見とは違っていると考え、大分県弁護士会はこれまで「死刑反対」の意見表明はしていませんでした。
ところが、です。先日、大分県弁護士会にて死刑廃止についてのアンケートを行ったところ、回答者80名(全会員は159名(2020年3月11日時点))中、死刑廃止賛成派が50名、死刑存置派が24名でした。大分県弁護士会でも死刑廃止派の方が圧倒的に多かったのです。当然、存置派の私は少数派でした。私の感覚が弁護士としてズレているのか、弁護士の感覚が一般世論とズレているのか、はたまた、一般世論も既に死刑廃止論が多数なのか、良く分かりません。
しかし、いずれにせよ、そのうちに死刑を廃止すべきか存続すべきかという問題に正面から取り組まなければならない時が来ることは確かです。場合によれば、選挙で死刑存廃が争点になるかも知れません。いずれの立場に立つにせよ、今から自分なりにその答えを出しておく必要がありそうです。
もう一度、問わせてもらいます。
死刑制度に賛成ですか?反対ですか?