盗まれた車が事故を起こした場合の責任について

昨日,私は,エンジンをかけたままドラッグストアの駐車場に自家用車を駐車したのですが,1時間後に買い物を終えて戻ってくると車が盗まれていました。もし犯人が私の車で交通事故を起こした場合,私に何か責任はあるのでしょうか。

自動車損害賠償責任法第3条は,車の運行を支配したり,車の運行によって利益を受けていた人(このような人を「運行供用者」といいます。)は,その車によって交通事故が発生した場合,当該交通事故によって受傷した被害者が被った人的損害を賠償しなければならない旨定めます。

そのため,本件では,もしあなたの車を盗んだ犯人が交通事故を起こした場合,実際にあなたが運転していなかったとしても,あなたが「運行供用者」に該当するとして損害賠償義務を負うのかが問題となります。

この問題に関し,裁判所は,本件のように泥棒運転によって発生した交通事故の場合,車の保管状況について過失が認められるケースでは,車を盗まれた者は運行供用者にあたるとして,その責任を認める傾向にあります。

たとえば,周囲を囲むフェンス等がなく,自由に出入り可能な国道沿いの民宿の駐車場に,夜間数時間以上,鍵をつけたまま,ドアをロックすることなく駐車していたところ,その間に車を盗んだ人物が,盗んでから約2時間半後に交通事故を起こしたという事案につき,裁判所は,車を盗まれた者には管理を怠った過失があると認定した上,当該交通事故は盗まれてから近接した時間・場所で発生している以上,車を盗まれた者は運行供用者に該当するとして損害賠償責任を負うと判断しています。

あなたの場合にも,この判例に照らした場合,車の管理状況に落ち度が認められます。そのため,もし犯人が盗んで間もない時期に犯行現場からそう遠くない場所で交通事故を起こした場合には,あなたは運行供用者として被害者に生じた人的損害を賠償すべき義務を負う可能性があると考えます。