婚約の解消について

半年前,私は,お見合いした男性と婚約し,結納を済ませました。挙式は1ヵ月後なのですが,最近,その男性と何となく性格が合わないと感じるようになりました。また,確証はないのですが,その男性は私以外にも交際する女性がいるようです。 この場合,どのようにすれば婚約を解消できますか。また,婚約の解消に伴う清算としてどのようなことが問題となりますか。

1 婚約解消の可否及び方法について
結婚生活は,お互いの自由意思に基づく信頼関係を基礎とした継続的関係ですので,裁判などによって強制的に結婚を成立させることはできません。その結果,婚約したもののやはり結婚できないとして婚約を解消することは,一方当事者の意思のみで行えます。
婚約解消の方法ですが,そもそも婚約の成立について特別な方式は不要とされるため,婚約を解消する際にも特別な方式は不要です。それ故,婚約を解消したいとのあなたの意思が明確に相手に伝わりさえすれば良いのです。
2 婚約解消の正当性について
あなたが婚約を解消した際,相手から挙式の準備のために支出した費用相当額の損害賠償請求や結納の返還を求められる可能性があります。
この場合,あなたが婚約を解消した理由に「正当性」が認められるか否かで,その結論が決まってきます。
一般に,婚約を解消する際の「正当性」とは,円満かつ正常な結婚生活を将来営めない原因となり得る客観的かつ具体的な事情が存在することをいいます。
相手に他の異性関係があること,相手から虐待・侮辱されたことなどがその典型例ですが,その他に,挙式を合理的理由なく一方的に延期すること,相手方が態度を豹変させて極めて冷酷な態度をとるようになったことなども「正当性」を満たす事情とされます。
これに対し,単に性格が合わない,相手の資産が思ったより少ない,家風が合わない,親が反対している,婚約後に他に好意をもつ異性ができたなどは,「正当性」を満たす事情となりません。
あなたの場合,婚約の解消の理由が何となく性格が合わないというだけであれば正当性を満たしませんが,本当に相手の男性があなた以外の女性と交際していたのであれば正当性を満たす余地が相応にあります。
但し,仮に裁判となった場合,相手があなた以外の女性と交際していたとの事実は,あなたが立証しなければいけません。そのため,揉めそうだなと思う場合には,婚約を解消する前にその証拠を収集しておくなど事前の防衛策をとっておく方が無難です。