不倫をした配偶者や相手方に対する慰謝料請求について

私は、夫と結婚して15年目になりますが、最近、夫が勤務先の女性社員と不倫関係にあることが分かりました。そこで、私は、慰謝料を請求したいのですが、夫と相手方女性のどちらへ請求することができるのでしょうか。また、慰謝料の金額につき相場などはあるのでしょうか。
婚姻関係にある夫婦は互いに他方配偶者に対して貞操義務をはじめとする夫婦関係を円満に継続するための各種義務を負っていますので、ご質問のケースのように夫が不倫に及んだ場合には、妻はこれによって精神的苦痛を被ったとして不法行為に基づく慰謝料の支払いを請求することができます。 では、妻は、夫と相手方女性のどちらに対して慰謝料を請求できるのでしょうか。 これについては、妻は、夫または相手方女性のどちらか一方にだけ慰謝料を請求することもできますし、両者に対して慰謝料を請求することもできます。すなわち、請求の相手方を誰とするかは妻の自由です。 しかし、仮に妻が夫と相手方女性の両者に対して請求した場合であっても、妻は、夫と相手方女性のそれぞれから慰謝料を二重取りできるわけではありません。 たとえば、もし妻が被った精神的損害に対する慰謝料の総額が200万円と評価される場合、妻は、夫と相手方女性から合計して200万円を受け取ればよいということになります。具体的に言うと、もし妻が夫からすでに200万円を受け取っている場合には、相手方女性からは一円も受け取ることができず、また、もし妻が夫からすでに100万円を受け取っている場合には、妻は、残りの100万円を相手方女性から受け取るか、更に追加で夫から100万円を受け取ることになります。 つぎに、慰謝料の具体的な金額については、婚姻期間の長短、不倫関係後の離婚の有無、有責配偶者の帰責性の程度、支払義務者の資力など、様々な事情を考慮して個々の事案ごとに決定されるため、一律にいくらと断定することはできません。 ただし、一般的には、裁判によって認められた慰謝料の金額は50万円から400万円の間が比較的多く、その中でも200万円前後が多いと言われています。 最後に、夫が不倫関係に及んだ場合であっても、妻が慰謝料請求できないケースをお伝えします。 まず、夫が不倫関係に及ぶ以前から、すでに夫婦関係が実質的に破綻しており、妻と夫は単に戸籍上だけの関係にすぎなかった場合には、妻は夫の不倫によって精神的苦痛を被ったとは評価できないことから慰謝料の請求は認められません。 また、夫が結婚の事実を隠して相手方女性と関係を持ち、かつ、相手方女性が婚姻の事実を過失なく知らなかったような場合、相手方女性に落ち度はないことから、慰謝料を請求することはできません。