母が先日亡くなったのですが、兄姉の中で私だけが生前に母から不動産を贈与されていたこともあり,兄姉の間で遺産分割を巡ってもめています。私以外の兄姉は,「お前は生前に家をもらっているのだから,相続の権利がないはずだ。」と言ってきています。私は、8年前に実家に帰省し母と同居してずっと面倒を看てきました。他方、兄姉たちは県外で生活していて最近は年に1度くらいしか帰ってきていなかったのですから、納得がいきません。生前に不動産の贈与を受けた場合や母と同居して面倒を看てきた場合、遺産分割はどのようにすればよいのでしょうか?
相続人の中に,被相続人の生前に特別な贈与を受けた者がいるような場合,その生前に受けた贈与は、「特別受益」にあたる可能性があります。「特別受益」にあたる例としては、結婚資金や学資を援助してもらったり,借金の肩代わりをしてもらった場合などが考えられます。
そして、「特別受益」が認められた場合、相続人間の公平をはかるため、特別受益と相続開始時の相続財産を合計したもの(「みなし相続財産」といいます。)を遺産分割の対象となる相続財産として遺産分割をすることになります(民法903条1項参照)。
ですから、特別受益が認められた場合、つまり、相談者の方が本来の相続分を超える財産を既に贈与されていたような場合には、遺産分割により相続すべき財産が減少する、もしくは、なくなる可能性もあり得えます。
他方、相談者の方が、被相続人の面倒を看ていたことは何も考慮されないのでしょうか。相談者の方に寄与分が認められれば、相続開始時の相続財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして遺産分割の計算をすることができるため、相続分が増額する可能性があります。寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がある場合に、他の相続人との間の実質的な公平を図るため、その寄与相続人に対して相続分以上の財産を取得させる制度(民法第904条の2)です。ただし、寄与分が認められるためには、「特別」な寄与行為でなければなりません。「特別」とは、身分関係に基づく通常期待されるような程度を越え、遺産の維持、増加に貢献することを意味します。ですから単に子供が親と同居して面倒を看ていた程度では寄与分が認められない場合が多いです。
実際に特別受益にあたるのか、寄与分にあたるのかは個別具体的な事情によって判断が異なる可能性があります。