第134回  8050問題

8050問題

今年もいよいよおしまいとなりました。今年1年いかがでしたでしょうか。来年もよろしくお願いします。
さて、去る12月16日、東京地裁は元農林水産次官熊沢英昭被告に対し、懲役6年の実刑判決を言い渡しました。今年の6月1日午後3時15分頃、東京都練馬区の自宅で、自宅に引きこもっていた無職の長男(44歳)の首などを包丁で何度も刺して殺したという殺人罪です。
この事件を機に、「8050問題」が大きく報道されています。「8050問題」とは、80歳代の親と「引きこもり」の50歳代の子どもが地域や社会から孤立化していくことを指しています。家計を支えてきた親が病気や要介護になると、無職のまま中高年になった子どもとその親が共に生活苦に陥る恐れがあると言われています。確かに良く注意して見ると、私たちの近くにも、このような親子の姿がたまにあります。
この問題は決して他人事ではありません。子どもを持っている親の立場に立てば「明日は我が身」となる可能性が十分にあるのです。「むずかしい試験など通らなくていい、東大など行かなくていい。大金持ちにならなくていい。ただ、きちんと仕事に就いて、人様に迷惑を掛けないように、自分の力で生きて行ってくれれば、それでいい。」と、ある方がおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。しかし、人間に欲望があることも、これまた否定できない事実。「むずかしい試験に合格してほしい。東大に行ってほしい。大金持ちになってほしい。偉い人になってほしい。親を楽にさせてほしい。」と考える人も多いでしょう。子どもに過大な期待をすることもあります。その期待と現実とのギャップから、子どもがドロップアウトすることもあるようです。このあたりから「引きこもり」になり、それが「8050問題」につながって行くのです。
以前のことですが、うちの事務所に相談に来た健康そうな男性、どう見ても40歳代。相談カードの職業欄に「無職」と書いているので、「仕事はしていないの?」と聞くと、「現在、生活保護(注1)をもらっています。仕事を持つと生活保護が打ち切られるので就職しません。」とのお言葉。「アレレ、何かおかしいなぁ。」と感じたものでした。このような生活保護受給者を多く抱えるとその地方公共団体の財政を圧迫する原因となります。健康で働ける人にはバリバリ働いてもらって、どんどん住民税を支払ってもらって故郷に貢献してもらいたいものです。これからますます高齢化が進んでいきますので、「引きこもり」の人も増えることが予想されます。この「引きこもり」の人を社会全体で支えるのは何となく釈然としません。
このように考えると、「8050問題」は単にその親子だけの問題ではなく、市町村や国自身が真剣に取り組まなければならない重大かつ喫緊の課題です。首長さんや議員の方々には、是非、頑張ってもらいたいものです。
それでは皆様、どうか良いお年をお迎え下さい。

(注1)生活保護・・・・・資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する人に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度。