専業主婦の休業損害について

私は,赤信号待ちで停車中,後続の自動車から追突され,半年間の通院加療を余儀なくされました。事故当時,私は,専業主婦として夫と二人で暮らしていましたが,事故直後から首付近に痺れが生じたため,痺れが落ち着くまでの間,家事ができませんでした。専業主婦の私にも,家事ができなかったことについて休業損害は発生するのでしょうか。

家事労働は,会社勤めの人が得る給料のように明確な対価があるわけではありませんが,家族が日常生活を円滑に営むうえで必要不可欠な労働である以上,法的保護に値します。

そのため,損害賠償実務では,専業主婦が交通事故によって家事労働できなくなった場合にも休業損害が発生したと考えますので,あなたは,加害者に対し休業損害の支払いを求めることが可能です。

一般的に,専業主婦の休業損害の金額は,「1日あたりの専業主婦の基礎収入日額×休業日数×労働能力制限割合」の算出式によって求められます。

しかし,「1日あたりの専業主婦の基礎収入日額」を具体的にいくらとみるかについては3つの基準が存在するため,どの基準を用いるかによって休業損害の金額が大きく変わってきます。

ここで言う3つの基準とは,自賠責保険基準,任意保険会社基準,弁護士基準の3つになります。自賠責保険基準では日額5700円,弁護士基準では日額9500円程度,任意保険会社基準では各社によってバラツキはあるものの弁護士基準を下回ることが大半です。

そして,任意保険の加入率は7割程度ですので,被害者の多くは,任意保険会社から任意保険会社基準にて算出された金額の休業損害を示談交渉の際に提示されます。

しかし,前述のとおり,「1日あたりの専業主婦の基礎収入日額」を決めるにあたり,3つの基準のうちどれを用いるかによって受け取るべき休業損害の金額に大きな差が生じます。

そのため,示談提示を受けた場合には,一度弁護士にその内容を確認してもらった方が良いでしょう。