休車損害

先日、私は、運転中に、前で信号待ちをしていた運送会社所有の貨物自動車に追突するとの交通事故を起こしてしまいました。そして、現在、その運送会社から、修理期間中に貨物自動車が使用できなかったことに基づく営業損害を支払って欲しいと求められています。私は、この支払いに応じなければいけないのでしょうか。

一般に、運送会社の貨物自動車やタクシーなどいわゆる営業車両が交通事故によって修理を要する状態となった場合、当該営業車両を所有する会社は、加害者に対して、本来、修理期間中に当該営業車両が稼働していれば得られたであろう利益につき、これを休車損害として請求することが可能です。

この休車損害は、当該営業車両によって1日あたりに得られる利益額(当該営業車両の1日あたりの売上高から1日あたりの未稼働によって支出を免れた燃料費などの変動経費を差し引いた金額)に相当な修理期間(全損の場合には買替期間)を乗じることで、算出されます。

ただし、当該営業車両を所有する会社が他にも遊休の営業車両を有していたような場合には、当該会社は他の遊休車両を修理期間中に使用することで損害の発生を回避できることから、現実に休車損害が発生したとは評価できず、休車損害を請求することはできません。裁判では、この遊休車両の存在が度々争いになります。

なお、遊休車両の存在については、立証するための資料が加害者の手元にないことから、裁判例によっては、当該営業車両の所有会社が遊休車両の不存在について立証責任を負担するとの判断がなされています。

以上のことから、あなたのご質問に対しては、たしかにあなたが修理期間中の休車損害を支払わなければならない可能性はあるものの、実際に支払う場合には、遊休車両が存在しなかったのかを確認してからにした方が良いでしょうとの回答となります。