第203回  「1票の価値」

参議院に限定して議論します。

東京都の有権者数は約1165万人です。東京都選挙区の参議院議員数は12名です。したがって、単純に計算すると、1名の参議院議員を誕生させるには約97万人の有権者の票が必要です(11,650,000÷12≒970,000)。

これに対して、鳥取県の有権者数は約44万6500人です。2名の参議院議員を誕生させるには議員1名につき22万3250人の有権者で足ります(446,500÷2=223,250)。即ち、東京都で1名の参議院議員を誕生させるために投じた1票は97万分の1に過ぎないのに、鳥取県で1名の参議院議員を誕生させるために投じた1票は22万3250分の1です。従って、東京都の1票は鳥取県の1票の約4.35分の1(970,000÷223,250≒4.35)の価値しかないのです。

また、同じように、島根県から参議院議員2名を出そうとすると、島根県の有権者数は54万人のため、1名の議員を誕生させるには27万人が必要です(540,000÷2=270,000)。したがって、東京都の1票の価値は島根県の1票の価値の約3.6分の1(970,000÷270,000≒3.6)となります。

そこで、この1票の格差を解消する方策として考え出されたのが「合区」という制度です。2つの県から2人の参議院議員を認めるというものです。「鳥取県・島根県」と「徳島県・高知県」が現在、「合区」の対象とされています。「鳥取県・島根県」の例であれば、合計98万6500人(446,500+540,000=986,500)から2名を出すことになるので、東京の1票の価値が鳥取県・島根県の1票の価値の約1.97分の1にとどまるのです(97,000÷493,250≒1.97)。

しかし、これは所詮、弥縫策にしか過ぎません。地方から人が減り、東京への一極集中が進めば、どんどん「合区」を増やさなければならなくなります。場合によったら、「大分県・佐賀県」が合区になり、2つの県から2名の参議院議員しか出せなくなる事態も考えられます。ちなみに、2名選出の大分県の有権者数は現在約95万人ですので1名選出するのに47.5万人が必要です。東京都との1票の格差は東京1・大分2.04です。佐賀県の有権者数は約65万人ですので、1名選出するのに32.5万人が必要です。東京都との1票の格差は東京1・佐賀2.98です。

「このように、東京都の1票の価値が、人口の少ない県のそれに比べてはるかに小さいのは憲法14条の定める『法の下の平等』や憲法44条の定める『選挙における差別の禁止』に反するので、憲法違反である。」として、1票の格差の是正を求める弁護士集団が各地の裁判所に参議院議員選挙の「違憲・無効」を求める訴訟を起こし続けています。

これに対して最高裁や高裁は、「無効」とは言わないものの、「違憲状態」であるとして、お茶を濁しています。「早く国会で何とかしろ。でないと、『違憲』判決を書くぞ。」と国会にプレッシャーをかけて来ているのです。

しかし、のんびりした国会に、憲法を「各県に必ず2名の参議院議員を認める。」という内容に改正する姿勢は認められません。「まだ、違憲判決は出ていないから大丈夫。」ぐらいの悠長な考えなのでしょう。

「合区」が増え、地方選出の参議院議員が減り、東京の議員ばかりが増えてくると、益々、地方の声が国に届きません。地方の現実を知らない都会人の感覚で法律や政策が作り上げられて行くようになるのです。何としても、これだけは阻止しなければなりません。ますます地方が切り捨てられて行ってしまいます。

しかし、時間はありません。「違憲判決」が出されたときの影響は甚大なのです。私は当初から早期の憲法改正(各県から2名の参議院議員は必ず保障する、という内容にすること)を主張していますが、憲法を1字たりとも変更させたがらない政党との溝は深いようです。国会議員の3分の2以上の賛成意見を取り付けることができるのはいつになるのでしょうか。