第199回  「新聞の劣化」

オールドメディアの代表・新聞の劣化が目立ちます。特に、近時、大きな誤報を立て続けに出したのが読売新聞です。

最初の大誤報は、7月20日の参議院選挙の後7月23日の夕刊1面と24日朝刊1面、「石破首相退陣へ」と大々的に報じたにも拘わらず、石破首相が退陣しなかったことです。

その後、9月3日に検証記事を載せて、「首相退陣」と判断したことについてのいくつかの間接証拠を提示しています。しかし、その論調は、「石破首相が退陣すると判断したことにはそれなりの合理性はあるが、石破首相が前言を翻す人物であるということを過小評価していたため間違ったのである。」との内容です。確かに、石破首相にその傾向はあるものの、あまりにも自己保身的な論調で潔さがない。

これを見て、袴田再審無罪判決後に上告を断念したときの検事総長談話に似ていると感じたのは私一人ではないでしょう。要するに、「検察官は悪くない、袴田さんは犯人と思われ、その証拠もある、しかし、袴田さんも長いこと不安定な状態に置かれており、大変なので、このあたりで止めてやる。」という内容です。

この読売新聞と検察庁の態度から言えることは、いずれも「潔さがない。」「負け惜しみが過ぎる!」ということです。是非、「間違ったら謝る。謝るときは弁解しない。」という武士道の精神を養ってもらいたい。権力を持つ者ほど殺身成仁でありたいものです。

更に、その後も読売新聞、大誤報をやらかしました。

「秘書給与詐取事件」で、日本維新の会のA議員が捜査機関によって強制捜査を受ける可能性が高まった段階で、同じく日本維新の会のB議員が捜査対象になっているとして、8月27日朝刊1面トップでB議員の顔写真付きで大きく報道したのです。

確かに、この段階ではB議員も任意捜査の対象にはなっていたと思われます。しかし、記事を読むと、B議員については秘書が実際に稼働していた実体があり、強制捜査の対象にはなっていなかったはずです。それを、顔写真付きでデカデカと一面トップで報道されたのですから、B議員からしてみればたまったものではありません。

ところで、犯罪に関する新聞記事を読むと、「関係者によれば」というのが良く出て来ます。ここで「関係者」とは検察官です。検察官は「国家公務員法第100条第1項(秘密を守る義務)違反」という犯罪行為を犯してまで捜査情報をマスコミに漏泄して記事を書かせているのです。新聞に載せられた時点で、それを読んだ読者はB議員が犯人であると信じ込んでしまいます。翌28日、訂正記事が出ましたが、そんなもの何の役にも立ちません。記事にされた時点で有罪判決が言い渡されたのと同じです。まさに、現代の「人民裁判」です。(B議員、是非、読売新聞を相手に損害賠償を求める訴訟を提起してもらいたい。どのような結論になるか、弁護士として非常に興味があります。)

読売新聞は、「関係者」からA議員とB議員の情報を仕入れていたものの、記事にする段階でA議員とB議員を取り間違えたというのですから、何をか言わんや・・・です。初歩中の初歩の誤りです。開いた口が塞がらないとはこのことです。

このように、読売新聞は大きな誤報を2度も続けて行いました。基本的な確認を怠って誤報を連発する。新聞の劣化が著しいと思わざるを得ません。

「人質司法」を繰り返す検察にしても、「人民裁判」の検事役たるマスコミにしても、自己の権力の影響力の大きさを十分に認識したうえで、抑制的に行使してもらわなければなりません。形だけの謝罪と反省は、誰の心にもひびきません。手柄争いや出世争いに堕することなく、真摯に証拠と事実のみに向き合って欲しいと願います。