親権者を決めるためには

私と夫の間には10歳の長男と3歳の長女がいます。この度,協議離婚することになりましたが,親権についての話がまとまりません。 このような場合,どのようにして親権者を決めたらよいのでしょうか。また,親権者を決定する基準はあるのでしょうか。

 民法819条1項には,「父母が協議上の離婚をするときは,その協議で,その一方を親権者と定めなければならない。」と規定されています。
  そのため,まずは夫婦間で親権者を協議することになりますが,協議が整わない場合には,家庭裁判所に離婚等を求める調停を申し立て,その中で引き続き協議することになります。
また,調停でも協議が整わない場合には,家庭裁判所に離婚訴訟を提起し,その中であわせて親権者の指定を求めることが一般的です。
 親権者を決定する基準としては,父母側の事情として,監護に対する意欲・能力,健康状態,経済的・精神的家庭環境,教育環境,子に対する愛情の程度,親族・友人の援助の可能性等,子の側の事情として,年齢,性別,心身の発育状況,子の希望等の各事情があり,これらを総合的に考慮して親権者が決定されます。以下,具体的な判断基準を幾つか挙げてみます。
(1) 監護の継続性の原則
子を現に養育している者を変更することは子に心理的不安をもたらす危険性があるため,子に対する虐待・遺棄など特別な事情がない限り,現実に子を養育監護している者を優先させるべきという原則です。
(2) 母親優先の原則
子の幼児期における生育には母親の愛情が不可欠とされるため,乳幼児については特別な事情のない限り母親による監護を優先させるべきとの原則です。
(3) 子の意思の尊重の原則
文字どおり,子の意思を尊重するという原則です。家庭裁判所の実務では,おおむね10歳以上の子についてその意思を尊重する傾向にありますが,それよりも下の年齢の子の場合には,真意を把握することが難しいため,一考慮要素とされるにとどまります。
(4) 兄弟姉妹の不分離の原則
年齢が近く学童期にある兄弟姉妹がいる場合には,兄弟姉妹の親権者を分離すべきではないとの原則です。
(5) 離婚に際しての有責性の不評価
たとえば妻が不貞行為に及んだことで離婚するに至った場合であっても,不貞行為はあくまで夫婦間での離婚原因にすぎず,親権者を決定する場面で妻にとってマイナス要素とは評価されないということです。但し,不貞行為によって子への養育監護が十分に行われなかったなどの事情がある場合には別の問題となります。