第80回  弁護団について

第80回  弁護団について
                                                          - 2015年3月6日

弁護団について
 「弁護団」という言葉を目にしたことがあると思います。ある訴訟事件で原告あるいは被告の代理人として多数の弁護士が付いた場合、その弁護士らを総称して弁護団と言います。
  私も、過去、弁護団に入って訴訟活動したことが何度かあります。大分で言えば、杉乃井ホテル労働闘争の時には経営者側と労働者側に大分県弁護士会の大多数の弁護士が分かれて付き、それぞれが弁護団を組みました。じん肺訴訟や豊田商事問題などの際にも、被害者の数が多く、2、3人の弁護士では対応できないため、多数の弁護士が弁護団を組んでやっていました。三代目石井一家組事務所移転反対訴訟の際も、相手方が反社会的勢力であることから、危険分散の意味で弁護団を組みました。現在も、大分県教委教員汚職事件に絡んで採用を取り消された方の訴訟なども弁護団を組んでやっているようです。
 このように、事件の規模が大きく、2、3人の弁護士では対応できない場合に弁護団を組むのが一般的でした。  ところが、この頃、相手方に威圧的な効果を与えるために弁護団を組むという例が散見されます。
  朝日新聞の元記者で、従軍慰安婦問題に関し、女子挺身隊と慰安婦を混同し、日本軍が挺身隊を強制連行した事実がないにもかかわらず強制連行したような記事を書いた植村隆という人が、週刊文春と西岡力東京基督教大学教授の両名に対し名誉毀損で損害賠償請求している事件。原告は植村氏1人だけであるにもかかわらず、170人という弁護士が植村氏のために大弁護団を結成しています。しかし、植村氏の記事を「捏造」と書いた週刊文春の記事及びそれに関する西岡教授のコメントが名誉毀損にあたるかあたらないかという事件は、170人も弁護士がいなければ対応できないような大規模な事件ではありません。2、3人の弁護士で十分に対応できると思われる事件です。
 では、どうして、こんなに沢山の弁護士が名前を連ねるのでしょうか。この弁護団に属する弁護士の1人は次のように言っているとのことです。「その他の被告となりうる人々についても弁護団の弁護士が力を尽くし順次訴えていく。」「ネット上で脅迫的書き込みをした人たちを探し出し、1人残らず提訴していく。」要は、170人の弁護士が植村氏に対して名誉毀損を行ったと思われる相手を1人ずつ探し出して片っ端から血祭りに上げるという目的があるようです。現に、ジャーナリストの櫻井よしこさんも札幌地裁に訴えられたようです。東京に住んでいる櫻井さんが札幌で裁判を抱えるということになれば、金銭的に負担も大きくなるでしょうし、これによる精神的苦痛も多大なものではないかと考えられます。
 このように、数の力を頼りにして、自分たちの主義主張に反する人々を恫喝・血祭りに上げていくような形での弁護団というのは私は納得できません。いわば、形を変えた言論封殺です。
  「弁護団」という言葉が出たとき、それが何を目的とした団体なのかということを冷静に見極める必要があると思います。