第74回 佐世保少女猟奇殺人事件
- 2014年9月5日
佐世保少女猟奇殺人事件
佐世保の高1の少女が同じ高1の少女を殺害したうえ、その首と手首を切断して腹を切り裂くという痛ましい事件がありました。少女のマンションの周囲には皮を剥がれた数体の猫の死骸があり、冷蔵庫の中には切られた猫の生首が入れられていたそうです。少女は警察の取調べに対して、「人間を殺してみたかった。」と言い放ったとのこと。
この少女の父親についてマスコミは勝手なことを言っています。「早稲田大学卒」「敏腕弁護士」「豪邸」「年収1億円以上」「妻の死後、初盆前に20歳年下の女性と再婚」「少女と祖母とを養子縁組させる」などなど。「だから少女が人を殺した。」と言わんばかりです。
しかし、この論調は間違っています。
そもそも、世の中に、上記の程度の父親はいくらでもいるはずです。その子どもがすべて猟奇的な殺人を犯すかと言えば、そんなことはありません。多少ぐれることはあったとしても、殺人を犯す子どもはほとんどいません。ましてや、「首を切断」「手首を切断」「腹を切り裂く」などという残忍な行為をすることは皆無と言っていいでしょう。この少女の持って生まれた精神病質が何かを契機にして発現したと考えるべきでしょう。
佐世保の少女の父親は、数年前に、ある裁判で相手にしたことがありますが、普通の真面目な弁護士でした。決して、子どもの人格をないがしろにするような人間とは考えられません。少女は、母親の生きている頃から小動物を解剖したり、給食に殺虫剤を混入したりしていたのですから、父親の再婚が唯一の原因であるとは到底言えないはずです。
ある識者によれば、精神病質者(いわゆる「サイコパス」)は、アメリカでは4%(25人に1人)、東アジアには0.1%(1000人に1人)の確率でいると言われています。
日本では、北九州監禁殺人事件の松永太、奈良小1女児殺人事件の小林薫、「酒鬼薔薇聖斗」事件の犯人、古いところで連続強姦殺人事件の大久保清などがいます。歴史的には、7000万人を死に追いやった中国共産党の毛沢東や、200万人を殺戮(さつりく)したカンボジアのポルポトなどがサイコパスであると言われています。いずれも、①極端な冷酷さ、②無慈悲、③エゴイズム、④感情の欠如、⑤良心の欠如、⑥罪悪感の欠如、⑧後悔の欠如をその特徴としています。
このように、サイコパスは我々の身近に潜んでいるのです。何かをキッカケに、それが外部に発現されると殺人者となるのです。
世の中にはこのようなサイコパスがいるということを認識したうえで、早期の「隔離」と「治療の開始」をするべきでしょう。少女の父親の落ち度は、まさか自分の娘がサイコパスであるとは思い至らず、社会からの早期の「隔離」を計らなかったことにあると言えるのではないでしょうか。
今後、被害者の遺族から加害少女の父親に対する損害賠償請求が起こるでしょうが、父親の損害賠償義務が認められるかどうかは、かなり微妙です。担当する弁護士の「腕」と裁判官の「感受性」によって結論は左右されるものと思われます。(加害者側は長崎県の弁護士で大弁護団を組むでしょうから、被害者側は長崎県外の腕のいい弁護士に依頼することをお薦めしたいものです。)
いずれにせよ、子を持つ親の立場として、今回の事件は他人事ではないような気がします。