第73回  裁判所児童室

第73回  裁判所児童室
- 2014年8月1日

裁判所児童室
裁判所の建物の中に「児童室」という部屋があります。6畳ぐらいの広さで、子どものオモチャや児童雑誌・漫画の本などが置いてあります。
若い両親が離婚する場合、必ず問題になるのが、子どもをどちらが育てるか(即ち、「親権者」に誰がなるか)ということです。親が同席していたのでは子どもの正直な気持ちが聞き出せないことが多いため、家庭裁判所の調査官という人が、この児童室の中で子どもと遊びながら、子どもの本音を聞き出したりします。あるいは、子どもの性格などを観察したりします。
この児童室の横に、狭くて暗い小部屋があります。入口のドアには何も書かれていないため、知らない人が入ることはありません。いわゆる「秘密の小部屋」です。その部屋からマジックミラーを通して児童室の中の様子が見えるようになっています。母親が子どもを連れて家を出たため父親から面会交流を求められたりしたような場合、試しに児童室で子どもと父親を会わせ、その様子を隣の狭い部屋からマジックミラー越しに母親が見たりするのです。我々、弁護士もそのような場合、隣の部屋で息を殺しつつマジックミラー越しに児童室での父子の対面の場面を見たりします。
そのような時、久し振りに父親と会えた子どもの嬉しそうな表情や戸惑っている表情に出くわすことが多々あります。つくづく、両親の離婚というエピソードが子どもに与える影響がいかに大きいかということを実感させられます。加えて、隣の部屋からマジックミラー越しに覗き見ている自分の置かれている状況の空しさを感じたりするのです。
このような想いの中から2、3首詠んでみました。

・母のため「父には会わぬ」と言ふ息子
児童室では父の膝かな
・「あの父(ひと)に会うと子どもが可哀想」
止める母親 阿修羅の形相
・「夫には会わせません」と言ふ母の
隣で幼な子うつむいている
・児童室 久方振りの父と子と
そばで祖父母は目頭押さゆ
・児童室 隣の部屋に隠れいて
ミラーの奥の我ら切なし

この文章を書いている最中に、佐世保の高1女子生徒がクラスメートの女の子を殺害して首を切断したというショッキングなニュースが飛び込んで来ました。この女子生徒の心に一体どんな闇があったのかは不明ですが、調査官が調査して裁判所が裁く局面が来ることは間違いありません。裁判所の児童室が使われるのでしょうか。