第7回 光と影
-2009年1月9日
光と影
サブプライムローンに始まるアメリカの大不況の影響で、日本の名だたる大企業が大量の派遣労働者の「派遣切り」を発表し、大きな社会問題となっております。
年末・年始の慌しい時に、職を失った人々は同情するに値します。そして、大量の派遣切りを行う大企業に対し、マスコミ等から批判的な論調が繰り広げられているのは、理解できないではありません。
しかし、そもそも、派遣とは、これまでの労働法制において、容易に解雇できなかったがために雇用契約をすることをためらっていた企業に対し、大量の労働力を供給するための法制度であり、労働力が不必要になった場合には、困難な解雇手続きをとらずとも、簡単に派遣会社との契約を打ち切ることにより、労働力を削減するために作られた制度であるということを忘れてはならないでしょう。
直接、雇用関係があれば、使用者が従業員を解雇するためにはかなりの厳しい要件が存在します。特に、整理解雇の場合には、判例上四つの要件(①人員削減の必要性、②整理解雇を選択することの必要性、③被解雇者選定の妥当性、④手続きの妥当性)が存在しており、これをクリアするのは、かなり難しいとされています。
これに対し、派遣の場合は、派遣元会社が従業員を雇用し、派遣先の大企業と派遣契約を締結して労働者を大企業に派遣するということですから、この派遣契約を解消すれば、派遣先企業は、労働者を働かせる必要はなくなることになるのです。
このように、労働者を手軽に使えるようになり、雇用の拡大に寄与したことは否めません。
仮に、労働派遣法がなく、これまでのように、雇用する以外にないということになれば、派遣社員として働いていた人々は、未だにアルバイトぐらいの働き口しか認められなかった可能性も高いと言わなければならないのです。
その意味で、労働者派遣切りが悪いと、一方的に問題視することは、如何なものでしょうか。物事には、裏と表、光と影の両面があることを忘れてはならないでしょう。
それにしても、心配なのは、大量の労働者が居住することを見込んで多数のアパートを建てたアパート経営者の人達。杵築、国東など、派遣労働者以外にアパートの需要がそれ程見込めない地域に、あれだけ沢山のアパートを建て、いきなり何千人単位で派遣切りが行われた場合、アパートは一体どうなるのでしょうか。アパート経営者の人達は眠れない日々を過ごしているのではないかと思います。