第6回 予知能力

第6回 予知能力
-2008年10月3日

予知能力
毎朝5時半に起きて、2頭の大型犬を連れて散歩をしています。
ここ15年くらいそのような日課を続けていますが、我が家に近づき、まもなく散歩が終わろうとする時になると必ずあることが起きるのです。それは、曲がり角にさしかかろうとした時、そこからまだ30メートルほども離れたところにある家の中にいる犬が突然、必ず騒ぎ始めるのです。そして、その犬が騒ぐと、その向かいの家の中にいる犬も騒ぎ、その犬が騒ぐと、さらに、その隣の家の犬も騒ぐという連鎖反応が起きてしまうのです。騒ぎ始める最初の犬がいる家に至るまでにはまだ30メートルもの距離があり、しかも、角を曲がらなければならないというのに―――。
私たちのいる場所からはかなり先にある家の中にいるので、私たちの姿が見えないのはもちろん、足音すら聞こえるはずもないのにどうして私たちが近づこうとしていることが分かるのでしょうか。

これは、動物には人間と違う予知能力があるからだと思われます。大地震が起きる前に、ネズミが逃げ出すとか、鳥が一斉に飛び立つ等というのは、予知能力があるためと言われています。犬も、我々人間とは異なり、予知能力がかなり高いため、このような、到底人間であれば分からない状況を予知できるのではないかと思うのです。

この予知能力が企業経営にも活かされれば良いのですが、なかなかそういう訳にはいきません。

まさか・・・!
先般、ある会社の破産申立事件を行った時、弁護士費用がないとのことで、大分の大手建設会社振出しの手形を、その費用としていただき、割引しました。ところが、2ヵ月後、その大手建設会社が倒産してしまったため、当事務所がその割引手形を買い戻す羽目になり、結果的に弁護士費用はもらえませんでした。
このような時、危険を察知する予知能力があれば、このような不渡手形をもらうことはなかったと思い、つくづく後悔しています。

もっとも、これは、予知能力というよりも、単なる情報収集能力不足なのかもしれませんが・・・。というのも、後日、人にその話をしたら、「その会社が倒産するのは半年前から分かっていたよ。そんな手形ももらう方がどうかしている。」と言われてしまいました。

弁護士を20年以上やっており、不渡手形をもらったのは、これが2度目のことです。不渡手形で弁護士料を払った会社も、既に、当事務所が破産手続きをしたため、この会社に請求することは無理。結局、うちの事務所が損を被らなければならないということになりました。
人間には動物のように予知能力がない以上、常日頃から、あらゆる所にアンテナを張り巡らし、危険を回避するようにしておかなければならないでしょう。

とは言っても、いくらアンテナを張り巡らしていたとしても、我々の想像や情報能力をはるかに超えるような事態が発生している場合には、どうしようもないのかも知れません。アメリカで発生したサブプライムローンの問題などは、あたかも、汚染米が通常の食料米と混ぜ合わさって流通しているのと同じように、サブプライムローンの不良債権が正常債権とごっちゃにされ、ファンドと化して販売されているのですから、一般投資家がそのファンドの中身を選別して、これが汚染米、これが正常米等と判断することは、到底、不可能な状態になっています。

ということは、経済活動を行う以上、ある程度の危険性は常につきまとい、これを回避することは不可能な状況になっているということなのでしょうか・・・。