第49回 「 開いた口がふさがらない 」
- 2012年8月10日
開いた口がふさがらない
福岡県警の49歳の警部補が逮捕されました。逮捕容疑は暴力団に捜査情報を漏洩する見返りとしてお金を受け取ったという収賄罪。福岡県は4つの指定暴力団を抱える、日本でも屈指の暴力団密集地帯。暴力団が一般市民に与える危害は数知れず。住民・警察が一致団結して暴力団追放運動に取り組んでいたはずでした。
数年前、私の友人の弁護士が久留米の道仁会組事務所撤去裁判の弁護団長をする際、九州内の弁護士会に応援を頼んだことがあります。しかし、どういうわけか、福岡県弁護士会は弁護士会としてこれを支援しない、という方針でした。何故か。報復が怖く、一般市民が報復された場合、責任が取れないからというのがその理由でした。福岡県弁護士会が支援しないなら大分県もしない方がいいだろうという愚かな理由で大分県弁護士会も支援しないということになってしまいました。友人の弁護団長からその話を聞き、私はそんな軟弱なことでは暴追運動はできないと思い、有志を募ったところ、大分県内から数多くの弁護士が弁護団に参加することになり、友人から深く感謝された記憶があります。
しかし、そのように、生命・身体・財産の危険を顧みず、一般市民が暴力団と戦っている時に、先頭に立つべき警察が裏で暴力団に情報を流すなどということは言語道断。大きな裏切り行為であり、「開いた口がふさがらない。」とはまさにこのこと。
以前、大分県内で、暴力団員から脅された一般市民が、警察から、「絶対に守るから被害届を出して。」と言われて被害届を出したところ、暴力団員から報復され、事務所を放火されたという事件がありました。こんなことでは、一般市民が暴力団の被害を警察に告げて捜査に協力することは無くなってしまうでしょう。我々弁護士がよく関与する刑事告訴の場合、相談者から、「○○の被害にあったので警察に告訴して欲しい。」という相談を受けることはたくさんあります。しかし、私たちは、「多分、警察は告訴を受理しないでしょう。告訴をしても無駄でしょう。」と答えざるを得ないことが多い。そうすると、相談者は、「警察ってそういうものですか。困っている人を助けるのが警察じゃないのですか。」と必ず言われます。そういうとき私たちは、「そうです。警察に告訴しましょう。そうすれば警察は絶対あなたを助けてくれます。」と言いたい。しかし、現実の警察はそうではない。あれやこれや理由をつけて告訴を受理しようとしないのが実態。以前、1500万円の横領事件でも、告訴を申し立ててから約2年間もほったらかしにされ、何度も抗議して、ようやく受理されたというケースもありました。
我々が暴力団と対峙する場合、暴力団からのターゲットを作らないために、「匿名性」ということに最大の配慮をします。要するに、誰が中心となって暴追運動を行っているのか、なるべく分からないようにします。これは、報復を避けるためです。
しかし、この情報が警察から暴力団へ漏れることがあれば、誰も怖くて暴追運動に参加してくれないでしょう。
警察は重い十字架を背負ったと言わなければなりません。