第41回 天下り
- 2011年12月2日
天下り
財務省や経産省などの高級官僚の天下りが日本をダメにしているのは周知の事実です。しかし、天下りは高級官僚だけに限ったことではありません。我々法曹界にも天下りは厳然と存在しているのです。弁護士は、そもそも在野法曹なので天下りというのはさほど考えられません。
これに対し、検事や裁判官には天下り先があるのです。その1つは弁護士事務所。検事を何年間かやって中途で辞めた後、弁護士事務所に就職し、元東京地検特捜部副部長などの肩書きでテレビ等に出てきている弁護士がいます。このような人たちは、いわゆる「ヤメ検」と言われ、検事仲間からは軽蔑されています。他方、検事や裁判官を65歳の定年までやり遂げ、それから弁護士事務所に就職するにしても、ほとんど使い物になりません。それまで権力の座にどっぷりと浸かっていた人間が、いきなり権力のない在野法曹になれるはずがないのです。したがって、「客員弁護士」などという肩書きだけをもらっても、給料はもらえないというのが大半です。
次によくある検事や裁判官の天下り先は公証人役場です。公証人役場は法務省の管轄ですが、その数は全国に限りがあります。したがって、いったん公証人のポストにつけば、高額な収入は確保されています。競って公証人になりたがっているのが現実です。私が司法修習生の頃の大分地検の検事正など、検事正の職をほったらかしにして公証人ポスト探しに明け暮れていました。最終的に横浜公証人役場の公証人に収まりましたが・・・。
この頃の新しい天下り先ポストといえば、やはり、法科大学院の教授でしょう。法科大学院は2004年に導入された制度です。法科大学院(2年間コースと3年間コースがあります)を卒業しなければ、司法試験受験資格が与えられません。当初の制度設計では司法試験合格者を3000人くらいにし、法科大学院の卒業生の8割程度は司法試験に合格させるとのことでした。しかし、現実は大変違ってきております。まず、司法試験の合格者を増やし過ぎたため、弁護士になったとしても就職先がない人間が巷に溢れたため、合格者は2000人のままです。また、全国で74もの法科大学院があり、入学定員は5800人を超えています。5800人の中から2000人しか受からないわけですから、合格率は8割どころか3割程度です。そのうえ、法科大学院を出て3回以内に司法試験に合格しなければ司法試験受験資格を失います。しかし、その時点で年齢は30歳近く。一応、法務博士という称号はとれるものの、使いものにならない博士号のため、就職先はありません。この元凶は、文部科学省が法科大学院を作り過ぎたためです。法科大学院によっては、これまで1人も司法試験合格者を出したことのないところもあります。ところが、法科大学院を減らす動きはあっても現実的にはそれはなかなか難しいのです。何となれば、法科大学院の教授は法曹関係者の天下り先になっているからです。これまで天下り先のなかった検事や裁判官が法科大学院の教授として大量に天下りを始めたのです。法科大学院が、法曹の養成という当初の目的から離れ、定年退官した法曹関係者(主として検事、裁判官)の天下りの受け皿となってしまっているのです。このような法科大学院を沢山作ってしまったために、有為の若者が、法科大学院に入ったものの、司法試験に合格せず、人生を棒に振っているのです。こんなことなら法科大学院など作らない方がよっぽどマシだったと思えるのです。