第3回 武士の情け
-2008年3月14日
「武士の情け」という言葉は、現在ではもう死語であろうか。
この頃、消費者系を自負する弁護士の間で、消費者金融業者に対する過払金返還請求訴訟が増えている。要するに、利息制限法を超える金利でお金を貸して暴利を得ていたのであるから、利息制限法に引き直して計算した場合の払い過ぎた分を返せという訴訟である。それだけなら、まだ話は分かる。しかし、過激な弁護士によれば、過払い金の元金だけでなく、さらに、それに遅延損害金を付加し(しかも、法定利息の年5%を遥かに超える金利を請求し)、また、不当にお金を貸し付けられたとして慰謝料をも請求し、その上、訴訟費用まで「1円たりともまけない」と主張してくる輩がいる。確かに、払い過ぎは返さねばならぬとしても、高い金利であることを認識しながらお金を借りているのだから、そんなに、貸金業者からハイエナのようにむしり取る必要はないのではないかと思うのだが・・・。
しかし、一部弁護士は、貸金業者側が過払金の元金を全部支払うと言っても、1円たりともまけず、さらに、慰謝料、金利、訴訟費用まで払わせようとしている。果たして、それが依頼者本人の真意かどうかは定かではない。おそらく、依頼者本人はそこまでは要求しておらず、ある程度の過払い金が返ってくれば、それで満足しているはずである。しかし、くだんの弁護士は、己の主義・主張のために、このような過激な訴訟活動を行っているのである。金融業者側が過払金の元金の10割を返すと言っているのであるから、それで手を打てばいいと思うのだが、決して彼らは譲ろうとはしない。取れると思ったら、とことん骨の髄までしゃぶろうと考えているようである。
このような弁護士たちの訴訟活動を見ていると、「武士の情け」という言葉は、もはや現在では通用しなくなったのかと思う。
「情けは人の為ならず」(人に情けをかけておけば、巡り巡って自分に良い報いが来る。)
という言葉の意味を、もう一度考えてみたくなった。