第20回 被告人は無罪
-2010年3月5日
被告人は無罪
清川村の強盗殺人事件で、2月22日、大分地裁は被告人に対し無罪判決を出しました。
私が記憶している限り、本格的に事実そのものを争った事件で大分地裁が「無罪」判決を出したのは、今から20年ぐらい前のタクシーの運転手の虚偽告訴事件ぐらいではないかと思います。
警察・検察は、「裁判所は当然に有罪判決を出すものだ。」と思っていたフシがあります。判決後の大分地裁の次席検事の「意外な判決」という言葉が如実に物語っています。弁護士側も、まさか、大分地裁が無罪を出すとは予想していなかったようで、無罪判決後、釈放された被告人の住む場所を考えていなかった、などという笑えない話も伝わってきます。
いかに、今の司法関係者の「有罪判決ボケ」が漫延しているかが良くわかります。
しかし、警察・検察にも間違いがあるのは当然のことで、これをチェックするために裁判があるのですから、無罪が出たからといって「意外」などと言う必要はないのです。
裁判員裁判が進んでいけば、これからも無罪判決は沢山発生すると思います。中には、本当はやっている人間が無罪となることもあるでしょう。
無罪の人間を罰しないために、本当はやっている人間を見逃すことがあってもいいのか、本当はやっている人間を見逃さないために、多少の無実の人間が処罰されることがあっても仕方ないと考えるのか。難しい問題です。歴史が判断するでしょう。
同じ弁護士として、今回、無罪判決を勝ち取った3人の若手弁護士には頭が下がる思いがします。被告人との打合せ、公判前整理手続での準備、法廷での弁護活動など、日常の弁護士業務に相当の支障が出ているものと思われます。しかも、国選事件ですから、弁護士報酬も多くありません。このような熱意のある弁護士によって、司法制度が徐々に改革されていくことになるのでしょう。