夫婦の氏は、同一がいいでしょうか?別々がいいでしょうか?それとも、どちらでも選べるとするのがいいでしょうか?
民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めています。現実には、妻が夫の氏に改めるのが95%です。どちらも氏を改めたくない場合は、いわゆる「事実婚」を選ぶことになり、法律上の夫婦とは認められません。
いわゆる「選択的夫婦別姓」を認めるかどうかの議論が活発になっています。
- 「選択的夫婦別姓」反対派(=「夫婦同氏」派)の根拠は大略、次のようです。
- ① 「家族の一体性」がなくなる。
- ② ファミリーネームがなくなる。
- ③ 戸籍制度がなくなる。(但し、これは間違いです。戸籍制度はなくなりません。)
- ④ 片一方の親と子どもの氏が異なることになり、子どもが可哀想である。
- ⑤ 氏が変わり利便性が悪くなるのは、「通称使用」で補えば足りる。
- ⑥ 民法750条は「夫又は妻のどちらか」に変えればいい、と書いているのだから、憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)、24条(婚姻における両性の本質的平等)には違反しない。
- ⑦ 95%は女性の方が氏を変えているが、これは自分が変えたいから変えただけだ。
- ⑧ 日本にとって大切なのは「家」である。アメリカは日本の家制度を廃止したが、けしからん。アメリカによって押しつけられた憲法は改めなければならない。
- ⑨ 日本を壊そうとする中国の陰謀である。
などなどです。
- これに対し、「選択的夫婦別姓」賛成派の根拠は、大略、次のとおりです。
- ① 夫婦別氏にすると「家族の一体性がなくなる。」という説があるが、実証的根拠がない。事実婚の家庭の人から、「うちの家は一体性がない。」などと聞いたことがない。法務省も、それについての調査をしていない。
- ② どちらか一方が氏を捨てなければ婚姻できないというのは、「幸福追求権」を定めた憲法13条、「法の下の平等」を定めた憲法14条、「婚姻における両性の本質的平等」を定めた憲法24条に違反する。
現実には95%が、女性が氏を変えている。これは、嫁いだら夫の「家」に入るべきであるという「家」制度の名残である。あるいは、無意識のうちに、女性が氏を変えるものと刷り込まれているのであるが、これも「家」制度の影響を受けているのである。これは、「婚姻における両性の本質的平等」に反する。 - ③ 夫婦同氏が正式に定められたのは昭和22年である。平民に氏が認められたのは明治になってからである。江戸時代は士族だけに氏が認められたが、別氏であった。明治以降も別氏の時代もあった。したがって、「同氏が日本の良き伝統である。」という根拠がない。
- ④ 別氏になっても戸籍制度は残る。夫の欄に、「佐藤太郎」、妻の欄に「山本陽子」と、氏と名が載るだけである。
「戸籍制度がなくなる。」と言っている人は勉強不足。 - ⑤ 「片一方の親と氏が違うのは子どもが可哀想。」という見解もある。
しかし、夫婦同氏でも、離婚などの場合、親子で氏が違ってくる場面はいくらでもある。
また、女の子が結婚したら、親と氏が違ってくるのが大半である。そもそも、別氏が増えてくれば違和感はなくなる。
通称使用の場合でも、母親が家庭から外に出れば親子は別氏である。
家の中では、氏では呼び合わない。
別氏である諸外国においても、子どもに何らかのしわ寄せが行っているとの報告はない。
要するに、「子どもに不利益を与える。」ということの実証的な根拠がない。 - ⑥ 「ファミリーネームが必要」という人は、夫婦同氏にすればいい。
- ⑦ 「通称使用で足りる。」という人がいる。
通称使用が必要ということ自体、同氏が不都合ということを表している。
経団連が言うように、通称使用には限界がある。外国では通用しない。
そもそも、自分の氏を捨てざるを得なかった悲しさや喪失感を通称で補うことはできない。 - ⑧ 世界の中で、同氏制度を採用しているのは日本だけである。他は、別氏を採用している。
- ⑨ 若い世代は別氏を望んでいる。これから結婚する若い世代の声に耳を傾けるべきである。
- ⑩ 同氏が良ければ自分たちはそうすればよいのに、日本国民すべてに対して「同氏でなければ結婚は許さない。」というのは行き過ぎである。
などなど。
夫婦同氏がいいか別氏がいいかは、その人の価値観・育った環境などによって変わります。「家」が大事だと考える人は同氏に傾きやすいし、「個人の人権」を重視する人は別氏に傾きやすい傾向があります。どちらが正しいというものではありません。
平成27年と令和3年に最高裁判決では同氏は憲法違反ではない、という内容でした。
しかし、その後の性同一性障害者の性転換の判決や同性婚をめぐる一連の高等裁判所の判決を見ると、この最高裁判決がいつまでもつか、怪しいと言わざるを得ません。
さて、意見が割れて決着がつきませんが、どちらの方に説得力があるでしょうか。