第174回  演説

面白くない演説>

職業柄、演説を聴くことや演説をすることが多くなりました。その中で、面白くない演説は以下のような特徴を持っていることに気が付きました。
1 長い
とにかく演説は短いに限ります。3~5分がいいでしょう。長過ぎると、聴いている人達がウンザリします。聴衆の中の1人でも時計を見始めたら、「早く終わらないかなあ。」と思っているサインです。
2 上から目線
エラそうに聞こえる演説は最悪です。二度と聴衆は聴きません。確かに、多くの聴衆の前で話すという事は、それ自体、ある意味でエラいという事を示しているのかも知れません。しかし、それを態度に出してはいけません。ましてや、選挙での演説の際にそれを出したら最悪です。票はどんどん逃げていくでしょう。「実るほど、頭をたれる稲穂かな。」昔の人は良く言ったものだと思います。私も、弁護士・参議としてエラそうにしていないか、自戒する毎日です。
3 むずかしい
内容が難し過ぎると理解できないため、退屈になります。退屈になると眠くなります。一人でも、コックリ、コックリやり始めたら、危険信号です。
4 勢いがない
何のための演説かにもよりますが、演説というからには勢いが無ければなりません。小さな声でグズグズ言っていたのでは演説になりません。しかし、声が大きいだけでは勢いがあるとは言えません。話そのものに抑揚があり、強調すべきところは強調することが必要です。これがない演説には勢いが感じられず、聴衆の心を掴むことは難しいでしょう。

<演説をする上での注意点>

1 順番を考える
特定の人物を称える演説というのがよくあります。そして、大抵スピーカーは何人かいます。その際は、自分が壇上に立つ順番を考慮して話す内容を考えなければなりません。大体、みんな、話す内容は似通ってきます。トップバッターで話す人は白紙に筆を入れる状態なので、何でも話せます。しかし5番目に話す人には、もう白い部分はほとんど残っていません。そこに、前の人と同じ様なことを話しても、聴衆は「またか。」という顔をします。「ロシア・ウクライナ戦争」「コロナ」がまさにそうでした。順番が後方のスピーカーは、その辺を考えて話す内容を考えなければならないので、大変です。
2 聴衆に合わせる
聴衆がどういう人達かによって話す内容を考えなければなりません。20代、30代の人達の前で老後の年金や介護の話をしても、誰も興味を示してくれません。事前に、聴衆についての情報を把握しておく必要があります。
3 論点を絞る
あれもこれも話したくなるのが人間の心理です。しかし、敢えて的を一つに絞った方が聴いている人の心に残ると思います。そもそも3~5分の演説時間でいくつも論点を論じる方が難しいというものでしょう。
4 聴衆にインパクトを与える
起・承・転・結の整った、ありきたりの内容では聴衆の心に残りません。
場合によれば、いきなり結論を話したり、度肝を抜くような大声を発したりして、聴衆にどうやってインパクトを与えるかを考える必要があります。
5 心を打つ演説
やはり、一番心を打つ演説というものは、感情が込もっている演説だと思います。理路整然とわかりやすく話すことも大切な事ですが、最も大切なのは、聴衆の心に訴えかけるように、思いを言葉のひとつひとつに込めて話すことではないでしょうか。感情が込もっている演説は、胸に響くものがあります。私もそのような話し手になることを目指して、鍛錬していきたいと思います。