1 2022年2月1日、高松高等裁判所は、2021年10月に実施された衆議院議員選挙における投票権の1票の格差が最大で2.08倍だったことが「法の下の平等」(憲法14条)に違反するかどうかが争われた事件で、「『違憲状態』ではあるが『違憲』とまでは言えない」と判断しました。
その後2月3日、上記衆議院選挙について大阪高裁も同じ判断をしました。
裁判は全国の14の高等裁判所・支部に提起されていますが、おそらく他の裁判所も同じ判断をするものと思われます。
2 うーむ、どうも良く分かりません。
「違憲状態」であれば、これはまさに「違憲」即ち「憲法違反」のことではないでしょうか。「違憲な状態」のことを「違憲」と言うと思うのですが・・・。
最高裁がこのような良く分からない概念を持ち込んでまで「違憲」判決を避けたいのは、「違憲」と判決してしまうと、その違憲状態下で行われた選挙が無効となり、その選挙で当選した方々の議員としての資格が遡ってなくなってしまい、その議員の方々が作った法律が無効となり、その法律にもとづいて行われた行政や司法までも無効となるなど、あまりにもその影響が大きくなるからだと思います。何としてもこのような事態になることを避けるために、裁判所は知恵を振りしぼって「違憲状態」という良く分からない言葉を持って来て「違憲」判決を回避しているのです。いわば司法が国会をおもんぱかって出した温情判決と言っても過言ではありません。
国会も、このような司法の意を汲みとって早急に「一票の格差」問題を解決する必要があります。その時は、人口比だけではなく、是非、地域差も重要な要素として加味して欲しいものです。
3 このように司法が国会をおもんぱかっている温情判決として、もう一つ、自衛隊をめぐる憲法9条問題での「統治行為論」があります。
自衛隊が憲法9条2項にいう「陸海空軍その他の戦力」に該るかどうか、という議論です。最高裁は、「それは国家の統治の基本に関する高度な政治性を持つ重要事項なので判断しない。」としたのです。これは裏から言えば、文言解釈からすれば自衛隊は「戦力」に該るけど、これを憲法違反とすれば大変なことになるので、「統治行為論」というむずかしい概念を持って来て、何としてでも「違憲」との判断を避けようとしたものと思います。
しかし、このような鵺 (※①) 的判断では日本を守るために日夜頑張っている自衛隊の隊員の方々に申し訳ありません。憲法を改正して早く自衛隊の存在を明記すべきだと思います。
4 司法は国会が自主的に改善することを期待して、このような「違憲状態」判決や「統治行為論」判決を繰り返しているのです。然るに、国会がいつまでもこれをしないと司法から見放されるかも知れませんよ。
※①鵺(ぬえ)・・・頭は猿、手足は虎、体は狸、尾は蛇、声はとらつぐみに似ている、伝説上の怪獣。転じて、正体がつかめないまま、はっきりしない物事や人のことを指す。