第16回 世も末

第16回 世も末
                                                      -2009年11月6日

世も末
 10月22日付新聞各紙に、「過払返還、弁護士ら申告漏れ。全国で697人、79億円国税指南」という記事が掲載されていました。貸金業者が利息制限法を越える金利を取得していたとして過払金返還請求をたくさん行っている弁護士や司法書士が、貸金業者から取り返したお金を売上から除外するなどし、脱税をしていたという記事です。一人当りの申告漏れ所得は984万円。約1億円の所得隠しを指摘された弁護士は、消費者金融から返還金を銀行振込で受け取り、差し引いた着手金と報酬を売上から除外し、隠した所得は預金や不動産の購入に回していたとのこと。

 一昔前は、貸金業者がテレビで大々的にコマーシャルをしていました。日曜日の朝のテレビ朝日の看板番組なども大手貸金業者がスポンサーとなり、その勢いは凄まじいものがありました。ところが、最高裁の判例により利息制限法を越える金利は返還しなければならないという流れが確定してから、全国的に弁護士や司法書士が貸金業者相手に過払金返還請求をするようになっています。この頃は、貸金業者のコマーシャルは減り、むしろ過払金返還請求を誘い込むコマーシャルを弁護士事務所がたれ流しているという状況が続いています。

 「利息制限法を越える金利は違法金利だから、これを取得した業者は、それを不当利得として返還しなければならない。」という論理です。しかし、そのようにして貸金業者から過払金の返還を受けた弁護士や司法書士が、これを売上に計上せず、脱税していたというのですから、開いた口が塞がらないとしか言わざるを得ません。
 貸金業者が高い金利を取っているのは「違法」だからといって、これを取り返し、取り返したお金は税務署に申告せず、自分の懐に隠す。貸金業者が利息制限法を越える金利を徴求することは犯罪ではありませんが、弁護士や司法書士が獲得した過払金を売上から除外することは明らかに「犯罪」。法を守るべき立場の人間が犯罪行為を行うとは言語道断。このような犯罪行為を犯す弁護士や司法書士に、「利息制限法を越える金利は違法金利であるから返せ。」などと言う権利があるのでしょうか。

 日弁連は、「コメントは差し控えたい。」と述べておりますが、できれば、国税庁から資料を日弁連に流してもらい、このような犯罪行為を行う弁護士は懲戒処分にかける必要性有り。正に、世も末なり。