薬物は病気
人気女優の沢尻エリカさんが合成麻薬「MDMA」を所持したとして、麻薬取締法違反容疑で警視庁に逮捕され、来年のNHKの大河ドラマの出演を取りやめることになりました。NHKに莫大な損害を与えることになり、今後、損害賠償をめぐって、NHKと沢尻さん及びその所属事務所との間で、交渉や訴訟等が行われるでしょう。損害額は一体どれくらいになるのでしょうか?弁護士として、とても興味深いところです。
それにしても、薬物事犯は多いです。
今年だけでも、①3月に俳優のピエール瀧さん(コカイン)、②5月にKAT-TUNの元メンバー田口淳之介さん(大麻)、③11月に元タレントの田代まさしさん(覚せい剤、5回目)、④元オリンピック選手(スノーボード)の國母和宏さん(大麻)等々。有名なところでは、16年の元西武の清原和博さん(覚せい剤)、87年の尾崎豊さん(覚せい剤)、83年の萩原健一さん(大麻)等々、挙げればキリがありません。
一度薬物に手を出すと、精神的・肉体的に依存性が生じ、縁を切ることが難しくなるようです。のみならず、覚せい剤については、それを常習すると、①痩せる、②顔の色がドス黒くなる、③歯が抜ける等の肉体的変化が生じるようです。これまで覚せい剤常習犯の弁護を何度も行ってきましたが、大体、同じような特徴を呈していました。
今から20年ほど前の話です。それまでの経験から、私は、男性常習犯は顔が黒くなり、女性常習犯は歯が抜けると思っていました。ある時、ある事件で逮捕された容疑者(女性)を弁護したとき、その夫にその話をしたところ、その人は「先生、歯が抜けるのは女性だけではないですよ。男性も歯が抜けますよ。」と言いながら、口をモグモグさせ、口から入れ歯をカポッと外したのです。なんと、総入れ歯だったのです。その男性、過去に何度も覚せい剤の自己使用で逮捕・服役したことがあるとのことでした。
また、数年前、ある東京の先輩弁護士から聞いたところによると、その知り合いの老弁護士は司法試験受験時代(戦前のことらしい)、眠気覚ましにヒロポン(覚せい剤のこと)を自分で注射しており(戦前は合法だったようです)、弁護士になった後もやめることができず、かなり長期間に亘って使っていたとのことです。(注:この老弁護士は30年前に他界されているので、これは過去の話です。)
田代まさしさんが何度も覚せい剤の自己使用で逮捕されていることが示すように、かくも薬物と縁を切ることは困難なのです。興味本位で手を出すのが始まりのようですが、それが不幸への第一歩となるのです。
薬物使用は一種の病気ですので、家族はもちろんのこと、友人・知人が協力し合って、薬物から手を切らせることが重要です。
この頃、私自身、刑事事件をほとんどしなくなったので、薬物犯罪者と接することはなくなりましたが、いろんな場面を通じて薬物根絶の活動をしていこうと思っています。また、中毒者の社会復帰についても協力できればいいなと思う、今日この頃です。是非、この書面にお目を通された皆様におかれましても、「薬物は病気である。」ということにご理解いただき、薬物根絶にご協力いただければ幸いです。