第117回 6.12米朝首脳会談
- 2018年6月29日
6.12米朝首脳会談
去る6月12日、全世界の注目を集めて、シンガポールでアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談が行われました。しかし、海外のマスコミなどの論評は、「大きな成果を得られないまま終わった。」「壮大なショーであった。」などと手厳しい。この中で金委員長は、「朝鮮半島の完全な非核化」を表明しましたが、過去、北朝鮮は同じような表明を繰り返しながら何度も約束を反故にしてきたという歴史があります。今回、金委員長に最低限約束させるべきであったことは、北朝鮮が持つ核兵器などのすべての大量破壊兵器と弾道ミサイルについて、「完全かつ検証可能な不可逆的な廃棄(CVID)」であったのに、それができなかったことは失敗であると言われています。北朝鮮のような独裁国家は、その時のトップが決めたことが末端の国民まで浸透するので、トランプ大統領とすれば米朝会談の際に金委員長から、「CVIDを実施する。」旨の言質を取るべきでした。これが取れなかったことは、やはり多くの評論家などが言っているように、会談とすれば失敗だったのかもわかりません。とはいえ、政治はショーです。世界に大いなるショーを見せてくれたことは間違いありません。これはこれでトランプ大統領の一つの功績となるでしょう。ただ、トランプ大統領が、「将来的な在韓米軍の撤退や北朝鮮の体制の保証を約束」したことや「米韓合同軍事演習の停止などを表明」したことは勇み足でした。
トランプ大統領は派手なパフォーマンスはしたけれども、米朝首脳会談で確実に利を取ったのは金委員長と評価できるのではないでしょうか。それにしても恐るべき金委員長。まだ若干34歳(?)の若さであるにもかかわらず、父親のようなトランプ大統領を派手に目立たせながら実利は自分の方が取るという、この老練な能力、したたかな計算、恐るべしと言わなければなりません。森・加計問題ばかりに終始し、他の政治的懸案についてまったく対処しようとしていない我が国の野党の先生方も少しは金委員長の爪の垢でも飲んだらいかがかと思います。
今回いよいよ存在感を増してきたのは中国、特に習金平国家主席と言わなければなりません。北朝鮮が中国の国営飛行機でシンガポール入りしたことは正にその象徴的な事象であり、いわば北朝鮮が中国の属国的な立場にあるということを世界に知らしめることになりました。もともと中国は秦の始皇帝の時代から朝鮮半島の宗主国的な立場にあったのですから、当然と言えば当然ですが、別個の独立した国家であるにも拘わらず、その元首がアメリカの大統領と会談をするにあたり、その飛行機を提供するということは互いに独立した国家の関係を遙かに超えているのではないかと思います。朝鮮半島が赤く統一され、それが中国に飲み込まれてしまうという恐ろしい未来が何となく垣間見えたのは私だけではないのではないでしょうか。米軍が韓国から撤退することになれば、単なる杞憂に止まらなくなる可能性が十分あります。そうならないためにも、是非、韓国駐留米軍には踏ん張ってもらいたいと思います。
先日、久しぶりに沖縄に行ってきました。沖縄の狭い土地の一等地というべき場所はほとんど米軍が基地として徴用しています。確かにあれを見ると、沖縄から米軍がいなくなることが沖縄の人たちにとって幸せになるかもわかりません。しかしながら、アメリカ軍がいなくなることによる周辺諸国からの危機的な状況が存在する以上、やむを得ないのではないでしょうか。沖縄の人たちには申し訳ありませんが、極東地域の平和のために米軍には踏ん張ってもらわなければならないと思います。