第109回   悪魔の証明

第109回   悪魔の証明
- 2017年10月6日

悪魔の証明
皆さんは、「悪魔の証明」という言葉を聞いたことがおありでしょうか。法律家が証明責任を論ずる場合によく使う言葉です。「・・・していない」とか「・・・が存在しない」ということを証明することは不可能(あるいは非常に困難)ですので、「ない」ことを証明させることを「悪魔の証明」というのです。例えば、殺人の被疑者に対して、「お前が殺していないことを証明しろ。」などと言っても、これを証明するのは非常にむずかしい(もっとも、殺害の日時が特定されていれば、アリバイを証明できれば無実を証明できますが・・・)ので、警察・検察の側が、「その被疑者が殺したこと」を証明しなければなりません(即ち、立証責任は警察・検察にあります)。あるいは、自分の妻が他の男性と浮気している疑いがある場合でも、妻に対して「浮気していないことを証明しろ。」と言っても、それを証明することは非常にむずかしいのです。逆に、夫の方が、「妻が浮気していること」を証明しなければなりません(即ち、立証責任は夫側にあるのです)。このように、「悪魔の証明」を強いることができないことは法律家の世界では常識です。
衆議院が解散、総選挙の見通しとなりました。その時、「森友学園、加計学園に関する安倍総理の説明義務違反である。」との論調があります。要は、「森友学園の土地の値引き問題、加計学園の獣医学部新設に安倍総理が関わっていなかったことを説明しろ。」と言うのです。
しかし、これこそまさに、「・・・していない。」ことを説明しろというのですから、「悪魔の証明」と言わなければなりません。いくら安倍総理に「説明しろ。説明しろ。」と求めても、「そのような事実はない。」と言われれば、それで終わりです。逆に、「安倍総理が関与していた」と主張する野党の方に証明責任があると思うのです。
それにしても、今回、明らかになったのは、獣医師不足であるにも拘わらず、52年間も獣医学部の新設がなされていなかったことです。獣医師の数を増やさず既得権益を守ろうとする獣医師会の圧力に、文部科学省が永年に亘り迎合し、政権与党もこれを支持してきていたということです。それに風穴を開けたのが、今回の加計学園の獣医学部新設です。むしろ、画期的であると評価する方が正しいような気がします。
(これから先は、大きな声では言えませんが・・・。)
それにしても、獣医師会は52年にも亘り、自分らの職域、既得権益を守っているのに、我が弁護士会は惨憺たる有様です。「何でも反対」の姿勢をとるものだから、誰も弁護士を守ろうとせず、近隣他業種からは職域を侵され、司法試験合格者は20年前の5倍近くまで増やされ、今や食えない弁護士が日本中にあふれています。将来性がないため、優秀な人材が弁護士を志望しなくなってしまっているのです。
国民からそっぽを向かれた社民党、そっぽを向かれつつある民進党と、我が弁護士会が何となく重なって見えるのは私だけでしょうか。私の目がフシ穴ならいいのですが・・・。