第107回   劇場化する国会を見て思うこと

第107回   劇場化する国会を見て思うこと
                                                         - 2017年8月4日

劇場化する国会を見て思うこと
 7月24日・25日と、国会閉会中にもかかわらず衆議院及び参議院の予算委員会が開かれました。いわゆる加計学園を巡る一連の疑惑に対し、安倍総理自ら疑問に答える機会をもった場面です。野党が追及する根拠は、安倍総理と加計学園の理事長が親しい間柄であったため、加計学園のために政府が何らかの便宜を図ったのではないかということに尽きると思います。政府が安倍総理の意向を忖度し、加計学園に有利な取り扱いをしたかどうか、新聞やテレビの報道だけでは判断することはできません。したがって、この点に関し、軽々に発言することはできません。
 しかしながら、国会中継などを見ていて私が思うのは、国会があまりにも劇場化されすぎているのではないかという点です。テレビカメラが入っているため、ある程度、カメラを意識することはやむを得ないとしても、テレビうけするようにパネルを使ったり、あるいは大きな声を張り上げたり、あるいは身振り手振りでパフォーマンスをしてみたり、見ている人の関心を誘うように行われていると言わざるを得ません。
 東京都知事選以降、安倍政権の支持率は急落しているため、安倍総理も何とかここで支持率の低下に歯止めをかけなければ自分の政権が持たないと思い、閉会中であるにもかかわらずこのような委員会を開くことにしたと思われます。確かに、支持率が下がれば、その後の様々な選挙に影響が出るため、何とか支持率を回復しなければならないという台所事情が分かります。ただ、政治は単に人気投票ではないはずです。いかに国民から嫌われようとも決断して実行する場面も出てくるのではないかと思います。支持率が上がろうと下がろうと、そのようなことに一喜一憂することなく、大局的視野に立って政治的決断をすることが真の政治家に求められているのではないでしょうか。例えば、安倍総理の祖父岸信介総理大臣がアメリカと日米安保条約を締結したときなどがそれだろうと思います。
 自民党が政権の座を民主党に奪われる前を思い出して下さい。一年ごとに総理大臣がコロコロ変わりました。また、民主党政権になって、鳩山・菅・野田と3人総理大臣が替わりましたが、この時代が日本を最も悪くした時代と言っても過言ではありません。そこから何とか立ち上がって今まで日本を引っ張ってきたのが安倍内閣であったと考えられます。確かにマスコミが報道するように安倍総理の国会での応答の仕方が不遜であったなどという側面はあるにしても、真に日本の国益を考えたとき総理大臣をコロコロ変えるべきではありません。一般国民も、「あの総理は態度がでかいからもうダメだ。次の総理にすげ替えるか。」などという単なる好き嫌いで判断するのではなく、どの人が国民の多数を幸福に導いてくれるかということを考えて選ぶべきです。安倍総理は積極的に外交を展開し、国際的に高い評価を受けています。日本を取り巻く環境、特に北朝鮮のミサイル開発・中国・ロシアの脅威などに照らすとき、ここでまた日本が政治的に空白な時期に入ることは許されないのです。是非、我々国民が冷静になって、劇場型政治から脱却し、「大人の目」をもって政治を見守りたいものです。
 加えて、今回つくづく思ったのは、どの業界も、自分たちの既得権益を守るために必死であるということです。16の大学しか獣医学部を持っていなかった(昭和41年以降は新設されておらず、定員も930人で保たれてきていた)のは、「これ以上、獣医師を増やさせない。」という獣医師会の強い働きかけがあり、それを文部科学省も一丸となって守ってきたからです。これに対し、「何でも反対!」の弁護士会の場合はどうでしょうか。司法試験制度が改正され、法科大学院が設置され始めたのが今から15年ほど前です。今まで1人の司法試験合格者を出したことのない大学でも、猫も杓子も、法科大学院を設置しました。獣医学部とは違い、文科省が法科大学院を粗製乱造したのです。それまで500人だった司法試験合格者を「3000人にする」との政府方針のもと、増加の一途をたどり、その結果、弁護士の数は、1万2000人から3万6000人へと急増しました(大分県弁護士会は60人から160人に増加)。そして、「食えない弁護士」、「事務員を雇えない弁護士」、「事務所のない弁護士」が大量発生し、弁護士希望者が減少してしまったのです。「何でも反対!」と言ってきたので、誰も助けてくれなくなったツケが、今、弁護士自身に襲いかかってきているのです。弁護士会も、獣医師会の爪の垢でも煎じて飲む必要があるのではないでしょうか。
 梅雨が明け、連日30度を超す猛暑日が続いていますが、体調など壊されていないでしょうか。是非お身体に留意されて、この暑い夏を乗り切って下さい。