第106回   「表の顔」と「裏の顔」

第106回   「表の顔」と「裏の顔」
                                                         - 2017年7月7日

「表の顔」と「裏の顔」
 「このハゲー!」「バカかお前は!」
 言うまでもなく、これらの発言は今最も話題となっている豊田真由子衆議院議員が元秘書に対して車中で吐いた暴言のほんのさわりの部分です。豊田議員は10歳以上年上の男性秘書に対し、暴言のみではなく暴行も加えていたというのですから開いた口がふさがりません。ワイドショーや週刊誌が飛びつく極上のネタです。これに対し、国会で豊田議員が質問しているところは、遠目に見れば美人であるし、上品でチャーミングな印象を持ちます。前者が「裏の顔」であれば、国会での顔は「表の顔」というべきでしょうか。
 私が良く知っている中にも、①「表の顔」は弱者救済を標榜する正義の味方の弁護士、「裏の顔」はパワハラ、セクハラ親父、②「表の顔」は奉仕の理想を熱く語る敬虔なロータリアン、「裏の顔」は従業員を酷使し、金に執着の強い経営者、③「表の顔」は法を厳正に執行する裁判官、「裏の顔」は女房の尻にしかれているマゾ男、④「表の顔」は人の生命を救う医師、「裏の顔」は女性専門の下着ドロボー、などいろいろいます。加計学園問題で安倍政権を断罪している元文部科学省の事務次官前川喜平氏にしても、「表の顔」は文部科学省のエリート官僚、「裏の顔」は歌舞伎町の「出会いカフェ」に通う単なるすけべ中年親父でした。ジキルとハイドの話は有名ですが、あれほど極端にならずとも人間誰しも二面性(「表の顔」と「裏の顔」)を持っています。今回の豊田議員の秘書についても、報道では気の弱い善良そうな秘書という印象(「表の顔」)ですが、こっそり豊田議員との会話を録音していたり、これを週刊誌に売りつけていたりと、こちらが「裏の顔」と言えるかもわかりません。
 このように、人間には「表の顔」と「裏の顔」があることは今更言うまでもありません。弁護士のように、食うか食われるかというようなギリギリの状況で勝負する場面に出くわすことの多い職業の者からすれば、最終的にその人の本性に出くわすことはよくある話です。人間、ギリギリの状況になったときに本性(裏の顔)が出てくるものです。その時点で、その人の育ちの善し悪し、人間性の善し悪し、感性の善し悪しなどがよくわかります。
 このように「表の顔」があったり「裏の顔」があったり、また激しい感情で怒鳴り立てたり、暴行したり、いろんなことが起きるから「人間」というのは可愛く愛すべき存在だといえるでしょう。かく言う私も「表の顔」と「裏の顔」があります。「表の顔」は、社会正義の実現や基本的人権の擁護のために日夜活動する弁護士。これに対し、「裏の顔」は・・・(これは言わぬが花)。
 皆さん方も、ご自分の「表の顔」と「裏の顔」について、よく冷静に考え、自己分析し、なるべくその二面性を無くすように努力をしてみませんか。二面性がなくなれば、いつか聖人君子になれるかも・・・。
(付言)
 この原稿を書いている最中に、稲田朋美防衛大臣が都議選の自民党応援演説の際に「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい。」と述べ、大問題になっているというニュースが飛び込んできました。大学の後輩である稲田大臣には頑張ってもらいたいところですが、安倍総理も次から次と頭が痛いと思います。心中お察し申し上げます。