第67回  灯火がまたひとつ・・・

第67回  灯火がまたひとつ・・・
                                                         - 2014年2月7日

灯火がまたひとつ・・・
 先日、久しぶりに夜の別府の飲み屋街を歩きました。ほとんど人間が歩いておらず、閑散とした状態でした。その数日前、福岡の夜の天神を歩いたところ、若者や中高年や女性で溢れかえっていました。アベノミクスの効果も、まだまだ地方都市には下りてきていないということをつくづく実感しました。
 そのような中、またひとつ別府の灯火が消えそうになっています。
 「ヒットパレードクラブ」です。
 経営母体である株式会社窓が自己破産し、私が破産管財人に選任されました。「窓」といえば、私が子どもの頃は、「マンモスクラブ窓」の名称でなじみがありました。その後、「ヒットパレードクラブ」というライブバンドを中心としたアメリカのオールディーズの店に仕上げていたので、その名前の方が知れ渡っていると思います。私自身も、一度くらいは行ったことがあると思っていましたが、破産管財人になって店に入ったところ、これまでまったく足を踏み入れたことがないことに気がつきました(あるいは、泥酔していたので、記憶がないのかも・・・)。店舗内は老朽化はしているものの、通常のスナックやクラブとはまったく違った雰囲気を醸し出しており、こういう雰囲気が好きな人にはたまらないだろうなあと思いました。別府の一つの名物店であったと言ってもよいでしょう。その名物店が灯火を消すことは別府市民のみならず、大分県民としても非常に淋しい限りです。
 現在、何とか引き続いて営業してくれる人を捜している状態です。
 破産物件にはふたつのものがあります。誰にも見向きもされずに解体され廃棄されていってしまう運命の物件。それに対し、物体としての価値はそれほどないけれど、そのものの名前や思い出や歴史などがある物件。本来、破産事件ですから解体して処分すればいいだけのことなのかも知れませんが、その物件に詰められた人々の思い出や感情などを解体して処分してしまうことは如何とも忍びないところです。裁判所から特にどのような処分をしろという指示が来ているわけではありませんが、破産管財人として、「ヒットパレードクラブ」の最後に関与することになった以上、何とかこの別府の灯火は消さないような形で努力してみたいと最後のあがきをしているところです。
 景気が回復し、別府の夜の街に人が溢れ、また、「ヒットパレードクラブ」の前に行列ができるような時代が来ることを心から祈っています。