第17回 免許返納

第17回 免許返納
-2009年12月11日

免許返納
高齢者の運転免許保有者が免許を返納した場合に、色々な特典制度が受けられるということが新聞に載っていました。確かに、車を運転していると、制限速度をはるかに下回るスピードで運転して、流れを阻害していたり、或いは、交差点などの信号を無視するような危ない運転をしているドライバーを見かけ、よく顔を覗き込むと高齢者のドライバーだったりすることがよくあります。自分が事故に遭ったり、或いは第三者を事故に巻き込まない為にも、高齢で、運転するに適さなくなった段階で潔く免許を返納するということは、その通りだろうと思います。
ただ、私の地元である国東半島などの山間僻地に住んでいる人間にとっては、車がなければ買い物にも行けないという状況もあり、一概に高齢者だから免許を返納しろとは言えない事情もあります。

翻って、我々弁護士や医者の場合にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
例えば、医者、特に外科医など、指先の運動神経が発達していなければ致命的な手術ミスをするような場合は、自らその衰えを認識し、メスを握らないという判断をすべきでしょう。以前、高齢の外科医が顔面の手術をし、患者の神経を切ってしまったという事件に遭遇したことがありますが、メスを握る医者などにとっては、その影響がすぐに出てくるので、自分でも自覚しやすいのではないでしょうか。

やっかいなのは、弁護士の場合です。弁護士自身が自分の能力の衰えに気付き、自ら潔く弁護士バッジを返納すればいいのですが、なかなか自らの衰えには気付かないのが一般的です。弁護士の場合、医者と違い、弁護士が名前だけ出して、あとは自分の家族や他の事務員などが弁護士に代わって書類を作成したりすることが可能な部分がかなりあります。法廷における尋問などは、当然弁護士でなくてはなりませんが、書類の作成だけであれば、必ずしも弁護士でなくても、ある程度の法律知識を持っている人間であれば、可能なのです。弁護士本人は、もはや弁護士としての能力がないにも関わらず、その弁護士の名前の下に家族や事務員などが実質的には法律業務を行っているという例が散見されております。特に、東京などは高齢で全く弁護活動ができない弁護士の名義だけを借り、事務員を何十人も雇って大量な過払金返還事務を行って荒稼ぎをしているという例も聞いております。

生活がかかっているため、なかなか弁護士自らバッジをはずすという決断をするのは困難だろうと思います。しかし、名が通った弁護士であり、活躍した弁護士であればある程、晩節を汚さず、自ら潔く弁護士バッジを返上する覚悟が必要なのではないでしょうか。先輩弁護士などと雑談している際、「60を過ぎたら、俺は弁護士を辞める。」と言われる方が多いのですが、みなさん70近くになっても弁護士活動を続けられておられます。言うは易く、自分がその歳になった時に潔く弁護士バッジを返上できるという自信はありません。しかし、常に引き際の潔さを念頭においておかなければ、自らの晩節に汚点を残すことになってしまうでしょう。