第140回  買収

買 収
1 今から30年ぐらい前の話。当時、○○地方検察庁にいた私の友人検事との会話。
私  「○○ちゃん、今の法務大臣、誰?」
検事 「知らん。興味もない。」
私  「だけど、検察庁は、一応、法務省の管轄下にあるんと違うんか?」
検事 「確かに、建前はそうや。しかし、現場の検事で、自分が法務省の一員だと思っているやつは一人もおらんと思う。
検察庁は検察庁や。
特に、法務大臣なんか1年ごとにコロコロ代わるから、名前すら知らん。法務省を牛耳っているのは検事や。」
私  「ほんなら、現場の検事は、法務省では誰が一番偉いと考えとるんか?」
検事 「そりゃ、検事総長やろ。政治家よりも検事の方が上で。
検事は捕まえる人、政治家は捕まえられる人で。」
私  「ふーん。」
2 去る6月18日、広島の河井克行前法務大臣(衆議院議員)と河井案里参議院議員夫妻が公職選挙法違反(買収)容疑で検察庁に逮捕されました。克行氏の容疑は、案里氏の昨年の参院選のときに地元の議員ら約100人に合計約2500万円を配ったという内容、案里氏の容疑は克行氏と共謀のうえ5人に170万円を配ったという内容です。配った相手が多いのと総額が大きいので、検察側も見逃すことはできないと考えたのでしょう。二人は容疑を否認しているとのことです(6月22日現在)が、もらった相手がほとんど認めていることや秘書らが有罪になっていること、その時期、などからすると、無罪になる可能性は極めて低いと思われます。そのうえ、否認していると保釈が仲々認められないので、裁判の間、ずっと塀の中かも知れません。河井夫妻にとって、つらく厳しい戦いが始まったと言っても過言ではありません。もっとも、本当に「買収する意思」がなかったのであれば、無実を主張するのは当然ですが・・・
3 否認しているので軽々に言うことはできませんが、今後の行方について若干述べさせていただきます。
(案里議員について)
渡した金額が170万円であり小さいこと、渡した相手も5人と少ないことから、仮に裁判になっても執行猶予付判決が出されることは明らかです。
もっとも、色も白く美人(?)であるので、検事の前でオヨヨと涙を流すなどして改悛の情を示せば、場合によれば起訴猶予(※①)もあるかも知れません。
(克行議員について)
対して、克行議員の場合は大変です。おそらく起訴は免れないでしょう。その場合、裁判所としては、①法をつかさどる(前)法務大臣であるにもかかわらず自ら違法行為を行っていること、②否認しており、改悛の情が認められないこと、③配った相手が約100人と、多数であること、④渡した金額も合計約2500万円と多額であること、などから実刑(※②)判決を言渡す可能性も否定できません。仮に実刑となれば、3年程度ではないでしょうか。
否認して、あくまでも無罪を求めるのか、認めたうえで改悛の情を示し執行猶予を狙って行くのか、難しい選択を迫られています。克行議員に「無罪」か「執行猶予」をもたらせることが出来たなら、その担当弁護士は大したものだと思います。

※①「起訴猶予」・・・犯罪を行ったことは認められるが、諸般の事情から刑事裁判にはかけずに終わらせること。
※②「実刑」・・・・・執行猶予を付けずに、実際に何年か刑務所に収監して労働に服させること。