第138回  緊急事態宣言の余波

緊急事態宣言の余波

政府が新型コロナウイルス感染症への対応策として、この大分県にも緊急事態宣言を出しました。それにより大分市の都町を初めとし、大分県内の人々はその職種を問わず大きな打撃を受けています。勿論、我々の弁護士事務所もそうです。それでは、この「緊急事態宣言」という聞き慣れない言葉、どのような内容なのでしょうか。簡単に言うと、次のようなものです。

<強制力のないもの>
①不要不急の外出自粛を「要請」
②学校、福祉施設、映画館、百貨店などに休業や使用停止を「要請」・「指示」など。

<強制力のあるもの>
①医療品や食品などの売り渡しを要請
→応じない場合は、物資の収用や保管命令が出せる。
②臨時の医療施設を開設するための土地、家屋を所有者の同意なくして使用することが可能。など。

この緊急事態宣言の発出そのものは現在のコロナウイルスの感染状況を考えると已むを得ず、支持します。また、人との接触を避けるために職場に出て来られず、自宅で仕事をするのも致し方ないことだと思います。
しかし、中にはどう考えても「便乗延期」と言わざるを得ないものがあります。それが、「判決言渡期日の変更(延期)」です。これまで民事事件を経験したことのない方のために解説します。民事事件は、訴える側(原告)が訴えられる側(被告)に対して「〇〇円を支払え。」という裁判を起こし、両者がそれぞれ証拠を出し合い、裁判所にて裁判官主導のもとで審理し、審理が終了した時点で(これを「結審」といいます)、何日後かに裁判官が判決を(法廷で)言渡すのです。結審から判決言渡までの間、その裁判の件で裁判官が関係者と会うことはありません。ひたすら訴訟記録や参考文献などとにらめっこして判決を書くのです。訴訟記録を持って帰って自宅(官舎)で判決を書くことも可能です。そして、法廷での判決言渡もほとんど時間がかかりません。「原告の請求を棄却する。」(原告敗訴の場合)とか「被告は原告に対し、金100万円を支払え。」(原告勝訴の場合)ぐらいの簡単な主文(結論)の言渡しのみですから(理由はかなり詳細に記載されていますが、これを読み上げることは普通いたしません)、人と濃厚接触することはほとんどありません。しかも、判決書は送られてくるので、ほとんどの当事者は裁判所までわざわざ聞きに来ません。
ところが・・・・・です。
今回の緊急事態宣言を受けて、判決言渡を2ヶ月も延期した裁判官がいるのです。判決言渡期日をいつにするかは担当の裁判官が独断で決めることが可能です(この頃は減りましたが、以前は、「判決言渡期日は追って指定する。」と言う裁判官もいました。要するに、「判決が書けたら言渡しをするけど、いつ書くかは自分が好き勝手に決める。」というのです)。しかし、結審から判決言渡まで、その事件の関係者と接触することはないのだから、どう考えても、判決期日を変更する必要はありません。自宅(官舎)で判決を書けばいいだけです。判決が中々書けないか、判決書きをサボるために今回の緊急事態宣言に便乗して延期していると言われても仕方がないのです。
裁判官には、首を長くして判決を待っている訴訟当事者の立場に立ち、何としてでも約束の期日までに判決を書き上げるという強い気概が欲しいものです。約束を守る、期日を守る「最後の砦」になってもらいたいものです。