その他の質問

※下記回答はす令和2年1月現在のものです。

私は、10年ほど前から両親とは絶縁状態になり、全く連絡は取っておらず、専業主婦をしながら夫と暮らしていました。ところが、先日、兄から連絡があり、両親が体調を崩して入院しており、退院の目処が全く立っていないとのことでした。兄は、今後、両親の医療費や生活費がかなりかかることが予想されるため、私も両親に対して経済的援助をするよう求めてきました。しかし、私方の生活も厳しく、とても援助できる余裕はありません。兄の請求に応じなければならないでしょうか。

ご相談にあるような年老いた親に対する子の扶養の問題は、近年の高齢化社会において、ますますクローズアップされている問題です。まず、扶養制度一般について説明すると、生活が困窮している親族に対しては、その者と一定の親族関係にある者は、経済的な援助を与えなければならない義務が法律上課せられています。これを扶養義務と言います(民法877条以下)。経済的に困窮している者への援助の方法としては、生活保護などの公的扶助制度と、親族間で行われる私的な扶養がありますが、親族による扶養の方が優先されることになっています。
 では、どのような親族関係にある者に扶養義務が発生するのかについてですが、まず、直系血族と兄弟姉妹については当然にお互いに扶養義務が発生します(民法877条1項)。さらに、3親等内の親族間においては、特別な事情があるときに限り扶養義務が発生します(同条2項)。そして、扶養義務者が複数いる場合、まず当事者間で協議して扶養する順序を決め、決められないときは家庭裁判所で決めることができます。具体的な扶養の方法については、やはり当事者間や家庭裁判所で決めることになりますが、扶養される者や扶養義務者の経済状況や資力、従前の関係などを基に決めることになります。
 よって、ご相談者の場合も、ご両親に対する扶養義務があることは明らかですので、お兄さんと協議して扶養の具体的な方法を決める必要があり、協議がまとまらない場合は家庭裁判所で判断してもらうこともできます。
 なお、ご相談者の場合、専業主婦であるためご自身の収入はないと思われますが、専業主婦だからといって当然に扶養義務がないというわけではありません。夫の収入のうち自由に使える限度で扶養能力が認められることもあります。

公正証書とは何ですか?どのような場合に作るものなのでしょうか?

公正証書とは、公証人役場で公証人に作成してもらう書類のことをいいます。一般的に公正証書作成の必要性が認められるのは、大きく分けて二つです。
まず一つは、公正証書遺言です。遺言を公正証書にしておくということです。遺言には、公正証書遺言と自筆証書遺言とがありますが、自筆証書遺言は、遺言の内容全部を遺言者本人が書かなければなりません。したがって、自分で字を書くことができない人は、公証人に頼んで公正証書遺言を作ることになります。
もう一つは、人にお金を貸した場合等、あらかじめ、その契約内容を公正証書にしておき、最後に強制執行受諾文言という文書を公証人に書いておいてもらうことです。
後者の場合に公正証書にしておくのは次のような理由があるからです。
例えば、人にお金を貸したがその人がお金を返さない場合、通常であれば裁判を起こし、裁判所からの判決に基づいて強制執行しなければなりません。しかし、公正証書に直ちに強制執行を受けても差し支えない旨の記載があれば、公正証書に基づいて、すぐに強制執行の手続ができるのです。この場合、裁判を起こす必要はありません。
ただし、どのような場合でも大丈夫というわけではありません。
例えば、家の貸し借りに関して公正証書を作成した場合、期限に家を明け渡す旨の記載をしていても、期限に出ないからといって明渡しの強制執行をすることはできません。家賃の支払等、金銭に関する約束についてだけ強制執行ができるのです。このように金銭の支払に関する事項については、公正証書は判決と同じ効力を持ち、すぐに強制執行によって目的の達成ができるのです。
強制執行をするには、まず公正証書の正本を公証人役場に持参し、公証人から執行力が生じたことを示す「執行文」を付与してもらいます。この執行文の付いた公正証書によって、裁判所に差押え手続を申し立てるという手順になります。強制執行を開始するには、公正証書の謄本が相手方に送達されていることが必要です。公正証書を作成したとき、相手方にも一通渡されますがそれだけでは駄目で、執行する際に改めて相手へ公正証書の謄本を送達することが義務付けられています。家財道具などの有体動産の差押えは、執行官が差押えを行った際に差押えの謄本を同時に送達してもらうこともできます。
しかし、債権に対する強制執行は裁判所が行うので、事前に公正証書の謄本を相手に送達して、その送達証明書を添付して執行の申立をしなければなりません。公正証書は、双方が公証人役場に赴き、公証人に作ってもらいますので、作り方は公証人役場に相談すれば教えてくれます。

この度、私は、不動産を購入する予定です。一般的に、不動産を購入する際に注意すべき点などがあれば教えてください。

土地や建物といった不動産の購入は、金額が大きく、権利関係も複雑になりがちなことから、十分な調査をすることが大切です。
調査の方法としては、登記簿等の調査と現状の調査とが考えられます。

(1)まず、売買をするうえでの大前提として、その対象となる不動産が売主の所有であることを確認する必要があります。
この調査は、法務局の登記簿や公図等を閲覧し、売主から権利証の提示を求めるなどして行います。しかし、登記簿の記載は必ずしも真実の権利関係を反映していないことがあり、公図も土地の形状を正確に示していないことがありますので、登記簿や公図を漫然と信じることは危険です。また、登記簿の調査では、対象不動産に地上権など買主の使用を制限する権利や抵当権などの担保権が設定されていないかを確認する必要があります。
もし、担保権がついていた場合には、「売買契約時に担保権者に対して、売買代金の中から担保権の被担保債務の返済をしてしまい、残額を売主に支払うことで、担保権のない不動産を購入する」との方法が買主から見て一番安全な取引形態でしょう。

(2)つぎに、実際に現状の調査をすることが大切です。その基本は、やはり実際に現地に赴いてみることでしょう。登記簿には、土地の所在、地目、地籍、建物所在、種類、構造、床面積等が、記載されていますが、これを現地で確認する必要があります。
また、土地が直接公道に接していない場合には、公道に通じるまでの通行使用権の有無を確認しなくてはなりません。加えて、建設基準法や都市計画法などの法令による建設制限についても確認することが必須です。
この他に、隣接する土地と売買の対象となる土地との境界を確認する必要もあります。隣地所有者に立ち会ってもらい、境界がどこにあるかを確定させないと、のちに紛争となる可能性が高くなってしまいます。
また、もしあなたが農地を購入して、そのうえに住宅を建てるつもりであるならば、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。この許可を受けないでなされた転用目的での売買は無効であり、買主は土地の所有権を取得することができないので、注意が必要です。

(3)いままで述べてきましたように、不動産購入には多くのリスクがあります。そして、不動産購入に失敗しないための最大の秘訣は、いかに権利関係を調べ上げるかにあるのです。

不動産の購入に失敗し、訴訟となるケースは山のようにあります。一生に何度もある買い物ではありませんので、不動産購入の際には、労を厭わず、出来る限り調査したほうがよいでしょう。

高齢の母が度々物忘れをするので病院に行ったところ、軽度の認知症と診断されました。お医者さんの話では今後症状が進行するおそれがあるとのことでした。母には不動産や預貯金などの財産があるのですが、もし母の症状が悪化してしまった場合、どのように管理していけばよいでしょうか。

認知症や精神障害などのために自ら財産を管理することができなくなってしまった場合、親族を含む第三者が本人の了解なく財産を処分することはできません。そのため、本人の生活費や医療費などをその財産から支出することができず、家族が困ってしまうケースは珍しくありません。
判断能力が不十分な本人に代わって第三者が財産の管理をするためには、その第三者に法律上の権限が必要となります。そのための手続の一つに、成年後見制度があります。
成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。

まず、任意後見制度とは、任意後見契約ともいい、本人にまだ判断能力が充分ある時点で、本人が第三者(受任者)との間で契約をして、本人の判断能力が不十分な状態になった際に生活の世話や看護、財産の管理などをすることを委託する制度です。特徴としては、第三者に委託する内容を本人自身が決めることができる点があります。なお、現時点で判断能力に問題はないものの、身体が不自由などのために自身での財産管理等が困難な場合に、その時点で通常の委託契約を締結し、それと同時に将来判断能力が不十分な状態となることに備えて、任意後見契約を締結するケースもあります。

つぎに、法定後見制度とは、家族等の申立てにより、家庭裁判所が成年後見人を選任することにより、判断能力を失っている状態の人を保護・支援する制度です。判断能力が不十分な人を保護・支援する制度は、判断能力の程度により、「後見」、「保佐」、「補助」の3つの類型がありますが、後見は、強度の認知症など、精神上の障害の程度が著しく判断能力が欠けているのが通常の状態である人の場合に適用されます。成年後見人は、本人に代わって財産上の法律行為を行うことができます。

このように、任意後見制度と法定後見制度にはそれぞれ特徴があり、保佐や補助といった他の制度もありますので、本人の現状に即した手続を検討する必要があります。ご心配であれば一度専門家に相談されることをお勧めします。

私と同居する85歳の父親が数年前から認知症を発症し、これまで面倒を見てきましたが、私の顔も分からないほど症状が進行しています。父は、資産家で悪徳商法などにより資産を費消しないか心配です。最近、近所の人から私が成年後見人になったらどうかと言われましたが、成年後見人とは一体どのようなことをする人なのでしょうか。

認知症や障害により、1人で預貯金を引き下ろせなかったり、悪徳リフォーム業者等に騙され、支出する必要の無かったはずの高額代金を支払うような、自分の行為の結果を判断する能力を常に欠き、適切な社会経済生活を送ることが困難と思われる人を法的に保護する制度を、成年後見制度と言います。

成年後見制度を利用するには、申立権者が、成年被後見人となる本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、後見開始の審判を申し立てることが必要です。申立権者は、本人、配偶者、4等親以内の親類などと法律上されています。
家庭裁判所は申立てを受けると、医師などによる本人の精神状況の鑑定、医学的な見解を参考にしたうえで、本人や家族の意見も聞き後見開始の審判を判断します。
開始の場合、本人は成年被後見人となり、成年被後見人の財産を管理し、財産上の行為を行うべき成年後見人が選任されることになります。
成年後見人には本人の家族が多いのですが、親族間紛争や権利関係が複雑化している場合等は、弁護士や司法書士等の第三者が選任されます。

成年後見人には、成年被後見人の行った財産上の行為を取り消す権限が付与され、悪徳商法に引っかかった場合や不必要な高級品を買ったような場合、これを取り消し、支払った金銭等を取り戻すことができます。
成年後見人の仕事は、成年被後見人の財産を調査、財産目録を作成して、今後の成年被後見人の生活方針を立て、裁判所に報告することです。
第一回目の報告後、成年被後見人の収支を管理、帳簿に付け、適切に財産管理をしていきます。また、施設入所契約等を締結する場合は、成年後見人が代わって契約を締結します。
このように、成年後見人は、財産を一手に管理しますが、決して自らの私利私欲のために費消することは許されません。また、その仕事は原則として、成年後見人が死亡するまで続き、定期的に裁判所に対して業務の報告を行うことが必要となります。

質問者の場合、父との関係に問題が無く、他の親族が反対の意見を述べない場合、質問者が成年後見人に選任される可能性が高いと思います。ただし、成年後見人には、大きな権限と責任が同時に付与されますので、選任されたのちは、父のために適切に財産を管理し、満足の行く余生を過ごせるよう、意思を尊重してあげてください。

突然、あるサイトを使用したとして、高額な請求の電話が来ました。どうしたら良いのでしょうか。

今回は、インターネット等を利用した際に、架空請求や不当請求をされた場合についてお話しします。
突然、携帯電話や自宅の電話に身に覚えのない会社から高額な利用料等の請求を受けたことはありませんか。
通常、架空請求や不当請求をしてくる場合、情報提供料、違約金等の名目で請求させることが多いです。
上記のような架空請求、不当請求に対して、どのような対応をとればいいのでしょうか。
まず、請求先のサイトにアクセスすらしたことがない場合、つまり全く身に覚えのない場合については、相手方の請求自体が、詐欺等に該当する可能性が高いです。
この場合には、警察に通報してもよいですし、そこまでするのは面倒くさいというのであれば、放置すればよいのです。
次に何らかのアクセスをしていた覚えのある方、この方の場合には対処の仕方が若干異なります。アクセスした場合、契約が成立するか否かが問題になります。
よくあるのが、利用申込みの画面にならず、突然、あなたとの契約は成立しました。などという画面があらわれるケースです。
このような場合には、その契約自体は成立しておりません。きちんと利用申込み画面が出て、その利用申込み画面の構成上、画面上の操作によって契約の申込みをしていることがきちんと認識できる構造になっているかどうかで決まります。
簡単にいってしまえば、このサイトを申し込めば利用料等はいくらかかりますよ、解約する場合にはこのような手順を踏んでください等、細かく契約条件が書かれ、それを納得した上で、パソコンの操作上、契約の申込みができているといえるか否かにより決まるということです。
なお、仮に契約が成立する場合であっても、消費者契約法に反する高額な違約金を請求される場合もあります。
このような場合にも、当然、消費者契約法上の利率(14.6%)を超えて支払う必要はありません。
架空請求・不当請求は今後も無くなることはないと思います。とにかく、架空請求・不当請求をされた場合には、怖くなってすぐに代金を振り込むということはせず、本当に契約は成立しているとしても請求額は妥当なのか、と一度冷静になって考えるべきでしょう。

私の甥が今年大学を卒業、新社会人として大手メーカーに入社することになり、会社から身元保証書の提出を求められ、私に身元保証人となるように頼みにきました。
私が身元保証人となった場合、どのような法的責任を負うことになるのでしょうか。

(1)身元保証契約とは、従業員の行為により使用者が損害を受けた場合にこれを身元保証人が賠償することを約束する旨の契約であり、使用者と身元保証人との間で締結されます。
責任を負う具体例に、集金係の従業員が集金した金銭を自ら費消して横領してしまった場合が考えられるでしょう。

(2)「身元保証ニ関スル法律」は、以下のとおり、責任の範囲を限定しています。
まず、契約の存続期間は、期間の定めがない場合には原則3年とされ(同法1条)、期間の定めがあった場合でも5年を超えることはできない(同法2条)と定められています。また、契約を更新することはできますが、自動更新の約定は無効とされていることから、実際には5年を超えて勤務している従業員が使用者に損害を与えたとしても、身元保証の期間が満了しており、責任追及を受けなくて済むことはあるでしょう。
また使用者は、従業員に業務上不適当の事由があって身元保証人に責任を生ずるおそれが生じた場合や、担当業務、勤務地の変更によって保証人の責任が重くなり、または監督が困難になる場合(たとえば、従業員の仕事内容が法務から経理に変わった、転勤で遠隔地に長期間行くことになった等)は、その旨を遅滞なく身元保証人に通知しなくてはなりません(同法3条)。この通知を受けた時、通知がなくても事実を知った時には、将来に向けて契約を解除できます(同4条)。

(3)契約の有効な存続期間中に横領等の不法行為をした場合、身元保証人は使用者に生じた損害につき賠償する責任を負います。しかし、損害の金額を賠償する責任を負わず、法律によって責任が軽減されています。
一番影響を与える事項は、監督上の過失やその程度です。使用者の監督に不備があった場合、損害賠償義務は大幅に減額されます。親族・親戚関係から断り切れずに身元保証を引き受けた等の事情も、軽減の一要素として考慮されます。

(4)このように身元保証人の責任は法律により軽減されますが、責任がゼロということはまずありません。法的責任を負う以上、甥に対し、勤務先はどのような業種の会社で、担当する業務は何なのか、転勤の可能性や配置換えの可能性等について、十分な情報収集をしたうえで、身元保証人になるか否かを決めていただきたいと思います。

知人から「貸金業者からお金を借りたいが、絶対に迷惑はかけないので保証人になってくれないか」と頼まれました。保証人になるかを決めるうえで、どのようなことに気をつければよいでしょうか。

借主が十分な金銭をもたず貸金を支払えない場合、保証人が借主に代わって貸金の全額を支払わなければなりません。支払わない場合、貸主は保証人の不動産や給与債権に強制執行をかけ、全財産を投げ出さなければならず、その責任はみなさんの考える以上に重たいものです。
 そこで、保証人になる際の注意点をいくつか挙げます。

第一に、借主に返済の資力があるのか、貸主が他に確実な物的担保(抵当不動産など)を取っているかに着目してください。資力に不安がある場合、保証人に支払いの請求がくる可能性が高いといえるので、保証を断った方が賢明です。

第二に、保証条件を十分に検討するべきです。保証する債務の額、保証する期間はいつまでかの確認が大切です。

第三に、保証契約の形態が連帯保証か、通常保証か、他に保証人がいるのか確認しましょう。
単なる保証は、貸主はまず借主に支払の請求をしなくてはならないなど保証人は2次的責任しか負わず、他に保証人がいれば分別の利益(借主の債務の額を保証人の頭数で割った分だけ返せばよい)もあります。一方、連帯保証は、貸主は借主に請求せずに最初から保証人に支払の請求することができ、また分別の利益もなく、保証人は各自が残債務の全額を返済する義務を負います。

第四に、保証内容が普通保証か根保証かを確認してください。
普通保証は、保証した金額についてのみ保証をすれば法的責任を果たしたことになりますが、根保証では、保証した取引に基づくすべての債務につき保証しなければならないため、責任が重たくなります。

第五に、貸金業者からの借り入れかどうかを調べるべきです。

一般に、貸金業者からの借り入れの場合、その債権の回収につき厳しい取り立てが待っている可能性があります。近年の貸金業法改正により暴力的取り立ては規制されていますが、いまだ非常識な時間帯に電話をかけてきたり、保証人の家族に返済を要求するなどの違法な取り立てをする貸金業者も存在します。
以上が保証人になる際の注意点ですが、一番大切なことは、いくら親しい友人や親族からの保証人の申し入れであっても、保証人はその全財産をもって貸金の支払いをしなくてはならないのですから、情に流されず、本当に保証人になっても良いのかを自らの頭で判断することです。

隣家の樹木や枝が伸びてきて、私の家の敷地にまではみ出しています。
毎年、落葉の時期になるとものすごい量の落葉が私の庭先に溜まってしまい掃除が大変なのです。また、樹木の根が隣家との境界にあるブロック塀の下から私の庭先にまではみ出してきて、土地がでこぼこしている状態です。いつも根っこに足を引っ掛けそうになり、大変です。
私の敷地の上にはみ出しているのですから私の方で枝や根を切ってしまってもよいでしょうか?

ご近所との境界線を巡るトラブルは一見些細な揉め事のように見えても、ひとつ交渉・処理の手順を間違うと後々まで深い禍根を残しかねませんから、まずは冷静かつ慎重な対応をとられることをお勧めします。
さて、隣家の樹木の枝や根が自分の敷地内に伸びてきて困っているということですが、この場合の法律関係については「民法」に条文がありますのでご紹介します。

民法233条「竹木の枝の切除及び根の切り取り」を見てみましょう。同法1項は、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その枝を切除させることができる。」と定めています。つまり、隣の庭先から伸びてきた枝が自分の敷地にまではみ出ている場合は、敷地の所有権が侵害されていることになりますから、木の所有者にはみ出している枝部分を「切除させる」ことができるわけです。あくまでも、「切除させる」ことができるだけですから、相手方に無断で枝を切ってしまうことは出来ません。相手方がどうしても切除に応じなければ、裁判手続きを経て強制執行することになります。
もっとも、どのような場合でもはみ出した枝の切除を要求できるかと言うと、そうではありません。裁判例によると、枝がはみ出していることにより落葉被害などの何らかの被害が生じていたり何らかの被害が生ずる恐れがあることが要求されています。

根については、同法2項が、「隣地の竹木の根が境界線を越える時は、その根を切り取ることが出来る」と規定していますから、はみ出した根は自分で切り取ってしまうことが出来ます。ただし、いくら法律があるからといって、本当に隣家に無断で根っこを切り取ってしまったりすると、無用な紛争の原因ともなりかねませんので、まずは穏便な話し合いを申し入れることをお勧めします。

姓名判断で金運に恵まれずこのままではお金の苦労が絶えないと言われました。氏名を変えたいと思っていますがなかなかできないとも聞きました。難しいのでしょうか。

氏名は個人を認識する重要な要素ですから、むやみに変更することはできません。その変更の手続きは、家庭裁判所に変更許可の申立をする方法で行われます。
  氏の変更は、戸籍法107条第1項によって「やむを得ない事由」が必要とされています。 裁判所が変更を許可するか否かは、客観的・社会的にも「やむを得ない事由」があるかどうかがポイントとなります。認められた事例としては、珍奇・難解・難読な氏、永年使用(氏の場合は30年程度の使用が必要と言われています)、氏の使用による社会的差別や精神的苦痛を理由とするものなどがあります。 少しユニークな事例としては、外国人と結婚した日本人が、夫婦双方の氏を結合した氏への変更を家庭裁判所に申し立てた事例があります。この事案で裁判所は、その氏が外国で通称として銀行口座などで使用されていること、変更を認めないと日常生活や社会的な手続きに多大な不便が生じることなどを理由に、氏の変更を認めました。 本件のように姓名判断という理由のみでは客観的・社会的に「やむを得ない事由」があるとはいえず、氏の変更は困難と考えます。
  名の変更も、戸籍法107条の2によって「正当な事由」が必要とされています。もっとも、名の変更は氏に比べて社会的影響が小さいため、氏の変更よりも緩やかな要件と考えられています。 「正当な事由」としてみとめられたものとしては、珍奇・難解・難読のほか、営業上の目的から襲名する必要がある場合があります。また、永年使用し(長いほど良いですが、成年の場合は通常5年以上、子供の場合はもう少し短くてもよいと言われています)通称として通用している場合で、戸籍上の呼称を使用するとかえって社会生活上著しい支障が生じる場合には、名の変更が認められる余地があります。
  本件のように姓名判断という理由のみでは名の変更も困難ですが、新しい名を5年以上継続して使用したという実績があれば、永年使用により名の変更は認められる可能性があると考えます。

友人がアパートを借りる際の連帯保証人になりました。2年後、契約の更新時期、友人は賃貸借契約を更新しました。ところが、更新後、友人は賃料を滞納するようになり、現在では敷金では賄いきれない滞納家賃があるようです。私は、契約当初には連帯保証人になりましたが、契約更新時に改めて連帯保証人になった覚えはありません。
それでも大家さんから保証人の責任を問われたら滞納家賃を代わりに支払わなければいけませんか?

責任の重い連帯保証契約の締結には特に慎重さが要求されます。とはいえ家族や知人が部屋を借りる際などには、頼まれて連帯保証人になってしまう人も多いでしょう。賃貸借契約の連帯保証人には、滞納家賃や退去時の原状回復義務等について賃借人に代わって弁済する義務があります。賃貸借契約の保証は日常的に行われているとはいえ、保証債務の内容等を十分理解した上、連帯保証契約締結には慎重な態度で臨むことが肝心です。
この場合、大家さん(不動産業者)によっては、<※1>賃貸借契約更新の際に改めて連帯保証人の合意書面や署名捺印などを要求する場合もあれば、<※2>賃借人に更新書面の提出を求めるだけで連帯保証人について再度の更新手続きを要求しない場合もあります。特に<※2>は、更新後の債務について保証人は何ら責任を負う必要はないように思えます。
しかし、「期間の定めのある賃貸借において、賃借人のために保証人が賃借人との間で(連帯)保証契約を締結した場合には、特段の事情がある場合を除き、契約更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務(滞納家賃の支払義務など)についても保証人としての責任を負う」というのが最高裁判所判例の立場であり、原則として保証人の責任は賃貸借契約更新後も存続します。賃貸借契約は更新されるのが普通であり、保証人になろうとする者は将来契約が更新されることを当然に予測できるのだから、更新後の債務について責任を負わせても不合理ではない、というのがその理由です。
もっとも、保証人が当初から「更新後は保証人にならない」旨を表明したり、更新後の債務について保証責任を負わせるのが「信義則」に反すると認められるような特段の事情がある場合には、例外的に保証責任を免れる場合もあります。また、賃貸人の家賃滞納が長期に亘って継続しており、将来も家賃支払いの見込みがない等の場合には、保証契約の解除が認められることもあります。

いずれにしても、賃貸借契約の連帯保証人になる場合には、更新後の保証関係について事前に不動産業者等に十分確認し、契約更新の際には改めて連帯保証人の合意書面等を要するような契約形態(前記<※1>)にしておくのが良いでしょう。

スポーツクラブのプールで行われた水中体操に参加後、水着のままロッカールームに通じる廊下を歩いていたら、廊下にたまっていた水に足をすべらせて転倒し怪我をしました。クラブに治療費のことを話しましたが、会員規約に「施設内の事故には責任を負わない。」との規定があるので支払うことはできないと言われました。責任をとってもらうことはできないのでしょうか?

民法717条は、「土地の工作物」の「瑕疵(かし)」によって他人に損害を加えたときには、工作物の占有者または所有者が損害を賠償する責任を負うと規定しています。

まず、「土地の工作物」とは人工的に土地に接着して設置された物をいいますので、本件でのクラブの廊下は「土地の工作物」にあたります。
問題は、廊下に「瑕疵」があるといえるかどうかです。「瑕疵」とは、通常備わっているべき安全性を欠くことを意味します。つまり、その「土地の工作物」が、本来の用法に従って利用されることを前提とした場合、備わっていることが一般的である、通常であるといえる程度の安全性を有していない場合には、「瑕疵」があると認められます。
また、「瑕疵」の有無を判断する際には、工作物を設置している者の管理体制といった点も考慮されることがあります。

本件のクラブの廊下がどのような状態であるかは明確ではありませんが、仮に水がたまりやすい構造になっていたこと、水がたまると滑りやすい材質であること、素足で通行すると転倒する危険があること、それにもかかわらずクラブが危険を防止する有効な対策をとっていなかったことなどの事情があれば、本件廊下には素足で通行する人にとって滑りやすくなるという危険性が存在するので、通常備わっているべき安全性を欠くと判断される可能性が高いといえます。
したがって、そのような場合には本件廊下に「瑕疵」があるといえ、クラブに対し損害(治療費の外、通院交通費、休業損害、慰謝料など)の請求をすることが可能と考えます。
なお、会員規約に免責条項があるようですが、本件のようにクラブの責任の全部を免除する条項は、消費者である会員に一方的に不利な条項として消費者契約法により無効となる可能性が高いといえます。

月7万円で住居を借りていますが、半年前に大家さんから家賃を10万円に値上げするという通知がきました。値上げに応じることが出来ないと考え以前の家賃を持って行きましたが、大家さんは受け取ってくれません。やむなく供託していましたが、先日大家さんから家賃を払わないから契約を解除するという通知がきました。どうしたらいいですか。

家賃額については、借地や借家の価格に変動があったり、近隣の同種の建物の家賃と比較して不相当な額となっている場合には、家主及び借主は、相手方に対して、将来に向かって賃料の増減を請求することができます(借地借家法32条1項)。
そのような賃料の増減請求がなされた場合、増減後の家賃額について家主と借主の間で合意ができなければ、最終的には裁判で適正金額を決めることになります。
裁判では、証拠調べ、鑑定人の意見を聴くなどするため、適正額が決まるまでにある程度時間がかかります。
適正額が決まるまでの間、いくら払えばよいか迷われるかもしれませんが、借地借家法では、家主からの増額請求に対して借家人は相当と思う家賃を支払えばよいことになっています(借地借家法32条2項)。
支払うといっても、本件のように大家さんが受け取ってくれない場合には、あなたが考える「相当額」を法務局に供託すればよいのです。
あなたが従前の家賃額を相当と考え、その額を供託しているのであれば、未払いにはなりません。
ただ、後に月額10万円が適正との裁判が確定した場合には、供託額との差額3万円について、その支払期から年1割の利息を余計に支払わなければなりません(借地借家法32条2項但し書き)。
ですから、裁判確定までは適正と思う賃料額を供託し、仮に裁判でそれより高い金額が相当額とされた場合には、不足額と1割の利息を支払えば、家賃の未払いにはなりません。

したがって、あなたには家賃の未払いはなく、大家さんからの契約解除の通知に効力はありません。賃貸借契約は継続していますので、心配する必要はありません。

「登記とはどのようなものでしょうか。」

不動産、土地や建物などを買ったり、相続で取得したりした場合に、その不動産が誰の物かをはっきりさせなければ、その不動産に関して権利関係を持とうとする人に混乱が生じます。そのため、不動産に関する権利関係を明確にするため、法務局に備え付けの登記簿に当該不動産の所有者、或いは、その不動産に抵当権を設定している抵当権者などが記載されるのです。
このような制度を登記制度と言い、不動産取引に関する安全を図るのが制度趣旨です。

「私は、今度、家と土地を買いましたが、登記しておかなければどのような不利益があるのでしょうか。」

不動産の登記は対抗要件と言われています。
即ち、あなたが不動産を買っても、それを登記しない間に、売り主が別の買い主に当該不動産を二重に売買した場合、二番目の買い主の方が先に登記してしまえば、あなたは自分に権利があることを二番目の買い主に主張することはできません。

先に登記をした方が勝つということです。

「その場合に、私はどのように保護されるのでしょうか。」

まず、二番目に買った人との間では、あなたが不動産の所有者であるということを主張できません。原則として負けます。
但し、判例上、ニ番目の買い主が背信的悪意者(例えば、あなたと売り主との間の売買契約を仲介した仲介業者が、あなたに登記がないことを知りながら二重に買い受けた場合。)には、そのような人間を保護する必要がないので、あなたの方が勝てる場合があります。しかし、これは例外的な場合です。
さらに、売り主に対しては、一旦あなたに売りながら更に別の人に二重売買をしたということで、損害賠償の請求ができます。しかし、このような場合、売り主は、通常、お金を持って逃げるケースが多いので、回収することは困難となるでしょう。

「私が現在住んでいる家と土地は30年前に亡くなった祖父の名義のままです。この家と土地を私の名義にするには、どのようにすれば良いのでしょうか。」

「私が現在住んでいる家と土地は30年前に亡くなった祖父の名義のままです。この家と土地を私の名義にするには、どのようにすれば良いのでしょうか。」

「私が全く知らない間に私の所有する家と土地が第三者の名義に変えられていました。もはや、私の権利はなくなるのでしょうか。」

登記はあくまでも形式的なものなので、登記がなくなったからといって、あなたの権利までもがなくなるということはありません。
しかし、仮に、甲さんが更に別の乙さんに売ることがあります。この場合、乙さんは、登記を信用して取引関係に入ります。そのような時、場合によっては、あなたの実印や印鑑証明書の保管の仕方に問題があったり、他人に簡単に実印や印鑑証明書を渡していたりなどした場合には、登記を信用した乙さんの方が保護されてしまうということもあります。非常に難しい問題ですが、このような問題の場合も、是非、当事務所においでください。

「登記をするには誰に頼めばいいのですか。」

登記は法務局で行いますが、御自分で登記手続するのは大変ですので、弁護士事務所か、司法書士事務所に依頼するのが手っ取り早いでしょう。

「弁護士の仕事の内容について教えてください。」

弁護士の仕事は大きく分けて二つあります。
一つは、刑事事件(人を殺したりした人)の弁護人として活動をすることです。
もう一つは、民事事件(例えば交通事故に遭って損害を被った場合)の代理人として活動をすることです。

「民事事件の場合、弁護士を頼んだほうがいいのでしょうか。」

弁護士の仕事は、争いがあれば、当事者のどちらかの代理人になって法的なアドバイスをし、相手方と交渉し、場合によっては裁判などを起こして、その争いごとを解決することです。
もちろん、弁護士を頼まず自分で解決できるのであれば弁護士に依頼する必要はありません。しかし、権利関係が複雑になり、法律関係も複雑になっていることや、事件の当事者は感情的になって話し合いが紳士的に行なわれないなど様々な問題があります。
このような時、当事者と若干距離を置き、法的な訓練を積んだ弁護士を代理人に立てることは極めて意義があると思います。争いの解決に役立つと思います。

「離婚調停などは自分でもできると聞きましたが。」

確かに調停などは自分で行って調停委員を交えて話すことは可能です。
しかしながら、離婚と言っても、離婚原因の有無、財産分与の問題、慰謝料の問題、養育料の問題、さらには年金分割の問題など、かなり高度な法律的な問題が潜んでおります。
これをすべてあなたが自分で解決するということは不可能だと思います。しかも、調停委員と言われる人たちも必ずしも法律に明るいとは限りません。特に地方に行けば行くほど、地方の名士のような方が調停委員となっており、あまり法律のことは詳しくない場合もあるのです。
そのような時に、法律に詳しい弁護士を代理人と立てなければ、あなたにとって不利益な内容になることもよくあります。

「相手が弁護士を立てないのに、自分のほうから弁護士を立てる必要はないのではないですか。」

確かに、弁護士に依頼すれば費用ばかりかかります。
相手も弁護士を立てていないから自分も立てる必要はない、と考えるのは早計です。
争いを有利に解決したいなら弁護士を立てる必要が高いと思います。

「弁護士に頼むと費用がたくさんかかるのではありませんか。」

確かに、弁護士もボランティアで仕事をしているものでないので、それなりの費用はかかります。
まず、事件を受ける時に着手金というお金を頂きます。これは裁判で勝っても負けても返還はしません。
弁護士は委任契約ですので、結果において負けることもありますが、成功報酬だけであればタダ働きということもあるので、そのようなことは通常しません。ただ、着手金をどのように定めるかは弁護士と相談して下さい。
うちの事務所などは、勝算の高い事件については着手金はある程度低くし、終わった時点で報酬の際にそれを加算してもらうということもやっておりますので、それは担当の弁護士に相談してみてください。
また、解決し、一定の経済的利益があった時に報酬というものを頂きます。これは着手金とは別です。この報酬をいくらにするかは、なかなか難しい問題がありますが、一定の基準がありますので、その基準に基づいて、終わった時点で協議するという方法が一般的に採られています。
また、場合によっては、経済的利益の何%というふうに最初の段階できちんと決めることも可能です。どのような決め方にするかは、事件を依頼する段階で弁護士と相談してみて下さい。

「弁護士は誰でもいいのですか。」

とんでもありません。弁護士も千差万別です。優秀な弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。自己主張の強い弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。交渉のうまい弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。頭のきれる弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。いろいろいます。
ただ一つ、弁護士を選ぶ基準として考えなければならないのは、あなたの話をよく聞いてくれるかどうか、さらに、納得のいく説明をしてくれるかどうか、という点です。
費用が高い、安いだけを基準にして弁護士を選ぶ方がいますが、これが一番悪い選び方ではないでしょうか。特に、費用があまりにも安い場合は依頼者もその事件に対する執着心が乏しくなり、弁護士も手抜きをすることになるかも分かりません。
したがって、費用はある程度出してでも、その事件をきちんと最後まで解決してもらう、という考え方を持つほうが大切だと思います。

「肩書きのある弁護士(例えば、弁護士会会長)などの弁護士のほうが有利なのでしょうか。」

それは全く関係ないと言ってもいいと思います。
弁護士によっては、肩書きをひけらかし、それによって自分の偉大さを依頼者に誇示しようとする人がいますが、そのような弁護士に限って裁判官の前では卑屈になっているケースがあります。
肩書きよりも、その弁護士の人物、人格などを基準にして決めるべきでしょう。

「一旦頼んだ弁護士があまり仕事をしてくれません。このような場合どうすればいいのでしょうか。」

これが一番難しいところです。仮にあなたがその弁護士にやめてもらい、別の弁護士に頼もうと思っても、なかなか別の弁護士は、人がこれまでやってきた事件を途中から受けるのは嫌がるものです。私も嫌です。
しかし、どうしてもあなたがそうしたい場合は、まず、今頼んでいる弁護士にきちんと理由を言って辞任してもらって下さい。それでも辞任しない場合は解任することもやむを得ないでしょう。そして、前の弁護士との関係をきちんと清算した後で、新しい弁護士に依頼すべきだと思います。
当然、費用などは余分にかかるかも分かりませんが、それはそれでやむを得ないというふうに割り切って下さい。
あなたの重要な財産が今後どうなっていくかという、極めて大切な問題ですから、「着手金を多少損した。」などと考えないほうが良いでしょう。

※下記回答は、令和2年1月現在のものです。

「 『約束手形』とはなんですか。」

「約束手形」とは、商売などを行っている際に、商品などを買ったとき、債務者が、一定の金額の支払いを約束して振り出す書面のことを言います。
一番確実なのは現金を受け取ることですが、現金だと盗難の危険性があることや、直ちに現金が準備できない場合に、支払期限日までの期限の利益を得られることなどから、手形は発達してきた制度です。

「 『不渡り』とはどういうことですか。」

手形を振り出した人が、2回、不渡り(約束の支払期日に約束の銀行口座にお金を準備することができず、当該手形の決済ができないことを「不渡り」といいます。)を出した場合に、銀行取引が停止されます。
商売人が銀行との取引を停止されれば、商売は、事実上できなくなってしまいます。従って、二度、不渡り手形を出した際には、当該商売人は、事実上、「倒産した」といっても間違いじゃありません。
従って、手形を振り出した人は、何としてでも、手形を決済する必要に迫られるわけです。

「それでは、受け取った手形が不渡りとなったとき、どうすればいいのですか。」

約束手形の振出人は、絶対的に支払い義務を負います。当然、手形には、裏書人や保証人がある場合もありますので、このような裏書人や保証人がいる場合は、その人達に対しても責任を追及することができます。
従って、自分の貰った手形の振出人だけでなく、裏書人や保証人が何名かいる場合には、それら手形に名前を書いている人たちと支払いに関して交渉することが可能です。
振出人が1名、裏書人が3名の手形を貰った場合に、誰に対して請求しても可能です。従って、一番返済の能力がありそうな人間と交渉するのが、正しい交渉の仕方と思います。

「示談で解決する場合には、どのようにすればいいのでしょうか。」

「示談」とは、振出人(債務者)との話し合いで解決することですが、手間や費用の点から見ても、一番簡単な方法です。ただ、あくまでも、話し合いによる解決ですから、お互いの合意が得られない場合は無駄となります。
また、どのような時点で、どのような内容の示談をするかは、振出人の資力やその事業の経営状態、手形が不渡りとなった諸々の事情、受取人と振出人との関係など、様々な要素が関わってきます。
話し合いで示談が成立した場合、後日、支払いが残るようなときは、必ず、書面(示談書・合意書)を作成すべきです。

「債務者と話し合いがまとまらない場合はどうすればいいですか。」

債務者、或いは、裏書人らとの合意がまとまらないときには、裁判を起こすことになります。この場合、通常、「手形訴訟」という裁判になります。
手形訴訟は証拠が制限されており、通常の民事訴訟のように、法廷に証人を呼び出して聞いたりすることはありませんので、早く判決が出されます。
また、手形の場合は、相手方に支払義務があることが、普通、確実ですので、仮差押え等の手続きをしても、供託金は請求金額の10分の1程度で済みます。

「偽造手形について教えて下さい。」

この頃、偽造手形ががなり大量に出回っています。
「偽造手形」とは、人の名前を勝手に用いて作成された手形のことです。手形の場合、その金額がかなり高額になることから、偽造手形が作られやすいのです。
偽造手形を貰ったとしても、偽造された本人に請求することはできません。従って、手形を貰う時点で、その手形が偽造かどうか、十分確かめた上でなければ、後で痛い目に遭うでしょう。手形を貰う時点で、当該手形上に名前を書いている人に電話をして、この手形を振り出したことがあるかとか、裏書きしたことがあるかとかを確認する作業が必要だと思います。
いずれにしても、手形を巡る争いは、かなり高度な法律的判断を必要としますので、すぐに弁護士に相談されるのが賢明かと思います。

「裁判の仕組みについて教えてください。」

裁判とは、争いがある場合に、その争いを裁判所で解決してもらうという制度ですが、争いには段階があるので、段階を追って説明します。
分りやすい例を挙げると、「AさんがBさんに100万円貸したけれども、返してくれない」ということを念頭に置いて下さい。
まず、普通は、約束の時期が来たら、お金を返して欲しいと申し入れすることになります。しかし、Bさんがお金を返してくれません。

「いきなり裁判を起こすことはできるのですか。」

いきなり裁判を起こすこともできます。
この場合は、裁判所に訴状(訴えの内容を書いた書面)を提出します。そうすると、裁判所が、Bさんにもその訴状を送り、Bさんを裁判所に呼び出し、裁判所に於いて、AさんとBさんの、どちらの言うことが正しいかを判断します。
例えば、Bさんが、「Aさんからお金を借りたけれども、既に返した」とか、「もう10年以上経ったから、時効によって消滅した」とか、「100万円を借りたけれども、それよりも3年前、自分が200万円を貸していたので、それと対当額に於いて相殺する」とか、いろいろな主張が出てきます。そのどちらの主張が正しいのかを、審理していくのです。

「支払督促とはどういうことですか。」

支払督促とは、簡易裁判所に対して、申立人の一方的な言い分だけで、支払督促を相手方に出してもらう制度です。
これは、相手方からほとんど異議が出ないようなケースに用いることができます。そして、相手方の異議がなければ、裁判所に、支払督促に仮執行宣言を付けてもらい、これによって、相手方の財産に強制執行することができます。

支払督促とは、簡易裁判所に対して、申立人の一方的な言い分だけで、支払督促を相手方に出してもらう制度です。
これは、相手方からほとんど異議が出ないようなケースに用いることができます。そして、相手方の異議がなければ、裁判所に、支払督促に仮執行宣言を付けてもらい、これによって、相手方の財産に強制執行することができます。

そんなことはありませんが、争いの内容が複雑になった場合は、弁護士を付けて、きちんと闘った方がいいと思います。途中まで審理を行ない、そろそろ判決という段階になって、自分が不利だと分って、いきなり、弁護士のところに相談に来られても、弁護士は対応ができません。
やはり、最初の段階から弁護士に相談し、弁護士に依頼することが必要ではないでしょうか。

「仮に、判決で、『100万円を払え』との判決が出た場合、その後の手続きはどうなりますか。」

判決が出たからと言って、相手がすんなりとお金を払うとは限りません。相手がすんなりとお金を払わない場合は、「強制執行」という、次の段階に移ることになります。
強制執行とは、判決に基づいて、相手方の財産を強制的に処分し、それから、回収を図ることです。
例えば、相手方が公務員で勤務している場合は、その給料を差し押さえることができます。また、家があれば、家を競売に掛けることができます。預金を差し押さえ、それを強制的に取り上げることができます。

「相手が無職で収入がなく、家にも、その家の時価を遥かに上回る抵当権が設定されているような場合には、どうなりますか。」

結論から言うと、このようなケースが非常に多く、このようなケースは、回収できない場合が非常に多いのです。
預金や勤務先がない以上、給料を押えたり、預金を押えたりすることは、当然、できません。家については、不動産の競売の申立ができます。しかし、これには、また何十万円かのお金を裁判所に納めなければなりません。
このケースの場合、家の評価を遥かに上回る抵当権が設定されておりますから、いくらあなたが競売にかけたとしても、抵当権者(通常は銀行)の方が優先してしまいますので、あなたには1円もお金が入ってきません。このような場合、裁判所は、競売にかけることをせず、途中で競売の手続そのものを打ち切ってしまいます。
したがって、あなたは、何十万円か裁判所にお金を納めたけれども、結局、競売事件は途中で打ち切られて、あなたはお金だけを出して、ますます損をしたという結論になるのです。

「和解とはどういうものですか。」

和解とは、裁判の途中、相手方と話し合って、適当なところで合意するという制度です。
例えば、「100万円貸したのは間違いないけれども、相手が70万円しかお金の準備ができないので、70万円で手を打つ」というのが、和解です。
先程述べたように、仮に、裁判まで行き着いたとしても、相手にめぼしい財産がなければ、お金を回収することはできません。そこで、やむを得ず、このような和解という手段を用いて、相手方と話を付け、相手方にお金を払わせるということが、日本の裁判ではよく行なわれているのです。

「そうすると、お金のない者の方が勝って、お金を貸した者は泣き寝入りということになるのではないでしょうか。」

結論的には、そう言えます。したがって、借りたお金を払わない人間、払うべきお金を払わない人間に対して、これを刑罰に処するという法律を作れば、たぶん、お金をいくらか、無理をしてでも作ってくるかもしれません。ただお金を作るアテがない人は、犯罪行為を行なってお金を作ったりする恐れがあるため、なかなか、お金を払わない人間に刑罰を科するという法律を作ることは難しいのではないかと思います。
しかし、裁判を、3年も4年もかけてやり、ようやく判決をとったけれども、1円も回収できないという事態に遭遇することはよくある話です。何のために、2年も3年もかけて難しい裁判をやってきたのか、空しくなることが多々あります。
いずれにしても、このような問題がある場合は、早急に弁護士事務所の門を叩いて、相談に来られて下さい。

「役員に対する法的請求は可能ですか」

会社と役員個人は、法律上は、別個の法人格とされています。したがって、会社に対する請求は、原則として、会社に対してしかできません。
しかしながら、会社が倒産してしまった場合に、その倒産について責任があるような役員に対し、まったく請求できないとなれば、相手方は保護されなくなります。例外的に、次のような場合には、会社役員個人に対して、責任追求が出来ます。

「例外的に、どのような場合に請求できますか。」

役員個人が、その取引について連帯保証契約をしている場合。
仮に、会社が倒産したとしても、役員が連帯保証していれば、役員個人に会社と同様の責任を追及することは可能です。
この場合は、必ず、契約書を取り交わしておく必要があります。継続的な取引が為される場合には、「継続的保証契約」と称する契約書を取り交わすのが都合がいいでしょう。
例えば、その取引先との間で継続的に取引がある場合、最高限度額を1000万円と定め、その限度で役員が保証するという書類を取り交わしておけば、1000万円に達するまでは、役員に対する責任追求が可能です。銀行などが会社にお金を融資する場合、必ずと言っていいほど、その社長、及び、その配偶者などを連帯保証人にしています。
通常の商取引の場合、そのような契約書を取り交わすケースは少ないかもしれませんが、このような不況の中、会社や取引先がいつ潰れてもおかしくないという状況を考えれば、「転ばぬ先の杖」の意味からも、役員に対して連帯保証してもらうことが必要だと思います。

「会社が、お金を支払う意思も能力もないにも拘らず、取引先から商品を仕入れ、それを他に転売し、その挙げ句、倒産したような場合はどうでしょうか」

取締役が取締役としての職務を果たさなかったために、会社の経営が悪化したような場合、その取締役は、会社債権者などの第三者に対して、損害賠償義務を負うことがあります。
例えば、極めて放漫経営だった場合とか、詐欺に等しいような行為で商品を購入した場合などは、取締役が会社に対しての注意義務(これを、法律上「忠実義務」あるいは「善管注意義務」と言います)を果たさず、その結果、会社がそのような不正行為をしたといった場合は、取締役に対して、個人的に損害賠償を請求することが可能です。

「社長に頼まれ名目上の取締役になったが、まったく会社の経営に関知していなかった取締役も責任を負うのでしょうか。」

このような場合は、極めて難しいケースと言わざるを得ません。しかし、最高裁の判例は、単なる名目上の取締役でも、代表取締役の職務執行につき、監視する義務があるとしています。
したがって、名目上の取締役だからといって、代表取締役がどのような経営を行っているか全く関知せず、放置し、その結果、代表取締役が第三者に損害を与えた場合には、名目上の取締役でも責任を負わなければならない場合もあります。
したがって、友人に頼まれて簡単に役員になることは、厳に控えるべきです。仮に、役員になれば、それなりの義務と責任が発生しますので、最低限、取締役会の収集を求め、そこで、会社がどのよな経営状態になっており、どのような商売をしているかぐらいは把握しておかなければならないでしょう。

「過去の裁判上、どのような場合に取締役の責任が認められたケースがありますか」

振出当時の会社の資産や営業状態から見て、満期に手形を落とせる見通しがないにもかかわらず、手形を振出した場合の代表取締役は、手形所持人に対して損害賠償責任を負います(最高裁昭41・4・15 判決)。

株式会社の取締役は会社の業務執行につき監視する立場にありますから取締役に上程された事柄はもちろん、代表取締役の業務執行一般についてこれを監視し、必要があれば取締役会を招集し、あるいはこれを求め、取締役を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務があるとして、代表取締役が独断で多数振り出した支払い見込みのない融通手形につき、取締役に責任を認めた事例があります(最高裁昭48・5・22判決)。

資本金の5分の1に相当する出資をし、会社に常勤しない名目的な取締役であっても、代表取締役の業務執行をまったく監視せず、取締役会の招集を求めたり、自ら招集することもせず、同人の独断専行に任せ、同人が代金支払いの見込みもないのに商品を買い入れ、売り主に対し代金相当額の損害を与えた時は、名目だけの取締役であってもその損害賠償責任を負うとした事例があります(最高裁昭55・3・18判決)。

「 『法人格否認の法理』 とは。」

「法人格否認の法理」とは、ある会社とその背後にいる経営者とか実質的に同一であると考えられる場合に、その法人格を否認して、その背後にいる実質的経営者に責任を負わせるという理屈です。これは、法律上は根拠はありませんが、判例上、認められてきた理論です。
法人格の濫用には、二つ類型があると言われています。
第一が、法人格濫用事例です。これは、Aという個人がB会社を設立し、財産などすべてB会社に移して、Aとしての責任を免れようとするケースです。
もう一つは、法人格形骸事例です。これは、Aという個人とB会社が資産も経理もごちゃまぜになっており、個人と法人の区別がまったく付いていないようなケースです。
このような場合に、AとB会社とを同一のものとみなし、両方に対して責任追及することを認めるのが、法人格否認の法理です。
したがって、仮に、B会社が倒産したとしても、B会社とその背後にいるAとが実質的に同一であるとみられるような場合には、そのAに対して責任追及が可能です。

このように、仮に会社が倒産したとしても、理論構成如何によっては、取締役の責任を追及することが可能な場合があります。もっとも、これはかなり難しく、裁判を起こして、裁判所で認められなければなりませんが、いずれにしても、簡単に諦めてしまうのはいかがなものでしょうか。
特に、会社は倒産し、その社長も一緒に破産したとしても、役員欄を見ると、著名かつ資力のある人間が取締役になっていたりするケースがあります。このような場合、決して責任追及を諦めず、取締役個人に対する損害賠償を考えてみてはいかがでしょうか。

いずれにしても、法律上、かなり高度な問題を含んでおりますので、是非、そのようなケースは弁護士に相談されて、よりよい解決を目指して下さい。

「刑事上の時効とはどういうものですか。」

犯罪を行った人に対して問題となります。
以前、強盗殺人事件を犯した福田和子なる女性が、整形手術をして逃げ回り、時効寸前に逮捕されたという事件が大きくマスコミで報道されていました。
刑事上の時効とは、犯罪を犯した者が、一定期間、訴追(裁判にかけられること)されなければ、国家(検察官)は、もはや、その犯人を裁判に掛けることが出来なくなることです。専門用語で、「公訴時効」(「公訴」とは、国家すなわち検察官が、犯罪を行った者に対して裁判を起こすこと)と言います。国家による訴追する権利が消滅することと言えるでしょう。
「犯罪を行った者をのさばらせることはけしからん。」という御意見もあるでしょう。しかし、長い年月が経てば、証拠も散逸し、国民の処罰感情も鎮静化し、犯人も平穏な生活を送っているので、もはや、裁判を掛ける必要がないとするのが、公訴時効の根拠と言われております。
なお、何年で公訴時効が完成するかについては、行った犯罪の大きさによって違ってきますので、一概には言えません。

「民事上の時効について説明してください。」

民事上の時効は、大きく分けて二つあります。
一つは、「消滅時効」です。これは、一定の時間(期間)が経過すると、その権利を主張することが出来なくなるというものです。
もう一つは、「取得時効」です。これは、一定の期間、ある物を占有(事実上支配すること)すると、その物に対する権利を取得することが出来るというものです。

「消滅時効の根拠は?」

どうして、このような消滅時効という制度が認められているのでしょうか。これは、一定の長い期間が経過すると、証拠などが散逸して、当時の事実関係を立証することが困難になるということに加え、「権利の上に眠る者は保護しない」という法律の格言が根拠となっています。権利を持つ者は、適正な時期にその権利を行使しなければなりません。
権利があるからといって、いつまでもその権利を行使せずに放置していれば、ペナルティーを科せられるという意味です。

「保証にはいろんなものがあるようですが、法的にはどんなものでしょうか。」

保証という言葉は、よく使われる言葉です。しかし、その意味するところは様々ですので要注意です。
第一に、「あの人は間違いない人間です。俺が保証する」と言う言い方。この場合は法的な意味はまったくありません。
「間違いない」と言いながら、実際にその人が間違いを起こした場合には、「ごめんなさい。俺の人間の見方が間違っていた」という一言で済む話です。

「保証人になることは慎重にした方がいいのですね。」

私が大学生の頃、民法の先生から言われて未だに記憶に残っていることがあります。それは、「保証人には絶対なるな!」という言葉です。世の中には安易に保証人になる人がいます。しかし、債務者本人が自分の血の繋がった身内であるとか、配偶者である場合は別にして、それ以外の場合は、よっぽど強い信頼関係が無ければ、保証人になるべきではないでしょう。現実に保証人になり、保証かぶれで会社を潰したり、自己破産、一家離散というひどい目に遭っている人を、これまで幾多と見てきました。
「そんなこと言っても、商売上のつきあいで保証人にならざるを得ないのだ」とか、「断り切れないのだ」という人がよく保証人になっています。確かに、人がいい人が保証人になることが多いのでしょう。しかし、保証人になれば、あなた自身が莫大な負債を負わされてしまうということも十分に念頭に置いて、「そのような状況になってもやむを得ない」という覚悟を持ったうえで保証人になるべきでしょう。
よく講演会などで私は言います。
「もし、保証人になってくれと言われてどうしても断れない場合は、その100分の1でもいいからお金をあげなさい。例えば、1000万円借りるのに保証人になってくれと言われた場合は、10万円をあげなさい。そして、これは戻さなくてもいいから保証人は勘弁してくれ、という方が、むしろ後腐れ無く、恨みも残らない」
と。どうか、保証人の危険性を十分に認識して下さい。

「家賃を払ってくれない人がいます。どうしたらいいでしょうか。」

建物を人に貸しても、家賃を払ってくれなければ大家としては大損害です。しかし、中には家賃を払わない人がいることも事実。
そこで、家賃不払者にどう対処するべきでしょうか。その対策を述べてみたいと思います。

まず、契約書で契約条件を明確に定めること。契約書がないというのは言語道断。できれば、市販の簡単な契約書ではなく、不動産業者が使っているようなちゃんとした契約書か、弁護士に作成してもらうのがいいでしょう。

入居者の決定に当たっては、入居者本人及び家族が登録されている住民票及び印鑑証明書を提出してもらい、給料の源泉徴収票や給与明細などにより家賃等の支払いが確実になされるか否かを判断すること。短期的に、正当な理由(例えば転勤等)なく住所が転々と移転している場合には要注意。また、契約に際して本籍を記載してもらうと、あとあと便利(借主が逃げた場合など、本籍地から新しい住所を調べることが可能)。入居予定者の選定は、人任せにせず、自分で面談して決めること(「大家と店子は親子も同然」)。

入居後の家賃等の支払状況の確認及び滞納者に対する迅速かつ適切な処理が必要。支払期限に家賃等の支払がないか、支払が不能と思われる客観的事情(夜逃げ、勤務先の倒産、リストラ、破産宣告等)が発生した場合には、借家人に対し、ただちに催告書を送付すること。
そして、約定解除権発生の要件が整っているときは、停止条件付契約解除の通知を併せて行う。また、併せて、保証人に対しても、借家人の家賃等の滞納状況及び未払い家賃等の保証債務の履行を請求する必要もあるでしょう。保証に対する請求は滞納額の少ない早い時期に行うのが効果的です。また、保証人に対しても親切です。契約条項に、「借家人が家賃等の支払を怠ったときは、賃貸人は保証人に対し、ただちにその旨通知するとともに、未払い家賃等の請求をすることに異論を述べない」との規定を定めておくといいでしょう。この頃は、借主の家賃を保証する保証会社も出現しているので、このような会社を利用することも良いでしょう。
 家賃等の滞納により解除権が発生した場合、賃貸人は賃借人に対し内容証明郵便等により解除契約の意思を表示したうえ、二週間程度の猶予期間を置いて明け渡しを催促し、その期間が経過しても明け渡しをしないときは、速やかに建物明け渡しと家賃等の支払を求めて裁判を起こす必要があります。

家賃を3ヶ月以上滞納するような借主の場合、滞納が拡大こそすれ、きちんと全額を支払ってくれることはありません。早急に、このような賃借人は出て行ってもらう必要があります。

訴訟(裁判)は、弁護士に依頼する必要があります。まず、着手金として15万円~40万円程度が必要です(これは弁護士によっても違いますし、物件の程度、訴訟の難易度によっても異なりますので、弁護士に率直に相談されるといいでしょう)。裁判で判決を取っても、相手が出てこなければ、裁判所の執行官に明け渡しの強制執行の依頼が必要です。執行官費用として10万円程度、運送費用として30万円程度(アパート一室の場合)が必要です。但し、裁判所が運送業者を依頼するため、多額の運送代をふっかけてくる業者がいるので要注意。そして、明け渡しが完了すれば、弁護士に対する報酬として、着手金の1.5倍程度の支払が必要となります。

「家賃を数ヶ月不払いのまま借家人が行方不明の場合にも、問い1と同様の手続きが必要でしょうか。」

もっとも、将来、行方不明となった借家人が出てきて裁判を起こされても構わないという考えがあれば、借家人の家財道具を処分するのが早いでしょう。
その場合、必ず、家財道具一つ一つの写真を撮っておき、将来の裁判のために証拠を残しておく必要があります。あとになって、「1000万円のダイヤモンドを捨てられた」などと言わせないためにも写真は必要です。

但し、このやり方は刑法上の窃盗罪に該当するので、刑事問題に発展する可能性もあります。したがって、刑事問題となることや損害賠償の裁判を起こされるのが嫌ならば、費用と時間がかかったとしても、問い1の③ の方法を選択するしかないのです。

私は現在、コピー機の卸売り会社に勤めていますが、この度独立を決意し、これまでのノウハウを生かせるよう同じコピー機の卸売業を自営にて始めようと考えています。何か気をつけるべき点はあるでしょうか。

就業規則や誓約書の定め次第では、競業避止義務に違反する可能性があります。
競業避止義務とは、労働者など企業と一定の関係にある者が、その企業と競業関係(自己または第三者のために企業の営業に属する行為をすること)に立たないようにする義務を言います。労働者は、在職中企業との間で労働契約を締結していることから、他の同業他社にて勤務をしたり、同業の独立営業をしたりすることを禁止されることは当然です。また、退職後は、原則として、労働契約がなくなること及び職業選択の自由の保障の見地から、競業避止義務を負うことはありませんが、例外的に、就業規則や誓約書にて、「労働者は、退職後も、同業他社に勤務し、また、同業の独立営業をしてはならない。」旨が定められている場合には、退職後も競業避止義務を負うことになります。

では、就業規則や誓約書にて、退職後の競業避止義務が定められていた場合、退職労働者は一切同業を営むことができないのかというと、必ずしもそうではありません。
就業規則や誓約書で定められた規定の内容が、その企業の実態に即した合理的制約と言えなければ、仮に退職後に同業他社に就職等しても、法的責任を負うことはありません。具体的には、事案毎に沿って検討を要しますので、一概には言えませんが、合理的な制約か否かは、退職後の競業制限の必要性、制約する範囲(地域や期間)、競業行為の態様(どの程度背信的か)などを総合して判断されます。

まずは、あなたの勤務先の就業規則の内容を確認し、あわせて、入社当初に退職後も同業他社への就業等をしない旨の誓約書を作成していないか確認してください。つぎに、退職後の競業避止義務の内容がどう定められているのか(地域はどこについてまで及び、その期間は退職からいつまでとされているのか等)を確認してください。
これに明らかに反するような場合、独立するかは再検討を要します。企業によっては、退職後の競業避止義務違反行為が発覚した場合には、退職金の返還を求める旨が就業規則上定められていることもあります。弁護士等の法律の専門家に十分に相談されるべきです。
なお、退職後の競業避止義務が定められていない場合であっても、自由競争の範囲を逸脱して、勤務先のお得意様を意図的かつ大量に引き抜く等した場合には、悪質な背信行為と評価され、勤務先から損害賠償請求をされる可能性が高いため、営業態様にも十分に気をつけてください。

私は結婚して10年になりますが、夫と離婚しようと考えています。結婚の際、夫の氏を称しているので復氏をし、新戸籍を作ろうと考えています。子どもの氏を私の氏と同じにし、戸籍も私の戸籍に入籍させたいのですが、どのようにしたらいいのでしょうか。

子の氏について
子どもの氏は、子の出生時に決まり、父母が婚姻中に共同で称していた氏とされます(民法790条1項)。
したがって、夫の氏を称した婚姻にあった父母が離婚した場合、母が復氏するか婚姻中の氏を継続して称する(戸籍法77条の2)かに関わらず、子の氏には当然に変更を与えるものではありません。
そのため、離婚した母と子どもでは氏も戸籍も異なってしまうことになります(母が婚姻中の氏を継続して称した場合、呼称は同じであっても、氏は異なるとされます。)。母親が離婚に際し、子の親権者になったとしても、子の氏、戸籍が変更することはありません。
このような場合のために、一定の手続をとることにより母子で氏を同じくし(民法791条、戸籍法98条)、同籍にすることができるものとされます。

手続について
まず、子の住所地を管轄する家庭裁判所に子の氏の変更についての許可の審判を申立て、許可を得る必要があります。申立人は氏を変更しようとする子自身となりますが、子が15歳未満のときは、法定代理人が代わってこれを行ないます。

入籍届
氏変更の許可を得た後、市町村長に対して「子の母の氏を称し母の戸籍に入籍する」旨の入籍届を提出します。これにより、子と母は同じ氏を称して同一戸籍に在籍することができることになります(戸籍法18条2項)。
届出人が15歳未満であるときは、法定代理人(親権者)が代わって届出人となりますが、15歳以上の子は、未成年でも自ら届け出ることが必要です。この届出により初めて氏の変更の効力が生じます。
また、この入籍届は、原則として氏変更の申立をした者がしなければならず、それ以外の者からも入籍届は無効とされています。
ただし、未成年者本人からの追完によって有効な届出と認められる場合もあります。

突然、あるサイトを利用したという理由で、金○○万円を直ちに支払うようにという内容のメールが来ました。支払いをしなければ法的手続きをとりますとも書いています。全く身に覚えがないのですが、どうしたらよいのでしょうか。

インターネット等の利用に関連する架空請求や不当請求をされた場合についてお話します。突然、携帯電話に質問のようなメールが来たことがある方も多くいらっしゃると思います。身に覚えのない会社から高額な利用料等の請求を受けると驚きますよね。もちろん、すべての場合ではありませんが、突然メールで高額な請求をしてくる場合は架空請求や不当請求をしてきてる場合が多いです。
上記のような架空請求、不当請求に対して、どのような対応をとればいいのでしょうか。
まずは、冷静になることです。怖くなってすぐに振込みをしないようにして下さい。そして、請求されている会社のサイトにアクセスすらしたことがない場合、つまり全く身に覚えのない場合には、相手方の請求は架空請求や不当請求であり、詐欺罪等に該当する可能性もあります。ですから、警察に通報してもよいですし、そこまでするのは面倒くさいというのであれば、そのメールに対しては返信や連絡をせずに放置しておいてもらっても構いません。
次に、請求されている会社のサイトに何らかのアクセスをしたことがある場合には対処の仕方が若干異なります。経験したことがある方もいらっしゃるかと思いますが、例えば利用申込みの画面にならず、突然、「あなたとの契約が成立しました。」などという画面が表示されるケースです。このような場合には、契約自体は成立していないといえるでしょう。きちんと利用申込画面が出て、その利用申込み画面の構成上、画面上の操作によって契約の申込みをしていることがきちんと認識できる構造になっており、その上で申込みをしなければ契約は成立しません。簡単にいってしまえば、このサイトを申し込めば、利用料等はいくらかかりますよ、サービスの内容はこうですよ等の契約条件が書かれ、それに納得した上で、パソコンの操作上、契約の申込みができている場合に契約が成立します。
なお、仮に契約が成立する場合であっても、法律に反するような高額な違約金を請求されたりする場合もありますので、そのような場合には専門家に相談して下さい。