離婚問題
私と夫は20年前に結婚し、15歳の長男と10歳の長女がいます。この度、離婚をすることになりましたが互いに子どもの親権を主張しており、親権についての話がまとまりません。
このような場合、どのようにして親権者を決めたらよいのでしょうか。また、親権者を決定する基準というものはあるのでしょうか。
民法819条1項によれば、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」と規定されています。したがって、離婚届提出の際には、親権者が定められていなければなりません。
親権者を定める場合、まずは夫婦で協議することになりますが、協議で決まらない場合は、家庭裁判所に対して離婚を求める調停の申立をして、その協議の中で話合いにより子の親権者を定めることができます。調停でも話がまとまらない場合は、家庭裁判所に協議に代わる審判を申し立て、親権者を決めてもらうことができます。また、裁判上の離婚の場合、家庭裁判所が父母の一方を親権者と定めることとなります。
親権者決定の基準としては、父母側の事情として、監護に対する意欲・能力、健康状態、経済的・精神的家庭環境、教育環境、子どもに対する愛情の程度、親族・友人の援助の可能性等、子の側の事情として、年齢、性別、心身の発育状況、子の希望等の各事情があり、これらを総合的に考慮して、親権者は決まります。以下、具体的な判断基準について幾つか挙げてみます。
(1)監護の継続性の基準
子を現に養育しているものを変更することは、子の心理的な不安をもたらす危険性があることから、子に対する虐待・遺棄等の特別の事情のない限り、現実に子を養育監護している者を優先させるべきとされています。
(2)母親優先の基準
子の幼児期における生育には母親の愛情が不可欠であるとされ、乳幼児については、特別な事情のない限り、母親の監護を優先させるべきとする考えがあります。
(3)子の意思の尊重
15歳以上の未成年の子については、親権者の指定、子の監護に関する処分についての裁判をする場合、その未成年の子の陳述を聞かなければなりません(人訴32条4項、家審規72条、70条、54条)
(4)兄弟姉妹の分離
兄弟姉妹の不分離を原則とする判例があります。
(5)離婚に際しての有責性
親権者の適格性を判断するマイナス要因としては、子どもとの関係でされるべきです。したがって、夫婦間の問題における有責性は、子どもの親権者を決定する際の基準として考えるべきではありません。
私は結婚して9年目になりますが、夫と離婚しようと考えています。夫との間に子供が2人(長男7歳、長女5歳)いるのですが、養育費は2人の子供が大学を卒業するまで請求することができるのでしょうか?
養育費の支払いの終期がいつになるのかという問題ですね。
養育費とは、未成熟子が社会人として自立して生活できるまでに必要な費用をいい、離婚をするにあたって親権者となった親が、子供を引き取って養育することになった場合に、もう一方の親に対して請求することができます。
養育費というのもは民法という法律で直接定められたものではありませんが、監護費用(民法第766条1項)を法律上の根拠として、実務上認められています。
今回は大学卒業までの養育費は当然に請求できるのかという質問です。
昨今、大学全入時代と言われているように、大学に進学するお子さんが多いことは周知の事だと思います。このような時代ですから、子供を大学まで進学させたいと考える親が大半でしょう。
ところが、子どもが大学を卒業するまでの養育費は当然に請求できるのかという質問に対しての答えは「ノー」です。
大阪高等裁判所が平成2年8月7日に下した審判では、両親の学歴や経済的・教育的水準等により相当な場合には、大学卒業時までの養育費の支払義務が認められています。
しかし多くの審判・判決では養育費は20歳までとされるのが通常です。
では大学卒業時まで養育費をもらうにはどうすれば良いのでしょうか。
前記のように、審判・判決までいけば、20歳までになってしまうことが通常ですから、大学卒業時まで養育費を請求しようと考えるのであれば、相手方と協議して決めたり、和解をする方法をとるべきです。
審判・判決というのは、通常、当事者間で話し合いができず、国家権力である裁判所に判断してもらうものですが、和解や協議であれば、当事者間で合意ができさえすれば柔軟に取り決めることができるのです。
現在、大学まで進学される子どもが多いので、仮に争っている場合でも、相手方が大学卒業までは払ってやるべきでは、という考えを持っていれば、相手方から合意を得られる可能性も低くはありません。
なお、離婚で一番多い類型は、協議離婚(役所に離婚届を提出して行うだけの離婚)ですが、協議離婚の場合には、養育費を決めるにあたって、きちんと公正証書を作成しておきましょう。
公正証書を作成しておけば、仮に相手方が支払わなくなった場合にも、相手方の給料を差し押さえて回収する等の方法が容易にとれますので、協議離婚の場合には公正証書を作成することをおすすめします。
私はお見合いで男性と婚約、結納を済ませました。結婚式は1ヵ月後で、最近その男性と何となく性格が合わないように感じられてきました。また、私以外にも交際している女性がいるようです。ただし確証はありません。
この場合、婚約を解消することはできるのでしょうか。またその場合どのような手続をとればよいのでしょうか。
①婚約解消の可否及び方法について
婚姻生活は、互いの自由意思に基づく信頼関係を基礎とした継続的な関係であり、裁判などによって強制的に婚姻関係を成立させることはできません。そして、婚約は将来婚姻することの合意で、婚約の履行を強制することも当然にできません。したがって、婚約したあとに一方が婚姻する意思を失った場合、婚約を解消することは自由にできます。
婚約解消の方法ですが、そもそも婚約の成立について特別な方式が不要である以上、婚約の解消にも特別な手続は不要です。したがって、あなたの婚約を解消したいという意思が明確に相手方男性に伝わればよいことになります。
②婚約解消の正当事由について
婚約解消にともない、双方が婚姻準備に費やした費用の精算や結納の返還が問題になります。その際、あなたが婚約を解消した理由が「正当事由」に該当するかが、大きく影響します。
一般に婚約解消の「正当事由」とは、円満かつ正常な婚姻生活を将来営めない原因となり得る客観的かつ具体的な事情をいいます。相手方に他の異性関係がある、相手方から虐待・侮辱されたなどが典型例で、他に、挙式や婚姻の届出を合理的理由なしに一方的に延期、相手方が不治の病に罹患した、相手方が冷酷な態度に豹変した、相手方の経済状態で日常生活の営みが極めて困難な程度に悪化したなどが該当すると考えられます。
これに対し、単に性格が合わない、相手方の資産が思ったより少ない、家風が合わない、親が反対している、婚約後に他に好意をもつ異性ができたなどの理由は、「正当事由」とは評価できないでしょう。
あなたの場合、何となく性格が合わないとの理由のみで婚約を解消するのであれば、「正当事由」はありません。もし相手方男性からあなたに対して結納返還請求や慰謝料等の損害賠償請求がなされた場合、あなたはその支払に応じざるを得ないでしょう。他方、実際に相手方男性があなた以外の女性とも交際しているのであれば、あなたからの婚約解消には「正当事由」があると評価できるでしょう。
ただし、仮に裁判となった際には、実際に相手方男性が別の女性と交際していたとの事実をあなたが立証する必要があります。よって、婚約解消を実行する前に裏付ける証拠を獲得しておくべきでしょう。
5年前、元夫との調停離婚が成立しました。その際、5歳の子どもについての親権者を私とし、その子が20歳になるまで、毎月4万円の養育費を支払うという取り決めがなされました。
ところが元夫は、1年前から養育費を支払わなくなりました。私が、電話をしても私からの電話にはでません。どうしたらいいでしょうか?
一般的に養育費の支払確保の手段としては、強制執行、履行勧告、履行命令、金銭の寄託等がありますが、金銭の寄託という制度は、支払義務者に支払意思と支払能力があることを前提とした制度であり今回のケースには当てはまりません。
そこで強制執行、履行勧告、履行命令の各制度について説明します。
履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判等で決定した慰謝料や養育費等について支払義務者が履行しない場合、家庭裁判所に支払義務者に対して履行を勧告し、支払を催促してもらう制度です。
申立て手数料は無料で、書面による申立てが望ましいですが、電話での申し出にも応じます。
履行命令とは、家庭裁判所の調停や審判で定められた金銭の支払、その他、財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において、権利者の申立てがあった場合、家庭裁判所が相当と認めるときは、義務者に対し相当の期間を定めてその義務の履行をなすべきことを命令する制度です(家事審判法15条の6、25条の2)。
この規定により、義務の履行を命ぜられた者が正当な事由がなくその命令に従わないときは、10万円以下の過料に処せられます(家事審判法28条第1項)。
履行命令、履行勧告は強制執行のような支払に対する法的な強制力はありませんが、裁判所からの督促なので支払義務者が驚いて支払に応じることもよくあります。
強制執行とは、判決や調停、審判調書など、強制執行力がある書面により養育費が定められている場合に、地方裁判所に強制執行の申立をし、支払を強制的に確保する制度です。
以前は、強制執行の対象が申立までに支払が滞っている分についてのみでしたが、平成16年の民事執行法の改正により、民法上の扶養義務に基づく定期債権(養育費、婚姻費用等)については、その一部の不履行があるときは、履行期限が到来していない将来部分についても一括して強制執行ができるようになりました(民事執行法151条の2第1項)。
この規定に基づいて差押さえができる財産については、一定の制限があり、給料債権や家賃等の賃料債権などの継続的給付に係る債権に限られます(民事執行法151条の2第2項参照)。
したがって今回の件では、元妻は地方裁判所に対し、滞っている分の養育費に加え、将来にわたる給料債権の差押さえを申立てることができます。
私には結婚して10年になる夫がいますが、これまでに何度も浮気を繰り返し、また最近浮気をしているようです。そこで夫と離婚をしたいのですが、どのようにしたらいいのでしょうか。
離婚をするには、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の各制度があります。
【協議離婚】協議離婚とは、婚姻中の夫婦の合意により離婚を成立させるもので、特に離婚の理由などは必要ありません。離婚届に必要な事項を記入し、署名、押印等をして役場に提出し、その届出が受理された時点で離婚が成立します。
【調停離婚】相手方が離婚に合意しない場合や、合意できても親権者の指定や養育費、慰謝料等の合意ができていない場合、家庭裁判所に調停離婚の申立をします。いきなり離婚の裁判をすることはできず、まずは調停をします。
【調停離婚】は、家庭裁判所で当事者と調停委員2名及び裁判官との3者が話し合い、離婚を成立させ、紛争の自主的解決を図ります。当事者が調停委員と交互に自分の言い分を述べて話し合いを進め、夫婦が直接顔を合わせません。
話し合いにより、離婚の合意ができれば、家庭裁判所は合意事項を調停調書に記載し、その時点で離婚が成立します。調停を申立てた方は、調停成立後10日以内に離婚届書に必要事項を記入し、調停調書を添付して役場に離婚届を提出します。
【審判離婚】調停の場合において、調停成立の見込みはないが離婚を成立させた方が双方の為であると考えられる場合、家庭裁判所は調停委員の意見を聴き「調停に代わる審判」ができます。これは当事者双方の意思に反して離婚を成立させる制度です。審判の後、適法な異議の申立てがなければ、その審判は確定し、判決と同一の効力が生じます。
【裁判離婚】調停、審判離婚が成立しなかった場合、離婚を請求する配偶者は、他方の配偶者を相手として離婚の訴えをすることになり、これを裁判離婚といいます。
裁判離婚をする場合、民法で定められた、次の離婚原因が必要です。
①配偶者に不貞な行為があったとき②配偶者から悪意で遺棄されたとき③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
裁判離婚において離婚が成立した場合、その時点で離婚の効力が生じ、訴えた方の配偶者は、離婚成立後10日以内に離婚の届出をします。
今回の件では、まず離婚の話し合いをし、協議離婚できないときは調停を申立てることとなります。調停や審判でも離婚が成立しないときは、夫が浮気しているとのことなので、裁判により離婚を求めることとなります。
結婚して15年になり中学生の子が二人います。共働きで自宅は2000万円で購入しましたがローンが700万円ほど残っています。預貯金は500万円ほどあります。自宅、ローン、預貯金とも全て夫名義です。夫と離婚についての話し合いをしていますが、どのようなことを取り決めておく必要があるのでしょうか。
離婚においては、まず、子供が未成年の場合には、子供の親権者と養育費の負担を取り決める必要があります。また、婚姻期間中に夫婦で築いた財産があれば、財産分与の方法を定める必要もあります。さらに、離婚原因が不貞行為であるなど、夫婦の一方に責任がある場合には、慰謝料の金額や支払い方法も決める必要があります。年金も夫婦間で厚生年金受給額に差額が生じる可能性があるので、その分割について取り決めをしておいた方がよいでしょう。
親権は子が中学生とある程度成熟していますから、その意見も聞いて決めるのがよいです。養育費は毎月の金額の他に、今後教育にお金がかかりますので進学時の負担も定めておくとよいでしょう。
財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産ですので、夫婦の一方が相続などで取得した財産は対象となりません(特有財産といいます)。また、婚姻期間中に夫婦で築いた財産であれば、名義は夫婦いずれの名義でも財産分与の対象となります。今回のケースでは、財産分与としては預貯金、自宅の分配、ローンの負担を決める必要があります。分与の割合は2分の1を基本に、子供を引き取る側の生活事情を考えて加減するのがよいと考えます。自宅は、売却して剰余金がある場合にはローン債務を差し引いた残金を分ければよいですが、ローンが残る場合や一方が自宅を取得する場合には、どちらかがどの程度のローンを負担するのかを決めておく必要があります。
取り決めた事項は争いが生じないようにするために書面化しておくべきです。
子の養育費については、長期に亘りますので公証人役場で公正証書を作成しておくのがベターです。年金分割の合意をする場合は公正証書等の書類を作成添付して社会保険事務所に分割の請求をする必要があります。
詳しい内容について一度弁護士に相談することをお勧めします。
夫が愛人をつくり別居して1年になります。子供がいるので離婚はしたくないのですが、ここ数ヶ月生活費を入れてくれません。生活費を出してもらうにはどうしたらいいでしょうか?
民法760条は「夫婦は、その資産・収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。婚姻から生ずる費用とは、日常の生活費、衣食住の費用、医療費、交際費等の他、子供の養育費も含まれます。婚姻中、経済力がある配偶者は他方の配偶者に必要な生活費などを渡さなければならず、経済力に劣る配偶者もそれを要求する権利があります。つまり、法的な夫婦関係が成立している間は、経済力のある配偶者は、他方の配偶者に自らと同等の生活レベルを保持させなければならないのです。
本件でも、夫の方があなたよりも多く収入を得ているのであれば、夫に生活費の支払いを請求する権利があります。もし、夫が生活費の支払いに応じなければ、家庭裁判所に「婚姻費用分担の調停」という手続きを申し立てることができます。調停とは、裁判官と一般市民から選ばれた2名以上の調停委員で組織された調停委員会の関与の下、紛争の当事者間で話し合いを行うという手続きです。その調停という手続きの中で話がまとまらない場合には、最終的に裁判所が「毎月いくら支払え」と審判で命ずることになります。この審判には強制力があり、夫が調停や審判で決まった金額を支払わないときは、給料など夫の財産を差し押さえることも可能です。
支払金額は主に双方の収入、未成年の子供の数・年齢を考慮して決められますが、婚姻費用分担額の算定表があり、容易に一応の金額を確認することができます。
審判が出るまでには通常相当の日数がかかりますので、差し迫った必要があれば、審判前でも、とりあえず応分の生活費を支払えとの仮処分を裁判所に求めることもできます。
円満な家庭生活を取り戻すために第三者を入れて話し合いたいというお気持ちがあれば、併行して夫婦関係調整という調停の申し立てをすることもできます。調停委員が夫婦双方から話を聞き、問題点を探り、双方に解決のための助言をする形で手続きが行われます。
なお、不貞関係にある愛人に対しては、夫と離婚していなくても慰謝料請求をすることが可能です。
夫と離婚をしたいと考えているのですが、高校1年生の長女と中学2年生の長男がいて、これから高校、大学と費用がかかります。離婚する際には、いろいろな形態があると聞いたのですが、どのような形態でするのが良いのでしょうか。
離婚をするには、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つの方法があります。これらの方法にどのような違いがあるのでしょうか。主に協議離婚と裁判離婚のちがいについて説明していきます。
まず、協議離婚の場合についてですが、この方法は確かに簡易な方法で、日本で一番とられている離婚の方法ではないでしょうか。しかし、協議離婚の場合、離婚した後に面倒なことになるケースが多いのも現実です。
例えば、当事者間で離婚する際に、財産分与、慰謝料、養育費等は当事者間で約定書を作成したとします。しかし、別れた夫が再婚し、新しい家族の生活のために養育費や慰謝料を払わなくなったとします。
この時に、協議離婚をして簡易な約定書を作成しただけでは強制執行(例えば給料を差し押さえて、そこから回収するなど)ができません。つまり、一度裁判をして判決をもらわないと強制執行はできないのです。
したがって、協議離婚をしようとする場合には、強制執行を将来するためにも公正証書を公証人役場で作成してもらっていたほうが確実といえるでしょう。
以上のように、協議離婚は、確かに簡易な方法なので多く用いられがちですが、離婚後のことをしっかりと考えて準備しておくことが必要になります。
次に、裁判離婚ですが、判決をもらえば、強制執行は可能ですので、協議離婚と比べ、離婚後に別れた夫が養育費等の支払いをしなくなった場合でも、安全だといえるでしょう。
しかし、裁判離婚ということになれば、ある程度の期間が必要になりますし、弁護士に依頼した場合には費用もかかります。この点は、裁判離婚のデメリットといえるでしょう。
要は、どのような手段にも、一長一短あるということですね。結局のところ、今結婚している方は夫婦仲良く、未婚の方は離婚しなくても良い人を見つけましょう。
「財産分与の性格について教えてください。」
離婚に伴う財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与という三つの性格があります。
清算的財産分与についていえば、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産をどのように分けるかということが問題となるわけですから、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、相続などによって単独名義で取得した財産は、分与の対象とはなりません。
しかし、扶養的財産分与や慰謝料的財産分与についていえば、相手に経済的満足を与えれば扶養や慰謝料支払いの目的を達するわけですから、どの財産が分与の対象となるかを問題とする必要はありません。
扶養的財産分与として、夫名義の財産である土地に使用借権、建物に賃借権の設定を命じた裁判例もあります(東京高判昭63・12・22判時1301号97項)。
したがって、以下、財産分与が夫婦財産の清算としてなされる清算的財産分与の場合を前提に、検討していきます。
「どのようなものが財産分与の対象となるのですか。」
夫婦共有名義の財産は、いわゆる共有財産として原則的に分与の対象となります。夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定されます(民法762条2項)。
なお、たとえ一方の単独名義となっていても、夫婦が協力して形成した財産という実質があれば、いわゆる実質的共有財産として分与の対象となります。
これに対し、夫婦の一方が婚姻前から所有する財産や、婚姻期間中であっても相続などによって単独名義で取得した財産は、いわゆる特有財産として原則的に分与の対象とはなりません(民法762条1項)。
財産分与が夫婦財産の清算としてなされる以上、夫婦以外の第三者の名義となっている財産は、原則的に財産分与の対象になりません。ただ、これも実質的判断として、第三者名義であっても、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産と認められる場合は、分与額の算定基礎として考慮することが可能です。
本件の場合、夫の経営する会社が個人事業としての実態を有している様子ですので、たとえ会社名義の財産であっても、実質的には夫婦が協力して形成した財産として、分与額の算定基礎として考慮することが可能です(大阪地判昭48・1・判時722号84項)。
「私は姫島の奥に住んでいるので、大分の裁判所まで行くのは1日仕事です。呼出が来ても拒否することはできないのでしょうか。」
現金・預貯金・不動産・車両・有価証券などは当然財産分与の対象となります。
退職金も、既に支給されている場合には財産分与の対象となると解されており、これを認めた裁判判例も多数あります(東京高判昭58・9・8判時1095号106頁、広島家審昭68・10・4家月41巻1号145頁など)。
問題は、離婚時にはまだ退職金が支給されていない場合ですが、最近では、熟年離婚の増加という世相を反映してか、将来支払われる退職金も財産分与の対象となるとする傾向にあります。
裁判例を見ると、事業によって算定方法に差異があるようですが、将来退職金が支払われることを条件として分与を命じたもの(東京高判平10・3・18判時1690号66頁、原審は横浜地判平9・1・22判時1618号109頁)、判決言い渡しから6年後に支払われるべき退職金のうち婚姻期間に対応する分を算出し、これに請求書の寄与率を掛け合わせた金額につき分与を命じたもの(東京地判平11・9・3判時1700号79頁)などがあります。
「年金はどうですか。」
年金についても財産分与の対象となるように法律が改定されています。
ただ、その要件については中々難しい面もありますので、具体的なことは弁護士に尋ねて下さい。