民事一般
先日、友人から300万円貸してほしいと頼まれました。付き合いも長く、信用できる友人なのですが、金額も大きく、まったく不安がないわけではありません。お金を貸すにあたり、どのようなことに気をつけないといけないのでしょうか。
信用できる友人といっても、300万円もの大金を貸すことには大変不安もあることでしょう。お金を貸すにあたっては次のことに気を付けるとよいでしょう。
相手に返済能力があるか
貸す相手方が信用でき、誠実な人物であるとしても、実際に相手方に返済能力がなければ、貸したお金を返してもらうことはできません。お金を貸すにあたっては相手の収入や相手名義の不動産があるかどうかを確認しておくべきです。仮に相手に資力がなく、相手の親に十分な資力があったとしても、借主でない親には返済義務は発生しないので、返済能力の有無は借主自身を基準に判断するべきです。
返済時期、返済方法を決める
相手に資力があり、お金を貸すと決めたら、次に返済時期、返済方法を決める必要があります。今回のケースでは、300万円を一括で返してもらうのか、それとも10万円の30回払いというように分割で返してもらうのかを決めておきましょう。そして、返還の時期についても決めておく必要があります。なお、利息をとる場合には利率や利息の支払方法についても決めておくとよいでしょう。
借用書の作成
今回のケースでは大丈夫かもしれませんが、借主がお金を返さない場合もよくあるものです。そのような場合に備えて、借用書を作っておきましょう。相手が任意に返さない場合は、裁判することになりますが、裁判では自分の言い分を裏付けるための証拠が必要となってきます。借用書はまさに重要な証拠となりますので、金額の大きい今回のようなケースでは、借用書は必ず作るようにしましょう。
保証人など
今回のケースは、貸金が300万円という大きな金額です。相手方がお金を返さない場合に備えて、資力がある人を連帯保証人としたり、相手の不動産に抵当権を設定することも考えておくべきでしょう。
先日、私の所有地に隣接した土地の所有であるAさんが、私に無断で境界に沿ってブロック塀を建てたのですが、どうやら私の土地上にまでブロック塀が一部はみ出している模様です。何とかできないでしょうか。
Aさんが境界をはみ出して建てたブロック塀は、隣地所有者であるあなたの土地の所有権を侵害していますので、あなたは、Aさんに対して、土地の所有権に基づきはみ出した塀を撤去するよう妨害排除請求をすることができますが、Aさんが任意に応じてくれない場合には、訴訟を提起する必要があります。
ただし、訴訟を提起するにあたっては、相応の時間と費用が掛りますので、訴訟を躊躇われることもあるでしょう。
しかし、あなたがこのまま何もせずに事態を放置してしまった場合、あなたの土地のうち、はみ出した塀によって占有されていた部分については、取得時効が成立する可能性があります。
取得時効とは、他人の物又は財産権を一定期間継続して占有(準占有を含む)した者に対し、援用をもってその権利を付与するという制度です。(民法162条、同163条)。
所有権について取得時効が成立するためには、占有者が所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間の占有を継続する必要がありますが、占有者が占有部分についても所有権があると過失なく信じていた場合には、占有期間が10年で足りるとされています。
よって、ご質問の場合、最短で、Aさんがブロック塀を建ててから10年が経過した時点で取得時効が成立し、あなたの所有する土地のうち、ブロック塀によって占有された部分が、Aさんの所有となる可能性があります。
この取得時効の成立を防ぐためには、Aさんに、あなたの土地上にブロック塀がはみ出していることを認める旨の日付入りの念書などを書いてもらうことで、Aさんの占有が所有の意思に基づかないことを明らかにしておく必要があります。
いずれにしても、大切な不動産ですから、少しでもトラブルを感じた場合には、弁護士等の法律の専門家に相談したうえで、素早く行動を起こした方が賢明でしょう。
私は昨年知人に1千万円を貸し付けました。知人は私以外からも多額の借金をしているのですが、先日知人が唯一の財産である自己名義の住宅と敷地を、内緒で他人に譲渡していまいました。このような行為は許されるのでしょうか。
知人が、真実、住宅及び敷地を譲渡したのか否かによって、適用する民法上の条文が変わってくるため、場合を分けて回答します。
第1に、知人の行った譲渡が仮装であった場合について検討します。
まず所有権が移転するためには、当事者間に、真実、所有権を移転させるとの意思(売買の意思、贈与の意思など)が生じていることが大前提となります。しかし、知人と現在の名義人が通謀して住宅及び敷地の譲渡を装った場合、通謀虚偽表示に該当し、民法第94条第1項が適用され、その効果は原則として無効となります。この場合、あなたは知人に代わって、現在の名義人に対して住宅及び敷地の登記名簿を元に戻すよう請求することになります。
第2に、知人の行った譲渡が、真実、譲渡の意思に基づいて行われた場合について検討します。
当該譲渡が贈与のように無償で行われたケースや不動産の時価よりも大幅に廉価な価格で売買された場合などには、知人はあなたを以外からも多額の借財をしていることから、あなたを含めた債権者は、民法第424条に規定された債権者取消権を行使することで、知人の行った無償又は廉価な譲渡の効力を取り消して、知人の元へ住宅及び敷地の所有権を戻すこと等ができます。
ただし、債権者取消権は、本来は、知人が自由になしうる譲渡の効果を取り消すものであり、また、譲り受けた名義人の利益を損なう可能性もあることから、行使するためには訴訟を起こす必要があるとされています。
そして、一般的に①知人の行為により債務者の総財産が減少し、総債権者に対する弁済資力に不足をきたすこと、②知人のみならず、譲り受けた名義人が取引時に①の事実を認識していたことが必要とされます。
弁護士の観点では、②の要件を証明することは他人の内心に関する事項のため困難を伴います。知人と譲り受け名義人との関係、住宅及び敷地の売買経緯、具体的な売買契約当時の状況などを総合的に判断して証明しますが、訴訟を提起する場合、事前にこの点の証拠を十分に確保しておくことが不可欠です。
以上が民事上の救済策です。他方、刑事上については、強制執行を免れる目的をもって財産を仮装譲渡した者は、刑法第96の2により強制執行妨害罪に該当し、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることになります。したがって、知人も同罪にて処罰される可能性があります。
アパートを持っているのですが、ある部屋の貸借人が家賃を1年分も滞納しており、催促しても全く支払う素振りがありません。強制的に退去してもらうにはどうしたらよいでしょうか。
貸借人が長期にわたり家賃を滞納してしまった場合、貸借人と協議ができるケースは、滞納家賃の支払方法や、建物からの退去について話し合うことになります。しかし、本件のように、協議を拒否している場合などは、退去に向けて強制的な、つまり法的な手段をとらざるを得ません。
貸借人を強制的に退去させるためには、裁判所の「執行官」に退去手続をとってもらう必要があります。そして、執行官が強制執行を行うためには、「債務名義」というものが必要で、典型的なものは勝訴判決です。つまり、裁判所に訴えを提起し、貸借人が建物を明け渡さなければならないことを裁判所で認めて貰う必要があります。そして、勝訴判決を取得した後、強制執行の申立てを行います。
強制執行の申立てを行うと、概ね2週間以内に執行官が現地を訪れ現状を確認します。その際、退去期限を記載した催告書を室内に提示します。催告の時点で、貸借人があきらめて退去するケースもあります。しかし、催告をしても自ら退去しない場合には、強制的な退去手続(「断行」といいます)をとることになります。
催告から概ね4週間後、執行官が再び現地を訪れます。その際、室内の荷物などを事前に手配した業者に搬出させ、場合によっては倉庫などに保管しておきます。また、通常、部屋の鍵も変えますので、事前に鍵業者を手配しておきます。後日、執行官が運び出した室内の荷物を時価で算定して、通常、その荷物を強制執行を申し立てた家主が買い取ります(金額は僅少なことがほとんどです)。買い取った荷物は自由に処分できます。これで明け渡しの強制執行の手続は完了となります。
このように、強制執行による建物の明け渡しには、それなりに時間と費用がかかります。時間については、特に、勝訴判決を得るまでに時間がかかることがあります。また、費用については、裁判費用(弁護士費用など)、強制執行の際に裁判所へ予納する費用(通常8万円前後)、荷物を搬出する業者や鍵業者を手配する費用などがあります。法的には貸借人が負担すべきものですが、事実上、家主側が負担して貸借人から回収することができないことがほとんどです。
隣のマンションで立替工事を始めたようなのですが、朝から晩まで出入りする工事車両の音や工事作業の騒音がうるさくて、とても我慢ができません。どのように対処すればよいのでしょうか。また、場合によっては、損害賠償等を請求しようとも考えているのですが、可能でしょうか。
マンション等の建設や補修工事に伴う騒音や振動等のトラブルは、近隣トラブルの中でも比較的よく耳にする典型的な紛争事案と言えるのではないでしょうか。
ただ、工事を施工する側としても、建設や補修の必要性に基づいて工事をしているわけでしょうし、建設等の工事を実施する際にはある程度の騒音等が発生するというのは止むを得ない側面もありますから、騒音が発生しているからといって一概にそのすべてが違法となるわけではありません。
もっとも、騒音の程度や工事の方法等によっては、その騒音を発生させる行為が法的に違法となり、近隣の方々が被った精神的苦痛等に対する損害賠償請求等が認められることもありますので、具体的な事情をケースごとに検討する必要があります。
裁判例によりますと、工事等騒音を発生させる行為の態様、騒音被害等の程度、工事物件等が存在する地域環境、騒音等発生行為の開始時の状況、発生後の継続状況、被害の防止に関する措置の有無及び内容効果等を総合的に考慮して、その騒音等の被害が一般社会生活上受忍すべき限度(「受忍限度」といいます)を超えるかどうかをという視点から違法であるか否かを判断するようです。
ですから、騒音等の大きさや発生回数、騒音の発生時期が深夜や早朝であるかどうかなども当然に考慮されなければなりません。また、工事開始前に、施主や施工業者から周辺住民に対して十分な事前説明が実施されていたかや、苦情に対して施主や施工業者が適切に対応措置を講じたかなども重要な要素になります。
いずれにしても、まずは騒音等を発生させている工事等の具体的状況をできるかぎり詳しく把握して記録等をとり(行政機関によっては、騒音測定器などを貸し出してくれるところもあるようです)、場合によっては施主や施工業者等に苦情や改善の申し入れをするなどして、十分に話し合いの機会を設けながら紛争解決への努力を試みるのが穏当ではないでしょうか。
私は約30坪の店舗を所有していますが、5年ほど前にXさんとの間で賃貸借契約の締結し、Xさんがその店舗でスナックを経営していました。ところが、最近、経営者が別人のYさんに変わっているようなのでXさんに話を聞いてみたところ、Yさんに経営を委託しているだけでXさんが経営者であることに変わりがないと言われてしまいました。
しかし、私は現実に貸店舗を使用しているのはYさんであり、Yさんが使用することに承諾していない以上、無断で転貸をしているのではないかと思い、Xさんとの賃貸借契約を解除したいと考えていますが解除することは可能でしょうか。
スナックなどの店舗は、賃借人が内装等に多額の資金を投下しているため、居抜きで賃借権を第三者に譲渡、転貸したいと、賃借人が考えても不思議はありません。
しかし、民法612条1項は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と定め、仮にXさんがYさんとの間で本件貸店舗につき転貸借契約を締結する場合には、あなたの承諾が必要となります。
本件のように、経営者を形式的にXさんのままとし、経営委託をして実質的には経営者をYさんとすることで、あなたの承諾がなくても、事実上、XさんがYさんとの間で転貸借契約を締結したのと同様の状態を作出しようと試みることがあります。
このような事案の裁判例が出されています。簡潔にまとめると、Yさんが借家人であるXさんの指揮監督下にある従業員であって、経営内容についてXさんがYさんを指揮監督する関係にある場合には、依然としてXさんが当該店舗を使用、収益しているといえ、無断転貸とはなりませんが、もし、Yさんが当該店舗の収入、支出について自己の計算、責任でこれを行い、Xさんがこれを指揮監督する関係にない場合には、Yさんが独立して当該店舗を使用、収益していると判断され、XさんはYさんに対して無断で転貸したものとされているようです。
本件では具体的関係やスナック店舗の収入、収支の帰属主体などが明らかでないため、結論を断定することはできませんが、様々な事情を考慮したうえでYさんが実質上の経営者であると認定された場合には、あなたがXさんとの賃貸借契約を解除することは、原則可能でしょう。
なお、Yさんが実質上の経営者であった場合でも、例外的に、その転貸があなたに対する背信的行為ではないとされた場合には、解除をすることはできません。
しかし、過去の裁判例をみても、店舗の委託経営の事実について、背信性が否定され、契約解除が認められなかったケースはあまりありません。
借地借家法では、当初の契約期間が終了しても、借地権の期間の更新や期間の延長をしない旨の特約ができる定期借地権の制度があるそうですが、どのような内容の借地権でしょうか。
定期借地権とは、更新がなく、定められた契約期間で確定的に借地関係が終了する借地権をいいます。旧借地法下では、一時使用のための借地権を除いて、借地権の存続期間が終わっても、その土地に建物が存在する限り、地主は正当な理由がなければ契約更新を拒絶できないとされていました。そのため、地主は、一旦借地権を設定すると、半永久的に貸すことになりかねないので、土地を貸すことを渋ったり、貸すとしても見返りとして高額の権利金の支払いを要求したりして、借地の供給が妨げられる結果になっていました。他方、借地人には一定期間に限って借地したいという希望もありました。そこで、この定期借地権の制度が新しく導入されました。
定期借地権には、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類があります。
一般定期借地権とは、存続期間を50年以上に定めなければなりません。そして特約として、①契約の更新がない、②存続期間中に建物が滅失した場合、再築しても存続期間の延長がない、③契約が終了したとき、地上の建物の買い取りがないという定めをしなければなりません。これらの特約はワンセットで定められる必要があり、また書面でしなければなりません。書面の種類については制限がありませんが、最低50年という長期契約ですので、後日の証拠として公正証書にしておいた方がよいでしょう。
この定期借地権が設定されますと、地主は期間満了と同時に借地契約を終了させ借地人に地上の建物の取り壊し、土地の明渡しをさせることができます。
なお、この一般定期借地権における更新排除等の特約は登記事項とされています。
地上の建物が第三者に賃貸されている場合には、定期借地権の満了時に建物賃貸借契約が終了するという特約を書面ですることが認められています。特約がなされず、建物賃借人が借地権の存続期間が満了することを、その1年前までに知らなかった場合は、裁判所は申立により知った日から1年を超えない範囲で明渡しの期限を許与することができるとされています。(借地借家法39条・35条)
10年以上飼っていた犬の体調が悪そうだったので、動物病院で診てもらいました。医者から特に異常はないと説明されたので自宅に連れて帰りましたが、体調は回復しないまま、3日後に亡くなってしまいました。動物病院に何か責任は生じないのでしょうか。
(動物病院との契約内容)
あなたは、動物病院との間で、ペットを治療してもらうという契約を結んでいます。
したがって、動物病院には、あなたの犬を適切に治療する法的義務が発生していますし、また、医療方法について適切に説明する法的義務も発生しています。
(動物病院に発生する責任)
そして、動物病院が、そのような法的義務に違反した治療を行なった場合、動物病院には義務違反に基づく責任が発生します(この責任を「債務不履行責任」といいます。また、事案によっては「不法行為責任」という別の責任も生じます)。逆に言えば、そのような義務違反がないと、結果的にペットが死亡したとしても、動物病院に法的責任は発生しません。
どのような場合に治療義務違反や説明義務違反が認められるかは、基本的には、病状など各事案の事情に照らして、獣医師会の一般的な医療水準に基づく治療等がなされたか否かで判断します。
過去の裁判例には、腫瘍の切除手術を行なったところ、術後の病理組織検査により腫瘍が実は肉腫(悪性腫瘍)であることが判明し、そのペットが約1ヵ月後に亡くなったケースで、治療義務違反や説明義務違反が認められた例もあります。
そして、動物病院に義務違反が認められた場合、義務違反と因果関係が認められる損害について、賠償請求をすることができます。
例えば、治療費、慰謝料、弁護士費用などを請求することができます。
(本件についての対応)
本件では、10年以上も飼っていたとのことですから、飼い主の方には相当な愛着があったかと思います。
動物病院に法的責任が発生するかについては、亡くなったペットは何か病気に罹っていたのか、病気に罹っていたとしてそれが死因なのか、亡くなった当時本件犬の平均寿命を超えていたか、診察を受けた時点で医師が病気を見落としていたといえるか、といった点が問題となります。
また、実際に動物病院に対して法的責任を追及することができるかどうかは、それらの点について、資料や証拠が存在するかにもよります。一度専門家に相談されるとよいでしょう。
私は、雑居ビルの一部を賃借して店舗を経営している自営業者なのですが、ビルの所有者から、ビルの建て替えを実施するので近いうちに物件を明け渡して欲しい旨の催促を受けています。契約書を見ると、確かに、6ヶ月前までに通知をすれば賃貸借契約を解除できるとか、その際には立退料は発生しないなどと書かれてはいるのですが・・・。申し出に従って出て行かなければならないのか、立退料などはどうなるのか、教えて下さい。
借地や借家の賃貸借契約は、所有者や賃貸人が自由に解約できるものではありません。
家賃の滞納による債務不履行でもない限り、賃貸借契約を終了させるには、原則として「正当の事由」(旧借家法第1条の2、借地借家法28条等参照)が必要になります。
この「正当の事由」の有無を判断するに当たっては、①賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情②賃貸借関係に関するこれまでの経緯や経過③当該物件の利用状況や現況など、当該賃貸借関係を取り巻く様々な事情や要素が考慮されることになります。
①は、貸主側と借主側のどちらの方が、当該物件を使用する必要性に迫られているのか等が比較されます。あなたが、長年の間、その店舗で地域に密着して商売を続けており、他に移転先や代替店舗を探すことも難しいような場合は、正当事由が認められにくいでしょう。②では、契約更新の状況や、賃料、保証金、権利金などの事情が考慮され、何度も契約の更新が行われているような場合は、やはり正当事由の有無に影響することがあります。③については、建物の現在の利用状況や構造、老朽化の程度などが考慮されることになります。防災構造上も問題がある老朽化した建物で即時に建て替えをしなければ人命にかかわる危険性があるような事情でもあれば、正当事由が肯定され得ます。
これら①~③に加えて、④「財産上の給付をする申し出」も正当事由の判断要素として考慮されます。いわゆる、「立退料」です。立退料は、あくまでも①~③を補う補完的な考慮要素で、立退料を支払えば当然に正当事由が認められるとか、反対に立退料を支払わなければ絶対に更新拒絶が認められないというものではありません。なお、契約書に立退料は発生しない旨の記載があっても、そのように賃借人に一方的に不利益な内容の条項については、その効力が否定されます。
立退料の算定に当たっては、移転費用、仲介料、引越費用などの他、内装補償費用や営業補償費用、借家権価格費用など様々な補償項目が考慮されます。計算に当たっては、店舗の規模や営業状況、立地条件など個別の事案ごとに当然に事情が異なりますので、相当な立退料額がよく分からないような場合には、経営店舗の状況が分かる詳しい資料等を揃えて、専門家に相談してみるのも良いでしょう。
友人に私名義の自動車を貸したのですが、約束の返却期日を過ぎてもなかなか自動車を返してくれず、すでにかなりの期間が経過しています。
周囲の話では、その友人は、私の自動車を自分の車であるかのように毎日勝手に乗り回しているそうなのです。勝手に乗り回している間に事故でもおこされたら、車の所有者である私の責任は一体どうなるのだろうかと大変心配なのですが・・・。
それは心配ですね。ご友人があなたに無断で車を乗り回している間に万一交通事故が発生したような場合、事故を起こした友人自身に賠償責任が生じることはもちろんですが、自動車の所有者であるあなたご自身に対しても自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条の「運行供用者」としての責任等が問われる可能性がありますし、また、民法709条に基づく自動車の管理上の過失責任等を負わされる可能性もあるのです。
「運行供用者」としての責任を負うか否かの判断にあたっては、対象となっている自動車の使用について支配をなすべき立場にあるか、自動車の使用によって利益を享受する立場にあるか、などが具体的事情に基づいて詳しく検討されているようですが、主な考慮要素としては、所有者の当該車両の管理状態がどうであったかが問題視される傾向にあります。
①ある男性が自分の父親所有の車を運転して酒場に到着して飲酒後、泥酔して寝てしまった男性に代わって男性の友人が車を運転して自宅に送り届ける際に事故を起こしたケースで、所有車である父親の運行供用者としての責任が肯定された事例もありますし、②車両の盗難被害に遭い、その盗難車両が事故を起こしたケースでも、車にカギをかけていなかった、迅速に被害届を出していなかったなどの所有者の車両の管理状態如何によっては、盗難被害者(所有車)の運行供用者責任等が肯定された事例もあります。
あなたのケースでも、無断使用中の友人が万一事故を起こした場合に、車の所有車であるあなた自身に損害賠償責任が発生する可能性は充分あると思われますので、すみやかに車両の返還等を請求し、それでも迅速な返還が受けられない場合には、専門家等に相談して裁判による返還請求等も検討すべきでしょう。また、無事返還が受けられるまでは、自動車の任意保険等を切らさないように継続しておくなどの対策も必要でしょう。
いずれにしても、車の無断使用という状況を何らの具体的対策も講じずに現状のまま放置しておくことはお勧めできません。