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第99回   違憲状態

                                                         - 2016年12月2日

違憲状態

 刑事事件の判決には、「執行猶予」というのがあります。「懲役1年に処する。但し、3年間はその刑の執行を猶予する。」というような判決。例えば、覚せい剤に手を出したけれども初犯なので3年間はその刑の執行を猶予し、3年以内に再び刑事事件を起こさない限り刑務所に入らなくていいというものです。刑事訴訟法上認められた制度です。
 さて、7月に行われた参議院選挙について、「1票の格差」を巡る高等裁判所の判決が出揃いました。合計16件の訴訟で、「合憲」が6件、「違憲状態」が10件でした。「違憲」だから選挙そのものが「無効」であるという判決は1件もありませんでした。
 ところで、この頃、裁判所が好んで用いる「違憲状態」とはどういうことなのでしょうか。新聞などによると、「1票の格差」が違憲かどうかは、①格差の程度が憲法違反の状態だったか、②格差の是正に必要な期間が過ぎているか―の2段階で評価され、このうち①の違反だけが認められる状態を「違憲状態」と言い、②も認められれば「違憲」となり、選挙が有効か無効かが判断される、とのこと(平成28年11月9日読売新聞より)。しかし、「違憲状態」などという言葉は、憲法上は勿論のこと、法律上もまったく出てきません。裁判所の造語と言わざるを得ません。日本語としても、「違憲」と「違憲状態」とは何処が違うのか理解困難です。一つ言えることは、このような言葉を造ってまでも裁判所はなるべく選挙については「違憲」という判断をしたくないということです。「執行猶予期間中、まじめに過ごせば刑務所に入れないよ。」という執行猶予判決と同じように、「一定期間のうちに選挙制度を改め、1票の格差が是正されれば違憲とは判断しないよ。」と言っているのです。

 合理的な期間内に是正されなかった場合、その選挙は「違憲」となりますが、その選挙自体が「無効」となるのでしょうか。過去、最高裁は衆議院の総選挙に付き、次のような判決を出しています。「現行の議員定数配分規定は、昭和58年12月18日の総選挙当時、憲法の選挙権の平等の要求に反し、全体として違憲であるが、それを理由として当該選挙を無効としても、直ちに再選挙施行の運びとなるわけではなく、かえって憲法の予定しない事態が現出する等の不都合があることを考慮し、いわゆる『事情判決の法理』(注①)(行政事件訴訟法31条1項)の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙自体は無効としないとするのが相当である」(議員定数配分規定違憲判決-最高裁大法廷判決昭和60.7.17)。要するに、最高裁は、「違憲ではあるが、選挙そのものは無効としない。」と言っているのです。この大法廷判決は今から30年以上も前のものであり、その頃は「違憲状態」などという造語は用いていませんでした。この大法廷判決が今も生きているかどうかは不明ですが、近時の裁判所が違憲判決をする前に執行猶予期間である「違憲状態」という期間を設けている以上、この期間内に是正しなければ、最終的に「違憲」そして「選挙そのものが無効である」と最高裁が判断を変える可能性は十分にあります。「仏の顔も三度まで」ということわざあります。これまで最高裁は何とかして議員定数配分についての国会の怠慢を救済してきました。しかし、いつまでも仏の顔が続かなくなる可能性があります。万が一「無効」とされると、当該選挙で当選した議員の全員がその資格を失うことになるわけですから、国家として異常事態になることは想像に難くありません。

 もっとも、このように何度も何度も国会を救うという最高裁の姿勢(「司法消極主義」と言います)に対しては当然ながら批判もあります。裁判所が憲法や法律に規定のない造語を作ってまで「違憲」「無効」を避けていることは、司法の役割を超えて立法の作業にまで踏み込んでいるのではないかという批判です。この批判も傾聴に値するものです。
 「1票の格差」の問題は法理論的にかなり難しい問題がありますので、今後の最高裁の判決から目が離せません。

        注①「事情判決の法理」・・・行政処分や裁決が違法だった場合、裁判所はこれを取り消すのが
                         原則であるが、「取り消すと著しく公益を害する事情がある場合」には、
                         「違法」とは宣言するが、請求そのものは棄却することができるとする
                         行政事件訴訟法上の制度。









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