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第21回 転勤

                                                          - 2010年4月9日

転勤
 今年もまた転勤のシーズンがやって来ました。我々のように地域に根差した弁護士には転勤はありませんが、我々が日常的に相まみえる裁判官や検察官はこの時期に大幅に移動します。大体3年乃至5年を目途に移動しますが、出来の良い裁判官がいなくなる場合は惜しまれますが、出来の悪い裁判官の場合は喜ばれるということも、毎年変わらず見られる風景です。確かに、転勤は、引越などかなり面倒で、子どもが小さい頃など転校をさせることに躊躇を覚えます。また、子どもが高学年になれば、教育のため家族全員で引越はせず、夫だけ単身赴任で行かされるという状況が一般的なようです。それを考えると、転勤のない弁護士の方が、ある意味、恵まれていると言えるかもしれません。
 
 しかし、弁護士の場合、転勤がないだけ、その土地での風評や評判など一旦できあがってしまうと、それを打ち消すことは大変です。例えば、「あの弁護士は金に汚い。」とか、「あの弁護士は酒癖が悪い。」とか、「あの弁護士はいつも裁判で負けている。」などという噂がたったら、それを消すのは大変。その意味では、前任地での悪しき風評が及ばない地へ行ってしまうという転勤という制度は、謂わば、人間の叡智の賜物なのかもしれません。

 私が弁護士になりたての頃は、転勤していく裁判官の送別会を弁護士会の主催で行っており、その際、溜まりに溜まったお互いの憂さを晴らしていました。しかし、官・民の癒着と思われかねないとのことから、この送別会はなくなってしまいました。何となく寂しい限りです。

 転勤の時期を迎えると、私の脳裏から離れられない裁判官がいます。今から20年程前、県南のある支部にいた裁判所支部長のことです。この人は、まったく出世をしなくて、支部から支部ばかりを転勤させられ、最後、県南の支部で定年退官した御仁です。この裁判官の最後の句が次のようなものでした。

 「渋々と支部から支部を回る人、支部の人にも五分の魂。」

 出世しない転勤族の哀愁が漂う良い句だとは思いませんか。



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