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よくある質問

交通事故

  • 交通事故の経済的全損等について

    私は子どもを保育園に迎えに行く途中、過って路上に停車中の高級外車に自車を衝突させてしまい、相手方の車は修理不能となりました。その車はバンパーに金メッキを施すなど高価な部品を取り付けていたとのことで、その部品代まで含めて私に購入代金全額の弁償を要求しています。また、新たな車が来るまでの代車についても、同じ高級外車でなければ代車として認めないと言っています。私は相手方の請求に応じなければならないでしょうか。
    (1)修理不能の場合の車両損害額について
    交通事故により被害を受けた車両が修理不能の場合あるいは修理費が車両の事故時の時価を上回る場合には、経済的全損と判断され、事故時の時価相当額と売却代金との差額が車両損害額として認められます。
    被害車両の時価額は、厳密には鑑定して算定されるべきですが、通常はオートガイド自動車価格月報、中古車価格ガイドブック、財団法人日本自動車査定協会の査定金額等を参考に算出されます。よってあなたの負担すべき損害は、オートガイド自動車価格月報等に記載された当該高級外車の時価から、事故車が売却された際の売却代金を引いた金額になります。

    (2)高価部品をつけていた場合の部品代について
    被害車両に取り付けられていた部品代については、当該部品が一般的に車両の効用を高め、交換価値を高めるものであるならば、通常発生すべき相当な損害として認められますが、そうとは言えない場合には通常発生すべき相当な損害とは評価できず、加害者は被害者に対し部品代を支払う必要はないと解されます。
    今回の相談では、被害車両のバンパーに金メッキが施されていたとのことですが、一般的にバンパーの金メッキが車両の効用を高めるとは言えないことから、あなたが部品代を支払う必要はないと考えられます。

    (3)代車使用料について
    交通事故により被害者が車両を使用できない場合、加害者は被害者に対し、必要性の認められる範囲内で、使用不能期間中の代車使用料を支払わなければなりません。
    しかし、代車は必ずしも被害車両と同種の車両である必要はないと解されていますので、被害車両が高級外車であったとしても、当該高級外車を使用しなければならない特段の事情のない限り、代車は同程度の国産の高級車で十分と考えます。 また、代車の利用が認められる期間は、通常は修理に必要な期間であり、経済的全損の場合には新たな車両を購入するために相当な期間であると解されます。
    あなたの場合、相手方の代車使用料を負担する義務がありますが、その際に使用される車両は同種の高級外車に限られず、それと同程度の他の高級車で良いことから、相手方の言い分は認められないと思われます。

負債・借金問題

  • 破産について

    どうしても今の収入では借金を返済できないので、破産をしようと考えています。仮に、破産の申立てをした場合、今後の生活はどうなるのでしょうか。
     破産をした場合、すべての財産を失ってしまうと考えている方が多いかと思います。
     しかし、破産法の制度自体が破産者の経済的再起を目的の一つにしていることからも明らかなように、全ての財産を失うわけではありません。
     例えば、破産法上、自由財産というものがあります。自由財産とは、破産者が有していた財産の中で破産財団に属せず、破産者が自由に管理処分することができる財産のことをいいます。要は、破産したとしても破産者が財産をもっていられるということです。
     破産法上、当然に自由財産となる財産(これを本来的自由財産といいます。)としては次のものがあります。

    ①現金99万円
    ②民事執行法上の差押禁止動産(ア 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳、建具 イ 1ヶ月間の生活に必要な食料・燃料)
    ③民事執行法上の差押禁止債権(給料・退職手当(原則4分の3相当部分))
    ④特別法上の差押禁止債権(生活保護受給権、老齢年金受給権)

     などが、本来的自由財産として、破産する際に特別な申立をしなくとも、自由財産として破産者が管理処分できることになります。
    その他に財産として持てるものはあるのですか?
    先程の本来的自由財産とは別に、破産法では、自由財産の拡張という制度を設けています。
     破産者が経済的再生を果たすためには、本来的自由財産のみでは不十分な場合があります。
     そこで、自由財産拡張の申立という制度を利用して、その他の財産についても裁判所が認める場合には、破産者自身が管理処分できることになります。
     自由財産の拡張として認められるか否かは、破産者の生活状況、破産者の収入の見込み、破産者が有している財産の種類等を総合的に見て、裁判所が判断します。
     実際に、自由財産拡張の申立をするのは、預貯金、自動車などのケースが一般的には多い部類だと思います。
     ただし、自由財産とするためには、原則として、全体で99万円までという制限はあります。
     以上のように、破産をする場合でも最低限生活を維持する上で必要な物まで何もかも失ってしまうということはないのです。
  • 会社の倒産について

    「私は、土木建設会社を経営しています。今月月末に回ってくる手形の支払いができません。どのようにすれば良いのでしょうか。」
    自社の振出した手形を支払えない場合(落とせない場合)には、不渡り手形を出すことになります。現在の銀行との手形取引約定では、不渡り手形を2回出した場合、銀行取引が出来なくなってしまいます。したがって、2回不渡り手形を出すと銀行が取引をしてくれなくなるため、事実上倒産することになります。 しかし、1回であれば、まだ銀行取引は停止にはなりません。しかし、不渡り手形を1回でも出せば、その情報は同業者や銀行等に瞬時に知れ渡りますので、会社の信用が失墜し、事実上、これ以上営業を続けることは困難になるでしょう。
    「それでは、是が非でも不渡りを回避すべきなのでしょうか。」
    この見極めが一番難しいところです。
    例えば、今月末の手形を何とか落としたとしても、来月の手形を落とす目処がなければ、今月の手形を落とす実益はありません。
    結局、最終的に不渡りを出すことになってしまうからです。
    したがって、今後、継続的に支払い資金を捻出するだけの見込みがあるかどうかを検討しなければならないでしょう。
    今後、継続的に手形を落とすことが難しい場合は、どのようにすれば良いのでしょうか。」
    判断する場合、会社を辞めるか、存続するのかということをまず検討します。会社を存続する目処がある場合(例えば、スポンサーが付くとか、数ヵ月後には資金繰りが良くなるとか、素晴らしい技術力を持っているとか)には、会社を生き延びらせる方向で考えることも可能です。その場合には、民事再生や再生支援協議会に支援の申立を行って私的整理をすることなどが考えられます。
    民事再生とは、裁判所に民事再生の申立を行い、債権者の多数の同意を得て、債権の大幅なカットをしてもらい、残りを分割払いにしていくという方法です。
    会社の経営者は、なるべく会社を潰したくないと考えるのが一般的です。何とか民事再生か何かで再建したいという気持ちは分かります。しかし、土木建設会社の場合は、基本的に民事再生に馴染まないと考えられます。なぜなら、土木建設会社は同業者が多数存在するため、特別に他社にはない技術力がない限り、下請け業者は離れていき、受注も見込めなくなるからです。
    また、再生支援協議会による私的整理は、銀行債務をカットしてもらうことはできますが、通常の手形債務等は対象外となるので、これも難しいでしょう。
    「会社を整理する方向ではどのような手続きがありますか。」
    まず、法的手続きとすれば、自己破産の申立があります。
    ただ、自己破産の申立をする場合、弁護士費用や、裁判所に納める予納金が必要となります。また、会社の代表者は個人保証している場合が多いので、代表者も一緒に破産した方が良いでしょう。
    したがって、早期に、会社再建の道を探るのか、整理するのかを検討した上で、計画を立てる必要があります。場当たり的な処理をしていると、破産申立費用も調達できなくなり、ついには夜逃げしかないという状況になりかねません。
    「会社再建の目処がないので破産の申立をしたいのですが、現在、会社にある金目のものを売却し、それを売ったお金で、自分の知人に対する借入金の返済に充てることは問題ないでしょうか。」
    債務超過や支払不能に陥った状態の債務者が、特定の債権者だけを優遇するために行う法律行為は禁止されています。破産とは、全ての債権者を平等に扱うのが法の目的です。
    したがって、特定の債権者だけに優先的に弁済をした場合、後日、破産管財人からその行為を否認され、弁済を受けた債権者に対し、そのお金を戻せという請求が為されることになるでしょう。
    「会社を破産させる場合の心構えについて、教えて下さい。」
    会社の経営が行き詰る理由は、千差万別です。しかし、いずれの理由であれ、やりっ放しで逃げるというのが最悪です。会社経営者の最後の責任として、きちんとした形で法的整理をし、債権者に、できる範囲内でお返しするべきでしょう。当然、難しい法律問題がありますので、早急に弁護士に相談する必要があります。その中で、最良の方法を選択すべきでしょう。
    従業員の雇用問題、債権の問題、税金の問題、仕掛かり工事の問題、在庫商品の問題等々、会社を破産させるにあたっては、解決しなければならない多くの問題が山積しています。これらを、社長が一人で解決することは、到底不可能です。会社の経営が行き詰ったと考えられる場合、手形の決済が困難と考えられる場合、銀行がこれ以上融資をしてくれず、貸しはがしを迫っていると思われる場合など、早急に弁護士に相談して下さい。

    人間は、最後の引き際が大切といいます。会社経営においても、最後の幕の引き方を間違わないようにしましょう。

離婚問題

  • 別居中の子どもとの面会について

    私は子どもを保育園に迎えに行く途中、過って路上に停車中の高級外車に自車を衝突させてしまい、相手方の車は修理不能となりました。その車はバンパーに金メッキを施すなど高価な部品を取り付けていたとのことで、その部品代まで含めて私に購入代金全額の弁償を要求しています。また、新たな車が来るまでの代車についても、同じ高級外車でなければ代車として認めないと言っています。私は相手方の請求に応じなければならないでしょうか。
    (1)修理不能の場合の車両損害額について
    交通事故により被害を受けた車両が修理不能の場合あるいは修理費が車両の事故時の時価を上回る場合には、経済的全損と判断され、事故時の時価相当額と売却代金との差額が車両損害額として認められます。
    被害車両の時価額は、厳密には鑑定して算定されるべきですが、通常はオートガイド自動車価格月報、中古車価格ガイドブック、財団法人日本自動車査定協会の査定金額等を参考に算出されます。よってあなたの負担すべき損害は、オートガイド自動車価格月報等に記載された当該高級外車の時価から、事故車が売却された際の売却代金を引いた金額になります。

    (2)高価部品をつけていた場合の部品代について
    被害車両に取り付けられていた部品代については、当該部品が一般的に車両の効用を高め、交換価値を高めるものであるならば、通常発生すべき相当な損害として認められますが、そうとは言えない場合には通常発生すべき相当な損害とは評価できず、加害者は被害者に対し部品代を支払う必要はないと解されます。
    今回の相談では、被害車両のバンパーに金メッキが施されていたとのことですが、一般的にバンパーの金メッキが車両の効用を高めるとは言えないことから、あなたが部品代を支払う必要はないと考えられます。

    (3)代車使用料について
    交通事故により被害者が車両を使用できない場合、加害者は被害者に対し、必要性の認められる範囲内で、使用不能期間中の代車使用料を支払わなければなりません。
    しかし、代車は必ずしも被害車両と同種の車両である必要はないと解されていますので、被害車両が高級外車であったとしても、当該高級外車を使用しなければならない特段の事情のない限り、代車は同程度の国産の高級車で十分と考えます。 また、代車の利用が認められる期間は、通常は修理に必要な期間であり、経済的全損の場合には新たな車両を購入するために相当な期間であると解されます。
    あなたの場合、相手方の代車使用料を負担する義務がありますが、その際に使用される車両は同種の高級外車に限られず、それと同程度の他の高級車で良いことから、相手方の言い分は認められないと思われます。

    養育費について

    私と夫は20年前に結婚し、15歳の長男と10歳の長女がいます。この度、離婚をすることになりましたが互いに子どもの親権を主張しており、親権についての話がまとまりません。
    このような場合、どのようにして親権者を決めたらよいのでしょうか。また、親権者を決定する基準というものはあるのでしょうか。
    民法819条1項によれば、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」と規定されています。したがって、離婚届提出の際には、親権者が定められていなければなりません。
    親権者を定める場合、まずは夫婦で協議することになりますが、協議で決まらない場合は、家庭裁判所に対して離婚を求める調停の申立をして、その協議の中で話合いにより子の親権者を定めることができます。調停でも話がまとまらない場合は、家庭裁判所に協議に代わる審判を申し立て、親権者を決めてもらうことができます。また、裁判上の離婚の場合、家庭裁判所が父母の一方を親権者と定めることとなります(民法819条2項)。

    親権者決定の基準としては、父母側の事情として、監護に対する意欲・能力、健康状態、経済的・精神的家庭環境、教育環境、子どもに対する愛情の程度、親族・友人の援助の可能性等、子の側の事情として、年齢、性別、心身の発育状況、子の希望等の各事情があり、これらを総合的に考慮して、親権者は決まります。以下、具体的な判断基準について幾つか挙げてみます。

    (1)監護の継続性の基準
    子を現に養育しているものを変更することは、子の心理的な不安をもたらす危険性があることから、子に対する虐待・遺棄等の特別の事情のない限り、現実に子を養育監護している者を優先させるべきとされています。

    (2)母親優先の基準
    子の幼児期における生育には母親の愛情が不可欠であるとされ、乳幼児については、特別な事情のない限り、母親の監護を優先させるべきとする考えがあります。

    (3)子の意思の尊重
    15歳以上の未成年の子については、親権者の指定、子の監護に関する処分についての裁判をする場合、その未成年の子の陳述を聞かなければなりません(人訴32条4項、家審規72条、70条、54条)

    (4)兄弟姉妹の分離
    兄弟姉妹の不分離を原則とする判例があります。

    (5)離婚に際しての有責性
    親権者の適格性を判断するマイナス要因としては、子どもとの関係でされるべきです。したがって、夫婦間の問題における有責性は、子どもの親権者を決定する際の基準として考えるべきではありません。

    婚約解消について

    私はお見合いで男性と婚約、結納を済ませました。結婚式は1ヵ月後で、最近その男性と何となく性格が合わないように感じられてきました。また、私以外にも交際している女性がいるようです。ただし確証はありません。
    この場合、婚約を解消することはできるのでしょうか。またその場合どのような手続をとればよいのでしょうか。
    ①婚約解消の可否及び方法について
    婚姻生活は、互いの自由意思に基づく信頼関係を基礎とした継続的な関係であり、裁判などによって強制的に婚姻関係を成立させることはできません。そして、婚約は将来婚姻することの合意で、婚約の履行を強制することも当然にできません。したがって、婚約したあとに一方が婚姻する意思を失った場合、婚約を解消することは自由にできます。
    婚約解消の方法ですが、そもそも婚約の成立について特別な方式が不要である以上、婚約の解消にも特別な手続は不要です。したがって、あなたの婚約を解消したいという意思が明確に相手方男性に伝わればよいことになります。

    ②婚約解消の正当事由について
    婚約解消にともない、双方が婚姻準備に費やした費用の精算や結納の返還が問題になります。その際、あなたが婚約を解消した理由が「正当事由」に該当するかが、大きく影響します。
    一般に婚約解消の「正当事由」とは、円満かつ正常な婚姻生活を将来営めない原因となり得る客観的かつ具体的な事情をいいます。相手方に他の異性関係がある、相手方から虐待・侮辱されたなどが典型例で、他に、挙式や婚姻の届出を合理的理由なしに一方的に延期、相手方が不治の病に罹患した、相手方が冷酷な態度に豹変した、相手方の経済状態で日常生活の営みが極めて困難な程度に悪化したなどが該当すると考えられます。 これに対し、単に性格が合わない、相手方の資産が思ったより少ない、家風が合わない、親が反対している、婚約後に他に好意をもつ異性ができたなどの理由は、「正当事由」とは評価できないでしょう。

    あなたの場合、何となく性格が合わないとの理由のみで婚約を解消するのであれば、「正当事由」はありません。もし相手方男性からあなたに対して結納返還請求や慰謝料等の損害賠償請求がなされた場合、あなたはその支払に応じざるを得ないでしょう。他方、実際に相手方男性があなた以外の女性とも交際しているのであれば、あなたからの婚約解消には「正当事由」があると評価できるでしょう。
    ただし、仮に裁判となった際には、実際に相手方男性が別の女性と交際していたとの事実をあなたが立証する必要があります。よって、婚約解消を実行する前に裏付ける証拠を獲得しておくべきでしょう。

    離婚をするには

    私には結婚して10年になる夫がいますが、これまでに何度も浮気を繰り返し、また最近浮気をしているようです。そこで夫と離婚をしたいのですが、どのようにしたらいいのでしょうか。
    離婚をするには、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の各制度があります。

    【協議離婚】協議離婚とは、婚姻中の夫婦の合意により離婚を成立させるもので、特に離婚の理由などは必要ありません。離婚届に必要な事項を記入し、署名、押印等をして役場に提出し、その届出が受理された時点で離婚が成立します。

    【調停離婚】相手方が離婚に合意しない場合や、合意できても親権者の指定や養育費、慰謝料等の合意ができていない場合、家庭裁判所に調停離婚の申立をします。いきなり離婚の裁判をすることはできず、まずは調停をします。
    【調停離婚】は、家庭裁判所で当事者と調停委員2名及び裁判官との3者が話し合い、離婚を成立させ、紛争の自主的解決を図ります。当事者が調停委員と交互に自分の言い分を述べて話し合いを進め、夫婦が直接顔を合わせません。
    話し合いにより、離婚の合意ができれば、家庭裁判所は合意事項を調停調書に記載し、その時点で離婚が成立します。調停を申立てた方は、調停成立後10日以内に離婚届書に必要事項を記入し、調停調書を添付して役場に離婚届を提出します。

    【審判離婚】調停の場合において、調停成立の見込みはないが離婚を成立させた方が双方の為であると考えられる場合、家庭裁判所は調停委員の意見を聴き「調停に代わる審判」ができます。これは当事者双方の意思に反して離婚を成立させる制度です。審判の後、適法な異議の申立てがなければ、その審判は確定し、判決と同一の効力が生じます。

    【裁判離婚】調停、審判離婚が成立しなかった場合、離婚を請求する配偶者は、他方の配偶者を相手として離婚の訴えをすることになり、これを裁判離婚といいます。
    裁判離婚をする場合、民法で定められた、次の離婚原因が必要です。
    ①配偶者に不貞な行為があったとき②配偶者から悪意で遺棄されたとき③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
    裁判離婚において離婚が成立した場合、その時点で離婚の効力が生じ、訴えた方の配偶者は、離婚成立後10日以内に離婚の届出をします。

    今回の件では、まず離婚の話し合いをし、協議離婚できないときは調停を申立てることとなります。調停や審判でも離婚が成立しないときは、夫が浮気しているとのことなので、裁判により離婚を求めることとなります。

    養育費について

    5年前、元夫との調停離婚が成立しました。その際、5歳の子どもについての親権者を私とし、その子が20歳になるまで、毎月4万円の養育費を支払うという取り決めがなされました。
    ところが元夫は、1年前から養育費を支払わなくなりました。私が、電話をしても私からの電話にはでません。どうしたらいいでしょうか?
    一般的に養育費の支払確保の手段としては、強制執行、履行勧告、履行命令、金銭の寄託等がありますが、金銭の寄託という制度は、支払義務者に支払意思と支払能力があることを前提とした制度であり今回のケースには当てはまりません。
    そこで強制執行、履行勧告、履行命令の各制度について説明します。

    履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判等で決定した慰謝料や養育費等について支払義務者が履行しない場合、家庭裁判所に支払義務者に対して履行を勧告し、支払を催促してもらう制度です。
    申立て手数料は無料で、書面による申立てが望ましいですが、電話での申し出にも応じます。

    履行命令とは、家庭裁判所の調停や審判で定められた金銭の支払、その他、財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において、権利者の申立てがあった場合、家庭裁判所が相当と認めるときは、義務者に対し相当の期間を定めてその義務の履行をなすべきことを命令する制度です(家事審判法15条の6、25条の2)。
    この規定により、義務の履行を命ぜられた者が正当な事由がなくその命令に従わないときは、10万円以下の過料に処せられます(家事審判法28条第1項)。
    履行命令、履行勧告は強制執行のような支払に対する法的な強制力はありませんが、裁判所からの督促なので支払義務者が驚いて支払に応じることもよくあります。

    強制執行とは、判決や調停、審判調書など、強制執行力がある書面により養育費が定められている場合に、地方裁判所に強制執行の申立をし、支払を強制的に確保する制度です。
    以前は、強制執行の対象が申立までに支払が滞っている分についてのみでしたが、平成16年の民事執行法の改正により、民法上の扶養義務に基づく定期債権(養育費、婚姻費用等)については、その一部の不履行があるときは、履行期限が到来していない将来部分についても一括して強制執行ができるようになりました(民事執行法151条の2第1項)。
    この規定に基づいて差押さえができる財産については、一定の制限があり、給料債権や家賃等の賃料債権などの継続的給付に係る債権に限られます(民事執行法151条の2第2項参照)。

    したがって今回の件では、元妻は地方裁判所に対し、滞っている分の養育費に加え、将来にわたる給料債権の差押さえを申立てることができます。

    離婚取り決めについて

    結婚して15年になり中学生の子が二人います。共働きで自宅は2000万円で購入しましたがローンが700万円ほど残っています。預貯金は500万円ほどあります。自宅、ローン、預貯金とも全て夫名義です。夫と離婚についての話し合いをしていますが、どのようなことを取り決めておく必要があるのでしょうか。
    離婚においては、まず、子供が未成年の場合には、子供の親権者と養育費の負担を取り決める必要があります。また、婚姻期間中に夫婦で築いた財産があれば、財産分与の方法を定める必要もあります。さらに、離婚原因が不貞行為であるなど、夫婦の一方に責任がある場合には、慰謝料の金額や支払い方法も決める必要があります。年金も夫婦間で厚生年金受給額に差額が生じる可能性があるので、その分割について取り決めをしておいた方がよいでしょう。
    親権は子が中学生とある程度成熟していますから、その意見も聞いて決めるのがよいです。養育費は毎月の金額の他に、今後教育にお金がかかりますので進学時の負担も定めておくとよいでしょう。
    財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産ですので、夫婦の一方が相続などで取得した財産は対象となりません(特有財産といいます)。また、婚姻期間中に夫婦で築いた財産であれば、名義は夫婦いずれの名義でも財産分与の対象となります。今回のケースでは、財産分与としては預貯金、自宅の分配、ローンの負担を決める必要があります。分与の割合は2分の1を基本に、子供を引き取る側の生活事情を考えて加減するのがよいと考えます。自宅は、売却して剰余金がある場合にはローン債務を差し引いた残金を分ければよいですが、ローンが残る場合や一方が自宅を取得する場合には、どちらかがどの程度のローンを負担するのかを決めておく必要があります。
    取り決めた事項は争いが生じないようにするために書面化しておくべきです。
    子の養育費については、長期に亘りますので公証人役場で公正証書を作成しておくのがベターです。年金分割の合意をする場合は公正証書等の書類を作成添付して社会保険事務所に分割の請求をする必要があります。 詳しい内容について一度弁護士に相談することをお勧めします。

    生活費請求について

    夫が愛人をつくり別居して1年になります。子供がいるので離婚はしたくないのですが、ここ数ヶ月生活費を入れてくれません。生活費を出してもらうにはどうしたらいいでしょうか?
    民法760条は「夫婦は、その資産・収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。婚姻から生ずる費用とは、日常の生活費、衣食住の費用、医療費、交際費等の他、子供の養育費も含まれます。婚姻中、経済力がある配偶者は他方の配偶者に必要な生活費などを渡さなければならず、経済力に劣る配偶者もそれを要求する権利があります。つまり、法的な夫婦関係が成立している間は、経済力のある配偶者は、他方の配偶者に自らと同等の生活レベルを保持させなければならないのです。

    本件でも、夫の方があなたよりも多く収入を得ているのであれば、夫に生活費の支払いを請求する権利があります。もし、夫が生活費の支払いに応じなければ、家庭裁判所に「婚姻費用分担の調停」という手続きを申し立てることができます。調停とは、裁判官と一般市民から選ばれた2名以上の調停委員で組織された調停委員会の関与の下、紛争の当事者間で話し合いを行うという手続きです。その調停という手続きの中で話がまとまらない場合には、最終的に裁判所が「毎月いくら支払え」と審判で命ずることになります。この審判には強制力があり、夫が調停や審判で決まった金額を支払わないときは、給料など夫の財産を差し押さえることも可能です。

    支払金額は主に双方の収入、未成年の子供の数・年齢を考慮して決められますが、婚姻費用分担額の算定表があり、容易に一応の金額を確認することができます。
    審判が出るまでには通常相当の日数がかかりますので、差し迫った必要があれば、審判前でも、とりあえず応分の生活費を支払えとの仮処分を裁判所に求めることもできます。

    円満な家庭生活を取り戻すために第三者を入れて話し合いたいというお気持ちがあれば、併行して夫婦関係調整という調停の申し立てをすることもできます。調停委員が夫婦双方から話を聞き、問題点を探り、双方に解決のための助言をする形で手続きが行われます。
    なお、不貞関係にある愛人に対しては、夫と離婚していなくても慰謝料請求をすることが可能です。

    離婚について

    夫と離婚をしたいと考えているのですが、高校1年生の長女と中学2年生の長男がいて、これから高校、大学と費用がかかります。離婚する際には、いろいろな形態があると聞いたのですが、どのような形態でするのが良いのでしょうか。
    離婚をするには、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つの方法があります。これらの方法にどのような違いがあるのでしょうか。主に協議離婚と裁判離婚のちがいについて説明していきます。
    まず、協議離婚の場合についてですが、この方法は確かに簡易な方法で、日本で一番とられている離婚の方法ではないでしょうか。しかし、協議離婚の場合、離婚した後に面倒なことになるケースが多いのも現実です。
    例えば、当事者間で離婚する際に、財産分与、慰謝料、養育費等は当事者間で約定書を作成したとします。しかし、別れた夫が再婚し、新しい家族の生活のために養育費や慰謝料を払わなくなったとします。
    この時に、協議離婚をして簡易な約定書を作成しただけでは強制執行(例えば給料を差し押さえて、そこから回収するなど)ができません。つまり、一度裁判をして判決をもらわないと強制執行はできないのです。
    したがって、協議離婚をしようとする場合には、強制執行を将来するためにも公正証書を公証人役場で作成してもらっていたほうが確実といえるでしょう。
    以上のように、協議離婚は、確かに簡易な方法なので多く用いられがちですが、離婚後のことをしっかりと考えて準備しておくことが必要になります。

    次に、裁判離婚ですが、判決をもらえば、強制執行は可能ですので、協議離婚と比べ、離婚後に別れた夫が養育費等の支払いをしなくなった場合でも、安全だといえるでしょう。
    しかし、裁判離婚ということになれば、ある程度の期間が必要になりますし、弁護士に依頼した場合には費用もかかります。この点は、裁判離婚のデメリットといえるでしょう。

     要は、どのような手段にも、一長一短あるということですね。結局のところ、今結婚している方は夫婦仲良く、未婚の方は離婚しなくても良い人を見つけましょう。

    財産分与について

    「財産分与の性格について教えてください。」
    離婚に伴う財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与という三つの性格があります。
    清算的財産分与についていえば、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産をどのように分けるかということが問題となるわけですから、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、相続などによって単独名義で取得した財産は、分与の対象とはなりません。
    しかし、扶養的財産分与や慰謝料的財産分与についていえば、相手に経済的満足を与えれば扶養や慰謝料支払いの目的を達するわけですから、どの財産が分与の対象となるかを問題とする必要はありません。
    扶養的財産分与として、夫名義の財産である土地に使用借権、建物に賃借権の設定を命じた裁判例もあります(東京高判昭63・12・22判時1301号97項)。
    したがって、以下、財産分与が夫婦財産の清算としてなされる清算的財産分与の場合を前提に、検討していきます。
    「どのようなものが財産分与の対象となるのですか。」
    夫婦共有名義の財産は、いわゆる共有財産として原則的に分与の対象となります。夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定されます(民法762条2項)。
    なお、たとえ一方の単独名義となっていても、夫婦が協力して形成した財産という実質があれば、いわゆる実質的共有財産として分与の対象となります。
    これに対し、夫婦の一方が婚姻前から所有する財産や、婚姻期間中であっても相続などによって単独名義で取得した財産は、いわゆる特有財産として原則的に分与の対象とはなりません(民法762条1項)。
    財産分与が夫婦財産の清算としてなされる以上、夫婦以外の第三者の名義となっている財産は、原則的に財産分与の対象になりません。ただ、これも実質的判断として、第三者名義であっても、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産と認められる場合は、分与額の算定基礎として考慮することが可能です。
    本件の場合、夫の経営する会社が個人事業としての実態を有している様子ですので、たとえ会社名義の財産であっても、実質的には夫婦が協力して形成した財産として、分与額の算定基礎として考慮することが可能です(大阪地判昭48・1・判時722号84項)。
    「分与の対象となる財産の種類はどのようなものがありますか。」
    現金・預貯金・不動産・車両・有価証券などは当然財産分与の対象となります。
    退職金も、既に支給されている場合には財産分与の対象となると解されており、これを認めた裁判判例も多数あります(東京高判昭58・9・8判時1095号106頁、広島家審昭68・10・4家月41巻1号145頁など)。
    問題は、離婚時にはまだ退職金が支給されていない場合ですが、最近では、熟年離婚の増加という世相を反映してか、将来支払われる退職金も財産分与の対象となるとする傾向にあります。
    裁判例を見ると、事業によって算定方法に差異があるようですが、将来退職金が支払われることを条件として分与を命じたもの(東京高判平10・3・18判時1690号66頁、原審は横浜地判平9・1・22判時1618号109頁)、判決言い渡しから6年後に支払われるべき退職金のうち婚姻期間に対応する分を算出し、これに請求書の寄与率を掛け合わせた金額につき分与を命じたもの(東京地判平11・9・3判時1700号79頁)などがあります。
    「住宅ローンが残っている不動産についてはどうなりますか。」
    現金・預貯金・不動産・車両・有価証券などは当然財産分与の対象となります。
    退職金も、既に支給されている場合には財産分与の対象となると解されており、これを認めた裁判判例も多数あります(東京高判昭58・9・8判時1095号106頁、広島家審昭68・10・4家月41巻1号145頁など)。
    問題は、離婚時にはまだ退職金が支給されていない場合ですが、最近では、熟年離婚の増加という世相を反映してか、将来支払われる退職金も財産分与の対象となるとする傾向にあります。
    裁判例を見ると、事業によって算定方法に差異があるようですが、将来退職金が支払われることを条件として分与を命じたもの(東京高判平10・3・18判時1690号66頁、原審は横浜地判平9・1・22判時1618号109頁)、判決言い渡しから6年後に支払われるべき退職金のうち婚姻期間に対応する分を算出し、これに請求書の寄与率を掛け合わせた金額につき分与を命じたもの(東京地判平11・9・3判時1700号79頁)などがあります。
    「年金はどうですか。」
    年金についても財産分与の対象となるように法律が改定されています。
    ただ、その要件については中々難しい面もありますので、具体的なことは弁護士に尋ねて下さい。

    不倫関係を原因とする慰謝料請求について

    私は夫と結婚して15年になりますが、夫が勤務先の部下である若い女性社員と、ここ2年間不倫関係にあったことが分かりました。そこで、私は慰謝料を請求しようと思いますが、夫と不倫相手である女性社員のどちらに対して請求することができるのでしょうか。また、慰謝料の金額につき相場などはあるのでしょうか。
    民法上明記はされていませんが、婚姻関係にある者は互いに他方配偶者に対して、貞操義務をはじめとする夫婦関係を円満にするための各種義務を負っていますので、質問のように、夫が不倫関係をもった場合には、妻はこれにより精神的な苦痛を被ったとして、不法行為に基づく慰謝料請求権を有します。

    では、妻は、夫と不倫相手のどちらに対して、慰謝料を請求できるのでしょうか。

    妻は、夫ないし不倫相手のどちらか一方にだけ慰謝料請求することもできますし、両者に対して慰謝料請求することもできます。 請求の相手方を誰とするかはあくまで妻の自由です。しかし仮に妻が両者に対して請求した場合であっても、それぞれから慰謝料を二重取りできるわけではありません。
    例えば慰謝料総額が2百万円の場合、妻は夫と不倫相手から合計2百万円を受け取ることができるだけにすぎません。もし妻が夫から2百万円を受け取れば、不倫相手からは一銭も受け取れませんし、また、妻が夫から百万円受け取れば、妻は残りの百万円を不倫相手から受け取るか、更に追加で夫から百万円を受け取ることになります。
    つぎに慰謝料の具体的な金額は、婚姻期間の長短、不倫関係後の離婚の有無、有責配偶者の帰責性の程度、夫婦の共有財産の総額など、様々な事情を考慮して個々の事案ごとに決定されるため、一律にいくらと断定できません。ただし、一般的には裁判により認められた慰謝料の金額は、50万円から4百万円の間が比較的多いと言われていますが、あくまで目安にすぎないため、必ず2百万円が認定されるわけではないことは十分にご注意ください。

    最後に夫が不倫関係をもった場合であっても、妻が慰謝料請求できないケースをお伝えします。
    夫が不倫関係をもった以前から、すでに夫婦関係が実質的に破錠し、妻と夫は単に戸籍上だけの関係にすぎないような場合には、妻は夫の不倫によって精神的苦痛を被ったとは評価できないことから、慰謝料請求は認められません。
    また夫が不倫相手に対し結婚を隠して不倫関係をもち、かつ不倫相手が婚姻の事実を過失なく知らなかった場合、不倫相手に対して、慰謝料請求をすることはできません。なお、このケースでも、当然ながら夫に対しては慰謝料請求することは可能でしょう。

    離婚の不受理申出制度について

    私は主人と話し合った末、離婚することになりました。そして離婚届を作成し、離婚届は主人が提出するため主人に預けました。しかし、離婚届を作成した後、主人の浮気が判明しました。今は、離婚をしたくありません。離婚を防ぐ方法はあるのでしょうか。
    不受理申出制度という制度を活用することが考えられます。無断で離婚届が提出されるおそれがある場合や、一度離婚届に署名捺印したものの気持ちが変わった場合に、協議離婚の不受理申出書を本籍地の市区町村の役所に提出すれば、離婚届は受理されません。ただし、この不受理制度は最長で6ヶ月間の効力しかありませんので、不受理とさせ続けるためには、6ヶ月ごとに不受理届けを提出する必要があります。
    質問者さんのご主人が離婚届を役所に提出していない場合であれば、この不受理申出制度を活用することによって離婚届を受理させないことができます。
    では、タッチの差で離婚届が受理されていた場合には方法はないのか?と質問されそうなので、併せて回答致します。
    そもそも、離婚の効力というのは、戸籍簿に離婚の記載がなされた時に初めて生じます。つまり、戸籍簿に離婚の記載がなされる前であれば離婚の効力の発生を防ぐことは可能です。
    具体的には、先ほど説明した不受理申出をした役所の戸籍事務取扱者に対して、口頭でも結構ですので、早急にご主人が提出した離婚届が無効であることを伝えてください。戸籍簿への記載前であれば差し戻しが可能です。
    質問者さんが電話を急いでしたところ、既に戸籍簿に記載がされていた場合はどうすれば良いのでしょうか。この段階になると、法的手段をとらざるをえなくなります。
    具体的には家庭裁判所に離婚無効の調停を申し立てる必要が生じます。
    したがって、質問者さんの場合、早急に役所に問い合わせるなり、対応をすることが必要となります。

相続問題

相続

  • 相続財産について

    親族が交通事故で死亡したのですが、遺産分割のことで揉めています。故人が生前に代々引き継いで管理してきたお墓や仏壇などの祭具、死亡退職金、生命保険、ゴルフ会員権、借家権などの財産は相続の対象になるのでしょうか?
    死亡によって相続が開始すると、一部の例外を除いて、被相続人に帰属していた一切の権利義務が相続の対象となります。ですから、土地や建物などの不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続されます。なお、交通事故死とのことですが、事故で死亡した被相続人の損害賠償請求権(慰謝料など)は相続財産に含まれます。

    次に、相続の対象にならない財産についてお話しします。
    お墓、仏壇仏具、家系図、神棚などのいわゆる「祭祀財産」は相続の対象にはならず、相続とは別のルールに従って祭祀主宰者に承継されます。そのルールですが、まずは遺言などの「被相続人の指定」に従い、指定がない場合は「慣習」により、慣習が明確でない場合には、「家庭裁判所の審判」で決定されます。(民法897条参照)。遺体や遺骨なども、祭祀主宰者が管理することになります。

    また、被相続人の個人の人格、才能、地位と密接に結びついた権利(これを一身専属権といいます)についても、相続の対象からは除外されます。 具体的には、雇用契約による労働債務、保証責任の範囲に限定のない包括的な保証債務、生活保護受給権、恩給受給権利、公営住宅の使用権などです。また、使用貸借契約上の地位(タダで物を借りている場合)も一身専属権として相続されませんから、故人が有していた「借家権」が使用借権と賃借権(賃料を払って借りている場合)どちらであったのかは大事ですね。
    ゴルフ会員権もある意味で一身専属的な権利ですが、ゴルフ会員権そのものは相続されないけれども、会員契約上の地位(理事会の承認を得ることを条件として会員となることができる地位)は相続され得るというのが判例の見解です。
    死亡退職金は、法律や会社の就業規則などで決められた「受給権者」固有の権利ですから、相続の対象にはなりませんし、彼相続人が生前に掛けていた生命保険も受取人固有の財産ですから、相続の対象にはなりません。ただし、受取人が被相続人自身となっている場合には、相続財産になります。

    相続人排除について

    私には、夫と子どもが1人いますが、夫は、自分が気に入らないことがあるとすぐに私や子どもに暴言を吐き、暴力を振るいます。私の遺産としては、預貯金と土地がありますが、夫にはやらずに、子どもにだけ残すようにすることはできないでしょうか。
    法律上、被相続人(相談者)の生前に、相続人に相続放棄をさせることはできません。そこで、とり得る方法としては、子どもに「遺産を全部相続させる」との遺言書を作成し、夫に家庭裁判所に対して遺留分の放棄の手続を取らせることが考えられます。しかし、夫が遺留分放棄の手続を取ることは考えにくいので、この方法では、あなたの希望どおりに相続の方法をとることは難しいでしょう。

     ・相続人の廃除
    民法第892条は、「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」と規定しています。 廃除とは、被相続人が推定相続人に相続させることを欲せず、かつ欲しないことが一般の法感情から見て妥当とされるような事情がある場合、被相続人の意思により、遺留分を有する推定相続人の遺留分を否定して完全に相続権を剥奪できるようにした制度です。 廃除できる場合とは、相続人が、被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、または著しい非行があったときとされています。 他方で、虐待、侮辱、非行があった場合でも、それが被相続人の側にも責任があるとされる場合や、そのような行為が一時的なものであったり、重大な侮辱にあたらないとされる場合には、廃除は認められません。  ・廃除の手続 ①生前の廃除の申立 被相続人の生前に相続人を廃除する場合は、家庭裁判所に廃除の調停または審判の申し立てをしなければなりません。 ②遺言による廃除 被相続人は遺言によっても推定相続人の廃除を求めることができます。この場合は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をすることになります。  ・廃除の効果 家庭裁判所の廃除の審判または調停の成立によって、廃除を求められた推定相続人は、その被相続人との関係で相続資格を失います。もっとも、廃除の効果は、相対的なものなので、夫はあなたから廃除をされても他の者との関係で相続権を失うわけではありません。また、相続権を失うのは、廃除された者だけですので、その者の子は代襲相続人として被相続人の遺産を継承します。

    相続放棄について

    私は夫と30年前に婚姻し、1人の子どもを授かり幸せな家庭を築いてきましたが、最愛の夫が先月末に亡くなりました。死亡後、夫が行ってきた個人事業が失敗しており、5千万円の借金が残っていることが発覚しました。私と子どもは、夫から生前中にこの事実を聞かされておらず、知り合いに相談したら、相続人として夫の残した借金を支払わなければいけないと言われました。
    果たしてこれは本当なのでしょうか。仮に本当ならば、夫の借金を引き継がないで済む方法は何かないでしょうか。
    被相続人が借金等の返済債務を負って死亡した場合、その返済債務は相続が開始すると当然に分割され、相続人が相続分に応じてこれを引き継ぐことになります。
    今回の場合、借金5千万円は、妻であるあなたがその相続分の2分の1にあたる2千5百万円、子どもも同様に2千5百万円の返済債務を引き継ぐことになります。
    借金返済のような金銭債務の場合、相続人間での遺産分割を待たず、当然に相続人へと承継されてしまいます。しかし、突然に数千万円の返済債務を負えば、生活が成り立たなくなるでしょう。
    そこで民法は、相続人が被相続人の債務の承継を免れるために、相続放棄(民法915条以下)の制度を設けていますので、この制度を利用されてはいかがでしょうか。
    相続放棄は、相続人が家庭裁判所に相続放棄の申述をし、この申述が家庭裁判所に受理される方法によって行われます。 相続放棄をすると、被相続人の債務の承継を免れると同時に、被相続人の財産も承継することができなくなります。そして、相続放棄をした相続人は、その相続に関して最初から相続人とならなかったものとみなされます。したがって、仮に第1順位の相続人全員が相続放棄をすると、第2順位の相続人が相続することになります。

    本件では、第1順位の相続人であるあなたと子どもが相続放棄をすると、被相続人の直系尊属(夫の両親等)が相続人となり、直系尊属が相続放棄すると(夫の)兄弟姉妹が相続人となります。なお、相続放棄は相続人全員が一度に行う必要はなく、各人の判断で行うことができます。
    相続放棄は、相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所に対する申述をしなければなりません。
    この「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、一般に相続人が被相続人の死亡の事実に加えて、自己が相続人になった事実を知ったときを指します。
    結論として、あなたと子どもは、夫が死亡し自己が相続人となったことを知った時点から3ヶ月以内に、それぞれ家庭裁判所に対して相続放棄の申述をすることで、夫の残した債務の相続を免れることができると思われます。

    遺産分割について

    親族が鬼籍に入って相続が開始したのですが、相続人の人数が多くて遺産分割の話し合いがまとまりそうにありません。それどころか、相続人と思わしき人物の中には、もう何年も音信不通で一体どこに住んでいるのか分からない人もいます。そもそも相続人全員が集まって話し合いができる状態ではなさそうなのです。
    遺産分割は、相続人全員で協議して行うのが原則だとか聞いたことがありますし、遺産分割の裁判をするにしても相続人の居所が分からないようだと一体誰を相手にしてよいものやら。
    相続人の中に行方不明者がいるような場合、どうしたら遺産分割について協議が始められるのですか?もしかして、不明者が見つかるまで遺産分割の協議や裁判はいつまでもできないのでしょうか?
    相続関係が複雑で相続人が多数存在するような場合は、共同相続人の中に行方不明者がいるケースも珍しくはないでしょう。従来の生活の本拠などを人知れず離れてしまってそう簡単には帰ってくる見込みがないような人のことを法律上「不在者」(民法25条1項)と呼んでいます。 不在者については、不在者財産管理制度という制度があり、利害関係人は、家庭裁判所に対して不在者の相続財産などを管理する財産管理人の選任を請求することができます。あなたのような共同相続人は利害関係人の典型と言えるでしょう。
    一定の要件を満たせば家庭裁判所によって不在者財産管理人が選任され、財産管理人は不在者の財産を管理する権限を与えられますので、この財産管理人を相手に遺産分割協議などを行えば良いわけです。
    ただし、遺産の分割は不在者の財産を処分してしまう重大な行為ですから、不在者財産管理人が遺産分割の協議を成立させるには、家庭裁判所の許可手続きが必要です。

    廃除について

    私の次男は中学生の頃から非行を繰り返し、30歳になった現在でも定職につかず、私の預金通帳から勝手に預金を引き出してはギャンブルをする毎日です。また、私に対して継続的に暴力を振るってきます。私はこのような次男に財産を相続させたくないのですが、どのような法的手段があるのでしょうか。
    次男に相続させないようにするための法的手段としては、次男に対し相続人廃除の手続きをとるか、全財産を次男以外の相続人に相続させる旨の遺言を残す方法が考えられます。ただし後者の場合には、次男から遺留分減殺請求権の行使を受ける可能性があります。

    相続人となるべき人物は、被相続人との間に一定の身分関係を有する者に限られます。この身分関係が婚姻や養子縁組に基づく場合には、離婚や離縁によって身分関係を消滅させることで相続人の地位も消滅させることができますが、実親子の関係にあっては、身分関係そのものを消滅させることはできません。そこで、親子関係はそのままにして、相続権だけを剥奪する制度が、相続人廃除の制度です。
    相続人廃除は、被相続人が家庭裁判所に申し立てて家庭裁判所の審判を得ることで効力が生じます。相続人を廃除するためには子が親を虐待する等、著しい非行事実が存在することが必要です。

    また、相続人廃除は、被相続人が遺言によってすることもできます。その場合には、遺言執行者が家庭裁判所に相続人の廃除を申し立てて審判を受けることになります。
    相続人の廃除が認められるためには、被相続人に対する虐待または重大な侮辱、その他の著しい非行と言う廃除事由が必要となります。そして、廃除事由の有無を家庭裁判所が審判を行います。
    「虐待」とは、被相続人の心身に苦痛を与えることをいい、「重大な侮辱」とは、被相続人の名誉や自尊心を著しく害することをいいます。「著しい非行」とは、虐待や侮辱と同程度の非行である必要があります。
    いずれにしても、廃除は相続人の相続権を剥奪してしまう不利益性の高い行為ですので、現在の社会常識に照らして相当悪質と思われる程度の事由が必要となります。単に、少年時期の一時的の非行や、親の意向に沿わない結婚をしたにすぎない場合には、廃除事由があるとは認められないでしょう。

    最初に述べましたが、遺言により全財産を他の相続人に相続させる場合には、次男の相続に対する期待権としての遺留分減殺請求権を行使される可能性があります。遺留分減殺請求権を行使されると、次男に相続させないという目的は達成されません。
    この遺言による方法は、遺留分を有しない兄弟姉妹の相続人に対して相続させたくない場合に限って、有効な手段といえます。

    遺産分割の減少を防ぐ方法について

    長男は母の死後、母が所有、管理していた駐車場を他の相続人の同意を得ずに管理し、駐車場料金を独り占めしています。どのような方法でこれを止めさせることが出来るでしょうか。
    1、相続の発生後、遺産分割の協議により分割に関する合意がすぐに達しないことがしばしばあります。その間に相続人の一部の者が遺産を隠匿したり、消費してしまうことは考えられることです。その結果、協議の結果も無駄になりかねません。
    そのような事態になることを避けるために、家事審判法では遺産を調停の成立または審判の間まで保全して、財産の滅失・減少などが起こらないようにするため、「調停前の仮の措置」と「審判前の保全処分」という二つの仮処分の制度を設けています。

    2、調停前の仮の措置
    調停委員会は、調停前に調停のため必要であると認める処分を命ずることが出来る(家事審判規則第133条1項)とされています。しかし、実際にその必要性があるか否かは、当事者から主張されない限り調停委員会は知ることはできません。そのため当事者から申立をして、その必要性を知らせて職権の発動を促す方法により行われています。その疎明資料も、積極的に提出して協力することにより、より適切な措置をとることが出来ます。その措置の内容は法定されてはおらず、調停委員会の裁量に委ねられています。
    具体的措置としては、①不動産の処分禁止②不動産の管理人を選任してその管理をさせる③債権、株券等の処分禁止④一定の行為の禁止等が考えられますが、これに限らず保全のために有効と思われる法律的な措置をとることが出来ます。
    本件では、調停委員会に駐車場を管理する管理人を選定してもらい、その者に駐車場の集金やその他の管理をやってもらうのが適切かと思われます。家賃の取立につき、第三者の銀行を指定して、銀行員に家賃の取立を命じた先例もあります(福岡家判昭和33年7月14日)。

    3、審判前の保全処分
    遺産分割の審判の申立や、調停が不調となり審判に移行した場合には、家庭裁判所は仮差押・仮処分・財産管理人の選任などの遺産の保全に必要な処分を命ずることが出来ます(家事審判法15条の3第1項、同規則106条1項)。また、財産管理者の選任は職権でも行われ、この保全命令には執行力や強制力があり、これのない調停前の措置に比べ強力となります。 本件では、財産管理者の選任という保全命令を得て、その者に遺産の
    管理を委ね、遺産分割の審判が確定するまで、保全しておいた方がよいでしょう。また管理の仕方も命令の中で具体的に定めると、管理者の裁量の余地が少なくなり、後に管理の仕方で争いになる事が避けられるでしょう。

    遺産相続の寄分与について

    母は父が死亡した後、10年間闘病生活を送った後に死亡しました。その間、母と同居していた私や私の妻がずっと母の世話をしていました。相続人は私と兄だけですので、2人で父の遺産相続の話合いをしています。人に聞いたところによると、私には「寄与分」というものがあるので、これを前提として相続分を決めるべきだと言われました。寄与分とはどのようなものですか?
    「寄与分」とは、被相続人(本件では母親)が財産を維持したり増加したことに特別な尽力をした相続人に、遺産のうちの相当額の財産を相続分以外に得させる、その取得分です。
    あなたは、母親の長い療養生活の間に、母親と同居して世話をしたとのことですから、相続人として、その世話により出費を免れた療養費等を母親の財産から、相続分以外に取得することが出来ます。これがあなたの寄与分です。あなたを含めた全相続人は、この寄与分を控除した残りの遺産を相続分に従って分けることになります。
    寄与分は相続人のみが主張できるのですが、あなたの奥さんの寄与分については、あなたの親族の寄与ということで、あなたの寄与分に含めてこれを主張することが出来るとされています。しかし、あなたの奥さんが自分の寄与分として主張することは出来ません。また、あなたの子どもなどの寄与分についてもこれらと同様のことがいえます。
    寄与分を認める趣旨は、相続人間の実質的平等を図るためです。
    寄与分を主張できる者を相続人に限るかどうかですが、相続人以外の者を入れると、その者が遺産分割の話合いに加わることになり、その話合いが複雑になって問題が多くなることなどのため、法律は相続人に限ることにしました。
    したがって、相続人の配偶者や子ども等の寄与があっても、これらの者は寄与分の主張が出来ません。しかし、寄与者が相続人の親族であるような場合には、衡平の見地から、その相続人自身の寄与として認めるべきであるとの考え方があったところ、現在ではこの考え方が一般的です。ただし、相続人となるべき者が死亡しているような場合には、その配偶者は寄与分の主張ができないことになります。
    したがって、このような場合は、被相続人予定者(本件では母親)に「遺言」を書いておいてもらっておくのがよいでしょう。

    連帯保証人相続について

    昨日、5年前に亡くなった父が知人の借金500万円の連帯保証人になっていたらしく、金融業者から父の相続人である私のもとへ500万円を支払えという内容の請求書が届きました。私は請求書が届くまで父が連帯保証人になっていることを全く知らなかったのですが、お金を支払わなければいけないのでしょうか。ちなみに父の相続人は、私の他に母1人だけですが、母にも請求書が届いています。
    あなたの父親が他人の連帯保証人となったまま死亡した場合、基本的に相続人のあなたとお母さんが連帯保証人としての地位を相続します。「連帯保証人としての地位を相続する」とは、あなたとお母さんが知人の連帯保証人としての責任を負うということです。
    今回の場合、相続人はあなたとお母さんの2人なので、それぞれ二分の一すなわち250万円ずつの連帯保証債務を負い、法律上は250万円ずつの返済義務を負います。
    しかし、相続人が亡き人の負債等を全て負ってしまうのは、何も知らない相続人にとって酷な結果となる場合もあります。
    そこで、民法では第915条において相続放棄という制度が認められています。相続放棄とは、相続人が被相続人の財産の一切を相続しないようにする手続のことで、相続放棄するとその相続人は初めから相続人とならなかったものと見なされます(民法939条)。前述の民法915条には、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に・・・放棄をしなければならない」と記載されています。したがって、相続人が被相続人が死亡したことを知ってから3ヶ月以内であれば、相続放棄することができます。
    今回の場合、あなたとお母さんは5年前に父親の死亡を知っているので、本来は相続放棄をすることができません。
    しかし、「3箇月」の期間の始期は、被相続人の死亡を知った時期に加え、具体的に自分が相続人となったことを知った時とされています。そして、相当な理由があれば相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時とされています。そして、今回の場合のように、被相続人死亡後、3ヶ月経過後であっても、その後に初めて被相続人に借金があったことを知ったときには、3ヶ月以内であれば相続放棄が認められるケースがあります。
    相続放棄が認められると、相談者は連帯保証人としての責任を負わなくてよいということになりますので、借金を返済する必要はありません。 ただし、必ずしも相続放棄が認められるとは限りませんし、相続放棄をすると被相続人の貯金や土地等、正の財産まで全て放棄することになるので、まずはお近くの家庭裁判所か弁護士に相談するとよいでしょう。

    生前贈与がある遺産相続について

    父が亡くなったのですが、兄弟の中で私だけが生前に父から不動産を贈与されていたこともあり、遺産分割を巡ってもめています。兄弟達は「お前は既に家をもらっているのだから、相続の権利がないはずだ」などと言います。私は実家に残って農業を継ぎ、父母と同居してずっと面倒を看てきた事情があり、どうしても兄弟の言い分には納得がいきません。生前贈与がある場合の遺産分割はどのように処理されるのでしょうか?
    相続人の中に、被相続人の生前に特別な贈与を受けた者がいるような場合は、その生前贈与は「特別受益」の問題となりえます。生前贈与の以外にも、結婚資金や学資の援助、借金の肩代わりなどが考えられます。
    「特別受益」が存在する場合、相続人間の公平をはかるため、特別受益と相続開始時の相続財産を合計した「みなし相続財産」を遺産分割の対象となる相続財産として遺産分割を行います(民法903条1項参照)。
    このように、公平の観点から特別受益を相続財産に加えて計算し直すことを、法律用語では「特別受益の持ち戻し」と呼びます。この計算の結果、あなたが本来の相続分を超える財産を既に贈与されていたような場合は、相続すべき財産がなくなる可能性もあり得るのです。

    もっとも、民法903条3項によれば、被相続人は、「持ち戻し」の免除の意思表示をすることができます。つまり、あなたのお父さんが、「生前贈与はするが、いざ相続というときには『持ち戻し』計算をしなくても構わない・・・」旨の意思を表示していれば、このような「持ち戻し」計算をしなくても済むのです。
    ただ、このような意思を「明示」した遺言や文書が残っていれば問題がないのですが、多くの場合、持ち戻しを免除する旨の意思を表示した文書などは残されていないのが通常です。
    この場合、被相続人に持ち戻しを免除する旨の「黙示」の意思表示があったかどうかが問題になります。つまり、生前贈与に至る様々な諸事情を考慮した結果、「被相続人が、心の中では、持ち戻しを免除する旨の意思をもっていたであろう」と認められるような場合には、持ち戻しが免除され得るということです。

    黙示の持ち戻し免除の意思表示が認められるか否かは、贈与の内容や贈与に至る具体的経緯、被相続人と生前贈与を受けた相続人との関係、資産状況、収入状況等、諸般の事情を考慮して判断されることになります。
    あなたの場合、生前贈与を受けた不動産の価値などにもよりますが、実家の家業を継いで父母の面倒を見ながら将来に亘って一緒に暮らしていくために必要な家屋敷の提供を受けたとも言えそうですから、持ち戻し免除の黙示の意思表示が認められる可能性も十分あるのではないでしょうか。

遺言

  • 遺言書について

    妻と3人の子がいますが、私が死んだ後に紛争が生じないようにするために遺言書を作成したいと考えています。遺言書の方式や、その他気をつけることがあれば教えて下さい。
    遺言書は民法で定める方式に従って作成しなければ、有効な遺言書となりません。
    方式としては、通常の状況でつくる普通方式と死亡が迫った場合など緊急時につくる特別方式があります。お尋ねの場合は普通方式の遺言である自筆証書遺言か公正証書遺言によることになります(厳密には、普通方式の遺言には秘密証書遺言という方法もあります)。

    自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、日付、氏名を自筆し、これに押印する方式です。パソコンや他人が代筆したものは無効です。また、日付も年月だけ記載して日の記載のないものや、平成22年1月吉日といった特定の日付でない場合も無効となります。なお、遺言者が亡くなった後に、家庭裁判所で検認手続を取る必要があります。(検認手続とは、遺言書の内容や状態を裁判所で確認する手続です)。

    公正証書遺言とは、遺言者が証人2人の立ち会いのもとに公証人に遺言の趣旨を口頭で伝えて、公証人がこれを筆記して作成する方式です。公証人とは、元法律実務家で法務大臣に任命された公務員で、公証役場で執務しています。
    自筆証書遺言は、字が書ける人ならいつでも簡単に作成でき、費用もかからないというメリットもあります。ただ、日付その他要件を間違いやすいこと、相続後に相続人間で遺言書の真意が争われたりするおそれがあります。

    公証人証書遺言は、公証人が関与するので方式不備や内容不明確の理由で争われるおそれはほとんどなく、比較的安全で確実な遺言といえます。(相続後に遺言者の真意が)。また、他の遺言と異なり、家庭裁判所での検認手続も不要です。ただ、証人2人の立ち会いを要することや作成費用を要するという負担があります。

    それぞれメリット、デメリットがあるので、自分にあった遺言書を作成する必要があります。また、遺留分といって相続人が最低限相続できる財産の問題もあります。つまり、特定の相続人に法定相続分以上の財産を遺言で残してあげたいと考えても、すべての相続人は一定の割合の財産を相続する権利がありますので、その点も考慮する。不安なようであれば内容も含めて一度専門家に相談するのもよいと思います。
    近年、生前に遺言書を作成する人が増えていると聞きましたが、やはり生前に遺言書を作成しておいたほうがよいのでしょうか?遺言書作成のメリットや手続きについて簡単にアドバイスをしてください。
    悲しいことですが、相続を巡る紛争は、財産の多寡にかかわらず後を絶ちません。被相続人(亡くなった人)の生前中はあれほど仲の良かった兄弟姉妹が、相続を契機に互いの権利を主張し合い骨肉の争いを演ずるという事例は枚挙に暇がありません。これでは、世を去る被相続人もさぞかし後ろ髪を引かれる思いでしょう。
    ただ、このような相続トラブルは、被相続人が生前にきちんとした「遺言書」を作成しておくことで、ある程度未然に回避・予防することができます。もちろん、「遺言書」があるからといって後顧の憂いを完全に払拭することはできませんが、複雑ではない相続関係であれば、「遺言書」は紛争抑止効果を十分に発揮するでしょう。

    例えば、A(父)、B(母)、C(兄)、D(妹)の4人家族で、Aが預貯金とABDが3人で住んでいた不動産を遺して死亡したケースを想定しましょう。
    Cは早々に家を出て親の世話もしなかったため、AとしてはBDに家屋敷を相続させたいと希望していました。この場合、Aが生前に「不動産はBDに相続させる」という旨の遺言書を予め作成しておけば、Cの遺留分を侵害しない限り相続開始後もBDは家屋敷に住み続けることができる可能性が高いでしょう。
    ところが、「遺言書」がないと、家屋敷はBCDが法定相続分の割合で相続することになります。そうすると、Cが突然不動産の分割を要求してくる可能性も否定できません。BDに資力がなくCの相続分相当額の金銭を償還することが出来ない場合、BDの生活の本拠地たる家屋敷を売却して分割する事態ともなりかねません。

    遺言書には、民法上①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つが用意されていますが、一番確実なのは公正証書遺言でしょう。公証人の立会いの下、公証役場で遺言書を作成します。また、公正証書遺言の場合、自筆証書遺言の場合に必要な家庭裁判所の検認を経ずに相続手続に入ることができます。公正証書作成費用は、相続財産に応じて5000円から数万円程度かかります。遺言には、「ワープロ記載は不可」など、いくつかの有効要件がありますから、自筆証書遺言を作成する場合は、事前に弁護士等専門家に相談した方が無難でしょう。

    遺族間に無用な御家騒動の禍根を残さないためにも、息災のうちから遺言書の作成を検討しておくのもよいでしょう。

    遺言書の開封について

    私は今年で70歳になります。妻は既になくなっていますが、子どもが3人います。そろそろ遺言を作ろうかと考えていますが、遺言の内容について子どもたちに干渉されたくありません。そこで、遺言の内容について子どもたちに知られずに遺言書を作りたいのですが、どうしたらよいのでしょうか?
    民法上、遺言の方式には普通方式と特別方式とがあります。このうち、普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

    自筆証書遺言は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自筆し、これに印を押さなければならない。」(民法第968条第1項)とされています。これによれば、遺言の内容はもちろん、遺言を作成したこと自体も秘密にすることができます。

    公正証書遺言は、証人2人以上の立会のもと、遺言者が公証人に遺言の内容を口述し、公証人が筆記して、これを遺言者及び2人以上の証人に読み聞かせして筆記が正確なことを確認して作成します。よって、この場合、証人や公証人などに遺言の内容を知られてしまいます。

    秘密証書遺言は、封印した遺言を公証人と証人2人以上の前に提出して、自己の遺言であることを公証にしてもらいます。この場合、遺言の存在を秘密にすることはできませんが、遺言の内容を秘密にすることはできます。

    このように、遺言の内容を秘密にする遺言の方式としては、自筆証書遺言と秘密証書遺言の2つがあります。
    相談者の方が、一切の干渉を避けたいのであれば自筆証書遺言がいいでしょう。また、遺言の存在自体は秘密にしなくてもいいのであれば、遺言の存在を公証してもらって、遺言者の遺言であるかどうかの争いを避けるようにしておくほうがいいとおもいます。
    先日、父が亡くなりました。父の部屋の掃除をしていると遺言書が出てきました。すぐに開封してもよいのでしょうか。
    遺言書を発見しても、勝手に開封してはいけません。遺言書の保管者や保管者がいない場合に遺言書を発見した相続人は、その遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならないとされています(民法第1004条第1項)。これは、遺言書の内容が変造されたり、遺言書自体が紛失しないようにするためです。この手段を遺言書の検認といいます。

    また、遺言書に封がなされているときは、勝手に開封することが禁じられており、検認の手続のなかで開封されます。具体的にいうと、封印されている遺言書は、家庭裁判所において、相続人又はその代理人の立会がなければ、開封することができません(民法第1004条第3項)。

    もっとも、検認の手続はその遺言が有効か無効かといった効力に関する判断をするもではなく、書面の存在とそれに書かれている内容を検証するもので、遺言の紛失や内容の改ざんを防止することが目的となっています。遺言者が書いたものではないとか、遺言者が正常な判断能力がない状態で書いたとして無効を主張する場合には、別途訴訟手続をする必要があります。

その他のご相談

民事事件 (一般)

  • 金銭の賃借について

    先日、友人から300万円貸してほしいと頼まれました。付き合いも長く、信用できる友人なのですが、金額も大きく、まったく不安がないわけではありません。お金を貸すにあたり、どのようなことに気をつけないといけないのでしょうか。
    信用できる友人といっても、300万円もの大金を貸すことには大変不安もあることでしょう。お金を貸すにあたっては次のことに気を付けるとよいでしょう。

    相手に返済能力があるか
    貸す相手方が信用でき、誠実な人物であるとしても、実際に相手方に返済能力がなければ、貸したお金を返してもらうことはできません。お金を貸すにあたっては相手の収入や相手名義の不動産があるかどうかを確認しておくべきです。仮に相手に資力がなく、相手の親に十分な資力があったとしても、借主でない親には返済義務は発生しないので、返済能力の有無は借主自身を基準に判断するべきです。

    返済時期、返済方法を決める
    相手に資力があり、お金を貸すと決めたら、次に返済時期、返済方法を決める必要があります。今回のケースでは、300万円を一括で返してもらうのか、それとも10万円の30回払いというように分割で返してもらうのかを決めておきましょう。そして、返還の時期についても決めておく必要があります。なお、利息をとる場合には利率や利息の支払方法についても決めておくとよいでしょう。

    借用書の作成
    今回のケースでは大丈夫かもしれませんが、借主がお金を返さない場合もよくあるものです。そのような場合に備えて、借用書を作っておきましょう。相手が任意に返さない場合は、裁判することになりますが、裁判では自分の言い分を裏付けるための証拠が必要となってきます。借用書はまさに重要な証拠となりますので、金額の大きい今回のようなケースでは、借用書は必ず作るようにしましょう。

    保証人など
    今回のケースは、貸金が300万円という大きな金額です。相手方がお金を返さない場合に備えて、資力がある人を連帯保証人としたり、相手の不動産に抵当権を設定することも考えておくべきでしょう。
  • 隣地に関わる法的紛争について

    先日、私の所有地に隣接した土地の所有であるAさんが、私に無断で境界に沿ってブロック塀を建てたのですが、どうやら私の土地上にまでブロック塀が一部はみ出している模様です。何とかできないでしょうか。
    Aさんが境界をはみ出して建てたブロック塀は、隣地所有者であるあなたの土地の所有権を侵害していますので、あなたは、Aさんに対して、土地の所有権に基づきはみ出した塀を撤去するよう妨害排除請求をすることができますが、Aさんが任意に応じてくれない場合には、訴訟を提起する必要があります。

    ただし、訴訟を提起するにあたっては、相応の時間と費用が掛りますので、訴訟を躊躇われることもあるでしょう。
    しかし、あなたがこのまま何もせずに事態を放置してしまった場合、あなたの土地のうち、はみ出した塀によって占有されていた部分については、取得時効が成立する可能性があります。
    取得時効とは、他人の物又は財産権を一定期間継続して占有(準占有を含む)した者に対し、援用をもってその権利を付与するという制度です。(民法162条、同163条)。
    所有権について取得時効が成立するためには、占有者が所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間の占有を継続する必要がありますが、占有者が占有部分についても所有権があると過失なく信じていた場合には、占有期間が10年で足りるとされています。

    よって、ご質問の場合、最短で、Aさんがブロック塀を建ててから10年が経過した時点で取得時効が成立し、あなたの所有する土地のうち、ブロック塀によって占有された部分が、Aさんの所有となる可能性があります。
    この取得時効の成立を防ぐためには、Aさんに、あなたの土地上にブロック塀がはみ出していることを認める旨の日付入りの念書などを書いてもらうことで、Aさんの占有が所有の意思に基づかないことを明らかにしておく必要があります。
    いずれにしても、大切な不動産ですから、少しでもトラブルを感じた場合には、弁護士等の法律の専門家に相談したうえで、素早く行動を起こした方が賢明でしょう。
  • 強制執行逃れについて

    私は昨年知人に1千万円を貸し付けました。知人は私以外からも多額の借金をしているのですが、先日知人が唯一の財産である自己名義の住宅と敷地を、内緒で他人に譲渡していまいました。このような行為は許されるのでしょうか。
    知人が、真実、住宅及び敷地を譲渡したのか否かによって、適用する民法上の条文が変わってくるため、場合を分けて回答します。

    第1に、知人の行った譲渡が仮装であった場合について検討します。
    まず所有権が移転するためには、当事者間に、真実、所有権を移転させるとの意思(売買の意思、贈与の意思など)が生じていることが大前提となります。しかし、知人と現在の名義人が通謀して住宅及び敷地の譲渡を装った場合、通謀虚偽表示に該当し、民法第94条第1項が適用され、その効果は原則として無効となります。この場合、あなたは知人に代わって、現在の名義人に対して住宅及び敷地の登記名簿を元に戻すよう請求することになります。
    第2に、知人の行った譲渡が、真実、譲渡の意思に基づいて行われた場合について検討します。
    当該譲渡が贈与のように無償で行われたケースや不動産の時価よりも大幅に廉価な価格で売買された場合、知人はあなたを以外からも多額の借財をしていることから、あなたを含めた債権者は、民法第424条に規定された債権者取消権を行使することで、知人の行った無償又は廉価な譲渡の効力を取り消して、知人の元へ住宅及び敷地の所有権を戻すことができます。
    ただし、債権者取消権は、本来は、知人が自由になしうる譲渡の効果を取り消すものであり、また、譲り受けた名義人の利益を損なう可能性もあることから、行使するためには訴訟を起こす必要があるとされています。

    そして、一般的に①知人の行為により債務者の総財産が減少し、総債権者に対する弁済資力に不足をきたすこと、②知人のみならず、譲り受けた名義人が取引時に③の事実を認識していたことが必要とされます。
    弁護士の観点では、②の要件を証明することは他人の内心に関する事項のため困難を伴います。知人と譲り受け名義人との関係、住宅及び敷地の売買経緯、具体的な売買契約当時の状況などを総合的に判断して証明しますが、訴訟を提起する場合、事前にこの点の証拠を十分に確保しておくことが不可欠です。

    以上が民事上の救済策です。他方、刑事上については、強制執行を免れる目的をもって財産を仮装譲渡した者は、刑法第96の2により強制執行妨害罪に該当し、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることになります。したがって、知人も同罪にて処罰される可能性があります。
  • 家賃滞納による貸借人の強制的な退去法について

    アパートを持っているのですが、ある部屋の貸借人が家賃を1年分も滞納しており、催促しても全く支払う素振りがありません。強制的に退去してもらうにはどうしたらよいでしょうか。
    貸借人が長期にわたり家賃を滞納してしまった場合、貸借人と協議ができるケースは、滞納家賃の支払方法や、建物からの退去について話し合うことになります。しかし、本件のように、協議を拒否している場合などは、退去に向けて強制的な、つまり法的な手段をとらざるを得ません。

      貸借人を強制的に退去させるためには、裁判所の「執行官」に退去手続をとってもらう必要があります。そして、執行官が強制執行を行うためには、「債務名義」というものが必要で、典型的なものは勝訴判決です。つまり、裁判所に訴えを提起し、貸借人が建物を明け渡さなければならないことを裁判所で認めて貰う必要があります。そして、勝訴判決を取得した後、強制執行の申立てを行います。

      強制執行の申立てを行うと、概ね2週間以内に執行官が現地を訪れ現状を確認します。その際、退去期限を記載した催告書を室内に提示します。催告の時点で、貸借人があきらめて退去するケースもあります。しかし、催告をしても自ら退去しない場合には、強制的な退去手続(「断行」といいます)をとることになります。
    催告から概ね4週間後、執行官が再び現地を訪れます。その際、室内の荷物などを事前に手配した業者に搬出させ、場合によっては倉庫などに保管しておきます。また、通常、部屋の鍵も変えますので、事前に鍵業者を手配しておきます。後日、執行官が運び出した室内の荷物を時価で算定して、通常、その荷物を強制執行を申し立てた家主が買い取ります(金額は僅少なことがほとんどです)。買い取った荷物は自由に処分できます。これで明け渡しの強制執行の手続は完了となります。
    このように、強制執行による建物の明け渡しには、それなりに時間と費用がかかります。時間については、特に、勝訴判決を得るまでに時間がかかることがあります。また、費用については、裁判費用(弁護士費用など)、強制執行の際に裁判所へ予納する費用(通常8万円前後)、荷物を搬出する業者や鍵業者を手配する費用などがあります。法的には貸借人が負担すべきものですが、事実上、家主側が負担して貸借人から回収することができないことがほとんどです。
  • 騒音トラブルについて

    隣のマンションで立替工事を始めたようなのですが、朝から晩まで出入りする工事車両の音や工事作業の騒音がうるさくて、とても我慢ができません。どのように対処すればよいのでしょうか。また、場合によっては、損害賠償等を請求しようとも考えているのですが、可能でしょうか。
    マンション等の建設や補修工事に伴う騒音や振動等のトラブルは、近隣トラブルの中でも比較的よく耳にする典型的な紛争事案と言えるのではないでしょうか。
    ただ、工事を施工する側としても、建設や補修の必要性に基づいて工事をしているわけでしょうし、建設等の工事を実施する際にはある程度の騒音等が発生するというのは止むを得ない側面もありますから、騒音が発生しているからといって一概にそのすべてが違法となるわけではありません。 もっとも、騒音の程度や工事の方法等によっては、その騒音を発生させる行為が法的に違法となり、近隣の方々が被った精神的苦痛等に対する損害賠償請求等が認められることもありますので、具体的な事情をケースごとに検討する必要があります。

    裁判例によりますと、工事等騒音を発生させる行為の態様、騒音被害等の程度、工事物件等が存在する地域環境、騒音等発生行為の開始時の状況、発生後の継続状況、被害の防止に関する措置の有無及び内容効果等を総合的に考慮して、その騒音等の被害が一般社会生活上受忍すべき限度(「受忍限度」といいます)を超えるかどうかをという視点から違法であるか否かを判断するようです。

    ですから、騒音等の大きさや発生回数、騒音の発生時期が深夜や早朝であるかどうかなども当然に考慮されなければなりません。また、工事開始前に、施主や施工業者から周辺住民に対して十分な事前説明が実施されていたかや、苦情に対して施主や施工業者が適切に対応措置を講じたかなども重要な要素になります。

    いずれにしても、まずは騒音等を発生させている工事等の具体的状況をできるかぎり詳しく把握して記録等をとり(行政機関によっては、騒音測定器などを貸し出してくれるところもあるようです)、場合によっては施主や施工業者等に苦情や改善の申し入れをするなどして、十分に話し合いの機会を設けながら紛争解決への努力を試みるのが穏当ではないでしょうか。
  • 借家店舗の経営を第三者に委託した場合、無断転貸となりうるか

    私は約30坪の店舗を所有していますが、5年ほど前にXさんとの間で賃貸借契約の締結し、Xさんがその店舗でスナックを経営していました。ところが、最近、経営者が別人のYさんに変わっているようなのでXさんに話を聞いてみたところ、Yさんに経営を委託しているだけでXさんが経営者であることに変わりがないと言われてしまいました。
    しかし、私は現実に貸店舗を使用しているのはYさんであり、Yさんが使用することに承諾していない以上、無断で転貸をしているのではないかと思い、Xさんとの賃貸借契約を解除したいと考えていますが解除することは可能でしょうか。
    スナックなどの店舗は、賃借人が内装等に多額の資金を投下しているため、居抜きで賃借権を第三者に譲渡、転貸したいと、賃借人が考えても不思議はありません。
    しかし、民法612条1項は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と定め、仮にXさんがYさんとの間で本件貸店舗につき転貸借契約を締結する場合には、あなたの承諾が必要となります。
    本件のように、経営者を形式的にXさんのままとし、経営委託をして実質的には経営者をYさんとすることで、あなたの承諾がなくても、事実上、XさんがYさんとの間で転貸借契約を締結したのと同様の状態を作出しようと試みることがあります。

    このような事案の裁判例が出されています。簡潔にまとめると、Yさんが借家人であるXさんの指揮監督下にある従業員であって、経営内容についてXさんがYさんを指揮監督する関係にある場合には、依然としてXさんが当該店舗を使用、収益しているといえ、無断転貸とはなりませんが、もし、Yさんが当該店舗の収入、支出について自己の計算、責任でこれを行い、Xさんがこれを指揮監督する関係にない場合には、Yさんが独立して当該店舗を使用、収益していると判断され、XさんはYさんに対して無断で転貸したものとされているようです。

    本件では具体的関係やスナック店舗の収入、収支の帰属主体などが明らかでないため、結論を断定することはできませんが、様々な事情を考慮したうえでYさんが実質上の経営者であると認定された場合には、あなたがXさんとの賃貸借契約を解除することは、原則可能でしょう。
    なお、Yさんが実質上の経営者であった場合でも、例外的に、その転貸があなたに対する背信的行為ではないとされた場合には、解除をすることはできません。
    しかし、過去の裁判例をみても、店舗の委託経営の事実について、背信性が否定され、契約解除が認められなかったケースはあまりありません。
  • 定期借地権について

    借地借家法では、当初の契約期間が終了しても、借地権の期間の更新や期間の延長をしない旨の特約ができる定期借地権の制度があるそうですが、どのような内容の借地権でしょうか。
    定期借地権とは、更新がなく、定められた契約期間で確定的に借地関係が終了する借地権をいいます。旧借地法下では、一時使用のための借地権を除いて、借地権の存続期間が終わっても、その土地に建物が存在する限り、地主は正当な理由がなければ契約更新を拒絶できないとされていました。そのため、地主は、一旦借地権を設定すると、半永久的に貸すことになりかねないので、土地を貸すことを渋ったり、貸すとしても見返りとして高額の権利金の支払いを要求したりして、借地の供給が妨げられる結果になっていました。他方、借地人には一定期間に限って借地したいという希望もありました。そこで、この定期借地権の制度が新しく導入されました。

    定期借地権には、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類があります。
    一般定期借地権とは、存続期間を50年以上に定めなければなりません。そして特約として、①契約の更新がない、②存続期間中に建物が滅失した場合、再築しても存続期間の延長がない、③契約が終了したとき、地上の建物の買い取りがないという定めをしなければなりません。これらの特約はワンセットで定められる必要があり、また書面でしなければなりません。書面の種類については制限がありませんが、最低50年という長期契約ですので、後日の証拠として公正証書にしておいた方がよいでしょう。
    この定期借地権が設定されますと、地主は期間満了と同時に借地契約を終了させ借地人に地上の建物の取り壊し、土地の明渡しをさせることができます。
    なお、この一般定期借地権における更新排除等の特約は登記事項とされています。

    地上の建物が第三者に賃貸されている場合には、定期借地権の満了時に建物賃貸借契約が終了するという特約を書面ですることが認められています。特約がなされず、建物賃借人が借地権の存続期間が満了することを、その1年前までに知らなかった場合は、裁判所は申立により知った日から1年を超えない範囲で明渡しの期限を許与することができるとされています。(借地借家法39条・35条)
  • 動物病院との契約と発生する責任について

    10年以上飼っていた犬の体調が悪そうだったので、動物病院で診てもらいました。医者から特に異常はないと説明されたので自宅に連れて帰りましたが、体調は回復しないまま、3日後に亡くなってしまいました。動物病院に何か責任は生じないのでしょうか。
    (動物病院との契約内容)
    あなたは、動物病院との間で、ペットを治療してもらうという契約を結んでいます。
    したがって、動物病院には、あなたの犬を適切に治療する法的義務が発生していますし、また、医療方法について適切に説明する法的義務も発生しています。

    (動物病院に発生する責任)
    そして、動物病院が、そのような法的義務に違反した治療を行なった場合、動物病院には義務違反に基づく責任が発生します(この責任を「債務不履行責任」といいます。また、事案によっては「不法行為責任」という別の責任も生じます)。逆に言えば、そのような義務違反がないと、結果的にペットが死亡したとしても、動物病院に法的責任は発生しません。
    どのような場合に治療義務違反や説明義務違反が認められるかは、基本的には、病状など各事案の事情に照らして、獣医師会の一般的な医療水準に基づく治療等がなされたか否かで判断します。
    過去の裁判例には、腫瘍の切除手術を行なったところ、術後の病理組織検査により腫瘍が実は肉腫(悪性腫瘍)であることが判明し、そのペットが約1ヵ月後に亡くなったケースで、治療義務違反や説明義務違反が認められた例もあります。
    そして、動物病院に義務違反が認められた場合、義務違反と因果関係が認められる損害について、賠償請求をすることができます。
    例えば、治療費、慰謝料、弁護士費用などを請求することができます。

    (本件についての対応)
    本件では、10年以上も飼っていたとのことですから、飼い主の方には相当な愛着があったかと思います。
    動物病院に法的責任が発生するかについては、亡くなったペットは何か病気に罹っていたのか、病気に罹っていたとしてそれが死因なのか、亡くなった当時本件犬の平均寿命を超えていたか、診察を受けた時点で医師が病気を見落としていたといえるか、といった点が問題となります。
    また、実際に動物病院に対して法的責任を追及することができるかどうかは、それらの点について、資料や証拠が存在するかにもよります。一度専門家に相談されるとよいでしょう。
  • 賃貸借契約(立退料)について

    私は、雑居ビルの一部を賃借して店舗を経営している自営業者なのですが、ビルの所有者から、ビルの建て替えを実施するので近いうちに物件を明け渡して欲しい旨の催促を受けています。契約書を見ると、確かに、6ヶ月前までに通知をすれば賃貸借契約を解除できるとか、その際には立退料は発生しないなどと書かれてはいるのですが・・・。申し出に従って出て行かなければならないのか、立退料などはどうなるのか、教えて下さい。
    借地や借家の賃貸借契約は、所有者や賃貸人が自由に解約できるものではありません。
      家賃の滞納による債務不履行でもない限り、賃貸借契約を終了させるには、原則として「正当の事由」(旧借家法第1条の2、借地借家法28条等参照)が必要になります。

    この「正当の事由」の有無を判断するに当たっては、①賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情②賃貸借関係に関するこれまでの経緯や経過③当該物件の利用状況や現況など、当該賃貸借関係を取り巻く様々な事情や要素が考慮されることになります。

    ①は、貸主側と借主側のどちらの方が、当該物件を使用する必要性に迫られているのか等が比較されます。あなたが、長年の間、その店舗で地域に密着して商売を続けており、他に移転先や代替店舗を探すことも難しいような場合は、正当事由が認められにくいでしょう。②では、契約更新の状況や、賃料、保証金、権利金などの事情が考慮され、何度も契約の更新が行われているような場合は、やはり正当事由の有無に影響することがあります。③については、建物の現在の利用状況や構造、老朽化の程度などが考慮されることになります。防災構造上も問題がある老朽化した建物で即時に建て替えをしなければ人命にかかわる危険性があるような事情でもあれば、正当事由が肯定され得ます。

    これら①〜③に加えて、④「財産上の給付をする申し出」も正当事由の判断要素として考慮されます。いわゆる、「立退料」です。立退料は、あくまでも①〜③を補う補完的な考慮要素で、立退料を支払えば当然に正当事由が認められるとか、反対に立退料を支払わなければ絶対に更新拒絶が認められないというものではありません。なお、契約書に立退料は発生しない旨の記載があっても、そのように賃借人に一方的に不利益な内容の条項については、その効力が否定されます。

    立退料の算定に当たっては、移転費用、仲介料、引越費用などの他、内装補償費用や営業補償費用、借家権価格費用など様々な補償項目が考慮されます。計算に当たっては、店舗の規模や営業状況、立地条件など個別の事案ごとに当然に事情が異なりますので、相当な立退料額がよく分からないような場合には、経営店舗の状況が分かる詳しい資料等を揃えて、専門家に相談してみるのも良いでしょう。
  • 購入した中古オートバイに欠陥があった場合の法的請求について

    先日、中古のオートバイを近所の中古バイク店で購入しました。その2,3日後、購入したオートバイでドライブに出かけたのですが、その際、突然オートバイから出火し、オートバイは全焼してしまいました。その後、消防署の調査が行われましたが、明確な出火原因は分かりませんでした。購入先のバイク店に何か法的な請求をすることはできないでしょうか。
    中古品の売買において、その商品に通常では気づかない不具合・欠陥があった場合、買主は、法律に定められた一定の要件を満たす場合、売主との間でその売買契約を解除することや、売主に対して不具合により発生した損害の賠償を請求することができます(民法第570条)。これを売主の「瑕疵担保責任」といいます。「瑕疵」とは簡単に言えば欠陥という意味です。ご質問の事案では、この瑕疵担保責任に基づいて売主に対して法的な請求をすることが考えられます。

    では請求するためにはどのような要件を満たせばよいのでしょうか。まず、ここで問題となる「瑕疵(欠陥)」はどのようなものでもよいわけではありません。その商品の取引において一般的に求められる注意を尽くしても発見できないような瑕疵である必要があります(「隠れた瑕疵」といいます)。これは、注意すれば気付くような瑕疵がある場合は、売買価格に織り込まれていると考えられるからです。どの程度の注意を尽くす必要があるかは、その商品の取引慣行などから判断されることになります。ご質問の事案では、消防署の調査でも明確な出火原因が分からなかったとのことですから、隠れた瑕疵に該当する可能性はあると思われます。ただし、あくまでも購入したオートバイに瑕疵があり、その瑕疵が原因で出火したことが必要です。もし裁判になった場合はその点を買主が立証する必要があります。裁判所は消防署の調査結果に拘束されるわけではありませんが、買主の方で相当の根拠を示して出火の原因がオートバイの欠陥にあったことを立証する必要があります。ご相談のケースと類似する事案で売主の責任を認めた例もあります(東京地方裁判所平成15年1月28日判決)。

    このような隠れた瑕疵に該当する場合、売主に対して、売買契約の解除か損害の賠償を請求することができます。ただし、買主が商品に隠れた瑕疵が存在することを知ったときから1年以内に請求しなければなりません。
  • 車を無断使用された際の所有者の責任について

    友人に私名義の自動車を貸したのですが、約束の返却期日を過ぎてもなかなか自動車を返してくれず、すでにかなりの期間が経過しています。
    周囲の話では、その友人は、私の自動車を自分の車であるかのように毎日勝手に乗り回しているそうなのです。勝手に乗り回している間に事故でもおこされたら、車の所有者である私の責任は一体どうなるのだろうかと大変心配なのですが・・・。
    それは心配ですね。ご友人があなたに無断で車を乗り回している間に万一交通事故が発生したような場合、事故を起こした友人自身に賠償責任が生じることはもちろんですが、自動車の所有者であるあなたご自身に対しても自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条の「運行供用者」としての責任等が問われる可能性がありますし、また、民法709条に基づく自動車の管理上の過失責任等を負わされる可能性もあるのです。
    「運行供用者」としての責任を負うか否かの判断にあたっては、対象となっている自動車の使用について支配をなすべき立場にあるか、自動車の使用によって利益を享受する立場にあるか、などが具体的事情に基づいて詳しく検討されているようですが、主な考慮要素としては、所有者の当該車両の管理状態がどうであったかが問題視される傾向にあります。
    ①ある男性が自分の父親所有の車を運転して酒場に到着して飲酒後、泥酔して寝てしまった男性に代わって男性の友人が車を運転して自宅に送り届ける際に事故を起こしたケースで、所有車である父親の運行供用者としての責任が肯定された事例もありますし、②車両の盗難被害に遭い、その盗難車両が事故を起こしたケースでも、車にカギをかけていなかった、迅速に被害届を出していなかったなどの所有者の車両の管理状態如何によっては、盗難被害者(所有車)の運行供用者責任等が肯定された事例もあります。

    あなたのケースでも、無断使用中の友人が万一事故を起こした場合に、車の所有車であるあなた自身に損害賠償責任が発生する可能性は充分あると思われますので、すみやかに車両の返還等を請求し、それでも迅速な返還が受けられない場合には、専門家等に相談して裁判による返還請求等も検討すべきでしょう。また、無事返還が受けられるまでは、自動車の任意保険等を切らさないように継続しておくなどの対策も必要でしょう。
    いずれにしても、車の無断使用という状況を何らの具体的対策も講じずに現状のまま放置しておくことはお勧めできません。

刑事手続

  • 大分県教職員汚職について

    「今回の一連の大分県教職員汚職について、どのような犯罪になり、どのような刑の重さなのでしょうか。」
    刑法197条1項は、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をした時は、5年以上の懲役に処する。この場合において、請託を受けた時は、7年以上の懲役に処する。」と規定しております。

    また、刑法197条の3、1項は、「公務員が前2条の罪を犯して、不正な行為をし、又は相当な行為をしなかった時は、1年以上の有期懲役に処する。」と規定しております。この場合、最長20年の懲役です。

    「賄賂」とは、公務員の職務に関する不正の報酬としての利益のことを言います。従って、公務員のE氏が、Y氏から、自分の知り合いを教員に採用するよう頼まれ、金品をもらい、不正に合格させた時(例えば、点数を水増しして、本当は落第していたのに合格させたような場合)は、刑法197条の3の加重収賄罪が成立し、1年以上20年以下の有期懲役に処せられることになります。
    不正な行為をしていない場合でも、請託(「請託」とは、公務員に対し一定の職務行為を依頼することであって、その依頼が不正の職務行為の依頼であると正当な職務の依頼である等を問わないとされています。最判昭27・7・22)を受けた場合は7年以下の懲役となります。(これを「受託収賄」といいます)。
    このような請託を受けておらず、また、不正行為もしておらずとも、金品を受領していれば、単純収賄ということで5年以下の懲役になります。
    いずれにしても、賄賂をもらった公務員はかなり重く処罰されることになります。

    これに対し、賄賂を贈った方は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金(刑法198条)となっているため、賄賂をもらった側よりも贈った側の方がかなり刑は軽くなるのが一般的です。
    それだけ、公務員には職務の廉潔性が要求されているからです。お金によって左右されることになれば、公務の客観性、公正性を害するので、公務員に厳しくモラルを課していると言えるでしょう。
  • 裁判員制度について

    「来年(平成21年)5月から裁判員制度が始まるというように聞きましたが、どういうことでしょうか。」
    国民の中から選任された裁判員が裁判官とともに刑事訴訟手続に関与する制度です。
    具体的に言えば、殺人、放火、強盗などの死刑、無期懲役若しくは禁固にあたる罪などの重大な事件について、国民の中から選ばれた6人の裁判員が3人の裁判官と一緒になって(合計9人)で、刑事裁判の審理を担当し、判決を出すという制度です。
    「どうして、そのような制度が設けられたのですか。」
    制度趣旨に対する考え方は、いろいろ分かれています。
    ただ、弁護士の立場から考えると、社会経験のほとんどない職業的裁判官が判決を下すよりも、社会の各層から選ばれた多数の人々が、自分のこれまでの知識・経験・考え方などによって、判決を下すほうが結果的に正しい判決が出ると考えられたわけです。
    「誰もが裁判員に選ばれるのですか。」
    裁判員は衆議院議員の選挙権を有する者の中から選ばれます。したがって、選挙権を持っている人であれば、誰でも裁判員になるのが原則です。
    但し、次のような人は裁判員になることはできません。

    ① 学校教育法に定める義務教育を終了していない者。
    ② 禁固以上の刑に処せられた者。
    ③ 心身の故障の為、裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者。

     また、職業上、裁判員の職務に就くことができない職業もあります。

    ① 国会議員
    ② 国務大臣
    ③ 国の行政機関の職員
    ④ 裁判官、及び、裁判官であった者
    ⑤ 検察官、及び、検察官であった者
    ⑥ 弁護士、及び、弁護士であった者
    等々です。
    「裁判員に選ばれた以上、これを辞退することはできないのでしょうか。」
    原則として辞退できません。
    但し、次のような場合には辞退することができます。

    ① 年齢70歳以上の者
    ② 地方公共団体の議会の議員(会規中の者に限る)
    等です。
    「私は自営業を行っており、自分がいなくなると商売が成り立たなくなるのですが、この場合にも裁判員を辞退することはできないのでしょうか。」
    次のような事由がある場合には、裁判員を辞退することができると定められています。

    ① 思い疾病、または、傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
    ② 介護、または、養育が行わなければ日常生活を営むのに支障がある、親族の介護、または養育の行う必要があること。
    ③ その従事する事業における重要な業務であって、自らがこれをしなければ、事業に著しい損害が生じる虞があること。
    ④ 父母の葬式への出席、その他、社会生活上の重要な業務であって、他の期日に行うことができないものがあること---など。
    「『死刑に絶対反対ですから、どのような凶悪事件でも絶対に死刑判決をすることはありません』という考えを持っている人も裁判員になれるのでしょうか。」
    個人の内心の問題まで関知できないところです。したがって、その人が死刑廃止論者かどうかは、その人が表明しない限り分かりません。したがって、心の中で死刑廃止を唱えている人であっても、裁判員になる可能性は高いと思います。
    ただ、その人が、「自分は絶対に死刑判決を出さない」と公言してはばからない場合には、「不公平な裁判をする虞がある」との理由で、裁判員としての適格性がないと判断されて、裁判員になることを拒否される場合があるでしょう。
    「裁判員はどのようにして選ばれるのでしょうか。」
    まず、裁判所から裁判員候補に選ばれたという通知がきます。
    その通知に記載された日時に裁判所に出頭してもらうことになります。
    「私は姫島の奥に住んでいるので、大分の裁判所まで行くのは1日仕事です。呼出が来ても拒否することはできないのでしょうか。」
    「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」では、呼出を受けた裁判員候補者は、裁判等選任手続の期日に出頭しなければならないとされています(同法第29条)。
    したがって、法律上は出頭義務があるとなっています。
    但し、出頭場合には旅費日当、及び、宿泊料が支給されます。
    「せっかく出頭したのに、裁判員に選任されないこともあるのでしょうか。」
    そのとおりです。裁判所で、裁判長や弁護士、或いは、検事から質問を受け、裁判員となるのに問題がありそうな人は裁判員になることができません。
    「私は法律等まったく知りません。このような私が、人を殺したか殺してないかなど判断することはできませんし、ましてや、その人に死刑判決が妥当なのか、懲役20年が妥当なのか、判断することはできません。このような人間でも裁判員をしなければならないのでしょうか。」
    まさにあなたのような方に裁判員になっていただき、あなたの価値観で判断をしてもらうのが大切なのです。
    ある人間が、犯行を行ったか、行っていないかという点については、難しい司法試験を通った裁判官だから判断ができるという問題ではありません。社会の中で色々経験した人達が多数集まって判断する方が妥当な結論が出せると思います。
    「有罪か無罪かを決めたり、どのように判決を出すかについて、裁判官の人に教えてもらえるのでしょうか。」
    裁判官に教えてもらうという姿勢だけは絶対にやめて下さい。

    裁判官の決めたことを素人の裁判員が諾々と従うというのが、裁判員制度のもっとも恐れるところです。
    素人のあなたなりの考えをどしどし言って下さい。裁判官の意見に従う必要はまったくありません。
    「裁判員にはどんな義務があるのでしょうか。」
    裁判員は裁判の内容を深く知るわけですが、これを人に喋りたくなるのは当然だと思います。
    しかし、弁護士や医者等が、職務上知り得た他人の秘密を漏らしたら犯罪になるのと同じように、裁判員も裁判で知りえた秘密を他に漏らすと犯罪になります。

労働問題

  • 有給休暇について

    先日、会社に有給休暇を取りたいと話したのですが、「忙しいから無理だ」と言われました。友人と旅行に出かける予定だったのですが、断念せざるをえなくなりました。はっきり言って、そんなに忙しい訳でもないですし、私の代わりの人もいます。有給休暇は自由に取れないものなのでしょうか。
    休暇の中には、法律の規定で定められた法定休暇と就業規則等で定められた会社独自の休暇の2種類があります。
    質問者の年次有給休暇は法定休暇にあたります。これは労働基準法第39条で定められています。
    年次有給休暇は、6ヶ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤することで発生します。
    たしかに、年次有給休暇は発生すれば権利として認められるものですから自由に行使できるかに思えますが、そうかといって、いつでも自由に取れるものではないとされています。
    年次有給休暇は、権利として労働者に帰属しており、労働者には年次有給休暇を取得する時季を指定する権利(要は、いつ有給休暇を取りたいか指定すること)が認められるのですが、それには、条件が付されており、「労働者が指定した日の就労義務が使用者の適法な時季変更権の行使がない限り」免除されるという形になっています。つまり、使用者にも時季変更権の行使(要は、その日は会社の事情からどうしても勘弁してくれということです)が認められているのです。
    では、使用者側の「適法な」時季変更権というのは、いかなる場合に認められるのでしょうか。
    時季変更権を行使するには、「事業の正常な運営を妨げる場合」でなければなりません。
    裁判例をみると、「事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべき。」とされています。

    今回の質問者のケースでは具体的な事情は分かりませんが、会社が代行者を準備できるにもかかわらず、何ら準備しないで拒否した場合や、例えば、質問者が忙しい部署に属していないにもかかわらず、他の忙しい部署の従業員に気をつかって有給休暇を取らせない場合などは、時季変更権の行使としては適法とは言えないでしょう。
    今回の質問者のケースでは、質問者の話す内容が事実であれば、到底、時季変更権の行使として適法とは言えないでしょう。
    ちなみに、年次有給休暇の権利行使の目的は自由ですから、旅行等が理由であっても何ら問題はありません。また、年次有給休暇を取ったからという理由のみで不利益な取扱をすることも出来ません。
  • 従業員の解雇について

    私は現在、小規模な会社を経営しているのですが、従業員を解雇する場合にはあらかじめ予告をしておく必要があるのでしょうか。
    労働基準法によれば、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」(同法20条1項本文)とされております。
    したがって、使用者は原則として、少なくとも30日前に予告をするか、予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
    もっとも、同法は続いて、「但し、天災事変その他のやむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りではない」(同法20条1項但書)と規定しており、一定の場合には例外を認めています。
    この例外に該当する場合には、事前又は事後速やかに、所轄労働基準監督署長から解雇除外の認定をもらう必要があります。

    例外に該当する場合のうち、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合としては、次のようなものがあります。
    ・事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合
    ・賭博、風紀紊乱(びんらん)等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
    ・雇い入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合、雇い入れの際、使用者の行なう調査の際に、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合
    など。
    また、次の場合には解雇予告の適用が除外されているのであらかじめ予告をする必要はありません(同法21条)
    ・日日雇い入れられる者(但し、1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
    ・2か月以内の期間を定めて使用される者(但し、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
    ・季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(但し、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
    ・試の使用期間中の者(但し、14日を越えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
  • 退職勧奨について

    私は、いわゆるIT会社に勤務していますが、近年の業績悪化によるリストラ策の一環として、会社から退職を求められました。私は、これに応じなければならないのでしょうか。
    結論から申し上げると、あなたに対する会社からの退職勧奨に強制力はありませんので、あなたがこれを断ることは自由です。
    一般に、退職勧奨とは、使用者(会社)が労働者に対し雇用契約の合意解約を申し込み、または、合意解約の申し込みの誘因をすることを指します。
    仮に、労働者がこの退職勧奨に応じて退職願いを提出すると、その提出が合意解約の申し入れに対する承諾となり、雇用契約の合意解約が成立することになります。
    しかし、あくまで退職勧奨は、使用者の労働者に対する雇用契約の合意解約の申し込み、または、申し込みの誘因にすぎませんので、労働者がこれに応じる義務はありません。
    したがって、労働者が退職勧奨を断ることは自由ですし、その後に、使用者が、労働者が退職勧奨に応じなかったことのみを理由として解雇等の不利益措置を採った場合、その解雇は違法となります。
    また、違法な退職勧奨を受けた場合には、労働者は、使用者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
    一般に、社会的相当性を逸脱した態様での半強制的な退職勧奨は違法とされています。
    具体的には、退職勧奨を数十回にわたって行い、合理的な理由もなく職位を降格させたうえで、心理的に圧力を加えて退職を強要した場合などがこれに該当するでしょう。
    また、半強制的でなかったとしても、退職勧奨における労働者の人選が不平等な場合(たとえば、合理的な理由なく女性のみを対象とした退職勧奨や労働組合役員のみを対象とした退職勧奨)にも、退職勧奨は違法になると思われます。
    以上によれば、あなたは会社からの退職勧奨に応じる義務はありませんので、会社が退職を強要してきた場合には、これが違法であることを伝えたうえで、退職を拒むようにしてください。
  • 出向について

    私は、現在、甲会社に勤務していますが、先日、甲会社の子会社である乙会社へと出向するよう命じられました。しかし、乙会社では、現在私が担当している営業の仕事ではなく、これまで全く経験のない経理の仕事をすることになっています。また、この出向により、月収がおよそ30%も減額されてしまいます。私はこの出向命令を拒否したいのですが、それはできるでしょうか。
    出向とは、甲会社における従業員としての地位を保持したまま、乙会社においてその労務に従事させる人事異動のことを言います。この場合、労働時間、休日、賃金などの勤務形態は、乙会社の就業規則に従って定められ、労務遂行の指揮命令権も乙会社が持つことになります。
    このように出向は、従業員が甲会社に在籍するものの、労働提供の相手方が他の企業(ここでは乙会社)に変わり、また、労働条件の重大な変更を伴うことから、著しく従業員に不利益な措置といえます。そこで、出向命令が拘束力を有するためには、原則として、従業員の同意が必要とされています。
    そして、この同意があるといえるためには、就業規則・労働協約上の根拠規定や採用の際における同意といった明示的な根拠が必要です。
    それでは、従業員による同意さえあれば直ちに出向命令は有効かというと、そのようなことは無く、甲会社による出向命令が権利濫用に該当しないことが必要となります。(労働契約法第14条)
    その判断は、通常、出向命令の業務上の必要性と出向者の労働条件上及び生活上の不利益との比較衡量により決せられます。

    具体的な例を挙げるならば、労働条件が大幅に下がる出向や甲会社への復帰が予定されていない出向は、整理解雇の回避するため等の企業経営上の事情が認められない限り、権利濫用となります。他方、労働組合との協議によって出向条件や職務内容に関する十分な配慮がなされている場合には、権利濫用は否定される方向にあります。
    仮にあなたが、甲会社に入社した際に将来出向する可能性がある旨の説明を受けていなかった場合や甲会社の就業規則に出向に関する規定がない場合には出向を拒否できるでしょう。
    また、出向をすることについて同意があると評価できる場合であっても、経理と営業では業務内容が大きく異なり、また、月収も大きく下がることから、甲会社があなたを人選した合理的理由を明らかにできなければ、あなたが出向を拒否したとしても、それは正当であると考えます。
  • 整理解雇について

    不明
    不明
  • 退職の効力発生時期について

    私は運送会社を経営しているのですが、先日、従業員の1人が退職を申し出てきました。当社としては、現在、人手が足りず、その従業員が辞めると非常に困るので、会社としては退職は認めたくありません。 このような場合でも、退職の効果は発生するのでしょうか。
    憲法は第22条において職業選択の自由を認めており、これにより退職の自由も憲法により保障されていることになります。したがって、使用者が労働者の退職の申し出を認めない場合であっても、退職は認められます。もっとも、退職により、使用者側に損害が発生する場合には、使用者が労働者に対し、損害賠償請求をすることができる場合があります。

    退職の効果の発生時期については、民法627条に規定があります。
    同条第1項によれば、雇用の期間の定めがない場合について、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」と定められています。したがって、この場合、解約の申入れから2週間を経過することによって退職の効果が発生することになります。
    他方、同条2項は、「期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは時期以降についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。」と規定しています。
    「期間によって報酬を定めた場合」とは、例えば、月給制の場合などがあります。したがって、月給制の労働者の場合、賃金計算期間の前半に退職の申入れをした場合、その計算期間の満了時点で退職の効果が発生します。また、後半に退職の申入れをした場合、翌賃金計算期間の満了時点で退職の効果が発生することになります。
  • 産休について

    昨年の11月に結婚し、今年の5月に妊娠していることが分かりました。共働きをしており、会社を辞めるわけにはいかないのですが、産休は取れるのでしょうか。仮に、取れたとして、会社から不利益な処分を受けることはないのでしょうか。
    産休には、産前休業と産後休業があります。産前休業は出産予定日から6週間以内の場合で女性労働者から請求があった場合に認められます。また、産後休業は、女性労働者が請求するか否かを問わず、産後8週間以内の休業が認められます(労働基準法第65条)。
    会社としては、産休の場合に有給とする必要は特にありません。労働者は産休中、健康保険から出産手当金が支給されます。仮に、会社が有給とすれば、出産手当金は支給されないことになります。
    産休を取得することについては、労働基準法に定められた権利ですから、法律に定められた要件を満たす場合には、当然に労働者の正当な権利行使となります。
    したがって、産休を取得したことを原因として、懲戒処分等の不利益な処分をすることは禁じられています。

    仮に、産休を取得したこと自体を理由に、あなたが懲戒処分等の不利益な処分を受けた場合には、その処分自体の無効を主張できますし、仮に、そのことが原因で最終的には解雇等をされるのであれば、その解雇処分自体を無効として労働者としての地位の確認、及び、解雇されたときからの未払給与の請求をすることができます。
    その他に、生理日の措置、育児時間の問題、それに伴う不利益な取扱がなされないか等、女性労働者特有の問題も多くあります。
    現在のように多数の女性が社会進出している時代には、女性労働者を保護する取り組みを会社自体も積極的にしていく必要がありますし、その結果、会社に多大な利益をもたらすこともあると思います。

    ただ、女性にとって働きやすい環境でない職場があるのも事実です。トラブルが発生、もしくは発生しそうになった際には、専門家、労働署等に相談し、自分一人で抱え込むのではなく、助言を得ながら自分の権利を守っていきましょう。
  • 残業代の請求について

    私は平成22年3月10日に○○商事を退職しました。○○商事では日常的に残業を行っていましたので、平成22年5月10日に残業代を○○商事に請求しました。残業代を請求する上でどのような問題がありますか。
    残業代はいつまで請求できるのでしょうか。労働基準法115条には、「この法律の規定による賃金(退職手当は除く。)、災害補償その他の請求権は2年間・・・行わない場合においては、時効によって消滅する。」と規定されています。
    つまり、未払い残業代の請求権は2年間という消滅時効期間が経過すると、時効によって利益を受ける者、今回で言えば○○商事が時効の援用(つまり時効の利益を受ける意思表示をすること)をすれば、ご相談者は残業代を請求できなくなります。
    まず、ご相談者が請求した平成22年5月10日の2年前である平成20年5月11日以降に発生している賃金請求権は先ほど話した消滅時効期間を経過していません。なお、○○商事では、賃金は毎月末日締めで翌月15日払いですので、平成20年の4月分から退職した平成22年5月分までの未払い残業代の請求が可能となります。
    ただし、ここで注意してもらいたいのが、平成20年4月分からの未払い残業代を請求するのであれば、消滅時効の進行を止める措置(これを時効の中断事由といいます。)をとらなければなりません。
    では、しかるべき措置とはどのような方法によるのでしょうか。
    民法では、消滅時効の中断事由として、「請求、差押え・仮差押え又は仮処分、承認等」を定めています。一番スタンダードな方法とすれば、「請求」でしょう。そしてこの場合に「請求」とは裁判上の請求を意味します。裁判外の請求(○○会社に対して内容証明郵便で残業代の請求をする場合)にはあくまでも「催告」としての効力しかなく、内容証明郵便を送った後6ヶ月以内に裁判を起こすなどの手段を取らなければなりません。
    以上のように、残業代の請求は残業代が発生してから2年しか請求できないこと、請求する場合には法的な手段をとる必要がありますので十分に注意する必要があります。
  • 従業員に対する貸付金を給料から控除することの可否について

    当社は、昨年の4月に従業員Aさんに拝み倒され、特別に30万円を貸し付けてあげましたが、その後、従業員Aさんは弁済期を守ることなく借りた30万円を一向に返そうとしません。そこで、当社としては、この貸付金を従業員Aさんの給料から控除する形で回収しようと思いますが、そのような措置は法的に許されるのでしょうか。
    一般市民である皆さんの感覚としては、貸しているお金である以上、当然に会社が従業員の給料から控除して回収することは許されると思うかもしれません。
    しかし、労働基準法24条1項を見てください。そこには、第1文として、「賃金は、通貨で、直接労働者に、『その全額』を支払わなければならない。」と定められています。
    そして、会社が従業員Aさんに支払うべき給料は賃金に該当する以上、会社はその全額を支払うことが原則であり、勝手に給料から貸付金を控除することは許されないことになります(これを一般的に、賃金全額払いの原則と言います)。
    この原則の趣旨とするところは、従業員は毎月の給料を糧に生活を組み立てている以上、会社が従業員の意思に関わりなく一方的に給料から反対債権を控除することを禁止し、もって従業員の経済的生活の安定性を確保しようとするものです。では、会社は従業員に対する給料から反対債権を一切控除することができないのかというと、そうではありません。
    労働基準法24条1項但書によると、法令に別段の定めがある場合(税法上の源泉徴収や社会保険料の控除)や事業場労働者の過半数で組織する労働組合等との間で書面による協定が締結されている場合には、例外的に給料から控除することができるとされています。
    したがって、本件でも、仮に社内にて従業員に対する貸付金制度が定められており、かつ、任意に返済しない場合には貸付金を給料から控除しうる旨の労使協定が締結されているような場合には、会社は従業員Aさんに対する給与から貸付金を控除することが可能となります。
    もし、そのような労使協定が締結されていないような場合には、従業員Aさんとの間で給与から貸付金を控除することについて合意を交わす必要があるでしょう。

その他

  • 両親の扶養義務について

    私は、10年ほど前から両親とは絶縁状態になり、全く連絡は取っておらず、専業主婦をしながら夫と暮らしていました。ところが、先日、兄から連絡があり、両親が体調を崩して入院しており、退院の目処が全く立っていないとのことでした。兄は、今後、両親の医療費や生活費がかなりかかることが予想されるため、私も両親に対して経済的援助をするよう求めてきました。しかし、私方の生活も厳しく、とても援助できる余裕はありません。兄の請求に応じなければならないでしょうか。
    ご相談にあるような年老いた親に対する子の扶養の問題は、近年の高齢化社会において、ますますクローズアップされている問題です。まず、扶養制度一般について説明すると、生活が困窮している親族に対しては、その者と一定の親族関係にある者は、経済的な援助を与えなければならない義務が法律上課せられています。これを扶養義務と言います(民法877条以下)。経済的に困窮している者への援助の方法としては、生活保護などの公的扶助制度と、親族間で行われる私的な扶養がありますが、親族による扶養の方が優先されることになっています。
     では、どのような親族関係にある者に扶養義務が発生するのかについてですが、まず、直系血族と兄弟姉妹については当然にお互いに扶養義務が発生します(民法877条1項)。さらに、3親等内の親族間においては、特別な事情があるときに限り扶養義務が発生します(同条2項)。そして、扶養義務者が複数いる場合、まず当事者間で協議して扶養する順序を決め、決められないときは家庭裁判所で決めることができます。具体的な扶養の方法については、やはり当事者間や家庭裁判所で決めることになりますが、扶養される者や扶養義務者の経済状況や資力、従前の関係などを基に決めることになります。
     よって、ご相談者の場合も、ご両親に対する扶養義務があることは明らかですので、お兄さんと協議して扶養の具体的な方法を決める必要があり、協議がまとまらない場合は家庭裁判所で判断してもらうこともできます。
     なお、ご相談者の場合、専業主婦であるためご自身の収入はないと思われますが、専業主婦だからといって当然に扶養義務がないというわけではありません。夫の収入のうち自由に使える限度で扶養能力が認められることもあります。
  • 騒音トラブルについて

    隣のマンションで立替工事を始めたようなのですが、朝から晩まで出入りする工事車両の音や工事作業の騒音がうるさくて、とても我慢ができません。どのように対処すればよいのでしょうか。また、場合によっては、損害賠償等を請求しようとも考えているのですが、可能でしょうか。
    マンション等の建設や補修工事に伴う騒音や振動等のトラブルは、近隣トラブルの中でも比較的よく耳にする典型的な紛争事案と言えるのではないでしょうか。
    ただ、工事を施工する側としても、建設や補修の必要性に基づいて工事をしているわけでしょうし、建設等の工事を実施する際にはある程度の騒音等が発生するというのは止むを得ない側面もありますから、騒音が発生しているからといって一概にそのすべてが違法となるわけではありません。
    もっとも、騒音の程度や工事の方法等によっては、その騒音を発生させる行為が法的に違法となり、近隣の方々が被った精神的苦痛等に対する損害賠償請求等が認められることもありますので、具体的な事情をケースごとに検討する必要があります。

    裁判例によりますと、工事等騒音を発生させる行為の態様、騒音被害等の程度、工事物件等が存在する地域環境、騒音等発生行為の開始時の状況、発生後の継続状況、被害の防止に関する措置の有無及び内容効果等を総合的に考慮して、その騒音等の被害が一般社会生活上受忍すべき限度(「受忍限度」といいます)を超えるかどうかをという視点から違法であるか否かを判断するようです。

    ですから、騒音等の大きさや発生回数、騒音の発生時期が深夜や早朝であるかどうかなども当然に考慮されなければなりません。また、工事開始前に、施主や施工業者から周辺住民に対して十分な事前説明が実施されていたかや、苦情に対して施主や施工業者が適切に対応措置を講じたかなども重要な要素になります。

    いずれにしても、まずは騒音等を発生させている工事等の具体的状況をできるかぎり詳しく把握して記録等をとり(行政機関によっては、騒音測定器などを貸し出してくれるところもあるようです)、場合によっては施主や施工業者等に苦情や改善の申し入れをするなどして、十分に話し合いの機会を設けながら紛争解決への努力を試みるのが穏当ではないでしょうか。
  • 公正証書について

    公正証書とは何ですか?どのような場合に作るものなのでしょうか?
    公正証書とは、公証人役場で公証人に作成してもらう書類のことをいいます。一般的に公正証書作成の必要性が認められるのは、大きく分けて二つです。
    まず一つは、公正証書遺言です。遺言を公正証書にしておくということです。遺言には、公正証書遺言と自筆証書遺言とがありますが、自筆証書遺言は、遺言の内容全部を遺言者本人が書かなければなりません。したがって、自分で字を書くことができない人は、公証人に頼んで公正証書遺言を作ることになります。
    もう一つは、人にお金を貸した場合等、あらかじめ、その契約内容を公正証書にしておき、最後に強制執行受諾文言という文書を公証人に書いておいてもらうことです。
    後者の場合に公正証書にしておくのは次のような理由があるからです。
    例えば、人にお金を貸したがその人がお金を返さない場合、通常であれば裁判を起こし、裁判所からの判決に基づいて強制執行しなければなりません。しかし、公正証書に直ちに強制執行を受けても差し支えない旨の記載があれば、公正証書に基づいて、すぐに強制執行の手続ができるのです。この場合、裁判を起こす必要はありません。
    ただし、どのような場合でも大丈夫というわけではありません。
    例えば、家の貸し借りに関して公正証書を作成した場合、期限に家を明け渡す旨の記載をしていても、期限に出ないからといって明渡しの強制執行をすることはできません。家賃の支払等、金銭に関する約束についてだけ強制執行ができるのです。このように金銭の支払に関する事項については、公正証書は判決と同じ効力を持ち、すぐに強制執行によって目的の達成ができるのです。
    強制執行をするには、まず公正証書の正本を公証人役場に持参し、公証人から執行力が生じたことを示す「執行文」を付与してもらいます。この執行文の付いた公正証書によって、裁判所に差押え手続を申し立てるという手順になります。強制執行を開始するには、公正証書の謄本が相手方に送達されていることが必要です。公正証書を作成したとき、相手方にも一通渡されますがそれだけでは駄目で、執行する際に改めて相手へ公正証書の謄本を送達することが義務付けられています。家財道具などの有体動産の差押えは、執行官が差押えを行った際に差押えの謄本を同時に送達してもらうこともできます。
    しかし、債権に対する強制執行は裁判所が行うので、事前に公正証書の謄本を相手に送達して、その送達証明書を添付して執行の申立をしなければなりません。公正証書は、双方が公証人役場に赴き、公証人に作ってもらいますので、作り方は公証人役場に相談すれば教えてくれます。
  • 不動産購入時の注意点

    この度、私は、不動産を購入する予定です。一般的に、不動産を購入する際に注意すべき点などがあれば教えてください。
    土地や建物といった不動産の購入は、金額が大きく、権利関係も複雑になりがちなことから、十分な調査をすることが大切です。
    調査の方法としては、登記簿等の調査と現状の調査とが考えられます。

    (1)まず、売買をするうえでの大前提として、その対象となる不動産が売主の所有であることを確認する必要があります。
    この調査は、法務局の登記簿や公図等を閲覧し、売主から権利証の提示を求めるなどして行います。しかし、登記簿の記載は必ずしも真実の権利関係を反映していないことがあり、公図も土地の形状を正確に示していないことがありますので、登記簿や公図を漫然と信じることは危険です。また、登記簿の調査では、対象不動産に地上権など買主の使用を制限する権利や抵当権などの担保権が設定されていないかを確認する必要があります。
    もし、担保権がついていた場合には、「売買契約時に担保権者に対して、売買代金の中から担保権の被担保債務の返済をしてしまい、残額を売主に支払うことで、担保権のない不動産を購入する」との方法が買主から見て一番安全な取引形態でしょう。

    (2)つぎに、実際に現状の調査をすることが大切です。その基本は、やはり実際に現地に赴いてみることでしょう。登記簿には、土地の所在、地目、地籍、建物所在、種類、構造、床面積等が、記載されていますが、これを現地で確認する必要があります。
    また、土地が直接公道に接していない場合には、公道に通じるまでの通行使用権の有無を確認しなくてはなりません。加えて、建設基準法や都市計画法などの法令による建設制限についても確認することが必須です。
    この他に、隣接する土地と売買の対象となる土地との境界を確認する必要もあります。隣地所有者に立ち会ってもらい、境界がどこにあるかを確定させないと、のちに紛争となる可能性が高くなってしまいます。
    また、もしあなたが農地を購入して、そのうえに住宅を建てるつもりであるならば、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。この許可を受けないでなされた転用目的での売買は無効であり、買主は土地の所有権を取得することができないので、注意が必要です。

    (3)いままで述べてきましたように、不動産購入には多くのリスクがあります。そして、不動産購入に失敗しないための最大の秘訣は、いかに権利関係を調べ上げるかにあるのです。

    不動産の購入に失敗し、訴訟となるケースは山のようにあります。一生に何度もある買い物ではありませんので、不動産購入の際には、労を厭わず、出来る限り調査したほうがよいでしょう。
  • 成人後見人について

    高齢の母が度々物忘れをするので病院に行ったところ、軽度の認知症と診断されました。お医者さんの話では今後症状が進行するおそれがあるとのことでした。母には不動産や預貯金などの財産があるのですが、もし母の症状が悪化してしまった場合、どのように管理していけばよいでしょうか。
    認知症や精神障害などのために自ら財産を管理することができなくなってしまった場合、親族を含む第三者が本人の了解なく財産を処分することはできません。そのため、本人の生活費や医療費などをその財産から支出することができず、家族が困ってしまうケースは珍しくありません。
    判断能力が不十分な本人に代わって第三者が財産の管理をするためには、その第三者に法律上の権限が必要となります。そのための手続の一つに、成年後見制度があります。
    成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。

    まず、任意後見制度とは、任意後見契約ともいい、本人にまだ判断能力が充分ある時点で、本人が第三者(受任者)との間で契約をして、本人の判断能力が不十分な状態になった際に生活の世話や看護、財産の管理などをすることを委託する制度です。特徴としては、第三者に委託する内容を本人自身が決めることができる点があります。なお、現時点で判断能力に問題はないものの、身体が不自由などのために自身での財産管理等が困難な場合に、その時点で通常の委託契約を締結し、それと同時に将来判断能力が不十分な状態となることに備えて、任意後見契約を締結するケースもあります。

    つぎに、法定後見制度とは、家族等の申立てにより、家庭裁判所が成年後見人を選任することにより、判断能力を失っている状態の人を保護・支援する制度です。判断能力が不十分な人を保護・支援する制度は、判断能力の程度により、「後見」、「保佐」、「補助」の3つの類型がありますが、後見は、強度の認知症など、精神上の障害の程度が著しく判断能力が欠けているのが通常の状態である人の場合に適用されます。成年後見人は、本人に代わって財産上の法律行為を行うことができます。

    このように、任意後見制度と法定後見制度にはそれぞれ特徴があり、保佐や補助といった他の制度もありますので、本人の現状に即した手続を検討する必要があります。ご心配であれば一度専門家に相談されることをお勧めします。
  • 架空・不当請求について

    突然、あるサイトを使用したとして、高額な請求の電話が来ました。どうしたら良いのでしょうか。
    今回は、インターネット等を利用した際に、架空請求や不当請求をされた場合についてお話しします。
    突然、携帯電話や自宅の電話に身に覚えのない会社から高額な利用料等の請求を受けたことはありませんか。
    通常、架空請求や不当請求をしてくる場合、情報提供料、違約金等の名目で請求させることが多いです。
    上記のような架空請求、不当請求に対して、どのような対応をとればいいのでしょうか。
    まず、請求先のサイトにアクセスすらしたことがない場合、つまり全く身に覚えのない場合については、相手方の請求自体が、詐欺等に該当する可能性が高いです。
    この場合には、警察に通報してもよいですし、そこまでするのは面倒くさいというのであれば、放置すればよいのです。
    次に何らかのアクセスをしていた覚えのある方、この方の場合には対処の仕方が若干異なります。アクセスした場合、契約が成立するか否かが問題になります。
    よくあるのが、利用申込みの画面にならず、突然、あなたとの契約は成立しました。などという画面があらわれるケースです。
    このような場合には、その契約自体は成立しておりません。きちんと利用申込み画面が出て、その利用申込み画面の構成上、画面上の操作によって契約の申込みをしていることがきちんと認識できる構造になっているかどうかで決まります。
    簡単にいってしまえば、このサイトを申し込めば利用料等はいくらかかりますよ、解約する場合にはこのような手順を踏んでください等、細かく契約条件が書かれ、それを納得した上で、パソコンの操作上、契約の申込みができているといえるか否かにより決まるということです。
    なお、仮に契約が成立する場合であっても、消費者契約法に反する高額な違約金を請求される場合もあります。
    このような場合にも、当然、消費者契約法上の利率(14.6%)を超えて支払う必要はありません。
    架空請求・不当請求は今後も無くなることはないと思います。とにかく、架空請求・不当請求をされた場合には、怖くなってすぐに代金を振り込むということはせず、本当に契約は成立しているとしても請求額は妥当なのか、と一度冷静になって考えるべきでしょう。
  • 身元保証人について

    私の甥が今年大学を卒業、新社会人として大手メーカーに入社することになり、会社から身元保証書の提出を求められ、私に身元保証人となるように頼みにきました。 私が身元保証人となった場合、どのような法的責任を負うことになるのでしょうか。
    (1)身元保証契約とは、従業員の行為により使用者が損害を受けた場合にこれを身元保証人が賠償することを約束する旨の契約であり、使用者と身元保証人との間で締結されます。
    責任を負う具体例に、集金係の従業員が集金した金銭を自ら費消して横領してしまった場合が考えられるでしょう。

    (2)「身元保証ニ関スル法律」は、以下のとおり、責任の範囲を限定しています。
    まず、契約の存続期間は、期間の定めがない場合には原則3年とされ(同法1条)、期間の定めがあった場合でも5年を超えることはできない(同法2条)と定められています。また、契約を更新することはできますが、自動更新の約定は無効とされていることから、実際には5年を超えて勤務している従業員が使用者に損害を与えたとしても、身元保証の期間が満了しており、責任追及を受けなくて済むことはあるでしょう。
    また使用者は、従業員に業務上不適当の事由があって身元保証人に責任を生ずるおそれが生じた場合や、担当業務、勤務地の変更によって保証人の責任が重くなり、または監督が困難になる場合(たとえば、従業員の仕事内容が法務から経理に変わった、転勤で遠隔地に長期間行くことになった等)は、その旨を遅滞なく身元保証人に通知しなくてはなりません(同法3条)。この通知を受けた時、通知がなくても事実を知った時には、将来に向けて契約を解除できます(同4条)。

    (3)契約の有効な存続期間中に横領等の不法行為をした場合、身元保証人は使用者に生じた損害につき賠償する責任を負います。しかし、損害の金額を賠償する責任を負わず、法律によって責任が軽減されています。
    一番影響を与える事項は、監督上の過失やその程度です。使用者の監督に不備があった場合、損害賠償義務は大幅に減額されます。親族・親戚関係から断り切れずに身元保証を引き受けた等の事情も、軽減の一要素として考慮されます。

    (4)このように身元保証人の責任は法律により軽減されますが、責任がゼロということはまずありません。法的責任を負う以上、甥に対し、勤務先はどのような業種の会社で、担当する業務は何なのか、転勤の可能性や配置換えの可能性等について、十分な情報収集をしたうえで、身元保証人になるか否かを決めていただきたいと思います。
  • 保証人について

    知人から「貸金業者からお金を借りたいが、絶対に迷惑はかけないので保証人になってくれないか」と頼まれました。保証人になるかを決めるうえで、どのようなことに気をつければよいでしょうか。
    借主が十分な金銭をもたず貸金を支払えない場合、保証人が借主に代わって貸金の全額を支払わなければなりません。支払わない場合、貸主は保証人の不動産や給与債権に強制執行をかけ、全財産を投げ出さなければならず、その責任はみなさんの考える以上に重たいものです。
     そこで、保証人になる際の注意点をいくつか挙げます。

    第一に、借主に返済の資力があるのか、貸主が他に確実な物的担保(抵当不動産など)を取っているかに着目してください。資力に不安がある場合、保証人に支払いの請求がくる可能性が高いといえるので、保証を断った方が賢明です。

    第二に、保証条件を十分に検討するべきです。保証する債務の額、保証する期間はいつまでかの確認が大切です。

    第三に、保証契約の形態が連帯保証か、通常保証か、他に保証人がいるのか確認しましょう。
    単なる保証は、貸主はまず借主に支払の請求をしなくてはならないなど保証人は2次的責任しか負わず、他に保証人がいれば分別の利益(借主の債務の額を保証人の頭数で割った分だけ返せばよい)もあります。一方、連帯保証は、貸主は借主に請求せずに最初から保証人に支払の請求することができ、また分別の利益もなく、保証人は各自が残債務の全額を返済する義務を負います。

    第四に、保証内容が普通保証か根保証かを確認してください。
    普通保証は、保証した金額についてのみ保証をすれば法的責任を果たしたことになりますが、根保証では、保証した取引に基づくすべての債務につき保証しなければならないため、責任が重たくなります。

    第五に、貸金業者からの借り入れかどうかを調べるべきです。

    一般に、貸金業者からの借り入れの場合、その債権の回収につき厳しい取り立てが待っている可能性があります。近年の貸金業法改正により暴力的取り立ては規制されていますが、いまだ非常識な時間帯に電話をかけてきたり、保証人の家族に返済を要求するなどの違法な取り立てをする貸金業者も存在します。
    以上が保証人になる際の注意点ですが、一番大切なことは、いくら親しい友人や親族からの保証人の申し入れであっても、保証人はその全財産をもって貸金の支払いをしなくてはならないのですから、情に流されず、本当に保証人になっても良いのかを自らの頭で判断することです。
  • 境界線について

    隣家の樹木や枝が伸びてきて、私の家の敷地にまではみ出しています。 毎年、落葉の時期になるとものすごい量の落葉が私の庭先に溜まってしまい掃除が大変なのです。また、樹木の根が隣家との境界にあるブロック塀の下から私の庭先にまではみ出してきて、土地がでこぼこしている状態です。いつも根っこに足を引っ掛けそうになり、大変です。 私の敷地の上にはみ出しているのですから私の方で枝や根を切ってしまってもよいでしょうか?
    ご近所との境界線を巡るトラブルは一見些細な揉め事のように見えても、ひとつ交渉・処理の手順を間違うと後々まで深い禍根を残しかねませんから、まずは冷静かつ慎重な対応をとられることをお勧めします。
    さて、隣家の樹木の枝や根が自分の敷地内に伸びてきて困っているということですが、この場合の法律関係については「民法」に条文がありますのでご紹介します。

    民法233条「竹木の枝の切除及び根の切り取り」を見てみましょう。同法1項は、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その枝を切除させることができる。」と定めています。つまり、隣の庭先から伸びてきた枝が自分の敷地にまではみ出ている場合は、敷地の所有権が侵害されていることになりますから、木の所有者にはみ出している枝部分を「切除させる」ことができるわけです。あくまでも、「切除させる」ことができるだけですから、相手方に無断で枝を切ってしまうことは出来ません。相手方がどうしても切除に応じなければ、裁判手続きを経て強制執行することになります。
    もっとも、どのような場合でもはみ出した枝の切除を要求できるかと言うと、そうではありません。裁判例によると、枝がはみ出していることにより落葉被害などの何らかの被害が生じていたり何らかの被害が生ずる恐れがあることが要求されています。

    根については、同法2項が、「隣地の竹木の根が境界線を越える時は、その根を切り取ることが出来る」と規定していますから、はみ出した根は自分で切り取ってしまうことが出来ます。ただし、いくら法律があるからといって、本当に隣家に無断で根っこを切り取ってしまったりすると、無用な紛争の原因ともなりかねませんので、まずは穏便な話し合いを申し入れることをお勧めします。
  • 氏名変更について

    姓名判断で金運に恵まれずこのままではお金の苦労が絶えないと言われました。氏名を変えたいと思っていますがなかなかできないとも聞きました。難しいのでしょうか。
    氏名は個人を認識する重要な要素ですから、むやみに変更することはできません。その変更の手続きは、家庭裁判所に変更許可の申立をする方法で行われます。
      氏の変更は、戸籍法107条第1項によって「やむを得ない事由」が必要とされています。 裁判所が変更を許可するか否かは、客観的・社会的にも「やむを得ない事由」があるかどうかがポイントとなります。認められた事例としては、珍奇・難解・難読な氏、永年使用(氏の場合は30年程度の使用が必要と言われています)、氏の使用による社会的差別や精神的苦痛を理由とするものなどがあります。 少しユニークな事例としては、外国人と結婚した日本人が、夫婦双方の氏を結合した氏への変更を家庭裁判所に申し立てた事例があります。この事案で裁判所は、その氏が外国で通称として銀行口座などで使用されていること、変更を認めないと日常生活や社会的な手続きに多大な不便が生じることなどを理由に、氏の変更を認めました。 本件のように姓名判断という理由のみでは客観的・社会的に「やむを得ない事由」があるとはいえず、氏の変更は困難と考えます。
      名の変更も、戸籍法107条の2によって「正当な事由」が必要とされています。もっとも、名の変更は氏に比べて社会的影響が小さいため、氏の変更よりも緩やかな要件と考えられています。 「正当な事由」としてみとめられたものとしては、珍奇・難解・難読のほか、営業上の目的から襲名する必要がある場合があります。また、永年使用し(長いほど良いですが、成年の場合は通常5年以上、子供の場合はもう少し短くてもよいと言われています)通称として通用している場合で、戸籍上の呼称を使用するとかえって社会生活上著しい支障が生じる場合には、名の変更が認められる余地があります。
      本件のように姓名判断という理由のみでは名の変更も困難ですが、新しい名を5年以上継続して使用したという実績があれば、永年使用により名の変更は認められる可能性があると考えます。
  • 連帯保証人について

    友人がアパートを借りる際の連帯保証人になりました。2年後、契約の更新時期、友人は賃貸借契約を更新しました。ところが、更新後、友人は賃料を滞納するようになり、現在では敷金では賄いきれない滞納家賃があるようです。私は、契約当初には連帯保証人になりましたが、契約更新時に改めて連帯保証人になった覚えはありません。 それでも大家さんから保証人の責任を問われたら滞納家賃を代わりに支払わなければいけませんか?
    責任の重い連帯保証契約の締結には特に慎重さが要求されます。とはいえ家族や知人が部屋を借りる際などには、頼まれて連帯保証人になってしまう人も多いでしょう。賃貸借契約の連帯保証人には、滞納家賃や退去時の原状回復義務等について賃借人に代わって弁済する義務があります。賃貸借契約の保証は日常的に行われているとはいえ、保証債務の内容等を十分理解した上、連帯保証契約締結には慎重な態度で臨むことが肝心です。
    この場合、大家さん(不動産業者)によっては、<※1>賃貸借契約更新の際に改めて連帯保証人の合意書面や署名捺印などを要求する場合もあれば、<※2>賃借人に更新書面の提出を求めるだけで連帯保証人について再度の更新手続きを要求しない場合もあります。特に<※2>は、更新後の債務について保証人は何ら責任を負う必要はないように思えます。
    しかし、「期間の定めのある賃貸借において、賃借人のために保証人が賃借人との間で(連帯)保証契約を締結した場合には、特段の事情がある場合を除き、契約更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務(滞納家賃の支払義務など)についても保証人としての責任を負う」というのが最高裁判所判例の立場であり、原則として保証人の責任は賃貸借契約更新後も存続します。賃貸借契約は更新されるのが普通であり、保証人になろうとする者は将来契約が更新されることを当然に予測できるのだから、更新後の債務について責任を負わせても不合理ではない、というのがその理由です。
    もっとも、保証人が当初から「更新後は保証人にならない」旨を表明したり、更新後の債務について保証責任を負わせるのが「信義則」に反すると認められるような特段の事情がある場合には、例外的に保証責任を免れる場合もあります。また、賃貸人の家賃滞納が長期に亘って継続しており、将来も家賃支払いの見込みがない等の場合には、保証契約の解除が認められることもあります。

    いずれにしても、賃貸借契約の連帯保証人になる場合には、更新後の保証関係について事前に不動産業者等に十分確認し、契約更新の際には改めて連帯保証人の合意書面等を要するような契約形態(前記<※1>)にしておくのが良いでしょう。
  • 損害賠償について

    スポーツクラブのプールで行われた水中体操に参加後、水着のままロッカールームに通じる廊下を歩いていたら、廊下にたまっていた水に足をすべらせて転倒し怪我をしました。クラブに治療費のことを話しましたが、会員規約に「施設内の事故には責任を負わない。」との規定があるので支払うことはできないと言われました。責任をとってもらうことはできないのでしょうか?
    民法717条は、「土地の工作物」の「瑕疵(かし)」によって他人に損害を加えたときには、工作物の占有者または所有者が損害を賠償する責任を負うと規定しています。

    まず、「土地の工作物」とは人工的に土地に接着して設置された物をいいますので、本件でのクラブの廊下は「土地の工作物」にあたります。
    問題は、廊下に「瑕疵」があるといえるかどうかです。「瑕疵」とは、通常備わっているべき安全性を欠くことを意味します。つまり、その「土地の工作物」が、本来の用法に従って利用されることを前提とした場合、備わっていることが一般的である、通常であるといえる程度の安全性を有していない場合には、「瑕疵」があると認められます。
    また、「瑕疵」の有無を判断する際には、工作物を設置している者の管理体制といった点も考慮されることがあります。

    本件のクラブの廊下がどのような状態であるかは明確ではありませんが、仮に水がたまりやすい構造になっていたこと、水がたまると滑りやすい材質であること、素足で通行すると転倒する危険があること、それにもかかわらずクラブが危険を防止する有効な対策をとっていなかったことなどの事情があれば、本件廊下には素足で通行する人にとって滑りやすくなるという危険性が存在するので、通常備わっているべき安全性を欠くと判断される可能性が高いといえます。
    したがって、そのような場合には本件廊下に「瑕疵」があるといえ、クラブに対し損害(治療費の外、通院交通費、休業損害、慰謝料など)の請求をすることが可能と考えます。
    なお、会員規約に免責条項があるようですが、本件のようにクラブの責任の全部を免除する条項は、消費者である会員に一方的に不利な条項として消費者契約法により無効となる可能性が高いといえます。
  • 家賃について

    月7万円で住居を借りていますが、半年前に大家さんから家賃を10万円に値上げするという通知がきました。値上げに応じることが出来ないと考え以前の家賃を持って行きましたが、大家さんは受け取ってくれません。やむなく供託していましたが、先日大家さんから家賃を払わないから契約を解除するという通知がきました。どうしたらいいですか。
    家賃額については、借地や借家の価格に変動があったり、近隣の同種の建物の家賃と比較して不相当な額となっている場合には、家主及び借主は、相手方に対して、将来に向かって賃料の増減を請求することができます(借地借家法32条1項)。
    そのような賃料の増減請求がなされた場合、増減後の家賃額について家主と借主の間で合意ができなければ、最終的には裁判で適正金額を決めることになります。
    裁判では、証拠調べ、鑑定人の意見を聴くなどするため、適正額が決まるまでにある程度時間がかかります。
    適正額が決まるまでの間、いくら払えばよいか迷われるかもしれませんが、借地借家法では、家主からの増額請求に対して借家人は相当と思う家賃を支払えばよいことになっています(借地借家法32条2項)。
    支払うといっても、本件のように大家さんが受け取ってくれない場合には、あなたが考える「相当額」を法務局に供託すればよいのです。
    あなたが従前の家賃額を相当と考え、その額を供託しているのであれば、未払いにはなりません。
    ただ、後に月額10万円が適正との裁判が確定した場合には、供託額との差額3万円について、その支払期から年1割の利息を余計に支払わなければなりません(借地借家法32条2項但し書き)。
    ですから、裁判確定までは適正と思う賃料額を供託し、仮に裁判でそれより高い金額が相当額とされた場合には、不足額と1割の利息を支払えば、家賃の未払いにはなりません。

    したがって、あなたには家賃の未払いはなく、大家さんからの契約解除の通知に効力はありません。賃貸借契約は継続していますので、心配する必要はありません。
  • 公正証書について

    「公正証書とは、何ですか?」
    公正証書とは、公証人役場で公証人に作ってもらう書類のことを言います。
    「公正証書は、どのような場合に作るのですか?」
    われわれが公正証書の必要性を認めるのは、大きく分けて二つです。
    第一は、公正証書遺言。遺言をあらかじめ公正証書にしておくということです。遺言には、公正証書遺言と自筆証書遺言という二つの形式が認められています。
    自筆証書遺言は、遺言の内容全部を遺言者本人が書かなければなりません。したがって、自分で字を書くことができない人は、公正証書遺言を作るしかないのです。
    もう一つは、ある人にお金を貸した場合等、あらかじめ、その契約内容を公正証書にしておき、最後に強制執行受諾文言という文言を公証人に書いておいてもらうことです。
    「それは何のために、そのようなことをするのですか?」
    例えば、ある人にお金を貸して、その人がお金を返してくれない場合には、通常であれば裁判を起こして、裁判所から判決を書いてもらい、その判決に基づいて強制執行しなければなりません。
    しかし、公正証書に直ちに強制執行を受けても差し支えない旨の記載があれば、公正証書に基づいて、すぐに強制執行の手続きをすることができるのです。この場合は、裁判を起こす必要がないのです。
    「どのような場合でも、公正証書さえ作っていれば、大丈夫なのでしょうか?」
    いえ、そうではありません。例えば、家の貸し借りに関し、公正証書を作った場合には、期限には明け渡す旨の約束を記載していても、期限に出ないからといって明渡しの強制執行をすることはできません。
    家賃の支払い等、金銭に関する約束についてだけ強制執行ができるのです。
    このように、金銭の支払いに関する事項については、公正証書は判決と同じ効力を持ち、すぐに強制執行によって目的を達成することができるのです。
    「それでは、公正証書による強制執行にはどのような手続きが必要なのでしょうか?」
    強制執行をするのには、まず公正証書の正本を公証人役場に持参し、公証人から執行力が生じたことを示す「執行文」を付与してもらいます。この執行文の付いた公正証書によって、裁判所に差押えて続きを申し立てるという手順になります。
    強制執行を開始するには、公正証書の謄本が相手方に送達されていることが必要です。公正証書を作ったとき、相手方にも一通渡されますが、それだけでは駄目で、執行する際、改めて相手に公正証書の謄本を送達することが義務づけられています。家財道具などの有体動産の差押えは執行官が差押えを行った際に、差押えの謄本を同時に送達してもらうこともできます。
    しかし、債権に対する強制執行は、裁判所が行うので、事前に公正証書の謄本を相手に送達して、その送達証明書を添付して、執行の申立をしなければなりません。
    公正証書は、双方が公証人役場に赴き、公証人に作ってもらわなければなりませんが、作り方は公証人役場で相談すれば教えてくれます。
  • 登記について

    「登記とはどのようなものでしょうか。」
    不動産、土地や建物などを買ったり、相続で取得したりした場合に、その不動産が誰の物かをはっきりさせなければ、その不動産に関して権利関係を持とうとする人に混乱が生じます。そのため、不動産に関する権利関係を明確にするため、法務局に備え付けの登記簿に当該不動産の所有者、或いは、その不動産に抵当権を設定している抵当権者などが記載されるのです。
    このような制度を登記制度と言い、不動産取引に関する安全を図るのが制度趣旨です。
    「私は、今度、家と土地を買いましたが、登記しておかなければどのような不利益があるのでしょうか。」
    不動産の登記は対抗要件と言われています。
    即ち、あなたが不動産を買っても、それを登記しない間に、売り主が別の買い主に当該不動産を二重に売買した場合、二番目の買い主の方が先に登記してしまえば、あなたは自分に権利があることを二番目の買い主に主張することはできません。

    先に登記をした方が勝つということです。
    「その場合に、私はどのように保護されるのでしょうか。」
    まず、二番目に買った人との間では、あなたが不動産の所有者であるということを主張できません。原則として負けます。
    但し、判例上、ニ番目の買い主が背信的悪意者(例えば、あなたと売り主との間の売買契約を仲介した仲介業者が、あなたに登記がないことを知りながら二重に買い受けた場合。)には、そのような人間を保護する必要がないので、あなたの方が勝てる場合があります。しかし、これは例外的な場合です。
    さらに、売り主に対しては、一旦あなたに売りながら更に別の人に二重売買をしたということで、損害賠償の請求ができます。しかし、このような場合、売り主は、通常、お金を持って逃げるケースが多いので、回収することは困難となるでしょう。
    「私が現在住んでいる家と土地は30年前に亡くなった祖父の名義のままです。この家と土地を私の名義にするには、どのようにすれば良いのでしょうか。」
    田舎の不動産に関しては、このような事案がたくさんあります。本来、登記は、所有者が亡くなったりして権利が変動した都度やらなければならないのですが、登記費用がもったいないとか、面倒くさい等という理由で、名義をそのままにしておくことがたくさんあります。
    あなたの場合は、まだお爺さんの名前ということですから、まずお爺さんが死んだ時点で、その相続人が相続します。相続人とは、あなたのお父さんやお父さんの兄弟、即ち、あなたからみれば叔父さん叔母さんが相続人となります。その後、あなたのお父さんが死んで、あなたが相続したということになります。その際、他の相続人全員から、あなたに名義を移転することについて、承諾する旨の一筆を取ることができれば、あなたの名義にすることができます。
    しかしながら、親戚とは言っても、縁が無縁になっていたり、都会に出て行ったりして、ほとんど意思疎通ができないような場合には簡単に判子をついてくれないことがあります。そのような場合は、相続人全員に対して、時効取得を原因とする訴訟を提起して、判決をもらい、それに基づいて移転登記をする以外にはないと思われます。もっとも、これはあくまでも、「20年以上自分のものとして使ってきた」という時効の要件を満たしていることが、大前提です。この要件が満たされていない場合、あなたの名義にすることは困難です。
    いずれにしても、このような事案はたくさんあり、時効が認められるかどうか、かなり専門的な判断を必要とするので、是非、当事務所に相談に来て下さい。
    「私が全く知らない間に私の所有する家と土地が第三者の名義に変えられていました。もはや、私の権利はなくなるのでしょうか。」
    登記はあくまでも形式的なものなので、登記がなくなったからといって、あなたの権利までもがなくなるということはありません。
    しかし、仮に、甲さんが更に別の乙さんに売ることがあります。この場合、乙さんは、登記を信用して取引関係に入ります。そのような時、場合によっては、あなたの実印や印鑑証明書の保管の仕方に問題があったり、他人に簡単に実印や印鑑証明書を渡していたりなどした場合には、登記を信用した乙さんの方が保護されてしまうということもあります。非常に難しい問題ですが、このような問題の場合も、是非、当事務所においでください。
    「登記をするには誰に頼めばいいのですか。」
    登記は法務局で行いますが、御自分で登記手続するのは大変ですので、弁護士事務所か、司法書士事務所に依頼するのが手っ取り早いでしょう。
  • 弁護士の仕事

    「弁護士の仕事の内容について教えてください。」
    弁護士の仕事は大きく分けて二つあります。
    一つは、刑事事件(人を殺したりした人)の弁護人として活動をすることです。
    もう一つは、民事事件(例えば交通事故に遭って損害を被った場合)の代理人として活動をすることです。
    「民事事件の場合、弁護士を頼んだほうがいいのでしょうか。」
    弁護士の仕事は、争いがあれば、当事者のどちらかの代理人になって法的なアドバイスをし、相手方と交渉し、場合によっては裁判などを起こして、その争いごとを解決することです。
    もちろん、弁護士を頼まず自分で解決できるのであれば弁護士に依頼する必要はありません。しかし、権利関係が複雑になり、法律関係も複雑になっていることや、事件の当事者は感情的になって話し合いが紳士的に行なわれないなど様々な問題があります。
    このような時、当事者と若干距離を置き、法的な訓練を積んだ弁護士を代理人に立てることは極めて意義があると思います。争いの解決に役立つと思います。
    「離婚調停などは自分でもできると聞きましたが。」
    確かに調停などは自分で行って調停委員を交えて話すことは可能です。
    しかしながら、離婚と言っても、離婚原因の有無、財産分与の問題、慰謝料の問題、養育料の問題、さらには年金分割の問題など、かなり高度な法律的な問題が潜んでおります。
    これをすべてあなたが自分で解決するということは不可能だと思います。しかも、調停委員と言われる人たちも必ずしも法律に明るいとは限りません。特に地方に行けば行くほど、地方の名士のような方が調停委員となっており、あまり法律のことは詳しくない場合もあるのです。
    そのような時に、法律に詳しい弁護士を代理人と立てなければ、あなたにとって不利益な内容になることもよくあります。
    「相手が弁護士を立てないのに、自分のほうから弁護士を立てる必要はないのではないですか。」
    確かに、弁護士に依頼すれば費用ばかりかかります。
    相手も弁護士を立てていないから自分も立てる必要はない、と考えるのは早計です。
    争いを有利に解決したいなら弁護士を立てる必要が高いと思います。
    「弁護士に頼むと費用がたくさんかかるのではありませんか。」
    確かに、弁護士もボランティアで仕事をしているものでないので、それなりの費用はかかります。
    まず、事件を受ける時に着手金というお金を頂きます。これは裁判で勝っても負けても返還はしません。
    弁護士は委任契約ですので、結果において負けることもありますが、成功報酬だけであればタダ働きということもあるので、そのようなことは通常しません。ただ、着手金をどのように定めるかは弁護士と相談して下さい。
    うちの事務所などは、勝算の高い事件については着手金はある程度低くし、終わった時点で報酬の際にそれを加算してもらうということもやっておりますので、それは担当の弁護士に相談してみてください。
    また、解決し、一定の経済的利益があった時に報酬というものを頂きます。これは着手金とは別です。この報酬をいくらにするかは、なかなか難しい問題がありますが、一定の基準がありますので、その基準に基づいて、終わった時点で協議するという方法が一般的に採られています。
    また、場合によっては、経済的利益の何%というふうに最初の段階できちんと決めることも可能です。どのような決め方にするかは、事件を依頼する段階で弁護士と相談してみて下さい。
    「弁護士は誰でもいいのですか。」
    とんでもありません。弁護士も千差万別です。優秀な弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。自己主張の強い弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。交渉のうまい弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。頭のきれる弁護士もいれば、そうでもない弁護士もいる。いろいろいます。
    ただ一つ、弁護士を選ぶ基準として考えなければならないのは、あなたの話をよく聞いてくれるかどうか、さらに、納得のいく説明をしてくれるかどうか、という点です。
    費用が高い、安いだけを基準にして弁護士を選ぶ方がいますが、これが一番悪い選び方ではないでしょうか。特に、費用があまりにも安い場合は依頼者もその事件に対する執着心が乏しくなり、弁護士も手抜きをすることになるかも分かりません。
    したがって、費用はある程度出してでも、その事件をきちんと最後まで解決してもらう、という考え方を持つほうが大切だと思います。
    「肩書きのある弁護士(例えば、弁護士会会長)などの弁護士のほうが有利なのでしょうか。」
    それは全く関係ないと言ってもいいと思います。
    弁護士によっては、肩書きをひけらかし、それによって自分の偉大さを依頼者に誇示しようとする人がいますが、そのような弁護士に限って裁判官の前では卑屈になっているケースがあります。
    肩書きよりも、その弁護士の人物、人格などを基準にして決めるべきでしょう。
    「一旦頼んだ弁護士があまり仕事をしてくれません。このような場合どうすればいいのでしょうか。」
    これが一番難しいところです。仮にあなたがその弁護士にやめてもらい、別の弁護士に頼もうと思っても、なかなか別の弁護士は、人がこれまでやってきた事件を途中から受けるのは嫌がるものです。私も嫌です。
    しかし、どうしてもあなたがそうしたい場合は、まず、今頼んでいる弁護士にきちんと理由を言って辞任してもらって下さい。それでも辞任しない場合は解任することもやむを得ないでしょう。そして、前の弁護士との関係をきちんと清算した後で、新しい弁護士に依頼すべきだと思います。
    当然、費用などは余分にかかるかも分かりませんが、それはそれでやむを得ないというふうに割り切って下さい。
    あなたの重要な財産が今後どうなっていくかという、極めて大切な問題ですから、「着手金を多少損した。」などと考えないほうが良いでしょう。
  • 約束手形について

    「 『約束手形』とはなんですか。」
    「約束手形」とは、商売などを行っている際に、商品などを買ったとき、債務者が、一定の金額の支払いを約束して振り出す書面のことを言います。
    一番確実なのは現金を受け取ることですが、現金だと盗難の危険性があることや、直ちに現金が準備できない場合に、支払期限日までの期限の利益を得られることなどから、手形は発達してきた制度です。
    「 『不渡り』とはどういうことですか。」
    手形を振り出した人が、2回、不渡り(約束の支払期日に約束の銀行口座にお金を準備することができず、当該手形の決済ができないことを「不渡り」といいます。)を出した場合に、銀行取引が停止されます。
    商売人が銀行との取引を停止されれば、商売は、事実上できなくなってしまいます。従って、二度、不渡り手形を出した際には、当該商売人は、事実上、「倒産した」といっても間違いじゃありません。
    従って、手形を振り出した人は、何としてでも、手形を決済する必要に迫られるわけです。
    「それでは、受け取った手形が不渡りとなったとき、どうすればいいのですか。」
    約束手形の振出人は、絶対的に支払い義務を負います。当然、手形には、裏書人や保証人がある場合もありますので、このような裏書人や保証人がいる場合は、その人達に対しても責任を追及することができます。
    従って、自分の貰った手形の振出人だけでなく、裏書人や保証人が何名かいる場合には、それら手形に名前を書いている人たちと支払いに関して交渉することが可能です。
    振出人が1名、裏書人が3名の手形を貰った場合に、誰に対して請求しても可能です。従って、一番返済の能力がありそうな人間と交渉するのが、正しい交渉の仕方と思います。
    「示談で解決する場合には、どのようにすればいいのでしょうか。」
    「示談」とは、振出人(債務者)との話し合いで解決することですが、手間や費用の点から見ても、一番簡単な方法です。ただ、あくまでも、話し合いによる解決ですから、お互いの合意が得られない場合は無駄となります。
    また、どのような時点で、どのような内容の示談をするかは、振出人の資力やその事業の経営状態、手形が不渡りとなった諸々の事情、受取人と振出人との関係など、様々な要素が関わってきます。
    話し合いで示談が成立した場合、後日、支払いが残るようなときは、必ず、書面(示談書・合意書)を作成すべきです。
    「公正証書を作るにはどうすればいいのでしょうか。」
    「公正証書」とは、例えば、人の生死、態度、損害の程度、株主総会で決めた内容といったような、法律行為や司法上の権利に関する事実について、公証人が正規の方式で作成する証書のことです。
    「公正証書を作るのは何のためですか。」
    まず第一に、公正証書は、その記載内容について確実な証拠になります。つまり、訴訟に於いて、強い証拠になります。
    第二に、正規の方式で作成された公正証書に記載された内容が、金銭の支払いを目的とする場合、公正証書の中で、債務者が訴訟や支払督促手続を通さないで執行しても構わないという執行寄託約定があれば、この公正証書によって、簡易に強制執行することができるのです。
    「債務者と話し合いがまとまらない場合はどうすればいいですか。」
    債務者、或いは、裏書人らとの合意がまとまらないときには、裁判を起こすことになります。この場合、通常、「手形訴訟」という裁判になります。
    手形訴訟は証拠が制限されており、通常の民事訴訟のように、法廷に証人を呼び出して聞いたりすることはありませんので、早く判決が出されます。
    また、手形の場合は、相手方に支払義務があることが、普通、確実ですので、仮差押え等の手続きをしても、供託金は請求金額の10分の1程度で済みます。
    「偽造手形について教えて下さい。」
    この頃、偽造手形ががなり大量に出回っています。
    「偽造手形」とは、人の名前を勝手に用いて作成された手形のことです。手形の場合、その金額がかなり高額になることから、偽造手形が作られやすいのです。
    偽造手形を貰ったとしても、偽造された本人に請求することはできません。従って、手形を貰う時点で、その手形が偽造かどうか、十分確かめた上でなければ、後で痛い目に遭うでしょう。手形を貰う時点で、当該手形上に名前を書いている人に電話をして、この手形を振り出したことがあるかとか、裏書きしたことがあるかとかを確認する作業が必要だと思います。
    いずれにしても、手形を巡る争いは、かなり高度な法律的判断を必要としますので、すぐに弁護士に相談されるのが賢明かと思います。
  • 裁判について

    「裁判の仕組みについて教えてください。」
    裁判とは、争いがある場合に、その争いを裁判所で解決してもらうという制度ですが、争いには段階があるので、段階を追って説明します。
    分りやすい例を挙げると、「AさんがBさんに100万円貸したけれども、返してくれない」ということを念頭に置いて下さい。
    まず、普通は、約束の時期が来たら、お金を返して欲しいと申し入れすることになります。しかし、Bさんがお金を返してくれません。
    「いきなり裁判を起こすことはできるのですか。」
    いきなり裁判を起こすこともできます。
    この場合は、裁判所に訴状(訴えの内容を書いた書面)を提出します。そうすると、裁判所が、Bさんにもその訴状を送り、Bさんを裁判所に呼び出し、裁判所に於いて、AさんとBさんの、どちらの言うことが正しいかを判断します。
    例えば、Bさんが、「Aさんからお金を借りたけれども、既に返した」とか、「もう10年以上経ったから、時効によって消滅した」とか、「100万円を借りたけれども、それよりも3年前、自分が200万円を貸していたので、それと対当額に於いて相殺する」とか、いろいろな主張が出てきます。そのどちらの主張が正しいのかを、審理していくのです。
    「支払督促とはどういうことですか。」
    支払督促とは、簡易裁判所に対して、申立人の一方的な言い分だけで、支払督促を相手方に出してもらう制度です。
    これは、相手方からほとんど異議が出ないようなケースに用いることができます。そして、相手方の異議がなければ、裁判所に、支払督促に仮執行宣言を付けてもらい、これによって、相手方の財産に強制執行することができます。
    「裁判は、弁護士を付けなければできないのでしょうか。」
    そんなことはありませんが、争いの内容が複雑になった場合は、弁護士を付けて、きちんと闘った方がいいと思います。途中まで審理を行ない、そろそろ判決という段階になって、自分が不利だと分って、いきなり、弁護士のところに相談に来られても、弁護士は対応ができません。
    やはり、最初の段階から弁護士に相談し、弁護士に依頼することが必要ではないでしょうか。
    「仮に、判決で、『100万円を払え』との判決が出た場合、その後の手続きはどうなりますか。」
    判決が出たからと言って、相手がすんなりとお金を払うとは限りません。相手がすんなりとお金を払わない場合は、「強制執行」という、次の段階に移ることになります。
    強制執行とは、判決に基づいて、相手方の財産を強制的に処分し、それから、回収を図ることです。
    例えば、相手方が公務員で勤務している場合は、その給料を差し押さえることができます。また、家があれば、家を競売に掛けることができます。預金を差し押さえ、それを強制的に取り上げることができます。
    「相手が無職で収入がなく、家にも、その家の時価を遥かに上回る抵当権が設定されているような場合には、どうなりますか。」
    結論から言うと、このようなケースが非常に多く、このようなケースは、回収できない場合が非常に多いのです。
    預金や勤務先がない以上、給料を押えたり、預金を押えたりすることは、当然、できません。家については、不動産の競売の申立ができます。しかし、これには、また何十万円かのお金を裁判所に納めなければなりません。
    このケースの場合、家の評価を遥かに上回る抵当権が設定されておりますから、いくらあなたが競売にかけたとしても、抵当権者(通常は銀行)の方が優先してしまいますので、あなたには1円もお金が入ってきません。このような場合、裁判所は、競売にかけることをせず、途中で競売の手続そのものを打ち切ってしまいます。
    したがって、あなたは、何十万円か裁判所にお金を納めたけれども、結局、競売事件は途中で打ち切られて、あなたはお金だけを出して、ますます損をしたという結論になるのです。
    「和解とはどういうものですか。」
    和解とは、裁判の途中、相手方と話し合って、適当なところで合意するという制度です。
    例えば、「100万円貸したのは間違いないけれども、相手が70万円しかお金の準備ができないので、70万円で手を打つ」というのが、和解です。
    先程述べたように、仮に、裁判まで行き着いたとしても、相手にめぼしい財産がなければ、お金を回収することはできません。そこで、やむを得ず、このような和解という手段を用いて、相手方と話を付け、相手方にお金を払わせるということが、日本の裁判ではよく行なわれているのです。
    「そうすると、お金のない者の方が勝って、お金を貸した者は泣き寝入りということになるのではないでしょうか。」
    結論的には、そう言えます。したがって、借りたお金を払わない人間、払うべきお金を払わない人間に対して、これを刑罰に処するという法律を作れば、たぶん、お金をいくらか、無理をしてでも作ってくるかもしれません。ただお金を作るアテがない人は、犯罪行為を行なってお金を作ったりする恐れがあるため、なかなか、お金を払わない人間に刑罰を科するという法律を作ることは難しいのではないかと思います。
    しかし、裁判を、3年も4年もかけてやり、ようやく判決をとったけれども、1円も回収できないという事態に遭遇することはよくある話です。何のために、2年も3年もかけて難しい裁判をやってきたのか、空しくなることが多々あります。
    いずれにしても、このような問題がある場合は、早急に弁護士事務所の門を叩いて、相談に来られて下さい。
  • 取締役に対する責任追及について

    「役員に対する法的請求は可能ですか」
    会社と役員個人は、法律上は、別個の法人格とされています。したがって、会社に対する請求は、原則として、会社に対してしかできません。
    しかしながら、会社が倒産してしまった場合に、その倒産について責任があるような役員に対し、まったく請求できないとなれば、相手方は保護されなくなります。例外的に、次のような場合には、会社役員個人に対して、責任追求が出来ます。
    「例外的に、どのような場合に請求できますか。」
    役員個人が、その取引について連帯保証契約をしている場合。
    仮に、会社が倒産したとしても、役員が連帯保証していれば、役員個人に会社と同様の責任を追及することは可能です。
    この場合は、必ず、契約書を取り交わしておく必要があります。継続的な取引が為される場合には、「継続的保証契約」と称する契約書を取り交わすのが都合がいいでしょう。
    例えば、その取引先との間で継続的に取引がある場合、最高限度額を1000万円と定め、その限度で役員が保証するという書類を取り交わしておけば、1000万円に達するまでは、役員に対する責任追求が可能です。銀行などが会社にお金を融資する場合、必ずと言っていいほど、その社長、及び、その配偶者などを連帯保証人にしています。
    通常の商取引の場合、そのような契約書を取り交わすケースは少ないかもしれませんが、このような不況の中、会社や取引先がいつ潰れてもおかしくないという状況を考えれば、「転ばぬ先の杖」の意味からも、役員に対して連帯保証してもらうことが必要だと思います。
    「会社が、お金を支払う意思も能力もないにも拘らず、取引先から商品を仕入れ、それを他に転売し、 その挙げ句、倒産したような場合はどうでしょうか」
    取締役が取締役としての職務を果たさなかったために、会社の経営が悪化したような場合、その取締役は、会社債権者などの第三者に対して、損害賠償義務を負うことがあります。
    例えば、極めて放漫経営だった場合とか、詐欺に等しいような行為で商品を購入した場合などは、取締役が会社に対しての注意義務(これを、法律上「忠実義務」あるいは「善管注意義務」と言います)を果たさず、その結果、会社がそのような不正行為をしたといった場合は、取締役に対して、個人的に損害賠償を請求することが可能です。
    「社長に頼まれ名目上の取締役になったが、まったく会社の経営に関知していなかった取締役も責任を負うのでしょうか。」
    このような場合は、極めて難しいケースと言わざるを得ません。しかし、最高裁の判例は、単なる名目上の取締役でも、代表取締役の職務執行につき、監視する義務があるとしています。
    したがって、名目上の取締役だからといって、代表取締役がどのような経営を行っているか全く関知せず、放置し、その結果、代表取締役が第三者に損害を与えた場合には、名目上の取締役でも責任を負わなければならない場合もあります。
    したがって、友人に頼まれて簡単に役員になることは、厳に控えるべきです。仮に、役員になれば、それなりの義務と責任が発生しますので、最低限、取締役会の収集を求め、そこで、会社がどのよな経営状態になっており、どのような商売をしているかぐらいは把握しておかなければならないでしょう。
    「過去の裁判上、どのような場合に取締役の責任が認められたケースがありますか」
    振出当時の会社の資産や営業状態から見て、満期に手形を落とせる見通しがないにもかかわらず、手形を振出した場合の代表取締役は、手形所持人に対して損害賠償責任を負います(最高裁昭41・4・15 判決)。

    株式会社の取締役は会社の業務執行につき監視する立場にありますから取締役に上程された事柄はもちろん、代表取締役の業務執行一般についてこれを監視し、必要があれば取締役会を招集し、あるいはこれを求め、取締役を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務があるとして、代表取締役が独断で多数振り出した支払い見込みのない融通手形につき、取締役に責任を認めた事例があります(最高裁昭48・5・22判決)。

    資本金の5分の1に相当する出資をし、会社に常勤しない名目的な取締役であっても、代表取締役の業務執行をまったく監視せず、取締役会の招集を求めたり、自ら招集することもせず、同人の独断専行に任せ、同人が代金支払いの見込みもないのに商品を買い入れ、売り主に対し代金相当額の損害を与えた時は、名目だけの取締役であってもその損害賠償責任を負うとした事例があります(最高裁昭55・3・18判決)。
    「 『法人格否認の法理』 とは。」
    「法人格否認の法理」とは、ある会社とその背後にいる経営者とか実質的に同一であると考えられる場合に、その法人格を否認して、その背後にいる実質的経営者に責任を負わせるという理屈です。これは、法律上は根拠はありませんが、判例上、認められてきた理論です。
    法人格の濫用には、二つ類型があると言われています。
    第一が、法人格濫用事例です。これは、Aという個人がB会社を設立し、財産などすべてB会社に移して、Aとしての責任を免れようとするケースです。
    もう一つは、法人格形骸事例です。これは、Aという個人とB会社が資産も経理もごちゃまぜになっており、個人と法人の区別がまったく付いていないようなケースです。
    このような場合に、AとB会社とを同一のものとみなし、両方に対して責任追及することを認めるのが、法人格否認の法理です。
    したがって、仮に、B会社が倒産したとしても、B会社とその背後にいるAとが実質的に同一であるとみられるような場合には、そのAに対して責任追及が可能です。

    このように、仮に会社が倒産したとしても、理論構成如何によっては、取締役の責任を追及することが可能な場合があります。もっとも、これはかなり難しく、裁判を起こして、裁判所で認められなければなりませんが、いずれにしても、簡単に諦めてしまうのはいかがなものでしょうか。
    特に、会社は倒産し、その社長も一緒に破産したとしても、役員欄を見ると、著名かつ資力のある人間が取締役になっていたりするケースがあります。このような場合、決して責任追及を諦めず、取締役個人に対する損害賠償を考えてみてはいかがでしょうか。

    いずれにしても、法律上、かなり高度な問題を含んでおりますので、是非、そのようなケースは弁護士に相談されて、よりよい解決を目指して下さい。
  • 時効とはどのような制度でしょうか

    「刑事上の時効とはどういうものですか。」
    犯罪を行った人に対して問題となります。
    以前、強盗殺人事件を犯した福田和子なる女性が、整形手術をして逃げ回り、時効寸前に逮捕されたという事件が大きくマスコミで報道されていました。
    刑事上の時効とは、犯罪を犯した者が、一定期間、訴追(裁判にかけられること)されなければ、国家(検察官)は、もはや、その犯人を裁判に掛けることが出来なくなることです。専門用語で、「公訴時効」(「公訴」とは、国家すなわち検察官が、犯罪を行った者に対して裁判を起こすこと)と言います。国家による訴追する権利が消滅することと言えるでしょう。
    「犯罪を行った者をのさばらせることはけしからん。」という御意見もあるでしょう。しかし、長い年月が経てば、証拠も散逸し、国民の処罰感情も鎮静化し、犯人も平穏な生活を送っているので、もはや、裁判を掛ける必要がないとするのが、公訴時効の根拠と言われております。
    なお、何年で公訴時効が完成するかについては、行った犯罪の大きさによって違ってきますので、一概には言えません。殺人罪(刑法199条)や窃盗罪の場合は7年、名誉毀損罪の場合は3年などです。
    「民事上の時効について説明してください。」
    民事上の時効は、大きく分けて二つあります。
    一つは、「消滅時効」です。これは、一定の時間(期間)が経過すると、その権利を主張することが出来なくなるというものです。
    もう一つは、「取得時効」です。これは、一定の期間、ある物を占有(事実上支配すること)すると、その物に対する権利を取得することが出来るというものです。
    「消滅時効について教えて下さい。」
    消滅時効の典型例は、請求権です。
    例えば、AさんがBさんに、平成15年1月1日、弁済期を平成15年12月31日と定めて100万円貸したとします。ところが、弁済期である平成15年12月31日が来ても、Bさんはお金を全く返そうとしません。それから10年、すなわち、平成25年12月31日が経過すれば、AさんのBさんに対する100万円を返してくれという請求権(貸金請求権)は時効に掛かるというものです。
    あるいは、AさんがBさんに、平成18年5月1日、車を300万円で売ったとします。Bさんが売買代金を支払わず2年が経過してしまった。この場合も、AさんのBさんに対する売買代金請求権は時効によって消滅します。
    消滅時効の根拠は?」
    どうして、このような消滅時効という制度が認められているのでしょうか。これは、一定の長い期間が経過すると、証拠などが散逸して、当時の事実関係を立証することが困難になるということに加え、「権利の上に眠る者は保護しない」という法律の格言が根拠となっています。権利を持つ者は、適正な時期にその権利を行使しなければなりません。
    権利があるからといって、いつまでもその権利を行使せずに放置していれば、ペナルティーを科せられるという意味です。
    「消滅時効の期間は」
    それでは、消滅時効の期間は、一体何年でしょうか。これは、その請求権の性質によって定まっています。原則として10年とされています。しかし、例外がたくさんあります。
    まず、当該請求権の当事者が会社(商法上の商人)である場合は、5年に短縮されています。さらに、売掛金や職人や製造人の仕事に関する請求権、生徒や教育、衣食住に関する請求権は2年です。医者、産婆、工事業者等の請求権は3年、労働者の賃金、運送費、旅館の宿泊料などは1年とされています。権利によって時効期間が違っているので、要注意です。
    詳しいことは、当事務所にお尋ね下さい。
    「時効の中断についてはどうですか。」
    それでは、この時効という効果は、必ず発生するのでしょうか。時効を途中で止めることが出来ます。これを「時効の中断」と言います。
    時効の中断とは、どのような場合に成り立つのでしょうか。時効の中断が成立する事由は、民法で定められております。分かりやすく言えば、「裁判所を通じた何らかの手続きをすること」が原則です。よく、相談に来られる方から言われるのは、「請求書を毎月送っているから、これで時効は中断しているのでしょう。」ということです。しかし、これは誤りです。単に、事実上請求書を送っただけで、時効は中断しません。裁判所を通じて、仮処分や仮差押えをするとか、調停を起こすとか、本裁判を起こすとかいう手続きをしなければ、原則として時効は止まりません。
    「そんなめんどくさいことをしなければ時効は中断しないのか。」と言われる方は、「債務の承認」という制度があるということを覚えて下さい。すなわち、債務者(お金を払わなければならない人)が自らの意思で、債務がまだ存在するということを承認すれば、その承認があった時点で時効は中断するのです。したがって、相手に対して、「債務承認書」という書類に債権の内容を記載し、「この債権がまだ存在していることを承認します」という趣旨の文書にサインをしてもらえば、その時点で時効は中断します。
     この方法が、一番安上がりで手っ取り早いと思いますので、心当たりのある方は、早めにこの手続きをすることをお勧めします。
    「取得時効について教えて下さい。」
    先程述べましたように、取得時効とは、一定の期間、ある物を事実上支配することによって、その権利を取得するという制度です。そんなこと、実際にはあり得ないじゃないかと思う方もおられるかもしれませんが、意外とこれはたくさんあるのです。
    例えば、Aさんの土地とBさんの土地が隣接していると仮定します。ところが、Aさんの土地がBさんの土地に1メートル程食い込んでおりました。Bさんは、そのことに気付かず、約20年が経過した後、先代の亡き父親の代の時の図面を見て、自分の土地がAさんの土地に約1メートル食い込まれていることが判明しました。そこで、BさんはAさんに対し、幅1メートルの土地(面積にして約20坪)を返してくれと要求したという案件があったと仮定します。実は、このような、境界を巡る争いは、かなりたくさんあります。
  • 保証人とは

    「保証にはいろんなものがあるようですが、法的にはどんなものでしょうか。」
    保証という言葉は、よく使われる言葉です。しかし、その意味するところは様々ですので要注意です。
    第一に、「あの人は間違いない人間です。俺が保証する」と言う言い方。この場合は法的な意味はまったくありません。
    「間違いない」と言いながら、実際にその人が間違いを起こした場合には、「ごめんなさい。俺の人間の見方が間違っていた」という一言で済む話です。
    「法律的な保証とはどのようなものですか。」
    「連帯保証」と単純な「保証」について、よく理解していない人がいるようです。
    まず、一般的に、お金を借りた借主本人(以下、「債務者」と言います)がお金を払わない場合に初めてお金を支払う義務が発生するというのが保証であると一般的に考えられているようです。したがって、お金を貸した人(以下、「債権者」と言います)が債務者本人ではなく、保証人にいきなり請求してきた場合には、その保証人は、「まず、借主本人に請求してくれ」ということが言えそうです。確かに、単純な保証の場合は、このようなことが言えます。即ち、単純な保証人であれば、いきなり保証人に請求された場合には、
    ①「まず、借主本人に請求してくれ」、②「借主本人が支払い能力があるかないか調べてくれ」
    という2つの抗弁を出すことができます。
    法律上、①の抗弁を「催告の抗弁権」、②の抗弁を「検索の抗弁権」と言います。
    したがって、借主本人に支払を請求したけれど、支払能力がなく支払えない場合に、初めて保証人の支払義務が現実化するということになります。
    しかし、一般の世の中で、このような単純保証というのは通常ありません。通常は、連帯保証という保証の種類になっています。この連帯保証というのは、先に述べた①催告の抗弁権、②検索の抗弁権のいずれも認められていない保証です。したがって、債権者からすると、債務者に請求する前に、いきなり連帯保証人に請求することができますし、また、連帯保証人は、「いきなり自分に請求するのではなく、借主本人にまず請求してくれ」ということは言えません。のみならず、借主本人が支払能力があったとしても、「まず、借主本人から取ってくれ」とは言えないのです。即ち、連帯保証人になるということは、借主本人とほとんど同一の法的義務を負うことになると肝に銘じておくべきでしょう。
    「根保証とは何ですか。」
    一時期、ある商工ローンが根保証契約を多用していたということで社会問題になりました。根保証という保証の種類について説明します。
    根保証とは、AさんがBさんにお金を貸すときにCさんがその保証人となった際、通常は、一度だけの貸借(金銭消費貸借契約)になるのですが、一度ではなく、その貸借が繰り返し繰り返しなされるような場合に一定の金額(例えば5000万円)を限度として保証人になるというものです。
    したがって、AさんがBさんに金銭の貸借を繰り返し、その金額が5000万円に達するまでは根保証人であるCさんはその保証債務を負うというものです。
    裁判などで、よく「根保証という言葉の意味を知らなかった」という主張が為され、「自分は5000万円まで保証する責任がない」という主張がなされることがあります。確かに、一般的に「根保証」という言葉は耳慣れない言葉です。しかし、「根抵当権」という言葉もあるくらい、「根」という言葉は一定の範囲まで包括的にという意味を含んでおりますので、根保証という契約には充分注意をする必要があります。
    「身元保証人とはどんなことですか。」
    身元保証契約とは、使用人が将来仕事中に不都合な行為をして雇主に損害を与えた場合に、その損害賠償債務を保証するための契約です。
    これについては、身元保証契約に関する法律という法律が定められております。単なる道義的意味での保証ではなく、きちんとした法的効力の発生する契約です。
    身元保証契約は、雇主側からすれば、その使用人が働いている間、継続的に保証させようとするものですから、その契約がかなり長期に亘るおそれがあります。また、使用人としては、雇ってもらうために保証人にとって不利な内容でも締結せざるを得ないことなどから、保証人の債務の内容がはっきりしないことなどから、その内容を合理的に限定すべきであると考えられております。
    身元保証法によると、①保証期間は5年を超えることができず、特約がなければ普通は3年となる。②使用人に不適任・不誠実な行為があったり、任務・任地の変更があったりして保証人の責任が具体化し、または加重化される危険があるときは、雇主はその旨を保証人に通知しなければならない。③保証人の責任の有無や限度を決めるときは雇主の過失の有無その他一切の事情を考慮する、と定められております。
    金額については、限度をもうけていなければ無制限ということになります。したがって、例えば、使用人が会社のお金を5000万円使い込んだというような場合を考えれば、その5000万円についてまで責任を負わなければならないということになります。
    この身元保証契約にもとづく身元保証人の責任というのは、極めて大きく、また、長期間に亘るため、簡単に身元保証人になるのは要注意です。
    「保証人になることは慎重にした方がいいのですね。」
    私が大学生の頃、民法の先生から言われて未だに記憶に残っていることがあります。それは、「保証人には絶対なるな!」という言葉です。世の中には安易に保証人になる人がいます。しかし、債務者本人が自分の血の繋がった身内であるとか、配偶者である場合は別にして、それ以外の場合は、よっぽど強い信頼関係が無ければ、保証人になるべきではないでしょう。現実に保証人になり、保証かぶれで会社を潰したり、自己破産、一家離散というひどい目に遭っている人を、これまで幾多と見てきました。
    「そんなこと言っても、商売上のつきあいで保証人にならざるを得ないのだ」とか、「断り切れないのだ」という人がよく保証人になっています。確かに、人がいい人が保証人になることが多いのでしょう。しかし、保証人になれば、あなた自身が莫大な負債を負わされてしまうということも十分に念頭に置いて、「そのような状況になってもやむを得ない」という覚悟を持ったうえで保証人になるべきでしょう。
    よく講演会などで私は言います。
    「もし、保証人になってくれと言われてどうしても断れない場合は、その100分の1でもいいからお金をあげなさい。例えば、1000万円借りるのに保証人になってくれと言われた場合は、10万円をあげなさい。そして、これは戻さなくてもいいから保証人は勘弁してくれ、という方が、むしろ後腐れ無く、恨みも残らない」
    と。どうか、保証人の危険性を十分に認識して下さい。
  • 家賃不払者への対処・対策

    「家賃を払ってくれない人がいます。どうしたらいいでしょうか。」
    建物を人に貸しても、家賃を払ってくれなければ大家としては大損害です。しかし、中には家賃を払わない人がいることも事実。
    そこで、家賃不払者にどう対処するべきでしょうか。その対策を述べてみたいと思います。

    まず、契約書で契約条件を明確に定めること。契約書がないというのは言語道断。できれば、市販の簡単な契約書ではなく、不動産業者が使っているようなちゃんとした契約書か、弁護士に作成してもらうのがいいでしょう。

    入居者の決定に当たっては、入居者本人及び家族が登録されている住民票及び印鑑証明書を提出してもらい、給料の源泉徴収票や給与明細などにより家賃等の支払いが確実になされるか否かを判断すること。短期的に、正当な理由(例えば転勤等)なく住所が転々と移転している場合には要注意。また、契約に際して本籍を記載してもらうと、あとあと便利(借主が逃げた場合など、本籍地から新しい住所を調べることが可能)。入居予定者の選定は、人任せにせず、自分で面談して決めること(「大家と店子は親子も同然」)。

    入居後の家賃等の支払状況の確認及び滞納者に対する迅速かつ適切な処理が必要。支払期限に家賃等の支払がないか、支払が不能と思われる客観的事情(夜逃げ、勤務先の倒産、リストラ、破産宣告等)が発生した場合には、借家人に対し、ただちに催告書を送付すること。
    そして、約定解除権発生の要件が整っているときは、停止条件付契約解除の通知を併せて行う。また、併せて、保証人に対しても、借家人の家賃等の滞納状況及び未払い家賃等の保証債務の履行を請求する必要もあるでしょう。保証に対する請求は滞納額の少ない早い時期に行うのが効果的です。また、保証人に対しても親切です。契約条項に、「借家人が家賃等の支払を怠ったときは、賃貸人は保証人に対し、ただちにその旨通知するとともに、未払い家賃等の請求をすることに異論を述べない」との規定を定めておくといいでしょう。この頃は、借主の家賃を保証する保証会社も出現しているので、このような会社を利用することも良いでしょう。
     家賃等の滞納により解除権が発生した場合、賃貸人は賃借人に対し内容証明郵便等により解除契約の意思を表示したうえ、二週間程度の猶予期間を置いて明け渡しを催促し、その期間が経過しても明け渡しをしないときは、速やかに建物明け渡しと家賃等の支払を求めて裁判を起こす必要があります。

    家賃を3ヶ月以上滞納するような借主の場合、滞納が拡大こそすれ、きちんと全額を支払ってくれることはありません。早急に、このような賃借人は出て行ってもらう必要があります。

    訴訟(裁判)は、弁護士に依頼する必要があります。まず、着手金として15万円〜40万円程度が必要です(これは弁護士によっても違いますし、物件の程度、訴訟の難易度によっても異なりますので、弁護士に率直に相談されるといいでしょう)。裁判で判決を取っても、相手が出てこなければ、裁判所の執行官に明け渡しの強制執行の依頼が必要です。執行官費用として10万円程度、運送費用として30万円程度(アパート一室の場合)が必要です。但し、裁判所が運送業者を依頼するため、多額の運送代をふっかけてくる業者がいるので要注意。そして、明け渡しが完了すれば、弁護士に対する報酬として、着手金の1.5倍程度の支払が必要となります。
    「家賃を数ヶ月不払いのまま借家人が行方不明の場合にも、問い1と同様の手続きが必要でしょうか。」
    もっとも、将来、行方不明となった借家人が出てきて裁判を起こされても構わないという考えがあれば、借家人の家財道具を処分するのが早いでしょう。
    その場合、必ず、家財道具一つ一つの写真を撮っておき、将来の裁判のために証拠を残しておく必要があります。あとになって、「1000万円のダイヤモンドを捨てられた」などと言わせないためにも写真は必要です。

    但し、このやり方は刑法上の窃盗罪に該当するので、刑事問題に発展する可能性もあります。したがって、刑事問題となることや損害賠償の裁判を起こされるのが嫌ならば、費用と時間がかかったとしても、問い1の③ の方法を選択するしかないのです。
  • 競業避止義務について

    私は現在、コピー機の卸売り会社に勤めていますが、この度独立を決意し、これまでのノウハウを生かせるよう同じコピー機の卸売業を自営にて始めようと考えています。何か気をつけるべき点はあるでしょうか。
    就業規則や誓約書の定め次第では、競業避止義務に違反する可能性があります。
    競業避止義務とは、労働者など企業と一定の関係にある者が、その企業と競業関係(自己または第三者のために企業の営業に属する行為をすること)に立たないようにする義務を言います。労働者は、在職中企業との間で労働契約を締結していることから、他の同業他社にて勤務をしたり、同業の独立営業をしたりすることを禁止されることは当然です。また、退職後は、原則として、労働契約がなくなること及び職業選択の自由の保障の見地から、競業避止義務を負うことはありませんが、例外的に、就業規則や誓約書にて、「労働者は、退職後も、同業他社に勤務し、また、同業の独立営業をしてはならない。」旨が定められている場合には、退職後も競業避止義務を負うことになります。

    では、就業規則や誓約書にて、退職後の競業避止義務が定められていた場合、退職労働者は一切同業を営むことができないのかというと、必ずしもそうではありません。
    就業規則や誓約書で定められた規定の内容が、その企業の実態に即した合理的制約と言えなければ、仮に退職後に同業他社に就職等しても、法的責任を負うことはありません。具体的には、事案毎に沿って検討を要しますので、一概には言えませんが、合理的な制約か否かは、退職後の競業制限の必要性、制約する範囲(地域や期間)、競業行為の態様(どの程度背信的か)などを総合して判断されます。

    まずは、あなたの勤務先の就業規則の内容を確認し、あわせて、入社当初に退職後も同業他社への就業等をしない旨の誓約書を作成していないか確認してください。つぎに、退職後の競業避止義務の内容がどう定められているのか(地域はどこについてまで及び、その期間は退職からいつまでとされているのか等)を確認してください。
    これに明らかに反するような場合、独立するかは再検討を要します。企業によっては、退職後の競業避止義務違反行為が発覚した場合には、退職金の返還を求める旨が就業規則上定められていることもあります。弁護士等の法律の専門家に十分に相談されるべきです。
    なお、退職後の競業避止義務が定められていない場合であっても、自由競争の範囲を逸脱して、勤務先のお得意様を意図的かつ大量に引き抜く等した場合には、悪質な背信行為と評価され、勤務先から損害賠償請求をされる可能性が高いため、営業態様にも十分に気をつけてください。
  • 成年後見人とは

    私と同居する85歳の父親が数年前から認知症を発症し、これまで面倒を見てきましたが、私の顔も分からないほど症状が進行しています。父は、資産家で悪徳商法などにより資産を費消しないか心配です。最近、近所の人から私が成年後見人になったらどうかと言われましたが、成年後見人とは一体どのようなことをする人なのでしょうか。
    認知症や障害により、1人で預貯金を引き下ろせなかったり、悪徳リフォーム業者等に騙され、支出する必要の無かったはずの高額代金を支払うような、自分の行為の結果を判断する能力を常に欠き、適切な社会経済生活を送ることが困難と思われる人を法的に保護する制度を、成年後見制度と言います。

    成年後見制度を利用するには、申立権者が、成年被後見人となる本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、後見開始の審判を申し立てることが必要です。申立権者は、本人、配偶者、4等親以内の親類などと法律上されています。
    家庭裁判所は申立てを受けると、医師などによる本人の精神状況の鑑定、医学的な見解を参考にしたうえで、本人や家族の意見も聞き後見開始の審判を判断します。
    開始の場合、本人は成年被後見人となり、成年被後見人の財産を管理し、財産上の行為を行うべき成年後見人が選任されることになります。
    成年後見人には本人の家族が多いのですが、親族間紛争や権利関係が複雑化している場合等は、弁護士や司法書士等の第三者が選任されます。

    成年後見人には、成年被後見人の行った財産上の行為を取り消す権限が付与され、悪徳商法に引っかかった場合や不必要な高級品を買ったような場合、これを取り消し、支払った金銭等を取り戻すことができます。
    成年後見人の仕事は、成年被後見人の財産を調査、財産目録を作成して、今後の成年被後見人の生活方針を立て、裁判所に報告することです。
    第一回目の報告後、成年被後見人の収支を管理、帳簿に付け、適切に財産管理をしていきます。また、施設入所契約等を締結する場合は、成年後見人が代わって契約を締結します。
    このように、成年後見人は、財産を一手に管理しますが、決して自らの私利私欲のために費消することは許されません。また、その仕事は原則として、成年後見人が死亡するまで続き、定期的に裁判所に対して業務の報告を行うことが必要となります。

    質問者の場合、父との関係に問題が無く、他の親族が反対の意見を述べない場合、質問者が成年後見人に選任される可能性が高いと思います。ただし、成年後見人には、大きな権限と責任が同時に付与されますので、選任されたのちは、父のために適切に財産を管理し、満足の行く余生を過ごせるよう、意思を尊重してあげてください。
  • 子の氏の変更について

    私は結婚して10年になりますが、夫と離婚しようと考えています。結婚の際、夫の氏を称しているので復氏をし、新戸籍を作ろうと考えています。子どもの氏を私の氏と同じにし、戸籍も私の戸籍に入籍させたいのですが、どのようにしたらいいのでしょうか。
    子の氏について
    子どもの氏は、子の出生時に決まり、父母が婚姻中に共同で称していた氏とされます(民法790条1項)。
    したがって、夫の氏を称した婚姻にあった父母が離婚した場合、母が復氏するか婚姻中の氏を継続して称する(戸籍法77条の2)かに関わらず、子の氏には当然に変更を与えるものではありません。
    そのため、離婚した母と子どもでは氏も戸籍も異なってしまうことになります(母が婚姻中の氏を継続して称した場合、呼称は同じであっても、氏は異なるとされます。)。母親が離婚に際し、子の親権者になったとしても、子の氏、戸籍が変更することはありません。
    このような場合のために、一定の手続をとることにより母子で氏を同じくし(民法791条、戸籍法98条)、同籍にすることができるものとされます。

    手続について
    まず、子の住所地を管轄する家庭裁判所に子の氏の変更についての許可の審判を申立て、許可を得る必要があります。申立人は氏を変更しようとする子自身となりますが、子が15歳未満のときは、法定代理人が代わってこれを行ないます。

    入籍届
    氏変更の許可を得た後、市町村長に対して「子の母の氏を称し母の戸籍に入籍する」旨の入籍届を提出します。これにより、子と母は同じ氏を称して同一戸籍に在籍することができることになります(戸籍法18条2項)。
    届出人が15歳未満であるときは、法定代理人(親権者)が代わって届出人となりますが、15歳以上の子は、未成年でも自ら届け出ることが必要です。この届出により初めて氏の変更の効力が生じます。
    また、この入籍届は、原則として氏変更の申立をした者がしなければならず、それ以外の者からも入籍届は無効とされています。
    ただし、未成年者本人からの追完によって有効な届出と認められる場合もあります。

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